小田急ふじさん号 ときどきセピア色

2019/01/27 - 2019/01/27

井上ひさし氏の「吉里吉里人」という小説の書き出しは読者の心をグッと掴みます。
東北本線を北上している列車がある駅で突然止められて本線から引き込み線に入ってしまうところから始まるのです。
乗客たちはさぞ不安な気持ちになったと想像に難くないのですが、私は以前からその引き込み線に入ってしまう感覚を味わいたくてたまりませんでした。今年とうとうその念願を叶えることができました。
小田急線の特急ふじさん号です。
小田急小田原行きの本線から、ロマンスカーが突然右の引き込み線に入り、JR御殿場線に入っていくのです。

エリア 御殿場(静岡)

• 旅行の満足度: 4.0
• 交通: 4.5

• 交通手段: 私鉄

始まりは新宿駅の2番ホーム
日曜日の朝だけに行楽客はまばらなロマンスカーホーム

新宿駅 駅

列車の到着を待ちながら、引き込み線への期待だけが膨らんでいくのです。

ふじさん号はつい先日まで「あさぎり号」という名称でした。
小田急線からJR御殿場線に乗り入れる唯一の特急。
御殿場発のロマンスカーが新宿駅に到着して、8：40発のふじさん号は清掃後に出発です。

といっても普通のロマンスカーに過ぎません。

何となく丸い感じの顔

ふじさん号と書かれています。

乗客はごくわずか

私たちの車両に乗り込んだ乗客も数人だけでした。

ロマンスカーの売店は箱根に行くときは開いているようですが、御殿場に行くときには営業していません。

新宿駅を出発した列車は快走し、うとうとしている間に秦野駅へ。
車窓には山々が見えて旅行気分が高まります。
そうこうしているうちに、お待ちかねの引き込み線に入りました。
左手に見えるのが小田急本線。まっすぐ行くと小田原箱根方面。
秦野を出て、新松田駅の手前に来て我が下り列車は急減速、やがてゴットンと右へ動くとともに大きく右にカーブを描き始めました。それもゆっくり、ゆっくりと。車輪の軋む音とともに右にうねっていきます。

新松田駅 駅

ガッタンゴットンと、重い車体を引き摺りながらと、ロマンスカーはJR御殿場線の松田駅に到着しました。
そこは、静かなホームでした。

松田駅 駅

引き込み線を体験しただけに満足一杯、そして気分は何となくセピア色に

松田駅から新宿駅に向かう乗客の為に描かれたホーム上のマーク。

駅の改札も無人なのでしょうか。
人の気配があまりありません。

松田駅 駅

やがて松田駅を出発したふじさん号は御殿場駅に向けて坂を登っていきます。
電車にとって坂道はつらいのでしょう。ゆっくりと登っているのがわかります。
そして駿河小山駅に到着しました。駅のホームものんびり。
私たちはここで降りることに。

駿河小山駅 駅

小山駅に着いた頃には、ふじさん号の乗客は1両に数人。

私たちを残すと列車は御殿場駅に向けてもう一段の坂道を登っていきました。

駿河小山駅はあいにくの雨の中。
雨に濡れながら、わずかな乗客がワンマンバスに乗りこんでいきました。

駿河小山駅前にはお土産屋さん1軒だけ。

帰りは新松田駅から小田急線の急行で新宿に戻りました。