山上のリゾート地・六甲山にヴォーリズ建築を訪ねて。

2023/07/27 - 2023/07/27

神戸市の北西に位置する六甲山は、車でも、ケーブルカーでも手軽に行くことができるリゾート地です。

明治時代から神戸に住む外国人の避暑地として発展してきた場所で、

今回はそんな外国人のひとりであったグルームが造った神戸ゴルフ倶楽部と、

別荘建築であるヴォーリス六甲山荘（旧小寺家別荘）を訪ねる見学ツアーに参加しました。

今も使われている神戸ゴルフ倶楽部のクラブハウスもヴォーリズの設計です。

一日、六甲山の上で過ごしましたが、気のせいかもしれませんが、なんとなく

すっきりした気持ちになりました。

エリア 六甲山・摩耶山周辺(兵庫)

• 旅行の満足度: 5.0

六甲山へは六甲ケーブルで。

六甲山ケーブルのケーブル下駅はは山小屋風のデザインです。

六甲ケーブル 乗り物

車両のデザインは２種類あって、上りは緑色のレトロタイプでした。

六甲ケーブル 乗り物

山上までは約１０分。けっこう乗りでがあります。

六甲ケーブル 乗り物

六甲山上駅に到着しました。

山上駅はケーブル下駅と打って変わって、アールデコ様式の駅舎でした。

駅舎は後でじっくり見学するとして、六甲山上バスに乗ります。

六甲ケーブル 乗り物

六甲山上のバスは六甲山を周遊するバスと、摩耶山を周遊するバスの２種類の路線があります。
お得なケーブル往復と六甲山上ルート乗り放題の乗車券を利用しました。
阪急阪神のアプリから購入すると、さらに割引がありました。

六甲山上バス 乗り物

六甲山上バスのバスシート。ケーブルカーやバスなど、六甲山に因んだ模様がかわいかったです。

六甲山上バス 乗り物

ひとつめの停留所・記念碑台で下車して、神戸ゴルフ倶楽部に歩いて向かいます。今回は特別に敷地内に入って、ヴォーリズが設計したクラブハウスを見せてもらいました。

神戸ゴルフ倶楽部ゴルフコース。

六甲山 自然・景勝地

山の上は気温２６度。いつもよりは高いそうですが、それでも地上よりは１０度は低かったですね。

六甲山 自然・景勝地

グリーンからクラブハウスの全景を眺めます。

日本最古のゴルフクラブである神戸ゴルフ倶楽部はグラバー商会神戸支店開設のために神戸にやってきたイギリス人・グルームがゴルフコースを作ったのが始まり。
ヴォーリズの設計によって昭和７年、現在のクラブハウスが建てられました。

六甲山 自然・景勝地

これはバンカーではなくサンド。

開場初期のころは、グリーンは芝ではなくサンドだったそうです。

六甲山 自然・景勝地

倶楽部ハウスの南側は部屋がふたつあり、休憩室と食堂になっています。

二つの部屋はだいたい同じ造りでした。

こちらが休憩室。

食堂。

タイル貼りの暖炉がありました。

扉は外側は白色、中側は茶色。

下見板張りの色は何色といったらいいのでしょうか。グリーンの緑色に映える色ですが、色そのものはとても落ち着いた色合いです。

防風・防雨のために、ガラス窓と雨戸が容易に開閉できるようになっています。

ガラス窓を下げて・・

雨戸を引き上げます。

建物の前には日除けのパーゴラがあります。

六甲山荘へは神戸ゴルフクラブからさらに林の中を歩いて奥へと入って行きます。

六甲山 自然・景勝地

ヴォーリズ六甲山荘の入り口に到着。

土日祝日のみの開館ですが、本日は貸し切りで特別開館です。

ヴォーリズ六甲山荘は、昭和９年、関西学院の教授だった小寺敬一氏の別荘としてヴォーリズの設計により建てられました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

入口を入ると、ぐる～っとまわる小路を歩いて建物に到着します。

入口や道路からは建物は全く見えません。この付近には他にも別荘建築がありますが、森の奥深くに建てられているものが多く、道路からは建物は見えないようになっているものがほとんどです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

小路を歩いて、玄関に到着です。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

リビングは窓を大きく取って解放感がありますが、避暑を目的としているため、直射日光を避けるべく、北向きに造られています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

この別荘は小寺家の手を離れた後は甲南女子学園の所有となって、利用されていましたが、２００８年にアメニティ２０００協会という認定NPO法人が買い取り、保存・公開を行っています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

籐の椅子も元からあったものだそうです。

甲南女子学園の頃も、大切に使われていて、保存状態も良好です。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

リビングの天井は折り上げ天井になっていました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

壁の板の太さが一定ではありません。

不規則＝緊張を和らげる＝寛げるという効果があるそうです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

丁寧な仕事ぶりが見えますね。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

リビングには暖炉とつくりつけのベンチがあります。
山荘は夏に利用されていましたが、暖炉があるんですね。

暖炉前の床に貼られているのは泰山タイルでした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

ベンチに座ってみるとこんな感じ。

ちなみにベンチ部分は収納になっていて、薪などを入れたそうです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

ベンチ上にあるこの木のデザインは、

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

ドアの部分と同じです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

ドアノブは輸入品。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

このスタンドも当時からのもの。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

リビングの隣にある食堂には造り付けの食器棚がありました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

食堂の隣の部屋には来客用の部屋がありました。

部屋に来客専用のトイレがありました。そういったところは洋風。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

写真ではわかりにくいですが、雨水が外側へ流れるように傾斜がついています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

台所も収納がいっぱい。とても使いやすそう。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

台所は今でも使われてい邸、今回、山荘の食堂でカレーとコーヒーをいただきましたが、実際この台所で作ったものです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

透明なノブはオリジナルのまま。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

台所の流しは人造研ぎ出しとタイル。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

廊下にもつくりつけの収納棚がありました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

建物の南側には夫妻の寝室と、子供部屋が二つ、そして女中部屋が並んでいます。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

ホテルのように、ベッドで寝ながらにして部屋の電気が消せるように、ベッドの手元

にスイッチがつけてあります。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

照明は各部屋によってデザインが違っています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

各部屋には造り付けの衣装ダンス、物入れなどがあって、

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

衣装ダンスの中には引き出しも造られています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

長年使っていると、ドアノブは壊れてしまうこともありますが、しっかり健在です。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

子供用の家具も残っています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

特にこの、うさぎの模様のある椅子はかわいかったです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

家族用の三つの寝室は廊下に出なくても部屋同士行き来できるようにドアが付けられていて、そのドアとドアの間にはそれぞれ洗面所とトイレが設けられています。
爽やかで、それでいて落ち着いた雰囲気のするブルータイルがいいですね。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

洗面所のシンク。
「TOYO TOKI」
TOTOの前身の会社だそうですよ。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

女中さんの部屋は畳の和室でした。
普通、女中さんの部屋は小さかったりするんですが、ここは広くて、窓も大きいです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

壁の茶色いドアは仏壇かと思いましたが、

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

なんと、アイロン台でした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

お風呂は洋式ではなく、五右衛門風呂でした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

「ヴォーリズ建築で昼食を」ということで、カレーをいただきました。

さきほど見学した台所で作られたものです。
ほどよい辛さでおいしかったです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

庭に出てはじめて建物の全体が見えます。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

庭から見たヴォーリズ六甲山荘。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

窓ガラス部分が多いため、風雨を避けるのに雨戸が造られています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

その雨戸の戸袋が９０度回転するようになっています。

この仕組みは京町屋に見られるもので、ヴォーリズがそれを参考に取り入れたのではないかということでした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

さて、庭から小路を下っていくと・・・

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

室谷記念館という建物にたどり着きます。
室谷邸もヴォーリズの建築で、かつて須磨の離宮前町にありましたが、売却・解体されてしまいました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

室谷邸は一度、見たことがあるんですが、チューダー様式のかなり大きなお屋敷でした。
遺族が建物の保存を条件に売却しましたが、結局解体され、今はマンションになっています。
部材の一部が神戸市に保管されていたとは知りませんでした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

現在は門から玄関にいたる門廊部分、玄関だけが再建されています。

ハーフティンバーのチューダー様式です。玄関部分には煉瓦タイルが使われていますが、上部の少しくすんだのはオリジナルで、それ以外は再建にあたり、新しく作ったものです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

彫刻やステンドグラスなどの細かい装飾もみどころ。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

門扉が中世風。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

門を入ると、階段、そして吹きさらしの廊下が玄関へとつながっています。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

門籠の屋根はトラス構造。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

てすりは室谷邸の暖炉のカバーを利用したものだそうです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

玄関扉。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

玄関の扉を開けると保管してあった暖炉が展示してありました。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

室谷記念館の横には元々あった池を整備して、現在、小寺池と名付けられている池があります。。

昔は氷を作っていたのではないかということでした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

また、室谷記念館のすぐ横には石垣を積んだ旧道が残っていますが、

この道で氷を運んだのではないかと言うことでした。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

旧室谷邸から再び山荘に帰ってきてアイスコーヒーで一服です。

山荘は４月から１１月半ばまでの土・日・祝日に公開されていて、食事やお茶も楽しめるようです。今回は見学ツアーのために平日でしたが、開館してもらったようです。

ヴォーリズ六甲山荘 名所・史跡

見学会はこれで、終了ですが、せっかく六甲山に来たので、周遊バスを利用して

六甲山を回ってみようと思います。

まずは停留所・記念碑台の近くにある六甲山ガイドハウスへ。

兵庫県立六甲山自然保護センター 名所・史跡

ガイドハウスのスタッフの方がガイドハウスの脇から階段を上がったところにあるビジターセンターを見学していってくださいとのことだったので行ってみました。

兵庫県立六甲山自然保護センター 名所・史跡

ビジターセンターは無料で見学でき、館内には六甲山に生息する生き物や、

兵庫県立六甲山自然保護センター 名所・史跡

蝶などの展示がありました。

六甲山の治水、防災などについての展示も。

兵庫県立六甲山自然保護センター 名所・史跡

芝生の公園や東屋、神戸ゴルフ倶楽部の創設者グルームの銅像や、植林や砂防工事などを行った彼の功績を讃えた記念碑などがある公園になっています。
展望デッキもありますよ。

兵庫県立六甲山自然保護センター 名所・史跡

バス終点の六甲山頂駅に行ってみました。
ここは六甲山と有馬温泉を結ぶロープウェイの駅で、六甲山で遊んで有馬温泉で泊まるというのも楽しそう。もちろんその逆も有り。

六甲有馬ロープウェー 乗り物

またバスに乗って今度は六甲ガーデンテラスへやってきました。

六甲ガーデンテラス 名所・史跡

六甲ガーデンテラスは飲食店やショップのある複合施設で、イングリッシュガーデンがありました。

六甲ガーデンテラス 名所・史跡

展望塔もありました。建物中の螺旋階段をあがると・・

六甲ガーデンテラス 名所・史跡

市街地や海の景色がよく見えました。

ちょっと霞んでいましたが。

六甲ガーデンテラス 名所・史跡

展望塔からの山側の眺め。

六甲ガーデンテラス 名所・史跡

お土産屋さんはバスツアーの立ち寄り先になっていて、何台か観光バスが来ていました。
六甲山のはちみつ＝やまみつやを使った商品や、神戸のお菓子、六甲山サイダーなど品ぞろえも豊富。

六甲おみやげ館 お土産屋・直売所・特産品

記念碑台の停留所前にある「ROKKO　CIRCUS BASE」は２０２３年の７月にオープンしたばかりの施設で、レンタサイクルとカフェをやってます。

新しくてきれいな建物です。

メニューは食事やドリンク、デザート類と、色々あって、しかもリーズナブル。

のどがかわいたので白くまかき氷を食べました。５００円でした。

山上駅に戻ってきました。

今度はじっくり駅舎を見学。

駅舎は１９３２年（昭和７年）の建設です。

六甲ケーブル 乗り物

斜めに張り出した屋根を太い柱が支えています。

六甲ケーブル 乗り物

照明器具のデザインもなかなかステキ。

六甲ケーブル 乗り物

壁面にもテラコッタ。

六甲ケーブル 乗り物

軒周りに取り付けられたアールデコデザインのテラコッタ。

六甲ケーブル 乗り物

外壁にも数々の装飾がほどこしてあります。

壁面などを見ると、補修が必要なのかなと思いました。

六甲ケーブル 乗り物

写真の駅舎の右側・崖部分は壁の塗りなおしもされているようで、また、工事用の資材も置いてあったので、建物全体もメンテナンスをするのかなと思います。

六甲ケーブル 乗り物

駅舎入口。

六甲ケーブル 乗り物

駅舎内部の、特に階段周りは個性的なデザインになっていますが、

六甲ケーブル 乗り物

掃除があまりしっかりされていないような印象がしました。

せっかくいい建物なのにちょっと残念。

六甲ケーブル 乗り物

駅舎内。

六甲ケーブル 乗り物

独特なデザインがステキですが、穴が大きいので危険防止のためか、穴部分には透明な仕切りが設けられていました。

六甲ケーブル 乗り物

六甲山上駅のすぐ横には天覧台と言う展望台があります。

昭和天皇陛下がこちらから神戸の風景をご覧になったということで天覧台と言う名前が付けられています。

天覧台 （六甲山上展望台） 名所・史跡

須磨、淡路島が見えます。

天覧台 （六甲山上展望台） 名所・史跡

天覧台にあるカフェで、六甲山のはちみつ＝やまみつのかかったレモンホットケーキを。

テラス席もありましたが、暑いので冷房の効いた室内でいただきました。

天覧台 （六甲山上展望台） 名所・史跡

帰りのケーブルカーは、緑と赤色のクラシックタイプの車両でした。

六甲ケーブル 乗り物

バスで阪急六甲駅へ向かいます。途中大勢の若い人が乗ってきてバスが満員になったと思ったら、神戸大学があるんですね。
阪急六甲駅のすぐ南側には六甲八幡神社がありました。

六甲八幡神社 寺・神社・教会

駅側（北側）から入ったのでそれほど大きくない神社だと思ってたら、、南側には長い参道があり、けっこう立派な神社でした。

六甲八幡神社 寺・神社・教会

阪急六甲駅の前には煉瓦造りの変電所がありました。

阪急電車の変電所ですね。