甚兵衛はうけない - マドリードのクチコミ
- フランシスコさん
- 男性 / マドリードのクチコミ : 8件
- 旅行時期 : 1998/08(約26年前)
夜になって、グランビア通りに繰り出しました。あんまり暑いので甚兵衛と下駄履きです。
タクシーに乗ったら、運転手の視線が気になります。そのうちもごもごと言ったのは、
「ペルーから来たのか? それともアルゼンチナ?」
でした。
「いや、日本だ」
と言ったら、
「南米かと思った」
と言うのです。
「?」
と思いつつ、グランビアで降りて、大変な雑踏の歩道を闊歩していたのです。
するとモーセじゃないのに、私の進行方向は海が割れるように避けるのです。向こうから来る人間がおびえたように私を凝視して、脇へ詰めます。通りの向かいの映画館に群がっている人々もびっくりして、目引き袖引きこっちを観ています。
やっぱり甚兵衛と下駄カランコロンは、相当違和感があったようです。無遠慮なのは子どもです。
「ペル、ペル」
とはやしたり、下駄のことを
「これは何?」
と聞いたり、ぷっと吹き出したりします。
それにしても、ペルーとか南米とかいうのは何でだろうと思って、はたと気づいたのは、甚兵衛の柄。一面に蚊取り線香のような大きな渦巻き模様が染めてあります。インカの模様とかナスカの地上絵に見えなくもありません。
スペイン人は新大陸で原住民をさんざん殺戮した報いでこの模様が怖いのかもしれないなどとと、勝手に想像しました。
とにかく、その晩から、甚兵衛は寝間着代わりになりました。
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