川越小旅行，観光なしって……？？

2021/04/19 - 2021/04/19

　川越に足を延ばしたのは何十年ぶりだろう。当時は
よく仕事で企業訪問をしていた。ＪＲにも川越駅があ
るが，利用していたのはもっぱら東武線と西武線。川
越，本川越，川越市と「川越」のつく駅が三つもあり，
下車駅を間違え戸惑った覚えがある。

　現在では小江戸と呼ばれ観光スポットして人気があ
る。そんな川越だが，今回は数ある観光スポットをす
べてスルー。住宅街の一か所だけを目指した。

　理由は，ここ数年お付き合いが深くなったソプラノ
歌手の登川直穂子さんが，自宅で小規模のホームコン
サートを定期的にやるとのことを聞いたからである。
この日（４月１９日）は，その記念すべき第１回だった。

写真／登川直穂子さんがイタリアでデビューしたとき
　　　の舞台衣装。

エリア 埼玉

• 同行者: 友人
• 一人あたり費用: 1万円未満
• 交通手段: JRローカル 私鉄

　登川直穂子さん，って？
　オペラ歌手。２～３千人規模のコンサートホールでも，
隅々まで肉声で響かせてしまうほど声量豊かなソプラノ。
イタリア中心に演奏活動を続け，２０１５年から日本国
内に活動の場を広げている。
　
　詳しくは下記のオフィシャルウェブサイト参照。
http://www.naokotogawa.com/biography.html

　知り合ったのは音楽ではなく，絵画の展覧会。ご
本人が描いた絵を鑑賞に行ったわけではなく，その
展覧会に共通の知り合いが出品していたから。そこ
で，私がオペラの話をふったことがきっかけ。名刺
交換の際に，「メールをください。必ずご返事します」
といわれたことをよく覚えている。オペラの話のメ
ールに，すぐに返事が来たことで人柄がしのばれ，
今日に至る出会いとなった。

　ホームコンサート会場となった住まい。閑静な
住宅地にある。これから近隣にすごい歌声を響か
せるのかな？

　ホームコンサート会場となった住まい。閑静な住
宅地にある。これから近隣にすごい歌声を響かせる
のかな？

　お茶菓子や飲み物も用意され，雰囲気は手作りの
ホームコンサートそのもの。会場は，広縁を含めた
15畳ほど。この家この部屋が，イタリア留学期を除
いて音楽大学在学中から現在に至るまでの練習拠点
だったのだ。

　会場はしっかりと防音設備がなされている。音大
生の出す楽器の音や声楽を学ぶ声は，ポピュラー系
のミュージシャンとは比べ物にならないほどしっか
りした強い音になるので，防音施工を万全にしてあ
るという。音大でのピアノは全員の必修科目なので，
地方からの音大生を対象にした賃貸物件は防音完備
の上ピアノ（それもグランドピアノ）付きでないと
借り手がいない。

　コンサートでの歌唱は会場全体に響き渡り，あた
かも会場の壁や天井が共鳴を起こしてしまいそうな
迫力。歌い始めると隣家の建築工事の音は邪魔にな
らないというか歌声にかき消され聞こえてこない。
逆に，大工さんには見事な歌声を少しでも聞こえて
楽しめたかどうか聞いてみたいほど。
⇒③

　通常なら，コンサートはホールで専門のピアニストか
オーケストラをバックに歌うのだが，ここでの演奏は
すべて弾き語り。「ピアノか歌唱のどちらかに不都合が
あったときは，歌を優先します」との断りが……。
　とはいえそれは杞憂にすぎなかった。

　コンサート前半は，『ラ・ボエーム「ムゼッタのワルツ」』
『蝶々夫人「ある晴れた日に」』など，いつかどこかで聞いた
ことのあるオペラ・アリアの名曲中心。後半は来場者の事前
リクエストを中心（ポピュラー系）に合計２０曲ほど。曲と
曲の間には発声法などのトークも含め約２時間のコンサート
だった。

　それにしても，オペラ歌手の肉声を身近に聞くことができ
るチャンスはそうそうない。有名アリアを聞くことで，本当
のオペラに触れてみようというきっかけになるかも。
　
　このコンサートはしばらく続ける意向とのことなので，興
味ある方は上記のホームページから問い合わせを。

　オペラ歌手への道30年間を共に歩んだピアノ。鍵盤の
よく使う部分は変色しているが，本人にいわせると
「手入れが悪かったから……」だが？