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シリア、パルミラ。首都ダマスカスから北東へ約230km、砂漠の中に忽然と姿を現すパルミラは、2世紀にシルクロードを通るキャラバン隊の商隊都市として栄えた街であり、現在まで当時のローマ遺跡が非常に素晴らしい保存状態で残る。ボツリポツリと砂漠の中に点在する雰囲気も厳かな印象を受ける。<br /><br />俺にとってパルミラのもう1つの目的は、ベドウィン(砂漠で暮らす遊牧民族)に会うことだった。砂漠のテントでの生活なんてとても想像できない。彼らがどんな人達なのか知りたかった。チャンスがあれば彼らのテントを訪れてみたいと思っていた。ちなみに彼らもIDというものを持っているのだが、出生地の欄には“砂漠”とのみ書かれているらしい。渋すぎる。<br /><br />街を歩いているときに声を掛けてきた3輪タクシー(スズキのバイクを改造して荷台を付け、超ド派手に装飾したもの)のおっさんに聞いてみた。「ベドウィンのテントに行きたいんだけど」するとおっさんは「いいよ、彼らのテントの場所を知ってるから連れて行ってやるよ」と答えた。<br /><br />あまりにあっさり行き過ぎだと思ったが、モノは試しだ。頼むことにした。夕方そのおっさんと待ち合わせをして、アラブ城(パルミラ遺跡の後方の山の頂上に立つ城)で砂漠に沈む夕陽を見て、ベドウィンの子供達へのお土産にお菓子を買ってからテントへと向かった。<br /><br />途中道路から逸れ、スズキの3輪タクシーは道なき砂漠を物凄いエンジン音を響かせて突き進む。辺りは真っ暗で何も見えず、スズキのライトに照らされた前方の地面だけが浮き出ている。<br /><br />突然おっさんはスズキを止めた。星明かりの下で見る限り、辺りには何もないようだ。「おっかしいなー、この前までこの辺りにテントがあったんだけどなー。お、ほらっ、ここにテントの跡があるぞ。彼らはよく引越しするからねー」遊牧民族なんだから当たり前だろ。大丈夫かよー。とにかくテントを求めてさらに進むことにした。<br /><br />しばらくして諦めムードが漂ってきた頃、暗闇の中でうっすらテントらしきシルエットが見えた。ライトを向けてみると、やはりテントだ!ついに発見した!まずおっさんがテントまで行って事情を説明する。呼ばれて中に入ると、そこには民族衣装を着たベドウィンの家族がいた!!<br /><br />まずは一家の長であるお母さん(お父さんは亡くなったらしい)にご挨拶。続いて息子達との会話が中心となる。彼らのお嫁さん達や子供達(年の離れた弟?)はニコニコしながら俺達の会話を聞いている。もちろん彼らは全く英語が話せないので、スズキのおっさんのカタコトの英語での通訳が入るのだが、俺もアラビア語会話集を片手に頑張った。<br /><br />ベドウィンは1つの家族で3つのテントを持っている。俺が入ったのは食事をしたりくつろいだりするテント(何人かはそこで寝ると思われる)。他に寝るためのテントが1つと、食事を作るためのテントが1つ。俺がいる間に、ヤギの放牧から帰ってきた家族が数人加わった。他のテントで寝ていた家族も集まってきた。大家族だったようだ。<br /><br />テントの中は暖かくてとても居心地がいい。砂の上に厚いカーペットを敷き詰め、人が座る部分に敷き布団のようなマットを敷き、その上にもう1枚カーペットを敷いてある。さらにまたその上には枕のようなクッションを所々に2段重ねて置き、そこに脇の下を持ってくるような体勢で寝そべる。一見失礼なようだが、これがベドウィンスタイルだ。お前もそうしろと言われたので真似してみた。なんだか俺も家族の一員になったような気分になってきた。<br /><br />その日、9月9日はたまたま俺の誕生日だった。それを伝えると、そりゃめでたいということでちょっとしたパーティのようになり、シャイ(紅茶)で乾杯した。いくつになったのかと聞かれ、31歳になったと答えると、「俺と同い年じゃねーかぁ!」と一気にテンションを上げて言ってきたのが、どう見ても40代に見える長男だった。その後はすっかり気分を良くした長男のおかげで場も盛り上がり、楽しい時間は瞬く間に過ぎて行った。<br /><br />夜もすっかり更けて、そろそろ帰ろうかと言ったところ、長男が「今日は泊まっていけ」と言い出した。お母さん始め他の家族もそうしろそうしろと言う。めちゃめちゃ嬉しかったし、俺自身テントに泊まってみたいのは山々だったが、スズキのおっさんは家族の元へ帰らなければならない。おっさんがいなかったら俺は街まで帰れないので、せっかくだがその誘いは断った。<br /><br />すると今度は、「明日友達の結婚式があるから来ないか」と言われた。さらに30kmほど離れた場所で、たくさんのベドウィンが集まって夜中までダンスをして祝うという。「そんなのに突然行って大丈夫なの?」と聞くと、「全然問題ない。ウェルカムウェルカムだ」と言う。これは面白くなってきた。<br /><br />宿に帰ってたまたま同じドミにいた日本人の女の子、アキコにその話をしたところ、是非結婚式に一緒に行ってみたいと言う。アキコは自称民族マニアだ。現にその時もベドウィンの民族衣装(男物)を着ていた。ということで、未知なる砂漠の結婚パーティに一緒に行くことになった。<br /><br />次の日は昼間からベドウィンスタイルのカフェで水タバコを吸ったり昼寝をしたりしてベドウィンモードに入りつつ、夕方またスズキのおっさんと待ち合わせ、アキコと3人で結婚パーティ会場へ向かった。パーティ会場と言っても街から40km離れた砂漠の中だ。一体どんなところだかと思っていると、遠く前方に明かりが見えてきた。<br /><br />近づくにつれ、大きな照明がたくさん設置されているのが分かり、音楽も聞こえてきた。砂漠の真ん中に巨大特設パーティー会場が出現したのだ!<br />

砂漠の民、シリア砂漠にて(前編)

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2003/09 - 2003/09

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captainkoji

captainkojiさん

シリア、パルミラ。首都ダマスカスから北東へ約230km、砂漠の中に忽然と姿を現すパルミラは、2世紀にシルクロードを通るキャラバン隊の商隊都市として栄えた街であり、現在まで当時のローマ遺跡が非常に素晴らしい保存状態で残る。ボツリポツリと砂漠の中に点在する雰囲気も厳かな印象を受ける。

俺にとってパルミラのもう1つの目的は、ベドウィン(砂漠で暮らす遊牧民族)に会うことだった。砂漠のテントでの生活なんてとても想像できない。彼らがどんな人達なのか知りたかった。チャンスがあれば彼らのテントを訪れてみたいと思っていた。ちなみに彼らもIDというものを持っているのだが、出生地の欄には“砂漠”とのみ書かれているらしい。渋すぎる。

街を歩いているときに声を掛けてきた3輪タクシー(スズキのバイクを改造して荷台を付け、超ド派手に装飾したもの)のおっさんに聞いてみた。「ベドウィンのテントに行きたいんだけど」するとおっさんは「いいよ、彼らのテントの場所を知ってるから連れて行ってやるよ」と答えた。

あまりにあっさり行き過ぎだと思ったが、モノは試しだ。頼むことにした。夕方そのおっさんと待ち合わせをして、アラブ城(パルミラ遺跡の後方の山の頂上に立つ城)で砂漠に沈む夕陽を見て、ベドウィンの子供達へのお土産にお菓子を買ってからテントへと向かった。

途中道路から逸れ、スズキの3輪タクシーは道なき砂漠を物凄いエンジン音を響かせて突き進む。辺りは真っ暗で何も見えず、スズキのライトに照らされた前方の地面だけが浮き出ている。

突然おっさんはスズキを止めた。星明かりの下で見る限り、辺りには何もないようだ。「おっかしいなー、この前までこの辺りにテントがあったんだけどなー。お、ほらっ、ここにテントの跡があるぞ。彼らはよく引越しするからねー」遊牧民族なんだから当たり前だろ。大丈夫かよー。とにかくテントを求めてさらに進むことにした。

しばらくして諦めムードが漂ってきた頃、暗闇の中でうっすらテントらしきシルエットが見えた。ライトを向けてみると、やはりテントだ!ついに発見した!まずおっさんがテントまで行って事情を説明する。呼ばれて中に入ると、そこには民族衣装を着たベドウィンの家族がいた!!

まずは一家の長であるお母さん(お父さんは亡くなったらしい)にご挨拶。続いて息子達との会話が中心となる。彼らのお嫁さん達や子供達(年の離れた弟?)はニコニコしながら俺達の会話を聞いている。もちろん彼らは全く英語が話せないので、スズキのおっさんのカタコトの英語での通訳が入るのだが、俺もアラビア語会話集を片手に頑張った。

ベドウィンは1つの家族で3つのテントを持っている。俺が入ったのは食事をしたりくつろいだりするテント(何人かはそこで寝ると思われる)。他に寝るためのテントが1つと、食事を作るためのテントが1つ。俺がいる間に、ヤギの放牧から帰ってきた家族が数人加わった。他のテントで寝ていた家族も集まってきた。大家族だったようだ。

テントの中は暖かくてとても居心地がいい。砂の上に厚いカーペットを敷き詰め、人が座る部分に敷き布団のようなマットを敷き、その上にもう1枚カーペットを敷いてある。さらにまたその上には枕のようなクッションを所々に2段重ねて置き、そこに脇の下を持ってくるような体勢で寝そべる。一見失礼なようだが、これがベドウィンスタイルだ。お前もそうしろと言われたので真似してみた。なんだか俺も家族の一員になったような気分になってきた。

その日、9月9日はたまたま俺の誕生日だった。それを伝えると、そりゃめでたいということでちょっとしたパーティのようになり、シャイ(紅茶)で乾杯した。いくつになったのかと聞かれ、31歳になったと答えると、「俺と同い年じゃねーかぁ!」と一気にテンションを上げて言ってきたのが、どう見ても40代に見える長男だった。その後はすっかり気分を良くした長男のおかげで場も盛り上がり、楽しい時間は瞬く間に過ぎて行った。

夜もすっかり更けて、そろそろ帰ろうかと言ったところ、長男が「今日は泊まっていけ」と言い出した。お母さん始め他の家族もそうしろそうしろと言う。めちゃめちゃ嬉しかったし、俺自身テントに泊まってみたいのは山々だったが、スズキのおっさんは家族の元へ帰らなければならない。おっさんがいなかったら俺は街まで帰れないので、せっかくだがその誘いは断った。

すると今度は、「明日友達の結婚式があるから来ないか」と言われた。さらに30kmほど離れた場所で、たくさんのベドウィンが集まって夜中までダンスをして祝うという。「そんなのに突然行って大丈夫なの?」と聞くと、「全然問題ない。ウェルカムウェルカムだ」と言う。これは面白くなってきた。

宿に帰ってたまたま同じドミにいた日本人の女の子、アキコにその話をしたところ、是非結婚式に一緒に行ってみたいと言う。アキコは自称民族マニアだ。現にその時もベドウィンの民族衣装(男物)を着ていた。ということで、未知なる砂漠の結婚パーティに一緒に行くことになった。

次の日は昼間からベドウィンスタイルのカフェで水タバコを吸ったり昼寝をしたりしてベドウィンモードに入りつつ、夕方またスズキのおっさんと待ち合わせ、アキコと3人で結婚パーティ会場へ向かった。パーティ会場と言っても街から40km離れた砂漠の中だ。一体どんなところだかと思っていると、遠く前方に明かりが見えてきた。

近づくにつれ、大きな照明がたくさん設置されているのが分かり、音楽も聞こえてきた。砂漠の真ん中に巨大特設パーティー会場が出現したのだ!

  • アラブ城にて

    アラブ城にて

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