1979/02 - 1980/01
1521位(同エリア1974件中)
kioさん
マニラで数日過ごした後、北部のビーチで過ごす予定でいた私はラビットバスというバス会社のターミナルにタクシーで向かった。サンフェルナンド行きのチケットを窓口で購入、邦貨換算で1000円以下だった。地図で確認するとマニラからは北に向かい200K程の距離だった。
バスはボンネット型の相当旧式だったが、車窓から観るトロピカルな景色は興味深く、道中、飽きさせなかった。バスの最後尾に座った私を乗せたバスの乗客は定員の半分にも満たなかった。マニラ市街を抜けると、熱帯ゴム畑や、バナナなど広大なプランテーション農園の間をバスは通り抜けていく。エアコンなぞ無いので窓は全開していた。頬に当たる風は熱く湿っている。広いプランテーション農園を抜けると集落をバスを減速しながら通過する。その街の様は西部劇に出てくる街の様子を思い出させた。土埃にまみれた道、所在なげに道に佇みバスの通過を眺める老人、その脇では男達がパイン繊維のゴザを敷き車座になってカード博打に打ち興じている。ニワトリが埃にまみれた道に飛びだしてその後を追う子供達の姿、失業率30%と云われたこの国は、国民の10%に満たないマルコス政権に繋がる富裕階級と華僑、90%のそうでない階級との歴然とした格差から成る。やがて国民の情念と積年の恨みが閉塞感と苛立ちを恒常的に感じていた中で、マルコスの政敵の暗殺という引き金も有り、ドラスティックな独裁政権の追放と崩壊に繋がっていくのは、この時から数年後の事だった。
バスの運転手にレオマール・ビーチの辺りで降ろしてくれと頼んでいた私はバス・ドライバーの合図で海辺沿いの道で降ろされた。近辺にはホテルらしき建物と高床式の幾つからのコテージが点在した。この辺りはLA・UNIONと呼ばれるビーチだった。しかし最初に向かったホテルの宿代は予想以上に高かった。「この時期は雨季でオフシーズンだし、一週間以上滞在するからもっと安くしてもいいはずだよ?」と問うと、ホテルのマネージャーは「いいえ、今は乾期でシーズン中です。ゲストのほとんどは一週間以上滞在されます。」 と私と逆の事をつれない口調で云った。更に「隣りのコテージならあなたの希望する価格に近いもしれませんよ」と無愛想に付け加えた。 「サラマツボッ」 私は一つ覚えのタガログ語でマネージャーにアリガトウというと、初めて彼は微笑んだ。
隣接するコテージの名前は<アリソンズ・ハウス>と云った。このビーチを紹介してくれた友達がエアメールで教えてくれたコテージだった。私と同世代くらいの女性がマネージメントをしていた。料金を尋ねると70ペソ<2100円>だという。 ここを紹介してくれた友達は50ペソだとメールには書いていた。私は以前ここに滞在した日本人に紹介して貰ったこと。一週間以上滞在する予定だからと云うと、あっさり50ペソに割り引いた。マニラのYMCAの個室料金と同じだった。高床式の戸建ての宿だった。部屋に入ると、天井に15センチ位の蜥蜴が張り付いていた。エアコンは無かったが、夜間になるとマニラほどの湿気は感じず、海風の所為か寝苦しいということも無かった。遠浅のLa・Unionビーチの水温は温水プールより暖かい程だった。
食事はジープニーで15分ほどの州都のサン・フェルナンドの街で摂っていた。美味しいマンダリン・レストラン<中国料理>を見つけた私はそのレストランに日参していた。初めて店に入って注文した時、娘のウエートレスは漢字のメニューを気を利かせて持ってきてくれた。メニューに<焼麺>と云う文字を見つけた私は、きっとこれは<焼きそば>に違いないと解釈し、<小龍包>と<焼飯>と併せて三品をまとめて注文した。 フィリピンの麦酒サン・ミゲールの小瓶を飲みながら待っていると、大皿の盛り付けのビーフン!!をウエートレスが運んできた。焼麺とはビーフンの事だった。ビーフンの苦手な私は心底、閉口した。夕食時で広い店内は7分の入りだった。困った私はキャンセルするわけにもいかず、隣りのテーブルに座っていた家族連れに事情を話して良かったら召し上がりませんか?と尋ねた。最初当惑していた5人の親子連れは、私達のテーブルで一緒に食べませんかと逆に誘ってくれた。味気ない一人の食事より良いに決まってる。
私は遠慮なく彼等のテーブルに移動した。華僑と思われる彼等の素朴な質問攻めにも遭いながらも食事は愉しくすすんだ。 驚いたのは彼等の健啖家ぶりだった。大皿料理の数々を彼等は口角泡を飛ばしながら喰らう。喰らっては語る。彼等は十数品も注文していた。新しい大皿料理が来る度に私に食べなさいと勧めてくれた。
遠慮は何処かに置き忘れた旅の日々を送っていた私はサラマツボ<有り難う>とニコニコしながら美味で今まで食べたことの無いような海鮮料理の数々を食した。海老の甘露煮はとろけるような美味しさだったし、食後のデザートは寒天のような微妙な歯応えが良かった。後年、日本で大流行した<ナタデ・ココ>だった。高校生と中学生だという男の子と小学生の女の子は日本のアニメの<マジンガーZ>の大ファンだと云った。日本の調味料の<味の素>も既にフィリピンに進出しているという。この料理の味付けもかもねと、笑顔のとても綺麗な奥さんが笑った。2時間近い食事を終え私の注文した分の支払いをも、彼等はいいからと、受け取ろうともしない。帰途は方向が同じだからと彼等の車でコテージまで送ってもらった。ラッキーで美味しく愉しい夕食にありつけた私は以後も、そのレストランに通い続けたが、そんな僥倖は最初で最後だったのは云うまでもなかった。
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この旅行記へのコメント (1)
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- linachaさん 2005/07/02 17:06:51
- この写真は・・!
- なぜこんなに空がきれいなのですか??もちろんホンモノ?!
でもたまにこーしてミラクルな空色が現れたりしますものね・・
でも気になります。教えてください。
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