2022/09/21 - 2022/09/22
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品行方正さん
辜顕栄という人物をご存知だろうか?
日本統治時代に五大財閥の一つに数えられ、今でも子孫の一族が中国信託銀行(日本では東京スター銀行の親会社)や台湾セメント等を経営する一大企業グループの祖となった人である。
年輩の方なら知っているかもしれないが、かつて野村総研でチーフエコノミストを務め日本の金融政策にも関わったリチャード・クーは彼の孫にあたる。
当時の財閥は多かれ少なかれ皆日本との関りで財を築いたが、彼の行動は特出している。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 徒歩
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【辜顕栄の邸宅】
交通は台北Qsquareから高速バスで鹿港へ直行。
この他にも迪化街やかつては東京(終焉の地は東京北沢)にも邸宅があった。
当時の生活ぶりを展示した文物館として公開されている。
一応鹿港の人扱いされているが、日本統治以前の前歴は複数の履歴が言われていてはっきりしない。 -
日本と台湾の関りは日清戦争の結果割譲されたとザックリ理解されているが事はそう単純ではない。
領土の割譲というより日本が台湾を統治することを認めた、といった方がよい。
そもそも正式に清の領土では無かったという説もある・・? -
清国はせめてもの抵抗として官僚と軍を残し、それを中心に台湾民主国を立ち上げる。
最初の日本軍との戦闘の主力は実質的には清国の北洋軍だった。
抗日運動を欧米列強にアピールし、日本の統治に干渉させる目論見があったが肝心の台湾住民からはあまり強い支持を得られなかった。 -
富裕な商人などに新政府のポストと引き換えに資金の提供を求めたが、多くは資金だけ提供して身を隠したといわれている。
板橋の林家花園古跡で知られる林家の当主(現在の華南銀行の祖)も国会議長にさせられた?が献金だけしてトンズラしている。
それでもなかなか狡猾なアイデアだし運動が上手く行けば、日本にとってはかなり厄介な事態になる可能性も充分にあった。
それを救ってくれたのが辜顕栄だといっても決して過言ではない。 -
228事件も似たようなケースだが、事の発端は台湾民主国の失策から始まる。
日本はまず基隆に上陸し、そこで最初の戦闘になる。
敗残の台湾民主国軍は台北に逃れるが規律は無茶苦茶で統制がとれておらず、しかも市中においては乱暴狼藉状態で台北は大混乱に陥ってしまう。 -
【鹿港街長の宿舎】
その結果台北在地の有力者を中心に、秩序の回復を何と日本軍に依頼するというプランが持ち上がる。
その使者に立ったのが辜顕栄で全ての話はここから始まる・・ -
元々の富豪と違って、彼の富のほとんどは日本に協力したことで築き上げたと言っても良い。
その財力で台湾中部を中心に広大な土地を取得して台湾有数の大地主でもあった。 -
戦後の国民党政権下では日本に寄りすぎた姿勢は批判の対象になり、当然だが一時期は危うい立場に立たされてしまう・・
しかし台湾に全く基盤がなかった国民党の弱みを巧みに衝いて、間を置かず政商のポジションをしっかり獲得して現在に至る。 -
国民党政府の信頼を得るために土地開放政策に積極的に協力し、土地の放出に抵抗する他の地主たちを尻目に真っ先にその土地を政府に差し出した。
機を見るに敏・・とはこの事か? -
首尾よく日本軍と接触した後・・
台北を攻撃しないという条件で日本軍を台北まで安全に案内し無血開城を成功させた。
台北を戦場にしないで済んだ事がもつ意味は意外に大きい。
スパイを疑われたりもしたが圧倒的な実績で信頼を獲得していく。 -
その実績とは・・
これ以降の全島掌握に向けた日本の南下に帯同をして協力した。
抵抗する勢力があれば積極的に誘降工作をし、それでも従わない勢力があれば自ら義勇軍を編成してまで日本側の立場で活動した。 -
住民の自治(後に一部認められる)を要求する運動が興った際にはそれに対抗する組織を立ち上げて運動を牽制した。
日露戦争時も協力を惜しまなかった・・ -
【鹿港の街並み】
その過程で樟脳・塩・タバコ・アヘン等の専売権、広大な土地の取得、フィリピンの砂糖利権獲得等で莫大な富が積みあがっていく。 -
名誉も獲得する。
日本にとっては格別の功労者なので叙勲はもとより、勅撰貴族院議員でもあった。
日本の国会議員だったなんて意外過ぎる・・ -
後藤新平(台北の都市計画に携わり台湾博物館に銅像が展示されている)とは特に親しい間柄で、彼の死後デスマスクを譲られそれを台北の寺に献納している。
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かつては台南・萬華と並び称された鹿港だが日本統治以降は鉄道計画からはずれてしまい、すっかり取り残されてしまった。
台中→嘉儀→台南の直線ルートからはやや海寄りすぎか?
残念。 -
鉄道も大きなバスターミナルも無いのでバスで到着するといきなり街の中に放り出される。
統治時代は明治製糖(日本の製糖会社は戦後全て台糖にまとめられた)が輸送用の路線で客車も運行していて引き継がれたが今は無い。
駅舎と機関車だけ残され展示されている。 -
鹿港という地名にも原住民の発音に漢字を充てた等の複数の説があるが、その中の一つに付近に沢山いた鹿の皮を加工した製品を港からヨーロッパに向けて輸出していた事に由来するというのがある。
現在も革製品の店が少なからず健在だ。
この説一点で他の説は不要な気もするが・・? -
表通りは台湾によくある見慣れた風景。
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ポツリポツリと趣がある古い建物が混じる。
これも台湾アルアル。 -
よくあるけどここにしか無い風景の数々・・
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旭日旗?に雷門。
某国なら即破壊されてしまうかも・・ -
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古い街なので沢山の廟。
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この他にも龍山寺をはじめ観光スポットとしてなかなか強力なラインナップだ。
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【魅力的な老街】
そして何より見どころは老街だ。 -
最近建物がリノベされ、通りも上手に整備されて散策には持って来いの空間になっている。
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曲がりくねった細い路地が特徴的で各地の老街の中でも独特の雰囲気を醸し出している。
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要所には歴史ある建物を利用したレストランも何軒か・・
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そしてお土産屋さんも何軒か・・
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オマケで現代風朝ご飯やさん。
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朝六時からやっているがメニューは洋風。
トーストサンドが絶品でした。 -
初めて行く場所は多少予備知識が欲しくてアレコレ調べたりする・・
訪問先の情報を調べてみたら初めて知ることが沢山あって驚いた!!・・という一席でした。
今回も有難うございました。
・・・オ・シ・マ・イ・・・
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この旅行記へのコメント (6)
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- SOさん 2022/11/24 15:59:43
- 鹿港行ってみたいです。
- 初めまして。
鹿港の旅行記楽しく拝見いたしました。
とても興味深く、素敵な街ですね。
お写真もとても上手ですね。
見習いたいです。
鹿港、とても行ってみたい街です。
参考にさせて頂きますね。
ありがとうございました。
- 品行方正さん からの返信 2022/11/24 22:05:48
- Re: 鹿港行ってみたいです。
- 有り難うございます。
何か変な事になってしまって申し訳有りません。
・・と言うのも
返信を誤ってトロピカルおやじさんに送信してしまったようです。
返信の取り消し方が分からないので、どうぞそちらの方に目を通して頂けませんか?
二番目のヤツです。
申し訳有りません。
- SOさん からの返信 2022/11/25 13:21:24
- Re: お返事ありがとうございます
- お返事拝見いたしました。
ありがとうございます。
旅行記を見ていただき恐縮です。
みなさんの旅行にくらべると
お恥ずかしい限りです。
ただただ台湾が好きなだけで、
一応女子なのに、
キラキラも映えもグルメもお買い物もない旅行です。
これを機に、どうぞ宜しくお願い致します。
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- トロピカルおやじさん 2022/11/13 15:23:45
- 初めてまして そしてやっとですね
- 中々興味深い台湾の裏歴史 凄く深掘りされてますね 敬服致します
台湾の歴史に興味ある私としてはとても
面白く拝見させていただきました
待ちに待った台湾渡航もやっと自由になり
一足先に渡台された人たちの旅行記もちらほら
上がって来ましたね 私も年内は無理ですが
年明けには久しぶりに台湾を訪れる予定です
今後もディープな台湾旅行記期待しています。
- 品行方正さん からの返信 2022/11/14 01:54:37
- Re: 初めてまして そしてやっとですね
- ご丁寧に有り難うございます。
VISAの自動延長も遂に終了になり年内に約3年ぶりの帰国となりました。
この間歯の治療が出来ず、また旅行保険も切れてしまいましたが開き直って長期滞在を楽しむ事にしました。
今回は帰国に合わせて台湾の知人の日本旅行も兼ねますが歯の治療がメインなので二週間の滞在になってしまいます。
滞在費もさることながら、航空券の高止まりが一番の予想外です。
来年にも台湾旅行をお考えのようですが、タイミングが悪いことに日本関係では渡航禁止になってから三井ガーデンホテルやJR東日本ホテルがOPENしています。
待ちに待った渡航再開だと思いますので来台の節には是非・・!?
- 品行方正さん からの返信 2022/11/24 21:33:17
- Re: 初めてまして そしてやっとですね
- 有り難うございます。
今回の台北シリーズ、一応通して読ませて頂きました。
旅慣れた感じと情報量の多さに感服しています。
面白かったです。
これを機会に是非宜しくお願い致します。
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