菊竹清訓の最高傑作　「東光園」に泊まって建物保存について考える　その１

2015/05/10 - 2015/05/10

2013年1月に「菊竹清訓巡礼」出版記念のイベントとして「菊竹清訓を観る、語る」と題して、江戸博で「スカイハウス」「出雲大社庁の舎」など主要プロジェクトの貴重な映像記録を上映するとともに、菊竹事務所の著名なＯＢ４人によるﾊﾟﾈﾙﾃﾞｨｽｶｯｼｮﾝがありました。
そこで配布されたＯＢ、関係者による「心に残るこの一作」のリーフレットで圧倒的に支持された皆生温泉の『東光館』
いつかきっと泊まろうと思っていましたが、その機会がとうとうやって来ました。

航空券とのパックの安いプランなので本館の空中にいるという感覚の部屋には泊まれませんが、別館の一番端の部屋で窓からは上から吊られている本館がよーく見えました。
竣工後50年が経過、メンテナンスが追い付かず大分劣化が放置され、場所によっては悲惨な状態ですが、空前にして絶後の２段ピロティの建物の価値はいささかも揺るがず、軍艦の様な武骨な威厳ある姿で建っていました。

エリア 皆生温泉(鳥取)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0
• ホテル: 5.0
• グルメ: 5.0
• ショッピング: 3.5
• 交通: 5.0

ＪＡＬ利用なので出雲空港から松江を経てJRで米子駅に。
皆生温泉は米子駅から少々ありますのでバスで行きます。

２０分ほどで終点の温泉センターはまだ営業してました。
情報収集します。

皆生温泉は「東光園」よりトライアスロンで有名なのね…

温泉センターには足湯もあります。
すでに５時を回っています。
夕日に映える東光園を見るために急ぎます。

えーと、トライアスロン通りを少し歩いて…

海岸もすぐそこです。
ホテルの人に聞いたけど波で海岸が浸食されて大変だそうです

数分で見えてきました！
「東光園」

か、感激！

なるほどこれが噂の４階のピロティね。
一見、柱の上に乗っているようですが…

吊り構造の５階、６階

チェックインする前に外観をよーく見ます。
上から吊られている５階、６階と４階のピロティが夕陽に映えます

翌朝も撮りました
吊り構造

２段構造にならってか入り口のキャノピーも２段です。

コンクリ打ち放しの外壁は相当劣化が目立ちますが、東光園を特徴つける巨大な柱が４階まで伸びてます

では中に入ってみましょう
ドキドキ…

ひ、低い！

低い天井高の向こうに一段沈んでロビー
そしてその向こうに庭園が広がります

振り返るとホテルフロントです

そしてロビーでひときわ目立つぶっとい柱
まるで主がドッカと居るように

大黒柱のように１本ではなく添え柱の子分を従えて

邪魔だとか言ってはいけません
この柱がミソなんだから

チェックインを済ませて部屋には行かず、荷物を預け内部を見て回ります。
吹き抜けのロビーから庭が一望できます。

正面とは反対の庭側から建物を見るために庭にでます。
後でわかりましたがあの建物は大浴場の建物でした。

庭は建て替えてしまって今はありませんが勤務先のビルの１階内壁一面に石を施した流政之氏の作品です

東光園は昔はこのように純和風旅館だったそうです。
それが異彩を放つマッチョな建物と庭をドカ〜ンと…

ドカ〜ンと本館です

頭に帽子を被ってます

東面を特徴つける階段室とエレベーターシャフト

西側の正面ファサードにくらべ庭の東側は繊細です
階段室の踊り場のスラブをそのまま張り出させてます。

フロントで荷物を預かってもらい一言断ったのでやりたい放題、し放題

庭には目もくれず…

あの階段室も見せてもらいましょう

その前にエレベータで肝心要の４階に。
ドキドキ…

ヒエ〜！
何もありません
4階
たまげました

3本の添え柱が真ん中の柱を支えます

そして、「大梁は上の床から離れているで〜」
と上の階が吊られていることを見せつけてます。
これも演出でしょうか

打ち放しのコンクリは型枠の木目をそのまま出して和風仕立てに
でも、コンクリの圧倒的存在感にかた無しです

壁も何もないので階段室もよく見えます

いやはや言葉がありません

さらに上に行ってみましょう
エレベーターで。

なぜか７階は無くて６階の次は８階「天台」です
誰もいません

以前はこの屋上室は展望レストランでしたが今は営業してません。
時々、ヨガ教室に使用されるとか…
なんと贅沢な！

先ほど下から見た帽子はこれだったのね
シェル構造

屋上ﾃﾗｽを独り占め
４階、８階とも誰もいません

屋上から庭と大浴場
あとで知りましたが奥の３列の屋根が露天風呂

大浴場と露天風呂の向こうの海岸を独り占め
ホテルの人が言うには昔は海岸はもっと遥か遠くだったそうですが
波で浸食されて近くなってしまったとか

シェル構造の帽子がすぐそこです

彼方に大山がくっきりと
ロケーションが原因なのかそれとも偶々なのか
屋上は風がビュービュー吹きまくり

そして日が沈みます
この時期遅いのね。

フロントで預けておいた荷物を貰い部屋に。
することないので、もう一度建物巡り
また外に出て…

住宅街の路地からも…
シェル構造とｴﾚﾍﾞｰﾀｰ塔が目立ちます

近所には神社もありました

貯水ﾀﾝｸやｸｰﾘﾝｸﾞﾀﾜｰが集まるバックヤード越しにも。
５階、６階が宙に浮かびます

通用口から入ると庭園に通じます。

薄暗くなってきました。

7時です
フロントの方が今日は団体が少し入っているので夕食が混むかもしれないとのこと
早めに食事しよっと…

本館と後で増築した新館の1階通路は土産物店が大部分を占めてます。
この辺りは最近リニューアルしたのでしょうか、内装が新しくてロビーから急に俗っぽくなってます。
以下続く…

この旅行記へのコメント （6）

• ムロろ～んさん 2015/06/21 22:00:49

  竣工後50年\(◎o◎)／！？

  アルデバランさん
  
  こんばんは、ムロろ〜んです。
  鳥取の皆生温泉に行かれた旅行記を拝見しました。
  
  『東光館』さんのＨＰを拝見しましたけれど、建物の造りがすごいですね。
  しかも５０年経っているように見えないです！
  コンクリートの古い建物ですから維持管理が難しいと思いますけれど、建物自体が７面白く感じましたよ。
  中に空洞があるのって、香港でもマンションの建物にポッカリ空洞がある建物があって気を入れて運を引きつけるって聞いたことがありますけれど、その意図ってあるのかなぁと思ったのですが…。
  
  ただ、天井階の所の広いスペースでのレストランが閉店になったのは残念だなぁと思いましたよ。
  
  
  ムロろ〜ん(-人-;)
  

  アルデバランさん からの返信 2015/06/22 00:09:05

  RE: 竣工後50年\(◎o◎)／！？

  ムロろ〜ん様　こんにちわ
  
  実はこの帰りに米子市内で市民会館に立ち寄りました。
  東光園より古い建物ですが、老朽化と耐震に問題があり使用停止
  解体か存続か議論の末、市民は存続を選び、昨年大改修を完了させ見事に蘇りました。
  東光園も耐震はＮＧだと思いますが、とても改修するだけの余力はなさそうです
  この後どうなるのか気になります。
  
  そういえば、あのホテルオークラも建て替えで解体ですよね。
  外資系ホテルに対抗するための措置のようですが寂しい限りです。
  ちなみに赤プリも建て替えのため解体された結果、16階の私の席からは富士山が見えるようになりました(^^;
  

• メビウスさん 2015/05/31 00:48:43

  面白い構造ですね！

  アルデバラン様
  
  こんばんは。
  
  驚きました。こんな面白い建造物が日本に存在するんですね！
  この旅行記を拝見するまで知りませんでした。
  
  ここ、私も行ってみたいです！
  
  メビウス

  アルデバランさん からの返信 2015/05/31 23:42:23

  RE: 面白い構造ですね！

  メビウス様　こんにちわ
  
  東光園は本来なら私のような庶民は敷居が高い老舗旅館だったのですが、
  経営者が変わって安売りするようになったようで当日も某国の団体客が大勢いました…
  建物は劣化がすすみ少々悲惨な箇所もありましたが、手が届く値段で泊まれるのでよしとしました。
  一見の価値ありですがなんせ場所が場所だけにチャンスを窺っていました（苦笑い
  最初、建物だけ見るので「素泊まり、布団は自分でしくプラン」を選びましたが、
  周りに食べ物屋さんがあまりなくて、バイキングの夕食を当日追加したら正解でした。
  

• わんぱく大将さん 2015/05/30 23:19:01

  日本にも

  アルデバランさん
  
  日本にもこういった建築があるんですね。　浮かして、地震の時は、えっ、浮かしてあるから動かない？　てなことはないやろ。。。また、不思議な
  
  　大将

  アルデバランさん からの返信 2015/05/31 23:41:10

  RE: 日本にも

  大将様　こんにちわ
  
  相変わらずの魅力的な建物や人物の写真の数々、敬服申し上げます。
  更に最近は車までも…
  とても足元にも及びませんが、念願かなってこの建物をじっくり見ることが出来ました。
  外観とちがって部屋はごく普通の和室なのでなおさら不思議です…