2015/01/18 - 2015/01/18
42位(同エリア359件中)
yukibxさん
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フランス南西部、ボルドーから車で30分のところに、「都会のユートピア」のコンセプトでル・コルビュジエが設計した住宅区画があると前々から聞いていたのですが、全く訪れないままに10年以上もたってしまっていました。このエリアの名前はLA Cit? Frug?s
(ラ・シテ・フリュジェス)
ペサック(PESSAC)という何の変哲もない住宅地の一区画にフレジュス住宅地はあります。今日は市の文化遺産に指定されているこの地区の話を書きます。
やっと冬の日曜日、昼食の後、フリュジェスを見学。2、3日前にペッサック市役所の担当者に電話をして二人分リザーブしたのです。訪問見学後、
こんなに素晴らしいものだとは思っていなく、満足度120%といえます。
このエリアも、冬の木々には葉っぱはなく、寒々としていました。葉がないので、家々の姿をよりよく見る事ができるというメリットはありましたが。
- 旅行の満足度
- 4.5
-
まず始めにアンリ・フリュジェス氏という事業家の話をします。彼はボルドーで親代々 砂糖精錬工場を経営している富豪。しかし単なる富豪ではなく、自分の工場で働く工員へのケアも忘れません。20世紀初頭ですから身分差別は当然だった時代に、珍しいことです。
1920年頃、自分の工場で働く労働者用の宿泊設備を建設。その時設計をしたのがル・コルビュジエでした。
写真は自らフリュジェス住宅地の模型をつくる氏。 -
工員の宿泊設備を成功させたアンリ・フリュジェスは、今度は自分の工場の工員でなく、労働階級の人でも快適な家に住めることを理想として、ル・コルビュジエと組み、フリュジェス住宅地に着手しました。
彼はこの構想を「都会のユートピア」と名付けました。
ペッサック市のはずれにある松林に囲まれた丘陵を購入、ここに200軒以上の家を建てるのが最初の計画でしたが、実際には50軒のみが完成。
写真は模型。私達が見学したエリアです。 -
この住宅地には、7つのモデルがあります。
その一つ、「摩天楼」と呼ばれるモデル。
この建物は現在、ペッサック市役所が買い取り、ペンキをリフレッシュ、床材を新しいものにするなど全体的に手を入れました。オリジナルの仕様を尊重、忠実にリニューアルされました。 -
この「摩天楼」のモデルタイプは3階建。広さは70平米。物置、シャワー室、WC などを入れるともって広くなります。写真は一階から二階に上るZ型階段。部屋の真ん中にある階段というのに、その存在は邪魔ではなく軽い印象を与えます。
この階段は居間と奥にある小さな部屋の隔壁の役割もしています。 -
2階の居間から見た外の景色、大きな窓で冬でもかなり部屋が明るいのが印象的。夏には木々が緑の葉におおわれ、さぞカラフルな景色となるんだろうと想像します。
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居間にはもちろん、ル・コルビュジエのデザインによる世界的に知られた長椅子が置かれていました。
この椅子のデザインは1927年頃のものです。世界で大ヒットした作品。日本でもオフィスを始め、様々な場所でこのラウンジを見かけました。 -
床は、近くのランド地方(作家モーリアックの作品にはランド地方の海辺の松林が欠かせません)に限りなくある松材。コストが低いのがメリット。
家は90年たっていますから、オリジナルの仕様にしたがってリニューアルしたもの。 -
やはりストアーもランド地方の松で作られました。90年前に作られたのでさすがに傷みが激しいですが、修復可能かもしれません。
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モデルタイプ「摩天楼」ル・コルビュジエは彼のキャリアを通して白い家を好んで作ったようです。このモデルタイプの家が一列に並んだ時、各住宅がコンクリートのグレーだと、重圧感を生みます。それを避ける為に彼は、ペイントを使いました。
一階の大きな窓は、もともとはガレージでした。ル・コルビュジエは、労働者が皆自動車を持つようにと、全ての家にガレージをつけました。
ここは「ユートピア構想」なのです。 -
フリュジェスの住宅はカラフルで、1926年当時の人々はかなり驚き、拒絶反応もあったとききます。しかし、ル・コルビュジエは綿密な計算に基づいてカラースケールを作りました。
モデルタイプ「摩天楼」の場合、建物が並列しているので、コンクリートの塊が堪え難く重圧的です。しかし建物を塗装することによって軽い感じをだす事に成功しました。またファッサードの色は、焼きシエナ(赤みある茶色)と白と二通り、交互に塗られました。これは全体が軽感になることと、目盛りとして役立てたそうです。 -
次は「孤立した家」という名前のモデルタイプ。
空中庭園が広々として素敵でした。屋根の上にある空中庭園はほとんど全ての家に備えられています。これも快適なライフスタイルをプロポーズするル・コルビュジエとフリュジェス氏のコンセプトの一環です。
このモデルはかなり広く、一階はガラス張りでアトリエになっていました。その頃(90年前)ではちょっとランクの上の労働者の一年の給料で購入できたといいます。(それがこの住宅集団のコンセプトの一つです)
左下の女性はペサック市役所のフリュジェス住宅担当の女性。説明が分かり易く、興味深いものでした。風邪をひいていらして、ずっとしゃべり続けで苦しそうでしたので、バッグにもっていた日本製ののど飴を差し上げました!(良く効く飴です!) -
もう一つのモデルタイプ、「つい(対)の家」Maison Jumelle .
この家は縦割でくっついています。かなり広く見えますが居住部面積は70平米ほど。
全ての家に言える事ですが、外付けの階段が軽い印象を与えています。
フリュジェスの住宅はカラフルですが、特定のカラースケールに従っています。例えば「つい(対)の家」の場合、3色が使用されています。茶色(焼きシエナ)+ライトグリーン+ホワイト。この3色が交わると軽さが感じられるようになる、とル・コルビュジエは言っています。
彼は他のプロジェクトでも、焼きシエナ、白、薄いグリーンを頻繁に使用しています。 -
モデルタイプ「カンコンス」
残念ながら空中庭園には植物は全く置かれていないので、冬は何か殺風景な感じです。 -
各モデルタイプは庭付きです。この家のオーナーもやはりオリジナルの仕様を守り、リニューアルしています。庭は各住人が自由に作り、和風の雰囲気が感じられる庭にされています。
木々に囲まれた家の外壁にはライトグリーンが塗られました。これは周囲の自然と住宅とを融合させる効果を狙ったためです。 -
モデルタイプ「ZIGZAG ジグザグ」
比較的小型のモデル。この家は外壁の塗装をすっかりリフレッシュしました。フリュジェスの家々は色があせてしまっているケースが多いので、この家がとても目立っていました。特に深みのあるブルーがなんとも魅力的です。 -
小型のモデルタイプ「ZIGZAG」は既に空き家になって久しいのではないかと思われるくらい、廃れた感じでした。外壁をリフレッシュした同じタイプの家に比べると、家というのは住んでいないと傷みが早いですね。周囲の環境が良いだけに惜しいです。
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モデルタイプ「アーケード」の家。これは家々が一列になっていて、庭ももちろん、木々に覆われていて、いい感じを醸し出していました。
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モデル「アーケード」の模型です。
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この写真は、1926年当時、都会のユートピア、フリュジェスが売りにだされた時の様子を見せてくれています。
竣工したのは1926年でしたが、当時の市役所は、家々があまりに奇抜なのと、労働者に快適な家を持たせることに反感を抱き、いい加減な理由をつけて、水や電気供給を許可しませんでした。実際に人々がこれらの住宅を購入し、住み始めたのは4年後の1930年。事業化のアンリ・フリュジェス氏は
かなりの財産を失い、精神的打撃を受け、ノイローゼになってしまいました。時代の先端を行く人は往々にして悲惨です。。
あれからもうすぐ1世紀がたとうとしていますが、これらの住宅がいまだに新しいモダンで快適だということは凄いことだと思います。 -
数軒の家が売りにだされていました。
「摩天楼」モデルタイプの家は、修復費用も加算すると60万ユーロほどです。円にすれば8500万円。高級です!労働者の為の快適な家というコンセプトでしたが、実際に現在住んでいる人達は、医者とか自由業の比較的裕福な人々ということです。 -
私達が訪れたのは1月。至る所に庭のある住宅地区なので、夏に訪れたら、木々も緑、花々も咲き、冬の日よりずっと明るく陽気で魅力的な姿を見せてくれることでしょう。ライトグリーンに塗られた写真のタイプの家の周囲には木々が植えられ、家をグリーンにすることで、周囲に融ける住宅を考えたそうです。
いずれにせよ、夏に再び行って撮った写真をもう一度アップしたいと思います。それまで、グーグルで見つけた数枚の写真をご覧になり、このエリアの夏の様子をご想像ください。
最後に:ル・コルビュジエの全作品が、現在ユネスコ世界文化遺産の候補になっています。ユネスコ世界文化遺産に認められたら、ラ・シテ・フリュジェスも知名度を上げ、周辺ももっと整備されると思います。楽しみです。
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