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 ’98年1月中旬から私は拒食症にかかり、身体は衰弱していった。一日の食事は僅かばかりのゼリー飲料とジュースだけだった。<br /> 2月に入り、「このままでは死ぬ」と思った時、「せめて最後に好きなハイキングを楽しみたい」と思い、海の景色を楽しみながらハイキングができる三豊市詫間町の荘内半島に出かけた。睡眠も不規則になっていたせいで、一睡も出来ないままハンドルを握り、高速にのることになった。<br /><br /> 荘内半島は浦島太郎伝説が色濃く残る半島でもある。生里(なまり)という地名は、浦島太郎の生地という意味で、玉手箱を開けた所の地名がその名も「箱」。ここには太郎親子の墓まである。<br /> 太郎が老人となって過ごした所が「仁老浜(にろはま)」、半島最高峰の「紫雲出山(しうでやま)」は玉手箱から出た煙が紫雲となって懸かった山。<br /><br />まずは半島の付け根近くにあるスーパー低山・妙見山(319.9m)を目指した。この山中には西国33ヶ所観音霊場のミニ霊場が整備されている他、中腹にある妙見宮は内部が洞穴になった何百トンもの巨石を背負っている。<br />登山・参道口は山の南にあり、道々の道標が案内してくれる。鳥居のある石段口前の狭い「西駐車場」に駐車。公共交通機関利用時は仁尾バス停東から北上すれば、道標が次々と現れる。登山口まで三十数分。<br /><br />拒食症で身体が衰弱しているはずなのに、不思議と足は軽い。<br />宮の境内にある休憩舎からは南方の仁尾の町並みや七宝連山、燧灘の眺めが素晴らしい。<br />堂宇背後の天蓋岩内部の洞穴は通り抜けることができ、「開運の洞穴」と呼ばれているが、斜めに傾斜していた記憶があり、服も汚れそうだったので入洞は避けた。<br />更に優れた景色を求めて「千貫松」の道標に従い、妙見山山頂を目指す。<br /><br />妙見宮から20分足らずで稜線に出ると、そのすぐ右が山頂だったが、展望がないので西の千貫松方向へ尾根道を進む。数分で「星の石」という巨石に行き着く。この石の上に上ると、燧灘に浮かぶ大蔦島、小蔦島を始めとする島群や、霞に屹立する石鎚山系が、まるでスクリーンに映し出されるかのように、眼前に展開される。妙見宮からの景色の比ではない。そこから右前方に少し下った所にある「千貫岩」の上にかつて生えていた千貫松は既にない。<br />[コースタイム]<br />西駐車場(0:30)妙見山頂(0:05)千貫岩(0:25)西駐車場<br /><br />下山後、半島最高峰の紫雲出山(352.4m)に向かう。バス停「紫雲出山登山口」を過ぎるとすぐ紫雲出山の標識が右手に現れ、山頂直下の駐車場まで上る。<br />立派な展望台や遺跡館もあるが、館の開館時間前ということもあり、観光客は皆無。<br />展望台からの眺めは絶句するほどに美しい。写真では伝わらないかも知れないが、燧灘、備後灘、詫間湾と洋上の島々、半島の各漁港、そして妙見山の時よりも更に幻想的に映る法皇山脈。海霧のかかり具合で、まるで海に浮かぶ蜃気楼のよう。新居浜の工場の煙突群から立ち上る煙さえ神秘的に見える。<br /> 尚、この山の三角点は珍しく地下にあり、コンクリートの蓋を開けると拝める。<br /> <br />因みにこれより10年後、桜の季節に「四国のみち」を登って再び登頂することになる。しかし春になると紫外線等の影響により、遠景は霞む。故に妙見山や紫雲出山に登るのなら、2月中が良い。

奇跡の荘内半島・前編: 蜃気楼の如く海に浮く山脈

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1998/02/11 - 1998/02/11

96位(同エリア162件中)

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マローズ

マローズさん

 ’98年1月中旬から私は拒食症にかかり、身体は衰弱していった。一日の食事は僅かばかりのゼリー飲料とジュースだけだった。
 2月に入り、「このままでは死ぬ」と思った時、「せめて最後に好きなハイキングを楽しみたい」と思い、海の景色を楽しみながらハイキングができる三豊市詫間町の荘内半島に出かけた。睡眠も不規則になっていたせいで、一睡も出来ないままハンドルを握り、高速にのることになった。

 荘内半島は浦島太郎伝説が色濃く残る半島でもある。生里(なまり)という地名は、浦島太郎の生地という意味で、玉手箱を開けた所の地名がその名も「箱」。ここには太郎親子の墓まである。
 太郎が老人となって過ごした所が「仁老浜(にろはま)」、半島最高峰の「紫雲出山(しうでやま)」は玉手箱から出た煙が紫雲となって懸かった山。

まずは半島の付け根近くにあるスーパー低山・妙見山(319.9m)を目指した。この山中には西国33ヶ所観音霊場のミニ霊場が整備されている他、中腹にある妙見宮は内部が洞穴になった何百トンもの巨石を背負っている。
登山・参道口は山の南にあり、道々の道標が案内してくれる。鳥居のある石段口前の狭い「西駐車場」に駐車。公共交通機関利用時は仁尾バス停東から北上すれば、道標が次々と現れる。登山口まで三十数分。

拒食症で身体が衰弱しているはずなのに、不思議と足は軽い。
宮の境内にある休憩舎からは南方の仁尾の町並みや七宝連山、燧灘の眺めが素晴らしい。
堂宇背後の天蓋岩内部の洞穴は通り抜けることができ、「開運の洞穴」と呼ばれているが、斜めに傾斜していた記憶があり、服も汚れそうだったので入洞は避けた。
更に優れた景色を求めて「千貫松」の道標に従い、妙見山山頂を目指す。

妙見宮から20分足らずで稜線に出ると、そのすぐ右が山頂だったが、展望がないので西の千貫松方向へ尾根道を進む。数分で「星の石」という巨石に行き着く。この石の上に上ると、燧灘に浮かぶ大蔦島、小蔦島を始めとする島群や、霞に屹立する石鎚山系が、まるでスクリーンに映し出されるかのように、眼前に展開される。妙見宮からの景色の比ではない。そこから右前方に少し下った所にある「千貫岩」の上にかつて生えていた千貫松は既にない。
[コースタイム]
西駐車場(0:30)妙見山頂(0:05)千貫岩(0:25)西駐車場

下山後、半島最高峰の紫雲出山(352.4m)に向かう。バス停「紫雲出山登山口」を過ぎるとすぐ紫雲出山の標識が右手に現れ、山頂直下の駐車場まで上る。
立派な展望台や遺跡館もあるが、館の開館時間前ということもあり、観光客は皆無。
展望台からの眺めは絶句するほどに美しい。写真では伝わらないかも知れないが、燧灘、備後灘、詫間湾と洋上の島々、半島の各漁港、そして妙見山の時よりも更に幻想的に映る法皇山脈。海霧のかかり具合で、まるで海に浮かぶ蜃気楼のよう。新居浜の工場の煙突群から立ち上る煙さえ神秘的に見える。
 尚、この山の三角点は珍しく地下にあり、コンクリートの蓋を開けると拝める。
 
因みにこれより10年後、桜の季節に「四国のみち」を登って再び登頂することになる。しかし春になると紫外線等の影響により、遠景は霞む。故に妙見山や紫雲出山に登るのなら、2月中が良い。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
交通
4.0
交通手段
自家用車

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  • 妙見宮(妙見神社)は吉祥院の奥の院であり、弘法大師がこの地で求聞持の法を修していた時、妙見菩薩が示現し、その御告げから大師は菩薩の尊像を岩面に刻み、一宇を建立したのが始まりと言われている。

    妙見宮(妙見神社)は吉祥院の奥の院であり、弘法大師がこの地で求聞持の法を修していた時、妙見菩薩が示現し、その御告げから大師は菩薩の尊像を岩面に刻み、一宇を建立したのが始まりと言われている。

  • 何百トンもの天蓋石を背負う

    何百トンもの天蓋石を背負う

  • 妙見神社境内からの仁尾の町

    妙見神社境内からの仁尾の町

  • 妙見神社境内からズームで捉えた愛媛県内の工場地帯

    妙見神社境内からズームで捉えた愛媛県内の工場地帯

  • スズタケに覆われた妙見山山頂

    スズタケに覆われた妙見山山頂

  • 千貫松は枯死したが、星の石周辺には松が多い。

    千貫松は枯死したが、星の石周辺には松が多い。

  • 星の石という巨石

    星の石という巨石

  • 星の石からの展望

    星の石からの展望

  • 海に浮かぶように見える法皇山系

    海に浮かぶように見える法皇山系

  • 妙見神社からの展望時よりも幻想的に映る工業地帯の煙

    妙見神社からの展望時よりも幻想的に映る工業地帯の煙

  • 紫雲出山山容

    紫雲出山山容

  • 紫雲出山展望台からの眺望

    紫雲出山展望台からの眺望

    紫雲出山遺跡 名所・史跡

  • 紫雲出山展望台からの古三崎から三崎にかけての展望

    紫雲出山展望台からの古三崎から三崎にかけての展望

  • 紫雲出山展望台からの粟島、高見島、佐柳島等の多島美

    紫雲出山展望台からの粟島、高見島、佐柳島等の多島美

  • 生里漁港をズームで

    生里漁港をズームで

  • 海霧に浮かぶ法皇山脈

    海霧に浮かぶ法皇山脈

  • 工業地帯の煙が魔法のランプの煙が如く幻想的

    工業地帯の煙が魔法のランプの煙が如く幻想的

  • 手前に写る丸山島の海岸で、浦島太郎は亀を助けた

    手前に写る丸山島の海岸で、浦島太郎は亀を助けた

  • 箱浦港と箱崎。箱崎のどん亀石の上で太郎が釣りをしていた時、助けた亀が現れて、竜宮城へといざなわれた。

    箱浦港と箱崎。箱崎のどん亀石の上で太郎が釣りをしていた時、助けた亀が現れて、竜宮城へといざなわれた。

  • 中程に写る箱浦公園に太郎親子の墓がある

    中程に写る箱浦公園に太郎親子の墓がある

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