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オーストラリア滞在2日目にシドニー市内のハイドパーク・バラックス、最終日の4日目にはシドニー近郊のパラマッタ・旧総督官邸、ユネスコ世界遺産に登録されているオーストラリアの囚人遺跡群のうち2ヶ所を訪れた。登録遺跡はタスマニア島に5ヶ所、ニュー・サウス・ウェールズ州に4ヶ所、西オーストラリア州、ノーフォーク島にそれぞれ1ヶ所の計11ヶ所あり短期間の滞在で全てを訪れることは不可能であり、もちろんそのつもりもないが。<br /><br />この遺跡群は18ー19世紀に大英帝国によって建てられた、アボリジニーの人々を移住させ、居住させるための収容所でありポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所、南アの「監獄島」ロベン島と同種のいわゆる負の遺産である。しかし、後者はともかく、ユダヤ人を根絶させるためのアウシュヴィッツと同列に並べることはすべきではない。ここオーストラリアで何万もの男女、子供を含め大規模な囚人を移送し、強制労働者を強いたわけであるが、少なくとも大量虐殺を行ったわけではないからだ。実際ここでは、収容所という重苦しさはなく、ハイドパーク・バラックスでは囚人が使っていたハンモックに寝させてくれるなど、一種あっけらかんとした雰囲気さえ感じられる。むしろ、大英帝国植民地時代の建築に共通する重厚さを備えた機能美が評価された、と言ってもいいと思う。<br /><br />最初に訪れたハイドパーク・バラックスは文字通り市内の中心部にあるハイドパークの中にあり、容易に訪れることができる。この日は小学校の社会見学のようで、多くの生徒達が先生の説明を聞いていた。囚人遺跡群という負の遺跡の存在を、オーストラリアの建国の歴史として教育していることに感心させられた。ここで少し授業を聞いて、後ろからその写真を撮ったところ少々ハプニングが起きた。助手をしていた付き添いの先生が小生のところにやって来て、オーストラリアでは子供達の写真を撮ってはいけない、と言って今写したばかりの写真を見せるように言う。指示に従って写真を見せると、生徒は後姿ばかりなので問題はない、と言って解放してくれた。確かにソーシャルネットワークで各人の写真が巷に氾濫するするご時世、子供達のプライバシーを守るためだと聞かされて、再び感心させられた。<br /><br />一方のパラマッタにある旧総督官邸は近郊電車に乗って中央駅から約40分、更にパラマッタ駅から商店街を抜け公園の中を歩いて約10分、なかなかここまで訪れる人も多くはなかろうと思う。ハイドパーク・バラックスの受付には日本人の方がおられ、世界遺産マニアが日に何人か訪れる、と語っていたが、この方でさえこのパラマッタの世界遺産についてはご存知なかったほどだ。この日は旧総督官邸は随時ガイド付きでのみ内部の見学ができる、とのことで少々待ってメルボルンから来たと言う中年の女性4人組と合流した。この方々がお喋り好きの女性で、日本人がここまでやって来た物珍しさも手伝ってか、なかなか先に進まない。ガイドのお話はそれなりに興味深いものだったが、このお喋りのおかげで非常に時間を取られた。ガイドの計らいで後半はかなりスピードアップしてくれて、小生だけ先に解放してくれた。<br /><br />ユネスコ世界遺産は現在約1,000ヶ所あり、年々増え続けている。中には、これが本当に世界遺産か、と驚かされるような「美しくない」遺産も含まれる。小生が訪れたのはやっと約200ヶ所、札所巡り、いやスタンプラリーの感覚で始めたが、世界遺産巡りは終わりのない旅であり、時として大いに疲労を感じさせてくれる。それでも自分の足で歩ける限り、この苦行を続けるつもりだ。

オーストラリアの世界遺産No.3:囚人遺跡群全11ヶ所の内シドニー近郊の2ヶ所を訪れる

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2017/05/12 - 2017/05/14

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ハンク

ハンクさん

オーストラリア滞在2日目にシドニー市内のハイドパーク・バラックス、最終日の4日目にはシドニー近郊のパラマッタ・旧総督官邸、ユネスコ世界遺産に登録されているオーストラリアの囚人遺跡群のうち2ヶ所を訪れた。登録遺跡はタスマニア島に5ヶ所、ニュー・サウス・ウェールズ州に4ヶ所、西オーストラリア州、ノーフォーク島にそれぞれ1ヶ所の計11ヶ所あり短期間の滞在で全てを訪れることは不可能であり、もちろんそのつもりもないが。

この遺跡群は18ー19世紀に大英帝国によって建てられた、アボリジニーの人々を移住させ、居住させるための収容所でありポーランドのアウシュヴィッツ強制収容所、南アの「監獄島」ロベン島と同種のいわゆる負の遺産である。しかし、後者はともかく、ユダヤ人を根絶させるためのアウシュヴィッツと同列に並べることはすべきではない。ここオーストラリアで何万もの男女、子供を含め大規模な囚人を移送し、強制労働者を強いたわけであるが、少なくとも大量虐殺を行ったわけではないからだ。実際ここでは、収容所という重苦しさはなく、ハイドパーク・バラックスでは囚人が使っていたハンモックに寝させてくれるなど、一種あっけらかんとした雰囲気さえ感じられる。むしろ、大英帝国植民地時代の建築に共通する重厚さを備えた機能美が評価された、と言ってもいいと思う。

最初に訪れたハイドパーク・バラックスは文字通り市内の中心部にあるハイドパークの中にあり、容易に訪れることができる。この日は小学校の社会見学のようで、多くの生徒達が先生の説明を聞いていた。囚人遺跡群という負の遺跡の存在を、オーストラリアの建国の歴史として教育していることに感心させられた。ここで少し授業を聞いて、後ろからその写真を撮ったところ少々ハプニングが起きた。助手をしていた付き添いの先生が小生のところにやって来て、オーストラリアでは子供達の写真を撮ってはいけない、と言って今写したばかりの写真を見せるように言う。指示に従って写真を見せると、生徒は後姿ばかりなので問題はない、と言って解放してくれた。確かにソーシャルネットワークで各人の写真が巷に氾濫するするご時世、子供達のプライバシーを守るためだと聞かされて、再び感心させられた。

一方のパラマッタにある旧総督官邸は近郊電車に乗って中央駅から約40分、更にパラマッタ駅から商店街を抜け公園の中を歩いて約10分、なかなかここまで訪れる人も多くはなかろうと思う。ハイドパーク・バラックスの受付には日本人の方がおられ、世界遺産マニアが日に何人か訪れる、と語っていたが、この方でさえこのパラマッタの世界遺産についてはご存知なかったほどだ。この日は旧総督官邸は随時ガイド付きでのみ内部の見学ができる、とのことで少々待ってメルボルンから来たと言う中年の女性4人組と合流した。この方々がお喋り好きの女性で、日本人がここまでやって来た物珍しさも手伝ってか、なかなか先に進まない。ガイドのお話はそれなりに興味深いものだったが、このお喋りのおかげで非常に時間を取られた。ガイドの計らいで後半はかなりスピードアップしてくれて、小生だけ先に解放してくれた。

ユネスコ世界遺産は現在約1,000ヶ所あり、年々増え続けている。中には、これが本当に世界遺産か、と驚かされるような「美しくない」遺産も含まれる。小生が訪れたのはやっと約200ヶ所、札所巡り、いやスタンプラリーの感覚で始めたが、世界遺産巡りは終わりのない旅であり、時として大いに疲労を感じさせてくれる。それでも自分の足で歩ける限り、この苦行を続けるつもりだ。

旅行の満足度
3.5
観光
3.5
ホテル
4.0
交通
3.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
旅行の手配内容
個別手配

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  • ハイドパーク・バラックスのファサード、重厚な煉瓦造り

    ハイドパーク・バラックスのファサード、重厚な煉瓦造り

  • ハイドパーク・バラックス内部の展示

    ハイドパーク・バラックス内部の展示

  • 小学生達の社会見学の授業を聞く

    小学生達の社会見学の授業を聞く

  • 大英帝国植民地時代のハイドパーク・バラックス

    大英帝国植民地時代のハイドパーク・バラックス

  • 大英帝国植民地時代のシドニーのパノラマ

    大英帝国植民地時代のシドニーのパノラマ

  • ハイドパーク・バラックスの内部の展示品

    ハイドパーク・バラックスの内部の展示品

  • 囚人達が寝泊まりしたハンモック、このハンモックを体験ことができる

    囚人達が寝泊まりしたハンモック、このハンモックを体験ことができる

  • 木造の内部構造

    木造の内部構造

  • 囚人収容所の内部

    囚人収容所の内部

  • 近郊都市パラマッタの駅、衛星都市の様相

    近郊都市パラマッタの駅、衛星都市の様相

  • パラマッタ駅前の公園

    パラマッタ駅前の公園

  • パラマッタの旧総督官邸の入り口

    パラマッタの旧総督官邸の入り口

  • 旧総督官邸は何の変哲も無い建物

    旧総督官邸は何の変哲も無い建物

  • 旧総督官邸のファサード

    旧総督官邸のファサード

  • 旧総督官邸の裏庭

    旧総督官邸の裏庭

  • 旧総督官邸の横にはレストランがある

    旧総督官邸の横にはレストランがある

  • 旧総督官邸の内部、英国の伝統的な作り

    旧総督官邸の内部、英国の伝統的な作り

  • 英国人にもピアノは不可欠

    英国人にもピアノは不可欠

  • 小振りながらシャンデリアが吊るされている

    小振りながらシャンデリアが吊るされている

  • メルボルンから来たお喋り好きな4人組

    メルボルンから来たお喋り好きな4人組

  • 旧総督官邸の居間

    旧総督官邸の居間

  • 旧総督官邸の寝室

    旧総督官邸の寝室

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