2014/03/14 - 2014/03/15
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sakaikazunoriさん
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名古屋市内に1泊したのち、翌・平成26年3月15日(土)は愛知県小牧市へ移動します。
今回の旅の目的の田県神社・豊年祭は午後からなので、午前は、「信長の城をめぐる旅」として、小牧山城を目指します。
従来、小牧というと、本能寺の変後の秀吉と家康の直接対決となった天正12年(1584)「小牧・長久手の戦い」の主戦場として知られていました。
それ以前からも、信長の小牧山城がこの地に築かれていたことは、もちろん知られていました。ただ、桶狭間の合戦後、永禄6(1563)年に清須城から移って来て、永禄10(1567)年に美濃・岐阜城に移るまでの4年間という短期間、“美濃攻略のための戦略的城砦”的な位置づけや印象・イメージで語られることが多かったような気がします。
しかし、ここ10年ほどの発掘調査により、その印象がかなり一変しつつあります。
それを岩波新書『信長の城』でも興味深く読んでいたので、実際にその地を訪ねてみたいと思ったわけです。
近年の小牧山城や小牧城下町の発掘成果は、小牧市教育委員会事務局文化振興課文化財係のHPに丁寧かつ詳細に紹介されています。それらも事前にiPhoneに落とし込んでおき、参考にしつつ、小牧山を登ります。
◆小牧市教育委員会事務局 文化振興課文化財係
http://www.city.komaki.aichi.jp/bunkazai/komakiyama/
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円 - 3万円
- 交通手段
- 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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名古屋市内から地下鉄や名鉄小牧線を乗り継ぎ、約30分程度で小牧市役所に到着。この背後の標高86mの小高い丘が小牧山となります。
小牧山の南端、市役所の西隣に大手口があります。小牧山 自然・景勝地
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今はこのような散策路ですが、それでも南北に一直線。信長当時は幅5.4m、長さ150mの大手道があったそうです。
近年、安土城も発掘調査により、大規模な直線の大手道があったと分かってきましたが、それは決して、安土が初見ではなく、この小牧山にあったということになります。小牧山 自然・景勝地
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またこの大手道からは石積の跡や排水溝の跡なども発掘されています。
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そして、大手道の左右には、明らかに曲輪と分かる平坦地も残っています。これも安土城と酷似しています。安土城だと、伝・羽柴秀吉邸や伝・前田利家邸などの家臣の屋敷群といった感じなので、小牧山も似たような屋敷群が山の中腹に建てられていたのでしょう。
小牧山 自然・景勝地
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小牧山は東西に二コブある山で、東の方が高いコブになっています。
大手道を登り切ると西側の峰に出ます。この東西の間に、明らかにそれと分かる堀跡が残っています。小牧山 自然・景勝地
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そして信長が拠点としていた主郭(本丸)は、東側の峰にあります。
そこに入る関門として、虎口が作られていました。これも安土城の山頂部の黒金門を想起させます。 -
さて、本丸に当たる主郭部に西側の虎口跡から入ります。
ここは段上の構造になっており、西側から逆時計回りに南に進むことになります。
この主郭部には昭和43年に建てられた模擬天守があり、ここは小牧歴史館となっています。この主郭部の周囲には巨石群があちこちに散見されます。 -
つまり、ここに上下二段の石垣が築かれていたわけです。
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そして、徳川義親氏の銅像が主郭南側の大手門跡に建っています。義親氏は、昭和5年に、尾張徳川家の所有から小牧市に小牧山を寄贈した時の当主です。
この銅像の台座にもなっている二つの巨大な白い花崗岩。これが信長時代に遡るものであることを『信長の城』では推測しています。ということは若き日の信長公は、まさにここを歩いて出入りしていたんですね。
信長公は、大手口に白い巨石を配することで、権威を示すことを意識していたんですね。小牧山 自然・景勝地
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主郭部はテニスコートにして2面ほどの平坦地でしょうか。
いまは小牧歴史館や、小牧空港の電波塔、戦前の昭和天皇の陸軍大演習の記念碑が立てられています。こここそが、若き信長が生活の拠点としていた空間です。ここの発掘こそが期待されます。
小牧歴史館は、小牧の民俗祭礼や律令時代からの須恵器や近現代の資料が展示されています。やはり必見は、この主郭部から出土した「佐久間」と書かれた墨書石垣でしょうね。佐久間信盛など譜代の重臣に石垣の普請を割り当てさせていたのが見て取れます。 -
模擬天守の4階からは、濃尾平野が一望できます。
これは清須城の比ではありません。南に名古屋市街、つまり、那古野・熱田、清須が、 -
北西には岐阜市、つまり金華山などが一望にできます。
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主郭の北西部、つまり金華山の方向に、のちの天主に相当する櫓台があったと想定されています。この辺りにはひときわ大きな巨石群が配され、今も発掘調査が進められています。
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今度は東の山麓へと降りて来てみました。
ここには十数年前まで小牧中学校があり、その移転に伴い、発掘調査が進んだところです。ここから広大な居館跡が発掘されました。 -
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100m四方の、それこそ中学校のグランド敷地としてはピッタリなサイズです。『信長の城』では、ここを後の岐阜城にも連なる山麓居館、つまり、室町武家儀礼を伝承した対面所など主殿機能をもった屋敷があったのでは、と推定しています。
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ここに、近年の発掘調査にもとづく小牧山と小牧城下を復元した模型が置かれていました。小牧城下町の発掘は今後期待されるところですが、これを見る限り、やはり単なる美濃攻めの城砦といった程度のものではなく、後の岐阜や安土にも連なる信長のまちづくりの強い意向が感じられます。
そして、小牧というまちの北端の丘に城を築き、南部の平野に商工業者の街を開く。これって、古代の都城(平城京や平安京)にも似たプランを感じます。
つまり、「天子は南面す」という街の平面プランを濃尾平野の何もなかった平地と丘陵に出現させたことになります。信長は岐阜という地名を中国古代の周の文王の故事から取ったというのは有名な話です。おそらく、中国古来の天子南面などの知識も十二分に持っていたのではないかと思います。小牧山歴史館 美術館・博物館
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そして、小牧山の東山麓の脇、つまり居館跡のすぐ横を合瀬川が流れています。
『信長公記』には、非常に興味深い文言があります。
上総介信長奇特なる御巧みこれあり。(中略)左候ところ、後に小牧山へ御越し候はんと仰せ出だされ候。小真木(牧)山へは、ふもとまで川つゞきにて、資材雑具取り候に自由の地にて候なり。どうと悦んで罷り越し候ひしなり。
つまり、信長は、城郭の横に流れている河川を、防衛のためというより、ヒト・モノの物流の大動脈として捉えていたということです。そして、領民や商工業者のそのニーズもしっかり掴んでいたということです。
これは、後の岐阜城に対する木曽川交通網、安土城に対する琵琶湖交通網など、信長がいかに拠点城郭と水上交通網との接合を強烈に意識していたかを感じる事ができました。小牧山 自然・景勝地
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およそ2時間程度の小牧山探訪でしたが、従来の“美濃攻略のための短期間の臨時城砦”という認識は完全に吹っ飛びました。
岐阜城や安土城に連なる織豊期城郭の原型をここに見る事ができます。
思えば、清須城というのは、信長以前に築かれた室町期の守護館という色彩の強いものでした。たぶん、信長のような時代の先駆者にとっては、着古した「お古」にしか感じられなかったのでしょう。だからこそ、尾張を統一し、今川の脅威も排除した時点で、尾張の新都心として、小牧山城と小牧城下町のグランドデザインに着手したのではないかと思います。
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この旅行記へのコメント (2)
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- 南国ぱいんさん 2014/04/12 12:36:56
- とても興味深いです。
- 初めまして〜
「信長の処女作ともいうべき城づくり 」という
タイトルに惹かれてやってまいりました。
若き日の信長の見た景色って
こんなだったんですネ。
まさに尾張平定のために
闘士を燃やしていたンだろうなぁ…って
勝手にイメージしてるんですが。。。
若き日の信長の目線っていうのが
キャッチできてとてもシビレました!
それにしても濃尾平野…
デカイですネ。
そして信長はもっともっとデカい男だったんだ…
カッけぇ〜ですネ!
- sakaikazunoriさん からの返信 2014/04/19 22:53:10
- RE: とても興味深いです。
- 南国ぱいんさま
遅レスで失礼しました(^^;
コメントありがとうございますー\(^o^)/
安土城とかが日本の城郭史の最初みたいに思われていますけど、小牧山城こそ若き日の信長が独自の設計・デザインで作った城で、暫定的な「砦」レベルじゃない、って最近の発掘調査などで分かって来ました。
それを今年出た岩波新書「信長の城」で読んで、なるほど〜と思って、実際に現地に行って見て、超・納得、という感じです。
なかなかおもしろい旅でした^^
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