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ブルネイに陸路で入国するためには、マレーシアのサラワク州ミリからの南側のルートがあるだけだ。<br />ここらへんで観光客が訪れるのはブルネイの北に当たるサバ州のコタキナバルだろうけど、そこからブルネイへの陸路のルートはない。<br /><br />まあ、わざわざ陸路でブルネイに入る意味はないし、誰もそんなことしないだろうけどね。<br /> 飛行機を使ってもたいして金がかかるわけではないんだから。<br /><br />だから、わざわざミリから入国するのは敢えて困難を求める旅行者の「趣味」の領域に入ってしまう。<br />ちなみに僕は「趣味」で旅行をしている。知ってた?<br /><br />サラワク州ミリにあるプロジェクトで滞在中の最初の休日を利用して、ブルネイダルサラームを訪ねることにする。<br />ミリから陸路でブルネイへ国境を越えるには3つのやり方がある。<br /><br />ひとつはプロジェクトの他のメンバーが以前利用したというタクシーを借り切る方法。<br /> 話では4人で1台借りきって1日でM$300つまり1万5千円。<br /> 1人なら約4千円。<br /><br />もうひとつはプロジェクトの車を自分で運転して国境を越える方法。<br />そして最後にローカルバスを利用する方法だね。<br /><br />タクシーを使えば、運転手に任せ切りでブルネイの首都バンダルスリベガワン(BSB)まで1日で往復することができる。<br />ただ、一緒に行く仲間が4人集まらない。<br /><br />1人でタクシーを借り切ってもいいが、それでは面白くない。<br />それに、僕は貧乏になって以来(昔は金があった時代もあった…)タクシーとは相性が悪い。<br /><br />タクシーに乗ると緊張してしまって、運転手さんのご機嫌を取る癖がついてしまったんだ。<br /> 気を使ってしまうので、あんまり好きな乗り物じゃないんだ。<br /><br />個人で車を運転して国境を越える場合、ひょっとして書類が問題になるかもしれない。<br />それにこのやり方で国境を越えた人が身近にいないということを考えると、何か問題があるのかもしれない。<br /><br />いろいろと考えると疲れてしまう。<br />という訳で、結局僕の大好きなローカルバスを使うことにする(実は最初からそのつもりなんだけれどね)。<br /><br />ミリのバスターミナルは、広場にごちゃごちゃとバスが集まっているというだけだ。<br />クアラルンプールのような大きなビルがあると誤解しないように。<br /><br />幸い僕の宿泊しているパークホテルのすぐ裏側だ。<br /> 前日朝早く、バスの時刻と混み具合を調べに行ってみた。<br /><br />ごちゃごちゃと停車しているバスを縫って歩くと、平屋建てのオフィスや食べ物の店が数件ある。<br />その中から《MIRI BELAIT TRANSPORT CO BHD》とある看板を見つける。<br /><br />その壁に時刻表が貼ってある。<br />バスはここからブルネイ領の国境の町クアラベライトまで走っていて、7:00、9:00、10:30、13:00、15:30発の5本だ。<br /><br />料金はM$11、5(580円)。<br />カウンターの向こうのおじさんは軍服を着ているが愛想はいい。<br /><br />「明朝9時のバスに乗りたいんですが、予約の必要がありますか?」 <br /> 「日本人かい?タクシーは使わないのか。珍しいなぁ。安いからバスが一番いいよ。8時半に来れば席は大丈夫」<br /><br />翌朝、旅立つ日のいつもの例のごとく、目覚し時計の鳴る前に起きてしまった。<br /> 時刻を見ると6時で、これなら7時の始発バスに間に合う。<br /><br />荷物はパスポート、マレーシアドルと米ドルを少し、万が一のためにクレジットカードも一枚持つ。<br /> 汗ふき用のタオルと本を3冊ほどデイバッグの中に入れて用意は終わり。<br /><br />昨日の事務所に行く。<br />おじさんが「7時のバスで行くのか?」と尋ねてくる。<br /><br />「向こう発のバスは何時のがあるんですか?」と聞くと、「最終は3時半」との答えだ。<br />ミリからクアラベライトまではだいたい2時間半。<br /><br />とすると、ブルネイにぎりぎり6時間居れることになる。<br />ひょっとしたら、首都のBSBまでたどり着けるかもしれない。<br /><br />これはバスの乗り継ぎがうまく行った場合だが、一応可能性を考えて置くのが、世界旅行者先生だ。<br /> 国境行きのバスは少しは豪華かと(ひょっとしてエアコンが、なんて)内心期待していたが、他のローカルバスと全く変わらず、ボロボロでエアコンもない。<br /><br />大型バスなのに乗客はたったの10人。<br />ほとんどはなぜか中年女性で、子供を連れた人もいる。<br /><br />マレーシアも近頃では国産乗用車を作るまでになった新興工業国だ。<br /> 僕が初めて訪れた十数年前と比べるとかなり生活水準が上がって来ているが、これから行くブルネイは石油と天然ガスの豊富な、とんでもなく豊かな国らしい。<br /><br />しかし観光資源は何もない。<br /><br />オーストラリアに行くのに香港発のロイヤルブルネイ航空を使った(ダーウィンへ入ったそうだ)女の子と3年前香港で出合った。<br /> 彼女は飛行機で隣席だったブルネイ人の家に1ヶ月やっかいになっていたと言っていた。<br /><br />彼女はブルネイの名物は「ヤオハンデパート」しかない、と断言していた。<br />つまり、ブルネイにはなにも見る所はない。<br /><br />ただ旅行した国の数を増やすためだけに存在する国家であるということだろう。<br />ということは、僕にはぴったりの国だよね(笑)。<br /><br />朝7時5分に出発したバスは、何と20分後にはもうベラム川の渡しに到着した。<br />ここでフェリーに乗るのに20分待つ。<br /><br />フェリー乗り場の右手上流側には、異様に細長いうなぎの怪物のような形のボートが6隻停泊している。<br /> 近寄って看板を見ると上流の町マルディ行きの高速ボートだとか。<br /><br />ジャングルに囲まれたボルネオの川を、こういうボートで旅するのも、なかなか粋だよね。<br />これは将来の旅行計画として取って置こうっと♪<br /><br />バスに乗ったままフェリーに乗り込み、向こう岸に渡る。<br /> 少し走って8時10分にはサラワク州のボーダーポストに着く。<br /><br />簡単な出国検査の後、また同じバスに乗り込み、今度はブルネイの入国検査だ。<br />さすが金持ちの国らしくサラワク側よりも建物が大きい。<br /><br />その上係官も何となく金がありそうな余裕のある雰囲気だ。<br /> 同僚の男の子とふざけていた若くて可愛い女の子の入国審査官が、僕のパスポートをチェックする。<br /><br />「何日いる予定ですか?」とボルネオには珍しいきれいなアクセントの英語で質問する。<br />きっと英国へ留学していたお嬢様だろうね。<br /><br />滞在期間を「3日」と答える。<br />もちろん今日中に帰るつもりなのだが、国によっては申請した日数丁度しか滞在許可をくれない所もある。<br /><br />アルジェリアのビザをモロッコで取った時がそうだった。<br />だから、念の為に少し長めに申請したんだ。<br /><br />ついでに、「ブルネイはとても奇麗な所だと友達が言ってました。BSBを是非見てみたいんです」と、取って付けたようなお世辞を言う。<br />これが今まで世界中すべての国境で何も問題を起こさずに通過した世界旅行者流国境通過術の極意だ。<br /><br />彼女はにっこり笑って「良い旅行を」と言いながら、パスポートを返してくれた。<br /> 滞在許可は7日となっている。<br /><br />イミグレーションの建物から出るとミリから乗って来たバスがない。<br /> 一緒に来たおばさんに聞くと、ここでバスを乗り換えるらしい。<br /><br />ベンチに座って30分以上待っただろうか、ブルネイ側のバスが到着。<br /> 9時10分にバスがボーダーを出発して、一直線のきれいに舗装された道を走る。<br /><br />おいおい向こうから走ってくる車はベンツだらけじゃないか!<br />いやいやベンツだけじゃない、BMWも混じっている。<br /><br />噂どおりにとんでもない金持ちだらけの国だね!<br /><br />さっきの可愛い入国審査官もきっと金持ちの娘に決まっている。<br />ああいうのと結婚すれば、人生遊んで暮らせるってもんだよ。<br /><br />ブルネイの場合は日本人男性もモテると思う。<br /> 日本で将来のない若者は、ブルネイ女性を口説いてみると、一発大逆転の人生が待ってるかもしれないよ。<br /><br />いやこれは冗談じゃなくってね、僕の知人はタイで華僑のお嬢様に見初められて結婚した。<br /> 今ではベンツに乗る華僑富豪の家族の一員になっている(ただそれが気楽かどうか、わかんないけどね)。<br /><br />しかし、僕の今日初めての淡い初恋の感傷はたった15分しか続かなかった。<br />ベライト川の渡しに着いたのだ。<br /><br />今度のフェリーはベラム川のよりもっと小さい。<br />バスはここ止まりだ。<br /><br />乗客はバスから降りてフェリーに乗り込む。<br /> 向こう岸はもうクアラベライトの町だ。<br /><br />待っていた別のバスに乗ると数分で町のバスターミナルに着いた。<br /> 9時35分。<br /><br />ぴったり2時間半で2つの川をフェリ-で渡り、バス3台を乗り継ぐ国境越えの旅が終わった。<br />さてこれからが問題だよ。<br /><br />東南アジア旅行者のバイブル「Lonely Planet: SouthEast Asia on a Shoestring」によると、ここからスリアまでたった30分。<br />スリアからBSBまで1時間半から2時間となっている。<br /><br />BSBまでの往復が、4~5時間と言うことだ。<br />クアラベライト発最終バスが3時30分、あと6時間ある。<br /><br />ということは、BSBへ行ける可能性もあるということだね。<br />とにかくバスの時刻を確認する。<br /><br />ターミナルに張ってある時刻表によると、ミリ行きのクアラベライト発バスがある。<br /> 7:30,9:30、11:00、13:30、15:30の5本だ。<br /><br />しかしこれだけでは信用出来ない。<br /> 今日は日曜日なのだ。<br /><br />ひょっとしてウィークデイと違って最終がないということも考えられる。<br />またバスの時刻が変更になったのに古い時刻表を貼ったままにしてあるという事も良くある話だ。<br /><br />事務所にいた中年の女性にこの時刻が正しいことを確認する。<br />ここで帰りの最終バスの切符を、ブルネイドルがないからと15マレーシアドルで買って予約してしまう。<br /><br />ついでにBSBまで行ける可能性について聞く。<br /> 「今からBSBまで行って帰ってくるのは無理よ」があっさりした答だ。<br /><br />でもまだ時間があるのだから、とにかくスリアまで行くことにしよう。<br /> 緑色の「スリア」と書いたバスが入ったのであわてて乗り込む。<br /><br />車掌は日本でいえば高校卒業したばかりぐらいの若い女の子だ。<br /> 切符を売りながら僕の所へ来る。<br /><br />料金はB$1。<br /> 僕はマレーシアドルしかないので、M$1紙幣を出す。<br /><br />「これじゃだめ!ブルネイドルはないの?シンガポールドルを持ってないの?」と彼女が大きな声で(もちろん英語です)言う。<br />シンガポールドルはブルネイドルと連動しているので、ブルネイ国内では同じように使えるのだが、僕はどっちも持ってない。<br /><br />「僕は今日マレーシアから来たばかりでブルネイドルがないんだ。マレーシアドルで2ドルじゃ駄目なの?」という。<br /> 「このバスに乗るには1ブルネイドルなの。私はそれ以外は受け取らない」<br /><br />「今日は日曜日で、銀行は休み。換えようとしても換えられなかったんだよ!」と答えるしかない。<br /> 走り出したバスから降りる訳には行かない。 <br /><br />世界中どこでも融通のきかないのは若い女の公務員と決まっているが、ブルネイではバスの女車掌まで厳しいことを言う。<br /> 困ってしまって、誰かマレーシアドルをブルネイドルに換えてくれないかしらんと見回す。<br /><br />僕の斜め後ろの座席に座っていた20ぐらいの青年が「僕が払うよ」と言って、自分の文も含めて2ブルネイドル出してくれた。<br /> 僕がマレーシアドルを渡そうとするが、受け取ろうとしない。<br /><br />ありがとう!<br /> 車掌は「今度からはちゃんとブルネイのお金を使ってくださいね!」と言う。<br /><br />バスはずっと住宅地を通っていく。<br /> 広い緑の芝生に同じ形の建物がどこまでも続いている。<br /><br />ここはシェル石油の基地のある所なので多分社宅なのだろう。<br />どの家の庭にも自動車がある。<br />きっとガソリンの値段も安いのだ。<br /><br />ゴルフ場の横を通ると多分シェル石油の従業員と思われる白人が、カートをひきながらゆったりとゴルフを楽しんでいた。<br /> 40分でスリアの町のバスターミナルに到着。<br /><br />マイクロバスが停車している。<br /> 聞くと、すぐにBSBへ行くという。<br /><br />しかしまず、両替をしないといけない。<br />ここでも銀行が閉まっているのを確認して、バスターミナルに面した雑貨屋に入る。<br /><br />だいたいこういうごちゃごちゃした所では、両替をしてくれるというのが世界の常識だ。<br /> 中国人の店員に両替を頼むと奥へ入っていって相談していたようだが、戻って来て「うちでは両替しません」という。<br /><br />どこで換えられるかと聞くと3~4軒先の店ならという話だ。<br />こういう説明はただ逃げるためにいっていることが多いので、かたっぱしから店を当たってみるが、どこも換えない。<br /><br />これではBSBに行くことなど考えられない。<br /> 食事もできないよ(涙)。<br /><br />まあ世界旅行中は1日1食しかまともなものは食べなかったのだから、1日食べないことぐらいは平気だ。<br />そういえばシリア旅行中にアラブレストランで率のいい両替をしたことを思い出す。<br /><br />レストランなら両替してくれなくても、マレーシアドルを受け取って食べさせてくれてお釣りをブルネイドルでくれるかもしれない。<br />バスターミナルの横にある(世界中どこでもバスターミナルのそばには安い宿、飯屋や店があるに決まっている)飯屋に入る。<br /><br />インド人経営だ。<br /> 両替のことを聞くと困った顔をして、斜め向かいにある中国語の赤い看板の店を指さしてあそこで換えてくれという。<br /><br />これが最後のチャレンジだ。<br /> 強い日差しの中を歩き回ったので疲れてしまった。<br /><br />店に入って聞くと「昔は両替してたんですけれど、今は止めました」だと!<br />おいおい、いったいどうなってるんだ。<br /><br />バスターミナルの事務所に行く。<br />どこかで両替出来なくてはおかしいのだからどこかあるはずだ。<br /><br />事務所はドアを開け放してある。<br />なかにいたかっぷくのいい中年のマレー人に両替のことと、ここからベライトへ帰るための運賃B$1もないことを説明する。<br /><br />「スリアでは日曜は両替出来ないんだよ」と、ごくすっきりした答が返る。<br />もうBSBへ行く気力はなくなっていたが、B$1を手に入れること、またバスの中で叱られることを避けたいという気持ちが頭を占領していた。<br /><br />「米ドルが1ドルあるんですけれど、これを1ブルネイドルにしてくれませんか?」<br /> 「アメリカドルならいいよ」とあっさり承知してくれる。<br /><br />ベライト行きのバスの時刻が解らないので、ベライト行きと表示のある緑色のバスのそばで座って待つ。<br /> 急に人が動き出して、バスに乗り込む。僕はやっと手に入れたB$1紙幣を握り締めてバスに乗り込む。<br /><br />あれあれ、車掌はさっきの女の子だ。<br /> 「ほらブルネイドルを持ってるよ!」と声をかけると、にっこりと笑う。<br /><br />もちろん悪い子じゃないんだ。<br />さっきは彼女も困っちゃったんだろうね。<br /><br />クアラベライトの町にバスが着くと、すぐミリ行きの切符売り場に行く。<br />さっきのおばさんに1本早い午後1時半のバスに変更してもらう。<br /><br />スリアではだめだったが、国境の町のクアラベライトでは絶対に両替できるはずだ。<br />これは「世界旅行者」としての僕の世界観にかかわってくる大問題だ。<br /><br />切符売り場の彼女に両替できる所を聞く。<br />タクシースタンドを越えた所にある床屋を指さす。<br /><br />そこではあっけないほど簡単に変えてくれた。<br />レートはM$50=B$30。<br /><br />つまりB$1は約80円。<br />これは公定レートとそう違ってはいなかった。<br /><br />両替をするのなら国境の町で、とういう公式が再確認されたということだ。<br />お金が出来たので食事をするが、やはりマレーシアより高い。<br /><br />しかもビールがない。<br />ブルネイは回教国家なのでアルコール類は飲めないんだよ。<br /><br />といっても、王族、金持ちは自宅で飲んでるに決まってるけどね(笑)。<br />ベラム川のフェリー乗り場で缶ビールを売っていた理由が解ったね。<br /><br />午後1時半のバスに乗り込むと、来た時と逆の乗り換えを繰り返してミリに着いた。<br />フェリーの待ち時間とバスの乗り換えがスムーズに済んだので今度は1時間50分しかかからなかった。<br /><br />注意しておくと、このボーダーは午前6時から午後6時までしかオープンしていない。<br />また陸路でブルネイからサラワクへ入国する時は普通2週間しか滞在許可をくれない。<br /><br />もしサラワクからマレーシアの半島部へ戻る場合、再度入国管理はないので、この後もマレーシア旅行を続けるとなると滞在許可の延長をしなければならない。<br />しかしここで1ヶ月もらった人もいるので係官に事情を説明すれば大丈夫だろう。<br /><br />僕はもらった2週間を1ヶ月に延長したが。<br />ちょっとばたばたしたが、これもローカルバスを使って旅する楽しさだ。<br /><br />【旅行哲学】現地通貨がないと、何もできないね。<br /><br /><br /> <br /><br /><br /><br /><br />

ミリ(マレーシア)~スリア(ブルネイ) 川をいくつもわたって、陸路国境越え@スリア/ブルネイ

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1992/08/10 - 1992/09/10

26位(同エリア32件中)

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みどくつ

みどくつさん

ブルネイに陸路で入国するためには、マレーシアのサラワク州ミリからの南側のルートがあるだけだ。
ここらへんで観光客が訪れるのはブルネイの北に当たるサバ州のコタキナバルだろうけど、そこからブルネイへの陸路のルートはない。

まあ、わざわざ陸路でブルネイに入る意味はないし、誰もそんなことしないだろうけどね。
飛行機を使ってもたいして金がかかるわけではないんだから。

だから、わざわざミリから入国するのは敢えて困難を求める旅行者の「趣味」の領域に入ってしまう。
ちなみに僕は「趣味」で旅行をしている。知ってた?

サラワク州ミリにあるプロジェクトで滞在中の最初の休日を利用して、ブルネイダルサラームを訪ねることにする。
ミリから陸路でブルネイへ国境を越えるには3つのやり方がある。

ひとつはプロジェクトの他のメンバーが以前利用したというタクシーを借り切る方法。
話では4人で1台借りきって1日でM$300つまり1万5千円。
1人なら約4千円。

もうひとつはプロジェクトの車を自分で運転して国境を越える方法。
そして最後にローカルバスを利用する方法だね。

タクシーを使えば、運転手に任せ切りでブルネイの首都バンダルスリベガワン(BSB)まで1日で往復することができる。
ただ、一緒に行く仲間が4人集まらない。

1人でタクシーを借り切ってもいいが、それでは面白くない。
それに、僕は貧乏になって以来(昔は金があった時代もあった…)タクシーとは相性が悪い。

タクシーに乗ると緊張してしまって、運転手さんのご機嫌を取る癖がついてしまったんだ。
気を使ってしまうので、あんまり好きな乗り物じゃないんだ。

個人で車を運転して国境を越える場合、ひょっとして書類が問題になるかもしれない。
それにこのやり方で国境を越えた人が身近にいないということを考えると、何か問題があるのかもしれない。

いろいろと考えると疲れてしまう。
という訳で、結局僕の大好きなローカルバスを使うことにする(実は最初からそのつもりなんだけれどね)。

ミリのバスターミナルは、広場にごちゃごちゃとバスが集まっているというだけだ。
クアラルンプールのような大きなビルがあると誤解しないように。

幸い僕の宿泊しているパークホテルのすぐ裏側だ。
前日朝早く、バスの時刻と混み具合を調べに行ってみた。

ごちゃごちゃと停車しているバスを縫って歩くと、平屋建てのオフィスや食べ物の店が数件ある。
その中から《MIRI BELAIT TRANSPORT CO BHD》とある看板を見つける。

その壁に時刻表が貼ってある。
バスはここからブルネイ領の国境の町クアラベライトまで走っていて、7:00、9:00、10:30、13:00、15:30発の5本だ。

料金はM$11、5(580円)。
カウンターの向こうのおじさんは軍服を着ているが愛想はいい。

「明朝9時のバスに乗りたいんですが、予約の必要がありますか?」
「日本人かい?タクシーは使わないのか。珍しいなぁ。安いからバスが一番いいよ。8時半に来れば席は大丈夫」

翌朝、旅立つ日のいつもの例のごとく、目覚し時計の鳴る前に起きてしまった。
時刻を見ると6時で、これなら7時の始発バスに間に合う。

荷物はパスポート、マレーシアドルと米ドルを少し、万が一のためにクレジットカードも一枚持つ。
汗ふき用のタオルと本を3冊ほどデイバッグの中に入れて用意は終わり。

昨日の事務所に行く。
おじさんが「7時のバスで行くのか?」と尋ねてくる。

「向こう発のバスは何時のがあるんですか?」と聞くと、「最終は3時半」との答えだ。
ミリからクアラベライトまではだいたい2時間半。

とすると、ブルネイにぎりぎり6時間居れることになる。
ひょっとしたら、首都のBSBまでたどり着けるかもしれない。

これはバスの乗り継ぎがうまく行った場合だが、一応可能性を考えて置くのが、世界旅行者先生だ。
国境行きのバスは少しは豪華かと(ひょっとしてエアコンが、なんて)内心期待していたが、他のローカルバスと全く変わらず、ボロボロでエアコンもない。

大型バスなのに乗客はたったの10人。
ほとんどはなぜか中年女性で、子供を連れた人もいる。

マレーシアも近頃では国産乗用車を作るまでになった新興工業国だ。
僕が初めて訪れた十数年前と比べるとかなり生活水準が上がって来ているが、これから行くブルネイは石油と天然ガスの豊富な、とんでもなく豊かな国らしい。

しかし観光資源は何もない。

オーストラリアに行くのに香港発のロイヤルブルネイ航空を使った(ダーウィンへ入ったそうだ)女の子と3年前香港で出合った。
彼女は飛行機で隣席だったブルネイ人の家に1ヶ月やっかいになっていたと言っていた。

彼女はブルネイの名物は「ヤオハンデパート」しかない、と断言していた。
つまり、ブルネイにはなにも見る所はない。

ただ旅行した国の数を増やすためだけに存在する国家であるということだろう。
ということは、僕にはぴったりの国だよね(笑)。

朝7時5分に出発したバスは、何と20分後にはもうベラム川の渡しに到着した。
ここでフェリーに乗るのに20分待つ。

フェリー乗り場の右手上流側には、異様に細長いうなぎの怪物のような形のボートが6隻停泊している。
近寄って看板を見ると上流の町マルディ行きの高速ボートだとか。

ジャングルに囲まれたボルネオの川を、こういうボートで旅するのも、なかなか粋だよね。
これは将来の旅行計画として取って置こうっと♪

バスに乗ったままフェリーに乗り込み、向こう岸に渡る。
少し走って8時10分にはサラワク州のボーダーポストに着く。

簡単な出国検査の後、また同じバスに乗り込み、今度はブルネイの入国検査だ。
さすが金持ちの国らしくサラワク側よりも建物が大きい。

その上係官も何となく金がありそうな余裕のある雰囲気だ。
同僚の男の子とふざけていた若くて可愛い女の子の入国審査官が、僕のパスポートをチェックする。

「何日いる予定ですか?」とボルネオには珍しいきれいなアクセントの英語で質問する。
きっと英国へ留学していたお嬢様だろうね。

滞在期間を「3日」と答える。
もちろん今日中に帰るつもりなのだが、国によっては申請した日数丁度しか滞在許可をくれない所もある。

アルジェリアのビザをモロッコで取った時がそうだった。
だから、念の為に少し長めに申請したんだ。

ついでに、「ブルネイはとても奇麗な所だと友達が言ってました。BSBを是非見てみたいんです」と、取って付けたようなお世辞を言う。
これが今まで世界中すべての国境で何も問題を起こさずに通過した世界旅行者流国境通過術の極意だ。

彼女はにっこり笑って「良い旅行を」と言いながら、パスポートを返してくれた。
滞在許可は7日となっている。

イミグレーションの建物から出るとミリから乗って来たバスがない。
一緒に来たおばさんに聞くと、ここでバスを乗り換えるらしい。

ベンチに座って30分以上待っただろうか、ブルネイ側のバスが到着。
9時10分にバスがボーダーを出発して、一直線のきれいに舗装された道を走る。

おいおい向こうから走ってくる車はベンツだらけじゃないか!
いやいやベンツだけじゃない、BMWも混じっている。

噂どおりにとんでもない金持ちだらけの国だね!

さっきの可愛い入国審査官もきっと金持ちの娘に決まっている。
ああいうのと結婚すれば、人生遊んで暮らせるってもんだよ。

ブルネイの場合は日本人男性もモテると思う。
日本で将来のない若者は、ブルネイ女性を口説いてみると、一発大逆転の人生が待ってるかもしれないよ。

いやこれは冗談じゃなくってね、僕の知人はタイで華僑のお嬢様に見初められて結婚した。
今ではベンツに乗る華僑富豪の家族の一員になっている(ただそれが気楽かどうか、わかんないけどね)。

しかし、僕の今日初めての淡い初恋の感傷はたった15分しか続かなかった。
ベライト川の渡しに着いたのだ。

今度のフェリーはベラム川のよりもっと小さい。
バスはここ止まりだ。

乗客はバスから降りてフェリーに乗り込む。
向こう岸はもうクアラベライトの町だ。

待っていた別のバスに乗ると数分で町のバスターミナルに着いた。
9時35分。

ぴったり2時間半で2つの川をフェリ-で渡り、バス3台を乗り継ぐ国境越えの旅が終わった。
さてこれからが問題だよ。

東南アジア旅行者のバイブル「Lonely Planet: SouthEast Asia on a Shoestring」によると、ここからスリアまでたった30分。
スリアからBSBまで1時間半から2時間となっている。

BSBまでの往復が、4~5時間と言うことだ。
クアラベライト発最終バスが3時30分、あと6時間ある。

ということは、BSBへ行ける可能性もあるということだね。
とにかくバスの時刻を確認する。

ターミナルに張ってある時刻表によると、ミリ行きのクアラベライト発バスがある。
7:30,9:30、11:00、13:30、15:30の5本だ。

しかしこれだけでは信用出来ない。
今日は日曜日なのだ。

ひょっとしてウィークデイと違って最終がないということも考えられる。
またバスの時刻が変更になったのに古い時刻表を貼ったままにしてあるという事も良くある話だ。

事務所にいた中年の女性にこの時刻が正しいことを確認する。
ここで帰りの最終バスの切符を、ブルネイドルがないからと15マレーシアドルで買って予約してしまう。

ついでにBSBまで行ける可能性について聞く。
「今からBSBまで行って帰ってくるのは無理よ」があっさりした答だ。

でもまだ時間があるのだから、とにかくスリアまで行くことにしよう。
緑色の「スリア」と書いたバスが入ったのであわてて乗り込む。

車掌は日本でいえば高校卒業したばかりぐらいの若い女の子だ。
切符を売りながら僕の所へ来る。

料金はB$1。
僕はマレーシアドルしかないので、M$1紙幣を出す。

「これじゃだめ!ブルネイドルはないの?シンガポールドルを持ってないの?」と彼女が大きな声で(もちろん英語です)言う。
シンガポールドルはブルネイドルと連動しているので、ブルネイ国内では同じように使えるのだが、僕はどっちも持ってない。

「僕は今日マレーシアから来たばかりでブルネイドルがないんだ。マレーシアドルで2ドルじゃ駄目なの?」という。
「このバスに乗るには1ブルネイドルなの。私はそれ以外は受け取らない」

「今日は日曜日で、銀行は休み。換えようとしても換えられなかったんだよ!」と答えるしかない。
走り出したバスから降りる訳には行かない。

世界中どこでも融通のきかないのは若い女の公務員と決まっているが、ブルネイではバスの女車掌まで厳しいことを言う。
困ってしまって、誰かマレーシアドルをブルネイドルに換えてくれないかしらんと見回す。

僕の斜め後ろの座席に座っていた20ぐらいの青年が「僕が払うよ」と言って、自分の文も含めて2ブルネイドル出してくれた。
僕がマレーシアドルを渡そうとするが、受け取ろうとしない。

ありがとう!
車掌は「今度からはちゃんとブルネイのお金を使ってくださいね!」と言う。

バスはずっと住宅地を通っていく。
広い緑の芝生に同じ形の建物がどこまでも続いている。

ここはシェル石油の基地のある所なので多分社宅なのだろう。
どの家の庭にも自動車がある。
きっとガソリンの値段も安いのだ。

ゴルフ場の横を通ると多分シェル石油の従業員と思われる白人が、カートをひきながらゆったりとゴルフを楽しんでいた。
40分でスリアの町のバスターミナルに到着。

マイクロバスが停車している。
聞くと、すぐにBSBへ行くという。

しかしまず、両替をしないといけない。
ここでも銀行が閉まっているのを確認して、バスターミナルに面した雑貨屋に入る。

だいたいこういうごちゃごちゃした所では、両替をしてくれるというのが世界の常識だ。
中国人の店員に両替を頼むと奥へ入っていって相談していたようだが、戻って来て「うちでは両替しません」という。

どこで換えられるかと聞くと3~4軒先の店ならという話だ。
こういう説明はただ逃げるためにいっていることが多いので、かたっぱしから店を当たってみるが、どこも換えない。

これではBSBに行くことなど考えられない。
食事もできないよ(涙)。

まあ世界旅行中は1日1食しかまともなものは食べなかったのだから、1日食べないことぐらいは平気だ。
そういえばシリア旅行中にアラブレストランで率のいい両替をしたことを思い出す。

レストランなら両替してくれなくても、マレーシアドルを受け取って食べさせてくれてお釣りをブルネイドルでくれるかもしれない。
バスターミナルの横にある(世界中どこでもバスターミナルのそばには安い宿、飯屋や店があるに決まっている)飯屋に入る。

インド人経営だ。
両替のことを聞くと困った顔をして、斜め向かいにある中国語の赤い看板の店を指さしてあそこで換えてくれという。

これが最後のチャレンジだ。
強い日差しの中を歩き回ったので疲れてしまった。

店に入って聞くと「昔は両替してたんですけれど、今は止めました」だと!
おいおい、いったいどうなってるんだ。

バスターミナルの事務所に行く。
どこかで両替出来なくてはおかしいのだからどこかあるはずだ。

事務所はドアを開け放してある。
なかにいたかっぷくのいい中年のマレー人に両替のことと、ここからベライトへ帰るための運賃B$1もないことを説明する。

「スリアでは日曜は両替出来ないんだよ」と、ごくすっきりした答が返る。
もうBSBへ行く気力はなくなっていたが、B$1を手に入れること、またバスの中で叱られることを避けたいという気持ちが頭を占領していた。

「米ドルが1ドルあるんですけれど、これを1ブルネイドルにしてくれませんか?」
「アメリカドルならいいよ」とあっさり承知してくれる。

ベライト行きのバスの時刻が解らないので、ベライト行きと表示のある緑色のバスのそばで座って待つ。
急に人が動き出して、バスに乗り込む。僕はやっと手に入れたB$1紙幣を握り締めてバスに乗り込む。

あれあれ、車掌はさっきの女の子だ。
「ほらブルネイドルを持ってるよ!」と声をかけると、にっこりと笑う。

もちろん悪い子じゃないんだ。
さっきは彼女も困っちゃったんだろうね。

クアラベライトの町にバスが着くと、すぐミリ行きの切符売り場に行く。
さっきのおばさんに1本早い午後1時半のバスに変更してもらう。

スリアではだめだったが、国境の町のクアラベライトでは絶対に両替できるはずだ。
これは「世界旅行者」としての僕の世界観にかかわってくる大問題だ。

切符売り場の彼女に両替できる所を聞く。
タクシースタンドを越えた所にある床屋を指さす。

そこではあっけないほど簡単に変えてくれた。
レートはM$50=B$30。

つまりB$1は約80円。
これは公定レートとそう違ってはいなかった。

両替をするのなら国境の町で、とういう公式が再確認されたということだ。
お金が出来たので食事をするが、やはりマレーシアより高い。

しかもビールがない。
ブルネイは回教国家なのでアルコール類は飲めないんだよ。

といっても、王族、金持ちは自宅で飲んでるに決まってるけどね(笑)。
ベラム川のフェリー乗り場で缶ビールを売っていた理由が解ったね。

午後1時半のバスに乗り込むと、来た時と逆の乗り換えを繰り返してミリに着いた。
フェリーの待ち時間とバスの乗り換えがスムーズに済んだので今度は1時間50分しかかからなかった。

注意しておくと、このボーダーは午前6時から午後6時までしかオープンしていない。
また陸路でブルネイからサラワクへ入国する時は普通2週間しか滞在許可をくれない。

もしサラワクからマレーシアの半島部へ戻る場合、再度入国管理はないので、この後もマレーシア旅行を続けるとなると滞在許可の延長をしなければならない。
しかしここで1ヶ月もらった人もいるので係官に事情を説明すれば大丈夫だろう。

僕はもらった2週間を1ヶ月に延長したが。
ちょっとばたばたしたが、これもローカルバスを使って旅する楽しさだ。

【旅行哲学】現地通貨がないと、何もできないね。







旅行の満足度
3.0

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