社交不安が行く麦秋の福岡・佐賀こそこそ旅行（1）コンテナホテルに泊まる佐賀江北

2023/05/09 - 2023/05/10

社交不安の持ち主1人が、秋のような風景が広がる5月の有明海周辺を巡る、3日間の旅行に出かけました。

社交不安を一言で説明するなら、「人が怖い」ということになるのかもしれません。
人と接することが不安だったり、接していなくてもその視線が気になります。また、パーソナルスペースが広く、人が周囲にいるだけで落ち着かなかったりもします。特に同行者がいない場合、多くの人が何の気なしに行えることを行うのに、大きなエネルギーを必要とします。これらの特徴は、日常生活においてのみならず、旅行という場面においても大きな影響を及ぼします。

しかし、社交不安がどうあれ、非日常の世界に身を置き、いろいろなものを目で見たり耳で聞いたりすることには、言葉にし難い楽しさがあります。
この旅行記は、社交不安と豆腐メンタルの持ち主が、何の因果か手に入れた旅行という趣味を、自分なりに楽しもうとする記録です。ちょっと変わった宿に泊まり、人の少ない場所をこそこそと回りました。
このページでは、主に前半の佐賀県での出来事について紹介しています。

エリア 太良・鹿島(佐賀)

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 高速・路線バス JRローカル 徒歩

●バスステーション広島駅北口8:00　→　佐賀駅バスセンター14:50　ウィラーYJ1701便
広島から、ウィラーの高速バスで佐賀へ向かいました。広島と福岡・佐賀を結ぶ路線は2022年春に開設され、本数は当初より減ったものの、運行が続けられています。
ウィラーのバスの長所は、隣の座席との間についたてがあり、そこに身を隠すことができるところです。隣の席だけでなく、通路を挟んだ向かい側の席に人がいても気になってしまう人にとって、このついたてはとても役に立ちます。

天神を経由するようになった記念のセールが開催されており、佐賀までの運賃は2000円、そこからボーナスクーポン500円で1500円になりました。この路線のおかげで、金銭的にも、佐賀はとても近くなりました。

ウィラーのバスは、広島ー福岡間で競合する広福ライナーと異なり、小倉駅も経由します。
北九州の街には長い都市高速が走り、風景も都会的です。維持管理は大変だろうと思います。

小倉駅を経由することで、北九州の利用者の利便性は向上しています。
一方で、福岡や佐賀の利用者にとっては所要時間の増加をもたらしています。車内にお手洗いがないために休憩も多く、広島から福岡までは5時間半かかります。広福ライナーより40分ほど長くなっています。

「おもいやり　ゆずりあい　さわやか　交通」
西鉄天神高速バスターミナルを出たところの新川橋交差点には、5・5・4・4という珍しいリズムの標語がありました。

小倉駅、天神、博多駅と乗客が減っていき、佐賀まで向かうのは自分だけでした。
このウィラーブランドのバスの運行は佐賀県の祐徳自動車です。たとえ乗客がいなくても佐賀に回送することになるとはいえ、乗客が自分だけというのは、何となく申し訳ない気持ちになります。
人がたくさんいると落ち着かず、反対に誰もいなくても申し訳なく感じて落ち着きません。ほとほと困った特徴です。

●佐賀15:20　→　江北15:35　JR長崎本線普通　
佐賀駅到着は定刻でした。佐賀駅からは長崎本線の普通列車に乗り、江北駅で降りました。
佐賀駅の指定席券売機では、他駅発の乗車券も購入できました。江北駅に指定席券売機はありませんでした。

佐賀平野は、一面に黄金色の麦畑が広がり、秋のような光景が広がっていました。このあたりは麦の一大産地です。

江北駅から700mほど歩き、この日の「変わった宿」であるHOTEL R9 The Yard 江北にチェックインしました。
コンテナを使用した宿泊施設で、コンテナが載ったトレーラーには、それぞれナンバープレートも付いています。

出入口そばの棟で手続きを行いました。性格上、チェックインをするだけでどっと疲れます。フロントで名前を告げ、機械で手続きを行い、手続き完了後、施設についての説明を受けました。名前を聞き取ってもらえず、「ん？」と言われ、こちらも「ん？？」と思いました。
基本のプランが軽食付きとなっていて、フロント横に冷凍庫があり、冷凍食品をひとつ選ぶことができます。
（1泊6400円-じゃらんクーポン1500円-全国旅行支援980円=3920円　佐賀旅PAY2000円分付き）

HOTEL R9 The Yard 江北 宿・ホテル

コンテナに入ると、部屋は一般的なビジネスホテルの雰囲気でした。滞在中、ここはコンテナの中だと意識させるようなことは特にありませんでした。冷凍冷蔵庫に電子レンジも備わっています。

この宿泊施設を選んだのは、「このようなコンテナに住むのはどんな感じか」を知るためでもありました。
キッチンや収納がないという根本的な問題を別にすると、コンテナだからといって住むのに支障があるとは思えませんでした。シンプルな構造で、掃除も大変ではなさそうです。
ただ、窓が小さく多少の閉塞感があるので、より大きな開口部が必要だと感じました。

HOTEL R9 The Yard 江北 宿・ホテル

次に乗る電車までの時間に、近くのザ・ビッグ江北店に立ち寄りました。
このあたりに来たら丸ぼうろは欠かせません。価格も大変魅力的です。

●江北16:50　→　肥前浜17:08　JR長崎本線普通　
●肥前浜17:20　→　肥前七浦17:25　JR長崎本線普通
ちょうど高校生の帰宅時間帯に重なり、江北駅に到着した電車からはたくさんの生徒が降りてきました。駅前にも、送迎の車が列をなしていました。
ムツゴロウに会うため、あたかも地元民であるかのように電車の補助椅子に座り、肥前浜でワンマンの気動車に乗り換えて肥前七浦駅へ向かいました。諫早行きの気動車は、2両目のドアは開かず、1両目の後ろのドアが入口、前のドアが出口というよくある方式でした。定期券を持っているのであろう高校生が入口から降りているのもよくある光景でした。

肥前七浦駅では、犬の散歩の男性が列車を降りた高校生にあいさつしていましたが、こちらは見られただけでした。

江北駅 駅

肥前七浦駅から600m歩くと、道の駅鹿島に着きます。
道の駅の北側には「干潟交流館 なな海」があり、2階のミニ水族館からは有明海が見渡せるほか、有明海の生き物を間近に見ることができます。
館内に他の客はおらず、水族館コーナーから見える事務室のようなところで2人が話をしていました。あまり落ち着かず、ゆっくり見ることはできませんでした。

道の駅 鹿島 道の駅

2階入口前には干潟を再現した水槽があり、ついにあのムツゴロウと対面…

道の駅 鹿島 道の駅

…と思ったのですが、ムツゴロウとよく似たトビハゼもいるようで、どっちがどっちかよくわかりませんでした。
イラストには明らかな違いがありますが、本物は泥に覆われていたりします。

道の駅 鹿島 道の駅

あなたはどちらでしょうか？

道の駅 鹿島 道の駅

干潮の時刻に合わせて訪れたため、外は広大な干潟となっていました。
はじめは気付きませんでしたが、よく見ると、あちらこちらでムツゴロウあるいはトビハゼが動いています。全然いなかったらどうしようと思っていましたが、実際に来てみると、こんなにたくさんいるのかと驚くことになりました。

ムツゴロウあるいはトビハゼは護岸のそばには来てくれませんでしたが、数メートル先から遠く沖のほうまで、数えきれないほどの姿があり、みんなぴょこぴょこしていました。

18時に干潟交流館は閉まり、働いている方々は車で帰っていきました。
この場所にいた30分ほどの間に干潟を見に来た人はわずか1組でした。海を眺めているだけで飽きることはなく、人目が気になることもなく、静かなとても良い時間が過ごせました。遠くには雲仙が見えています。

列車の時間に合わせて道の駅鹿島を後にし、肥前七浦駅まで戻りました。
駅舎には犬の散歩の女性がおり、遠方から来られたのかと声をかけていただきました。少しお話をすることになり、駅ノートへの記入をお誘いいただいたのですが、すぐ列車の時間になってしまいました。
駅は地域の方にとても大切にされている印象でした。駅舎内にはツバメの巣があり、子ツバメの成長も見守られているようでした。

肥前七浦駅には2つのホームがあり、江北方面の列車は常に駅舎と反対側のホームに到着するようです。跨線橋での移動が必要になります。

●肥前七浦18:33　→　肥前浜18:38　JR長崎本線普通
●肥前浜18:41　→　江北19:01　JR長崎本線普通
肥前浜駅で鳥栖行きの電車に乗り換え、江北駅に戻りました。
江北から肥前浜まで乗車した電車は、乗客が多く、各駅でホーム側すべてのドアが開きました。肥前浜から江北まで乗車した電車は、拠点駅以外では「1両目後乗り前降り」の方式がとられていました。乗客の多さに合わせて柔軟な対応をしているのかもしれません。

肥前鹿島駅 駅

江北駅に降り立つと、きれいな夕焼けを見ることができました。
計画では、道の駅鹿島のあとに祐徳稲荷神社を訪れることも考えていましたが、疲れたので行かないことにしました。

江北駅 駅

この日の江北駅で、駅員さんの姿を見ることはありませんでした。15時以降は無人になるようです。列車が発着しない時間帯は、静かな時が流れています。

肥前七浦駅に自動券売機は設置されておらず、車内の整理券を取って乗車していました。江北駅ではチェックがなく、無賃乗車も簡単にできてしまう状況でした。そもそも、ここまでの運賃がいくらなのか示すものがありません。
運賃ぴったりの硬貨も持っていなかったので、自動券売機で逆区間のきっぷを買い、集札箱に入れておきました。それでいいのかわかりませんが、そうするほかありませんでした。

ザ・ビッグや積文館書店で「佐賀旅PAY」2000円分を使ってホテルに戻りました。決済音が「佐賀最高！」でした。

江北駅 駅

5月10日（水）
この日は、鉄道と路線バスで福岡県大牟田市へ向かいました。
チェックアウト時間前に清掃の人が外でごそごそしたりしゃべったりして落ち着かないというホテルあるあるを経験し、10時前にチェックアウトしました。チェックアウトは機械のみでした。

ホテルから駅までは、あえて遠回りをして、身代わり観音を訪れることにしました。少し東に進むと、一面の麦畑が広がり、麦が風になびいていました。

麦畑と電車の写真を撮ろうとしましたが、あまりうまくいきませんでした。
事前にうろうろして構図を決め、その場で待ち構え、電車が来たら近くに人がいても動じずスマートフォンを構えるという一連の流れは、少しハードルが高いです。あきらめるか、適当に撮って終わってしまいます。

普通列車が通過したあと踏切を渡ると、まっすぐ伸びるレールの先に通過した電車が見えました。
周りに人がいなかったので、このような写真が撮れました。

駅の北側には長崎街道があり、旧街道らしいうねうねした道を見ることができます。
すぐ横の県道と違って車も歩行者もほとんどおらず、穏やかな雰囲気でした。

このあたりでは、ごみは名前を書かないと回収してくれないようです。

看板を目印に民家の庭先のような場所を通り、階段を上ると、身代わり観音に着きました。ここにも人はおらず、参拝後に眩しい新緑の中で一休みすることができました。

身代り観音 名所・史跡

この場所からは、街並みや江北駅を発着する電車を眺めることができます。特急街道だけあって、電車が頻繁に行き来していました。

身代り観音 名所・史跡

駅員さんのいる江北駅の改札口を通り、ホームで列車を待ちました。
列車が発着するとき、放送の初めに流れる音楽は、江北町70周年記念曲「宝探し」（くるり）をアレンジしたものだそうです。
YouTubeで曲を探して聴き、頭の中で、勝手にこの旅行のテーマソングにしました。良い曲でした。
https://www.youtube.com/watch?v=c3Ylz9zPu-A

●江北11:07　→　佐賀11:22　JR長崎本線普通　
江北から佐賀まで乗った電車は、途中駅ではやはり「1両目後乗り前降り」の方式でした。放送では、運賃や切符は運転台横の運賃箱に入れるよう言っていました。
しかし、この方式が浸透していないのか、駅には開かない扉の前で待っている人もいました。また、電車にはそもそも運賃箱が付いていません。駅に停車して降車客が運転台横に向かっても、運転手さんが車内を振り返ることはありませんでした。
佐賀と肥前浜の間で普通列車に4回乗りましたが、最後までしくみがよくわからないままでした。

このあと、佐賀駅バスセンターから西鉄バスに乗り、県境を越えて福岡県へ入りました。
わずかな滞在でしたが、佐賀には何もないなんてことは全くないということを改めて感じました。

江北駅 駅