その他の都市旅行記(ブログ) 一覧に戻る

初めてのカザンで ― タタール自治共和国訪間記 ―

0いいね!

2000/06/01 - 2000/06/01

334位(同エリア342件中)

0

0

JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 皆さんは“カザン”という町を知ってるだろうか?恐らく、あまり日本人には知られてはいないだろうと思われる。カザンはモスクワの東800km程の所、ボルガ川に臨んだ、タタール自治共和国の首都である。ちなみに歌手シャリアピンの生地でもある。私は以前アルバイト先でタタールから日本に留学していた女性と知合い、友人になったことがきっかけとなり、彼女に会いにこの町を訪れることになった。

 モスクワから“タタールスタン”という名の夜行列車に乗り、翌日早朝に到着した。カザン到着前、すでに車内で何人かのタタール人と仲良くなり、思った以上に彼らが日本について知っていて、親日的であったので、カザン・夕夕ール人への良い印象ができあがっていた。多くの人が“タタールのくびき”という言葉から、夕夕ール人は野蛮人だと発想されるかもしれないが、少なくとも私が出会った人々はとても気さくな、穏やかな気持ちをもつ人々であった。彼らの容姿が日本人に似ていることもあって、親近感さえおぼえた。

 列車を降りると、友人スベータとその家族、現地にある「タタール・ジャパンセンター“サクラ”」(文化交流センター・インフォメーションセンター)のセンター長サディコバさん(彼女も夕夕ール人)が歓迎の花束を持って私を待ってくれていた。友人スベータはこのセンターを通じて来日したのだ。

私達は車に乗り、さっそくサディコバさんのガイドで町の観光に出かけた。私の滞在は5日間という短期間であり、また日本からの訪問者はめずらしいこともあって、サディコバさんは私に、まるで機関銃のように?!フルスピードでカザンの歴史、町、人々の暮らしについて話をした…。彼女の気持ちはとてもうれしかったが、おかげで?残念ながら私の頭にはカザンについて、彼女が話したことはほとんど残っていない…。結局滞在日数のほとんどを、彼女の要望で、彼女との観光に費やすことになった。このとても親切なセンター長のおかげで、独特の魅力をもった白壁のクレムリン、カザン大学(1804年創立。ロシア帝国で4番目に古く、L.N.トルストイやレーニンも在籍した)、いくつかのイスラム寺院、若者の集まるバウマン通りなど、その他多くの場所を訪れることができた。(短期間でさまざまな場所へ行ったので、全部は思い出せない)。

 6月1日は“国際児童保護デー”で、ロシア国内で祝われるのだが(遊園地などで子供の入場無料などがある)、この日カザンにいた私は動物園で行われた、市内の子供達のフェスティバルに出かけた。動物園は、子供の入場無料、アイスクリーム食べ放題ということで、朝から子供達であふれかえっていた。園内では、ゲーム大会、子供達による歌や踊りが行なわれていた。そこで私は民族衣装を着た幼稚園児達のタタールの踊りと歌を鑑賞した。タタール民謡はどこか日本の演歌を思い出させた。タタールの衣装を着けた子供達はとてもかわいらしく、記念に一緒に写真を撮ったが、シャイな彼女達に笑顔をお願いするのはなかなか大変だった。

 私はこれまでロシアの様々な町を訪れたことがあるが、カザンは実に興味深い町であった。町の中にはイスラムとギリシア正教の寺院が混在し、店の看板や道路標識は、ロシア語とタタール語で書かれている。(タタール語はロシア語とは全く違い、トルコ語によく似ていると言われる)。タタール語を通りで耳にすることもしばしばあった。カザンの住民は、タタール人、ロシア人、韓国人、そしてその他多くのアジア系の人々である。そのせいか、現地の人からアジア人に対する差別意識は全く感じられず、日本人の私にとってはモスクワ、その他のロシアの町に比べてとても安全なところだと思われた。町はそれほど大きくはないが、多くの魅力をもっている。

 さて、滞在中思わぬ出来事が私を待っていた。サディコバさんをつうじて、現地テレビ局とラジオ局からインタビューを受けることになったのだ(何度も断ったのだが、彼女の熱意には勝てなかったのである)。テレビのインタビューは、通りがかりの日本人を偶然見つけ、そこで突然インタビューするといういかにも!の形で行われた。質問内容は日本の景気、暮らしについてで、恐れ多くも私のいいかげんなロシア語で答えた。ラジオでは、カザンを訪れた理由とロシア語を学び始めたきっかけなど質問された。

 私のカザンでの日々は、文字どおりアッという間に過ぎたが、善良で親切なサディコバさん、友人スベータのおかげでとても充実したものであった。カザンを発つ時、私達は抱き合い、再会を約束した。幾度となく、この親切すぎるほどのセンター長に腹も立てたが、今となっては彼女をとても愛している。

(了)


■豆知識 ? カザンとタタール ? 

 タタール自治共和国はウラル山脈の西、ボルガ川の中流に位置し、総人口は約364万人。

 夕夕ールとは、もともとは北アジアのモンゴルの部族を指す中国語に由来するといわれているが、ヨーロッパへのモンゴルの侵入以後、ロシアでは次第に主としてトルコ系の諸民族を指す語として使用されるようになった。この地域へのトルコ系民族の進出は6?7世紀に始まり、15?1世紀にカザン・ハーン国が成立した。1550年代にイワン雷帝によって征服された以後、1920年の自治共和国の誕生まで、タタール人はロシアによる植民地支配に長く苦しむことになる。


■“サクラ”センターとは?

 1996年に文化&インフォメーションセンターとして創設されて以来、ビジネス、文化、教育、スポーツなどを中心とした様々なプログラムを組んで、その一環として、春と秋に定期的に日本フェスティバルを行っている。“日本の春”フェスティバルでは生け花、折り紙など日本の伝統文化を中心に、また、秋には日本の経済面に重点をおいて“日本文化&ビジネスデー”を開催している。

PR

この旅行記のタグ

0いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

ロシアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
ロシア最安 518円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

ロシアの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP