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ヴェネツィアは三年ぶりだった。前回は、二十名ほどの団体のツアーで訪れ、リド島のホテル・デバンで一泊した。このホテルは、映画「ベニスに死す」の舞台にもなった由緒あるホテルなのだが、テンコ盛りツアーで有名な旅行社の企画であったので、ヴェネツィア中をあちらこちらと走り回っただけで、「旅情」も何もあったものではなかった。<br />今回は、かみさんに娘夫婦という家族四人で訪れた。じっくりと滞在して、この沈み行く、滅び行く街を記憶に焼き付けようというものだった。シロッコが吹き付けてサンマルコ広場が水浸しになる冬場や、「夏の嵐」のシーズンを避けて五月に訪れた。<br />サラリーマンの私には過ぎた企画であったが、「お金は生きているうちに使わなきゃ」という、かみさんのキリギリス精神に敬意を表して旅立ったのである。<br />

ベニス・沈み行く街をセンチメンタルに記憶する

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1999/04/30 - 1999/05/06

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5

金魚のじいちゃん

金魚のじいちゃんさん

ヴェネツィアは三年ぶりだった。前回は、二十名ほどの団体のツアーで訪れ、リド島のホテル・デバンで一泊した。このホテルは、映画「ベニスに死す」の舞台にもなった由緒あるホテルなのだが、テンコ盛りツアーで有名な旅行社の企画であったので、ヴェネツィア中をあちらこちらと走り回っただけで、「旅情」も何もあったものではなかった。
今回は、かみさんに娘夫婦という家族四人で訪れた。じっくりと滞在して、この沈み行く、滅び行く街を記憶に焼き付けようというものだった。シロッコが吹き付けてサンマルコ広場が水浸しになる冬場や、「夏の嵐」のシーズンを避けて五月に訪れた。
サラリーマンの私には過ぎた企画であったが、「お金は生きているうちに使わなきゃ」という、かみさんのキリギリス精神に敬意を表して旅立ったのである。

  • 前回は、バスで橋を渡り裏側からヴェネツィアにアプローチしたが、今回はどうどうと正面玄関からの上陸である。マルコポーロ空港で、出迎えの日本人ガイド氏が用意した水上タクシーでサンマルコ広場に乗りつけたのだ。ムラーノ島やサン・ミケーレ島をかすめて、右に大きくカーブを切ると、尖った鐘楼が目に入ってきた。さらに近づくと見覚えのある淡いピンクのドカーレ宮殿が、そしてその隣には今回のホテル、ダニエリが連なっていた。<br />水上タクシーは、サンマルコ広場前というよりも、ダニエリ前の船着場に突っ込んで止まった。四日間の夢の国への上陸である。<br />

    前回は、バスで橋を渡り裏側からヴェネツィアにアプローチしたが、今回はどうどうと正面玄関からの上陸である。マルコポーロ空港で、出迎えの日本人ガイド氏が用意した水上タクシーでサンマルコ広場に乗りつけたのだ。ムラーノ島やサン・ミケーレ島をかすめて、右に大きくカーブを切ると、尖った鐘楼が目に入ってきた。さらに近づくと見覚えのある淡いピンクのドカーレ宮殿が、そしてその隣には今回のホテル、ダニエリが連なっていた。
    水上タクシーは、サンマルコ広場前というよりも、ダニエリ前の船着場に突っ込んで止まった。四日間の夢の国への上陸である。

  • ホテル・ダニエリは、本館をはさんで新館、旧館がつながっており、サンマルコの海岸通を睥睨している。私たちの部屋は新館の4階が用意してあった。有名な「黄金の階段」を上がってエレベーターに乗る。<br />一泊一〇万円という。私にとっては、目の飛び出るような高額だが、部屋に入ればナルホドと納得させられた。すっきりと整ったツインルームは、じゅうぶんゆとりを取った広さである。引き戸を押してベランダに出れば、オーシャンビューというより目の前が絵葉書だった。<br />正面にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会が浮かんでおり、その前の狭い海域を、フェリーや連絡船、ゴンドラが途絶えることなく行き来している。<br />日よけテントの張り出したベランダには、真っ白なテーブルとイスが配置されている。手すり越しに真下に目をやれば、遊歩道の真ん中に、四角いテントを張ったみやげ物屋が店開きして、観光客が群がっている。テントの上に積み上げられているカーニバル帽子が、色鮮やかである。宿泊費十万円のうち、景観代が三分の二は入っているようだ。<br />このダニエリ、名門貴族の邸を十九世紀末に、ホテルに改装したとかで、エレガントな豪華さは今に伝えられている。アンティークな家具、天井まで届くフレスコ画など、館内の至る所でナルホドと感心させられる。<br />なかでも、ロビーの天井から吊り下げられている、ヴェネツィアングラスで創られたシャンデリアが素晴らしい。赤、青、緑などさまざまな色のガラスが、巧みに組み合わされた華麗なシャンデリアである。「どうやって掃除をするのだろう?」 などと、つまらないことを考えて仰ぎ見ていた。ただ本能的に、シャンデリアの真下のソファーに座るのは避けたのは、地震国の国民性なのだろうか。<br />

    ホテル・ダニエリは、本館をはさんで新館、旧館がつながっており、サンマルコの海岸通を睥睨している。私たちの部屋は新館の4階が用意してあった。有名な「黄金の階段」を上がってエレベーターに乗る。
    一泊一〇万円という。私にとっては、目の飛び出るような高額だが、部屋に入ればナルホドと納得させられた。すっきりと整ったツインルームは、じゅうぶんゆとりを取った広さである。引き戸を押してベランダに出れば、オーシャンビューというより目の前が絵葉書だった。
    正面にサン・ジョルジョ・マジョーレ教会が浮かんでおり、その前の狭い海域を、フェリーや連絡船、ゴンドラが途絶えることなく行き来している。
    日よけテントの張り出したベランダには、真っ白なテーブルとイスが配置されている。手すり越しに真下に目をやれば、遊歩道の真ん中に、四角いテントを張ったみやげ物屋が店開きして、観光客が群がっている。テントの上に積み上げられているカーニバル帽子が、色鮮やかである。宿泊費十万円のうち、景観代が三分の二は入っているようだ。
    このダニエリ、名門貴族の邸を十九世紀末に、ホテルに改装したとかで、エレガントな豪華さは今に伝えられている。アンティークな家具、天井まで届くフレスコ画など、館内の至る所でナルホドと感心させられる。
    なかでも、ロビーの天井から吊り下げられている、ヴェネツィアングラスで創られたシャンデリアが素晴らしい。赤、青、緑などさまざまな色のガラスが、巧みに組み合わされた華麗なシャンデリアである。「どうやって掃除をするのだろう?」 などと、つまらないことを考えて仰ぎ見ていた。ただ本能的に、シャンデリアの真下のソファーに座るのは避けたのは、地震国の国民性なのだろうか。

  • このダニエリ、自家用のゴンドラ桟橋を所有しており、ここから運河観光に出発できるのです。もっとも、ホテルの前がゴンドラ乗り場ですので、出かけていって、イケメンの漕ぎ手を指名するという手もあり、お好きなほうをどうぞ。今までいろいろな街で観光ボートに乗りました。日本の柳川、上海のお隣、蘇州、ベルギーのブルージュにパリのセーヌ川。やっぱりここが一番でした。両岸のレンガ建物に、手の届くような適当な川幅。寄り添って座らざるをえないロマンスシートのゴンドラ。民謡、漢詩朗詠、シャンソンよりカンツォーネが合うのです舟歌には。建物の土台は水に侵され、余命わずかなベニスこそ水の都そのものでした。

    このダニエリ、自家用のゴンドラ桟橋を所有しており、ここから運河観光に出発できるのです。もっとも、ホテルの前がゴンドラ乗り場ですので、出かけていって、イケメンの漕ぎ手を指名するという手もあり、お好きなほうをどうぞ。今までいろいろな街で観光ボートに乗りました。日本の柳川、上海のお隣、蘇州、ベルギーのブルージュにパリのセーヌ川。やっぱりここが一番でした。両岸のレンガ建物に、手の届くような適当な川幅。寄り添って座らざるをえないロマンスシートのゴンドラ。民謡、漢詩朗詠、シャンソンよりカンツォーネが合うのです舟歌には。建物の土台は水に侵され、余命わずかなベニスこそ水の都そのものでした。

  • サンマルコ広場は、日が暮れてから目覚めてくる広場です。映画「旅情」でキャサリン・ヘップバーンとロッサノ・ブラッティが逢引(デートじゃありません)したカフェフローリアン。バンド演奏も昼間とはムードが違ってきます。そして、毎夜(といっても三日しか確認できませんでしたが)楽団のすぐ脇の、柱の影の席に居続ける老年の貴婦人。「楽団のマエストロの思いびと」といったのはかみさん。「ブラッティが忘れられずに、秘書業を定年退職して舞い戻ってきたキャサリーン」といったのは私でした。

    サンマルコ広場は、日が暮れてから目覚めてくる広場です。映画「旅情」でキャサリン・ヘップバーンとロッサノ・ブラッティが逢引(デートじゃありません)したカフェフローリアン。バンド演奏も昼間とはムードが違ってきます。そして、毎夜(といっても三日しか確認できませんでしたが)楽団のすぐ脇の、柱の影の席に居続ける老年の貴婦人。「楽団のマエストロの思いびと」といったのはかみさん。「ブラッティが忘れられずに、秘書業を定年退職して舞い戻ってきたキャサリーン」といったのは私でした。

  • 毎年冬場には、この広場全体がというより街中の街路が全て水に浸水されるベニス。街角のあちらこちらには、歩行路確保のための角材が積み上げてあります。ナポレオンが世界一の応接間といったこのサンマルコ広場も、いずれ水の中の運命とは。まこと、滅びるものは美しい。

    毎年冬場には、この広場全体がというより街中の街路が全て水に浸水されるベニス。街角のあちらこちらには、歩行路確保のための角材が積み上げてあります。ナポレオンが世界一の応接間といったこのサンマルコ広場も、いずれ水の中の運命とは。まこと、滅びるものは美しい。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • violaさん 2004/11/13 18:53:13
    一泊10万円の部屋とはすごいですね!!
    かの有名なホテルダニエリに一泊10万円で三泊されたとは凄いですね!
    私はヴェネチアには2度ほど行きましたが、いつも一泊1万円以下のホテルです。
    (殆ど一人旅行なので、なるべく安くて、でもある程度の安心感は欲しいので、60〜80ユーロくらいのホテルに滞在します。)
    ヴェネチアは市街は車が通らないので、他の都市とは全く違いますね。私はゴンドラには乗ったことはありませんが、水上バスを利用していました。
    サンマルコ広場のカフェフローリアンにも入ってみたかったのですが、その時一緒だったイタリアの友人ラファエラが”あそこは高いから”と言うので一人で入る訳にも行かず、あきらめました。(でも3月にローマにいった時、カフェグレコに入りました!)。
    サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ教会の”聖母被昇天”はとても素晴らしかったです。
    いつ沈むか分からない都市ヴェネチア、、本当に魅力あふれる都市ですね。

    金魚のじいちゃん

    金魚のじいちゃんさん からの返信 2004/11/13 19:28:31
    RE: 一泊10万円の部屋とはすごいですね!!
    その時、私は普通のサラリーマンでした。身分から考えれば一泊10万円は、いい加減にしてよ!の価格でした。でも、かみさんが言いました「10万円ケチっていつまでもくよくよしているより、一ヶ月シマツしていたほうがいいのじゃない?」って。そうなんです。年金生活に入ると入金額がわかりますから、使うのに気を使います。現役時代は「今年はボーナスが増えるかもしれない」「残業を増やせば」「馬券が当たるかも」と、夢を描くことが出来る年代です。たかが10万か5万か、桁内の違いです。100年後にはなくなる街ですベネチアは。しっかりと見ておきましょうよ。

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