2021/08/12 - 2021/08/12
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watersportscancunさん
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インシデントから私が書き溜めた300以上のブログが4トラベルから消滅し、コロナ禍で仕事もなく日々の徒然も労働という使命があったが故に張り合いがあったと思いを馳せる毎日、、、幸い、7月からアメリカやメキシコご在住の日本のお客様が過去にご利用を頂いたお客様のご紹介のご縁でそこそこに忙しい毎日を過ごす事が出来ました。本当にありがとうございます。
ブログもコロナ禍では、気力が湧かずなかなか文章も紡げない状況でしたが、何かこう、きっかけがあれば書きたいなぁと、思っていた折、ふと、思いがけず、朝食に出掛けたタコス屋ネタを今日はアップしてみたいと思います。
雨期の中でも未だスコールらしい雨もなく、蒸し暑い日々が続く8月。夏休み中の子供が珍しく早起きをしてきたので、いつも準備している私が作る朝食の代わりに、どこぞ食べに出掛けようかという話になった。ちなみに、家内は、このコロナ禍で健康を害した義母の介護に帰国中(今回真面目にホテルで2週間隔離生活を送った後で実家へと移動したようだったけれど、ホテル2週間自主隔離を自腹というのは、これでは、気軽に海外旅行に未だ出られない事を確信した次第。。。私も、日本への一時帰国は2年果たせていないが、さて、いつになったら帰国出来る事やら。。。)
何が食べたいかな?!という私の問いに、開口一番「タコース」というのもメキシコで育ったが故(笑) 日本だったら、さしずめ、おにぎり!という感覚だろうか。
タコスと言えば、最近はもう行く場所も決まっていて、カルニータならPolillaだし、カルネアサドならSapoだし、ギサードならGuerro、パストールはLa ParrillaかTarascosといった感じだ。食べたいタコスで行く先も決まっている。
そんな状況で、さて、何のタコスを食べようかと考えていると、これまで世話になった数多くのタコス屋が何故か走馬灯のように頭の中をぐるぐると周り始めた。そうして、巡る思いに時間のネジを巻き上げていくと、それはとどのつまり、私がカンクンで仕事を始めた2004年当時まで戻っていった。
私も歳を取ってくると、何かと未来に対する思いよりも、振り返る思い出の方が多くなってくる。そんな私が、不意に思い出したタコス屋は17年前の遠い記憶の彼方にあるタコス屋だった。
私がカンクンに初めてやって来た2004年、後に弊社顧問となるアセーロにカンクンで一番うまいタコス屋だと連れて行かれた店だ(自称この道20年のタコロジスト、当時から換算すれば、彼は既に37年のツワモノになるわけだが、そんな顧問とも未だに交友は続いている)
もちろん、リピーター時代も通じて本当に数えきれないほどのタコス屋にこれまでも行って来たわけだが、このタコス屋が特に印象に残っていたのは、味というよりもそのロケーションにあった。初めて連れていかれた時の印象は、「これがカンクンで一番うまいタコス???もっと美味いのあるだろう!!」という否定的なものだったので、味で思い出したわけではなかった。
そう、このタコス屋「Taqueria Don Luis」は、カンクンの街の中心にありながら、普通には辿り着けない魔界にあるのだった。なので、このタコス屋だけは、通りがかりや偶々見つけてという偶然性は皆無で、誰かに連れていかれるとか、評判を聞きつけて頑張って探して行くという必然によって関係が始まる。
繰り返しになるけれど、その場所は非常に分かりづらくまさかこんな場所にタコス屋があるのか?!と思えるような辺鄙な場所にある。辺鄙な、、、と書いたが辺境ではない。町のど真ん中にあるのだが、普通にはたどり着けない場所なのである。
普通に、今営業を始めたら、まず経営は成り立たない。そもそも、私も、その後、一度店を閉めたと聞いた15年前に、心の中で、さもありなん、、、と納得をしたほどのロケーションだったので、まさか、未だに営業をしているとは思いも寄らなかった。
もちろん、そこは町の中心にあるので、私も仕事では毎回その魔界への入口の前は通る。そうして、時々、事業用の車とは違う一般車両がそんな魔界へと吸い込まれていく場面に遭遇する度に、ルイスのタコス屋?!いや、まさか、あれは、単に仕事関係だろうと心の中で否定していた。そもそも、そんなに頻繁に車の出入れを目撃するわけでなく、良く通るエリアにありながら、年に数回という程度だから、もし店をやっていたら、もう少し頻繁に目にする光景が少ないという事実が、仕事がらみの、、、という思いを後押しし、確認するまで行かなかったのである。
そもそも、この魔界の入口は、水道局の事業所が建っており、良く、そんな水道局の事業車両が道を塞いでいたし、その先の裏では建設工事なども進んでいたので、関係者の方が圧倒的に多かったと思う。それに、それなら、入って確認すればいいだけじゃないか?!と考えるかもしれないが、この魔界の通路は、舗装されておらず道がかなり荒れていて、しかも、一般道から側道へ入る歩道との段差が非常に大きく私の車の車高だと車の底を擦ってしまう事が容易に想像できたから、単なる好奇心だけで中に入る事はどうしても憚られたのであった。ま、それが私が魔界という所以でもあるのだけれど。
そんな魔界に気まぐれで今日は行ってみる気になったのは、子供も夏休みとはいえコロナ自粛で在宅が多く、この夏休みに入ってからも、バレエ教室以外ではほぼ家に居る状態で、どこかへ連れ出そうにもこの自粛が足枷となって、なかなか思うに任せない事情もある中で、ちょっとした冒険や探検気分を味わおうか、、、という単にそれだけの事だった。
もし、何もなかったら、別のタコス屋に行けばいい。。。子供には、君が生まれる前にパパがよく行っていたタコス屋だ。まだあるか分からないけれど、行ってみようかと提案してみたが、子供は、え?!そんなパパがもう何十年も行ってない店がカンクンにあるの? まだやつてるの?!と乗り気になった。(何十年も経っちゃいないぜとは一応否定した(笑)
その時点での私の期待値は当然一桁の可能性も感じてはいなかったが、子供を連れて車で移動を始めてからは、まだあったらいいなぁという希望が期待にほんの少しだけ変わり始めていた。
魔界への入口。。。そこは舗装されていない砂利道に高い段差の歩道を横切った先にある。車体の低いボクの車は、予想通りの痛々しい悲鳴を上げた。ああ。。。これではもし万が一あったとしても、何度も気軽にはこれないぞ。。。正直な気持ちだった。
その時、子供が言った。
「こんなところに、タコス屋があるわけないじゃん!!」
「何でそう思うの?」穴ぼこの開いた砂利道に足を取られれば更に底を擦りそうなので、ゆっくりと慎重にステアリングを切り返しながら私が聞いた。
「だって、ここアグアカン(水道局)の会社じゃん」
「そう、その通りなんだけど、昔はこの建物の先にあったんだよ」
しかし、そこから先にはどう見ても空き地が広がっているだけだった。
「ほら、何もない空き地だよ。。。行き止まりだし。。。」子供がネガティブに叫ぶ。
言われて向ける視線の先には金網に遮られた空土地が広がっている。左手を遮るように続く水道局の建物。しかし、その建物の先に、到底あるはずのないものがある。それは、17年前に私が連れてい行かれた時に感じた印象そのものだった。
当時は、この水道局の建物裏の死角になる場所に、天幕を張り、その下に停車したトラックの荷台に具材を広げてルイス親父が暑苦しそうにタコスをふるまっていたのだ。
フランボヤンと常緑樹のうっそうとした暗がり。水道局の建物の角の先に金網とは別の空間があるはずなんだよ。。。
数瞬、思い出が鮮やかによみがえる。そう、そこにバラック小屋が現れたのだ。どの角度からもそこにこんな建物があるとは、誰一人として気が付く事はない場所に、辿り着くには、その場所を知っている以外は不可能な魔界に、我々は辿り着いたのだった。
「あ、、、本当にあった!!」 子供が叫んだ。
今はトラックの代わりに掘っ立て小屋のバラックに生まれ変わっていたが、うらびれた雰囲気は当時のままだった。初めて連れていかれた17年前から2年通って店が閉まったと聞いて以来だから、実に15年ぶりか。昔はなかった看板代わりの垂れ幕には、TAQUERIA DON LUISと書かれ、ルイス親父が真ん中で満面の笑顔を見せている。
(この掘っ立て小屋を建てる為に一時閉めていただけだったのか。。。)
何だか、少し嬉しくなった。
「凄く汚い店。。。まぁ、パパの好きなタコス屋みんな汚いけどね」
子供が酷い事を言った。言われて当時私も同じ印象を持った事を思い出し、その後アセーロから驚くべき事実を聞かされたその衝撃的なギャップを咄嗟に呟いた。
「汚い店だけど、このドン・ルイスって親父さん、大金持ちなんだよね」
「オオガネモチ?」子供がその意味を図りかねるように目を泳がせた。
「そう。大金持ちなんだよ。この土地も、ルイスの自分の土地なんだ。昔は今は囲まれてる、ほら、その金網で柵がされた先もルイスのものだった筈だけど、多分売ったんだろうな」
「お家を沢山もってるの?!」
「パパが初めてこのお店に来た時に、パパの会社の弁護士さんが20の土地と家を持っていて、既に時価総額で1億以上になっているって言っていたかな」
「えーー、でもそんなにお金持ちなら、なんでこんな汚い店のままなの。。。」不思議そうな目をして聞いてくる。それも、当時、私が感じた全く同じ印象だった。
ここにはとても大切な教示があった。
(そんな金持ってるなら、もっといい店出来るだろうに。。。それに、タコス屋なんかやらんでもよかろうに。。。)
私の問いに、アセーロが言った。
(ケンゴ、仕事ってのはな、金をもってたって必要なもんだろう。生き甲斐ってのは金じゃぁ得られないんだぜ)
(いや、そりゃ分かるが、それにしても汚すぎるだろ。。。もう少しは小奇麗に出来ないもんなのか。それに、資産家だというが、それもメキシコ特有の大風呂敷って事はないのかよ)
(残念ながら、俺は、このルイスの土地管理の顧問もやっているんでね。彼は今23の不動産をカンクンの中に所有している。その全てを、このタコス屋で稼ぎ出したんだ。時期も良かった。タコス屋で稼ぐ金でも買えるくらいの時代だったんだからね。今だったら、難しかっただろうな)
(凄い話だな。で、何だ、この店は彼にとっては、ノスタルジーなわけか)
(ま、そう言ってしまえばそうなるだろうな。今はもう賃貸収入だけで十分に稼ぎを上げているんだしな。ただ、彼にとっては、このタコス屋は、全ての資産の端緒を開いた。だから、彼はその気持ちを忘れないようにずっとこうして店を続けてるんじゃないかと思う。ま、趣味みたいなもんだろうな)
(しかし、もう少し綺麗にしても良さそうなもんだがね)
(お前は、商売人の癖に何も分かってないみたいだな。もし、このルイスの店が立派でおしゃれな店になってみろ、誰も来なくなるぜ。タコス屋ってのは、庶民の食べ物でグルメの為のものじゃない。まして気取って食べるようなものでもない。それにな、皆、この屋台のタコスを食べる事で、いろいろな想いをそこに抱いてやってくる。別段汚くしているわけじゃない。飾っていないだけってことさ。メキシコは皆貧しいところからスタートしているからな、、、だからこそのソウルフードなんだ。そこにはな、店の雰囲気も含まれるんだ。
皆、この店に来るたびに、自分のこれまでの人生の来し方を今に重ねて、この店を応援してやりたいって気持ちが贔屓につながっている。それを、いきなり豪華な店にしてみろ。。。同調もなにもなくなっちまうだろ。商売ってのは、何を大切にするか、、、その本質から軸をずらさない事が秘訣なんだぜ。ルイス親父は、だから、いつまでも昔のままを大切にしているのさ、例え汚い店でもな)
(しかし、それで、裏では豪勢な暮らしをしていたら客を欺いているのと同じじゃないのか。そりや、商売だってのは分かるがね。作られたノスタルジーなんて底が直ぐに割れちまうだろうよ。。。)
(そこが偉いところでな、ルイス親父は、贅沢を一切しない男なんだ。未だに、ノルテのカンクンに来た当時に買った小さな家で生活をしているよ。当たり前だがな、そういう誤魔化しや取り繕ったような上辺だけのウソってのは何となく分かってしまうものなのさ。だから、俺もこの店を贔屓にしているんだ。この店の贔屓客は皆同じ思いを共有しているいわば同士みたいなもんさ)
そう言って笑った。
一々納得したものだった。それから、ボクは自分でツアーの仕事をして、仕事が忙しくなっても、初心を忘れないようにルイスの店に通った。店を閉めたと聞いた時、ボク自身の中で何かが変わったようにも感じたけれど、15年ぶりにやって来たルイスの店で、ボクは再び自らの初心に触れたような気がしたのだった。
店には、ルイス親父はいなかった。聞けば、もう年だから、今は時々やってくるだけだそうで、今は後人が店を切り盛りしていた。
「パパ、この店、イグアナも飼ってるよ。。。」
子供が指をさした先には大きなイグアナが顎を上下に動かしながらじっと皆の仕事ぶりを監視していた。店の中にイグアナがいるようなバラックだから、そういう店だという事は想像できると思う。そのイグアナは飼われているとしたら放し飼いだという事だ。
昔は一枚13ペソだったけれど、今は20ペソに値上がりをしていたが、ボリュームは昔のまま3枚も食べると結構お腹が膨れる。女性なら2枚でいいだろう。
ウエボ・コン・チャヤ
ミラネッサ
サルピコン
チレレジェーノ
カルネアサーダ
まだまだいろいろあるけれど、どれも遠い昔を思い出させてくれる素朴な味だった。
ボクも歳を取ったと、、、子供の一生懸命食べる姿を見て目を細めた。
「どうだ?!」そう聞く私に
「うん、おいしい!」子供の眼が輝いた。
また、贔屓にする店が一軒戻って来たと思った。
PS. TAQUERIA DON LUISは、今はグーグルマップにも出ています。行き方は分かりにくいのですが、基本は闘牛場を右手に見て、闘牛場に向かって左の脇道があります。そこはAGUACANという水道局の建物があり、会社の敷地に入っていくような錯覚を覚えますが、臆せず勇気を出して、魔界へと歩を進めてください。頑張って進んでいくと、突然視界がひらけた先に都会(ではないけれど)のオアシスが現れます。
営業時間は月曜から土曜の8:00ごろから13:00過ぎまで。不定休です。タコスも飲み物も全て一律20ペソ。おススメはマヤの薬草であるChayaと炒り卵をミックスしたウエボ・コン・チャヤと、鶏肉のカツレツであるミラネッサ、あれば鶏肉を酢でマリネしたサルピコン、チレ・ホプラノにオアハカチーズを詰めて揚げたチレレジェーノです。他にもいろいろあるので、確認しながら、いろいろとチャレンジしてください。
カンクンの魔界タコス、、、是非ご賞味あれ。
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さて、このドンルイスのタコス屋ですが、営業時間はここでは7:30~13:30になっていますが、他の手書きの案内には7:00-13:00と書かれていて、一定していません。というわけで、確認をしたところ、8:00から13:00頃まで。。。という事でした(笑)
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魔界への入口はここにあります。この写真では全然分からないと思います(笑) 知らずに通り過ぎるのが関の山。そもそもそんなところに通路があるのか?!というロケーションは魔界を思わせます(笑)
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この建物の右側に道があります。非情に分かりにくいです。
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フランボヤンに覆われた未舗装路は結構あれています。スコールの時期は水溜りだらけになって水没もしているので、そうなると徒歩ではアクセスが難しくなります。
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左手に見える水道局の建物をこんな感じで進みます。どう見ても、タコス屋などある雰囲気ではありませんが、頑張って進んでみてください。
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水道局の建物を過ぎると左手奥に少し開けた空間が現れてきます。ここまで約100mくらい。
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ありました。これが魔界のタコス屋「Taqueria Don Luis」の外観。トタンのバラック小屋はそれだけで、初めて来るものを拒む雰囲気を持っていますが、勇気を出して入ってください(^^)
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中に入ると、左手にテーブルがあり、ここで注文をします。
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野生のイグアナがいたキッチン
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注文するとモノによっては、こうして細かく切り刻んでトルティーヤに乗せてくれます。
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写真暗くすみません。。。というより、暗いのです。雰囲気が伝わると思い、画像加工はしていません(笑)
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タコスはとても素朴でシンプルですが、これがまた美味いんだなぁ。
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子供も喜んで食べていました。
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タコス屋ルイスの店内は、トラックで販売していた当時の面影をそのままに素敵なバラック小屋で仕上がっていました。飾らないで、腹ごしらえが出来る店。。。ボクは好きです(笑)
皆さんも、是非カンクンにいらしたらチャレンジしてみてください。辿り着けたらラッキーの魔界のタコス屋ルイスでした(^^)
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