ミルフォード・トラックをトレッキング
この一月、世界一美しい散歩道と言われるニュージーランド南島のミルフォードトラック(55㌔)を歩いてきた。
1月14日 クイーンズタウンをバスで出発、広大な牧草地を走り、船に乗り継いでコースの入口テアナウへ。桟橋で登山靴を洗い上陸。夕食後の自己紹介で、今回の参加者は日本、米国、ドイツ、シンガポールからの25人。
1月15日 起伏の少ないコースを川沿いに登る。駒鳥が目の前に現れ近づいてくる。立ち止まると足もとまで寄ってきて我々を見上げ、ゆっくりと森の中へ。ここの鳥は危険を知らないから寄ってくるのだとガイドの説明。途中寄り道をしながら歩く。ブナの巨木、湿原の花など。
1月16日 このコースのハイライトであるマッキノン峠越えの日である。「峠からは氷河の峰々を見渡すことができる素晴らしいところ」と案内書にあるが、朝起きると猛烈な雨である。部屋のガラス越しに幾筋もの白い線が見える。山肌を落ちる滝である。朝食の後、川が増水で危険というので、登山禁止。環境省の係官が川の増水を視察、予定より1時間遅れで出発の許可がでる。問題の川ではガイド三人が一人一人手を取り、膝まで浸かりながら激流を渡る。
憧れの峠路にさしかかる。標高差六百㍍、11のつづら折りの径を登る。振り返ると向かいの山には白い滝が何本も見られる。雨だから見られる光景で、普段は見られ景色とのこと。径の両側には花が咲き乱れている。雨のせいで輝いて見える。女性は熱心に写真に撮っている。
雨雲の間からマッキノン峠の記念碑が眼に入る。だが寒さで指が悴む。峠に着いたが、突風に煽られて景色どころではない。この突風の峠でガイドさんが熱い珈琲を出してくれた。尾根上のパスハット(食事のロッジ)で昼食を。温かいスープが嬉しい。靴を脱いで底に溜まった水を出す。
昼食後は嶮しい急な下り径を一気に降りていった。四時にクインティン・ロッジに着き、荷物を置くなり、落差五百五十㍍のサザーランド滝へ。痛い足をかばいながら出発。しかしその壮大な景観に、足の痛さを忘れる。水量、飛沫、音量に感激するばかりである。
1月17日 起伏は少ないが長い距離、自然のままの林の中を歩く。巨大な歯朶が伸び、苔むした径を歩く。樹木の雪崩跡が惨めである、土が浅いので颱風で大木が倒されると下流まで押し流され地肌がむき出でいる。
3時半、終点35・5マイルのサンドフライ・ポイントに到着、若者に負けず完歩。船でミルフォードサウンドへ。
ロッジで完歩賞の授与式があり、私が「75歳」と言ったら大喝采をいただいた。
大雨もあったが、原始の森の中を歩き、豪快な滝に出会えた素晴らしいトレッキングであった。