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第七話<br /><br />漠然とではあるがこの頃から真剣に移住を考えはじめていた。<br />海神さまである彼は、彼の実家に私を連れて行き、両親などにも合わせてくれたが、彼はまだ若く、進路をイマイチ決めかねていたとみえ、私がメナドに住む話を始めても、特に何か行動を起こすといったそぶりも見せず、移住に関して協力してくれる様子でもなく、どこか煮え切らない態度のまま、暗い水中の記憶のように、どんよりとしたものとなっていった。<br /><br />そんな頃、再び訪れたメナドの空港で、シルクエアーの同じ便で、イギリスからやってきたラフとセーラに出会う。<br />ゲストは他にそれほどおらず、彼らと毎日同じボートでダイビングに出かけた。<br />彼らはダイビング以外の休息時間はボートの上で本ばかり読んでいる静かなカップル(だと思った)だった。<br />そんな彼らを横目に、私は相変わらず休む暇もなくスノーケリングに集中。雨の日だろうがなんだろうが、浅瀬に無限に広がる珊瑚礁の上を浮きまくっていた。<br /><br />ラフとセーラに誘われて、夕方のメナドの街へビールを飲みにくり出す。話を聞いてみると二人はカップルではなく、ラフは現在彼女募集中だとセーラは言う。「もしかしてこの二人をくっつけられるかも?」という彼女の思惑が既にあったのかもしれない。今思えば、ここで何かが確実に動き出していた。<br /><br />この頃NDCでは、ゲストでイタリア人のヤーナという女性が、ダイブガイドで、妻子もある男の子にベタ惚れし、ボートの上は言うまでもなく、リゾート内でも所構わずイチャイチャして大層な注目の的になっており、彼女はリゾート内の男の子たちに取り巻かれ、さながら女王のように振舞っていたため、ラフとセーラも含め、他のゲストが皆ひいてしまうという事態がおきていた。<br /><br />不幸にもこの男の子は海神さまの友人であり、私と海神さまが街に出かけようとすると、個人行動のできない恥ずかしがり屋の彼らは必ず誘い合う習慣があるので、当然このヤーナという女性がその男の子にいつもベッタリついて来ては我が物顔で振る舞うようになり、その態度に私も少々うんざりさせられていた。<br /><br />そんなことが原因で、二人で出かけられぬ不自然さ、彼らにNOと断ることすらできない、陸では優柔不断になりがちな海神さまの行動がかえって強調され、静かに不満がつのっていくばかりであった。<br /><br />他のゲストたちと皆で一緒に外に食事に出かけたおりも、鼻につくほどのヤーナの”誇らしげな地元民ぶり”と、その何でも自分が仕切らないと気がすまない彼女の性格により、行きたくもないようなメナドのディスコに目的地が決定された時点で、それが私達の決定的な分かれ道となった。<br /><br />NOといえない海神さまは友人を選び、私は、ヤーナにうんざりさせられた他のゲスト達と、「僕らは別の場所に行こう」と強く私を誘うラフを選んだのである。<br /><br />その夜、リゾートのレストランに戻って皆で飲みなおしをした。<br />気がつくと夜もふけ、ラフと二人だけになっており、そろそろ部屋に戻ろうかという頃になって、バケツの水をそこらじゅうにひっくり返しているような大雨が降り出した。レストラン周辺はあっという間に洪水状態。典型的な雨季の大雨だ。<br /><br />とても部屋まで歩いて帰れる状態ではなく、呆然と雨音を聞いているほかはなかった。つまり、映画のような愛の告白や激しく情熱的なシーンにはもってこいの、”孤島に流れついた二人”といったスチュエーションが二人の前に出来上がっていた。<br /><br />でも何もなかった…(笑)。<br /><br />ほのかな期待が無かったといえばウソになるが、ダイビング疲れで眠かったのと、私自身もいろいろあったばかり。<br />ラフはラフで、NDCの食事が合わず、お腹ピーピー状態で、口説くどころではなかったんだと後から聞いた。<br /><br />意図的にタイミングを逃した私達であったが、住所の交換だけはすましておいた。ラフとセーラのNDCでのホリデーはその後まだ1週間ほど残っているという。<br /><br />海神さまはと言えばその後会話を交わすことなく、自然消滅のような形となり、私はそのまま送迎バスに乗り、やや複雑な心境でひとりNDCを後にした。<br />

住めば都?ブナケン島 第七話 <夢のあとでの出会い>

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1996/11 - 1996/11

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ブナケン島島民

ブナケン島島民さん

第七話

漠然とではあるがこの頃から真剣に移住を考えはじめていた。
海神さまである彼は、彼の実家に私を連れて行き、両親などにも合わせてくれたが、彼はまだ若く、進路をイマイチ決めかねていたとみえ、私がメナドに住む話を始めても、特に何か行動を起こすといったそぶりも見せず、移住に関して協力してくれる様子でもなく、どこか煮え切らない態度のまま、暗い水中の記憶のように、どんよりとしたものとなっていった。

そんな頃、再び訪れたメナドの空港で、シルクエアーの同じ便で、イギリスからやってきたラフとセーラに出会う。
ゲストは他にそれほどおらず、彼らと毎日同じボートでダイビングに出かけた。
彼らはダイビング以外の休息時間はボートの上で本ばかり読んでいる静かなカップル(だと思った)だった。
そんな彼らを横目に、私は相変わらず休む暇もなくスノーケリングに集中。雨の日だろうがなんだろうが、浅瀬に無限に広がる珊瑚礁の上を浮きまくっていた。

ラフとセーラに誘われて、夕方のメナドの街へビールを飲みにくり出す。話を聞いてみると二人はカップルではなく、ラフは現在彼女募集中だとセーラは言う。「もしかしてこの二人をくっつけられるかも?」という彼女の思惑が既にあったのかもしれない。今思えば、ここで何かが確実に動き出していた。

この頃NDCでは、ゲストでイタリア人のヤーナという女性が、ダイブガイドで、妻子もある男の子にベタ惚れし、ボートの上は言うまでもなく、リゾート内でも所構わずイチャイチャして大層な注目の的になっており、彼女はリゾート内の男の子たちに取り巻かれ、さながら女王のように振舞っていたため、ラフとセーラも含め、他のゲストが皆ひいてしまうという事態がおきていた。

不幸にもこの男の子は海神さまの友人であり、私と海神さまが街に出かけようとすると、個人行動のできない恥ずかしがり屋の彼らは必ず誘い合う習慣があるので、当然このヤーナという女性がその男の子にいつもベッタリついて来ては我が物顔で振る舞うようになり、その態度に私も少々うんざりさせられていた。

そんなことが原因で、二人で出かけられぬ不自然さ、彼らにNOと断ることすらできない、陸では優柔不断になりがちな海神さまの行動がかえって強調され、静かに不満がつのっていくばかりであった。

他のゲストたちと皆で一緒に外に食事に出かけたおりも、鼻につくほどのヤーナの”誇らしげな地元民ぶり”と、その何でも自分が仕切らないと気がすまない彼女の性格により、行きたくもないようなメナドのディスコに目的地が決定された時点で、それが私達の決定的な分かれ道となった。

NOといえない海神さまは友人を選び、私は、ヤーナにうんざりさせられた他のゲスト達と、「僕らは別の場所に行こう」と強く私を誘うラフを選んだのである。

その夜、リゾートのレストランに戻って皆で飲みなおしをした。
気がつくと夜もふけ、ラフと二人だけになっており、そろそろ部屋に戻ろうかという頃になって、バケツの水をそこらじゅうにひっくり返しているような大雨が降り出した。レストラン周辺はあっという間に洪水状態。典型的な雨季の大雨だ。

とても部屋まで歩いて帰れる状態ではなく、呆然と雨音を聞いているほかはなかった。つまり、映画のような愛の告白や激しく情熱的なシーンにはもってこいの、”孤島に流れついた二人”といったスチュエーションが二人の前に出来上がっていた。

でも何もなかった…(笑)。

ほのかな期待が無かったといえばウソになるが、ダイビング疲れで眠かったのと、私自身もいろいろあったばかり。
ラフはラフで、NDCの食事が合わず、お腹ピーピー状態で、口説くどころではなかったんだと後から聞いた。

意図的にタイミングを逃した私達であったが、住所の交換だけはすましておいた。ラフとセーラのNDCでのホリデーはその後まだ1週間ほど残っているという。

海神さまはと言えばその後会話を交わすことなく、自然消滅のような形となり、私はそのまま送迎バスに乗り、やや複雑な心境でひとりNDCを後にした。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • osdさん 2005/09/23 13:17:42
    初めまして…_(._.)_
    初訪問いたしました。
    ダイブにまったく関心のない私が、サンゴ礁をはじめ、海中遊泳の美しさに感動させられました。夢でない現実的な存在であるメナドの町や人々の描写も面白く、少し「ごちそうサマ」といった感じながら楽しく読みました。今度の恋は実るのかな…。期待してます。
    ※スラウェシ島は昔のセレベス島なんですね。ハーレクイン風に言えば南の海を彩るラブロマンス<セレベス・メナドの恋>の1冊、なんていいですね。

    ブナケン島島民

    ブナケン島島民さん からの返信 2005/10/01 19:52:17
    RE: 初めまして…_(._.)_
    コメントを有難うございました。
    ラブストーリーという読み方をしていただけるとは思ってもみませんでしたので嬉しいです。

    今後も時間のあるときに頑張って続きを書いていこうと思いますので、たまに覗きにきてやってくださいませ。

    回線環境があまりに悪い現地からの発信ですので、頻繁にコメントを入れたりすることも、他の方のページを簡単に訪問することは不可能ですが、なんとか時間を見つけては皆様のトラベルページも訪問させていただきますね。
    今後ともどうぞよろしく!!

    ブナケン島島民より

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