
2013/12/21 - 2013/12/21
2050位(同エリア4343件中)
naoさん
大阪市北区の中崎通商店街に「青空書房」という一軒の古本屋さんがあります。
店主、坂本健一さんは、戦後間もなく結婚した和美さんと二人で「青空書房」を開店し、以来、半世紀にわたって年中無休で働いてこられましたが、10年前に脳梗塞で倒れたのを機に、毎週日曜日を定休日にしました。
ところが、毎週日曜日が定休日になったことを知らずに訪ねて来るお客さんが居ることに気づき、これではわざわざ来てくれたお客さんに申し訳ないと、四季折々の風物誌や大阪の町の鼓動を伝える絵とともに、ピリッと風刺の効いた中にも、心暖かい気持のこもった言葉を添えた、坂本さん手描きの「ほんじつ休ませて戴きます」のお詫びのポスターを店のシャッターに貼るようになります。
時に読書の素晴らしさを説き、時に人の温もりや人情の機微を失いつつある現代社会を憂おう坂本さんの言葉の底流には、「人に対する心温まる眼差し」とともに、平成22年2月5日にお亡くなりになられた和美さんへの想いと、ご自分への激励の意味も込められていて、多くの人々の共感を呼びます。
今年の11月10日、いつものように店のシャッターに貼りだされた「ほんじつ休ませて戴きます」のポスターの下に、一枚の紙が添えられます。
「永い間本当にありがとうございました 温かいお客様のおはげましと 古書への深い愛着が綴った六十七年 亡妻和美と苦闘と涙の歴史を閉じます」
それは、これまでお店を支えてくれたお客さんに閉店を告げる貼り紙で、翌日、ご自身のブログにその写真を掲載すると、全国に波紋が広がり、坂本さんへの感謝の気持ちや閉店を惜しむメッセージが数多く寄せられます。
また、このニュースは11月27日の新聞にも取り上げられ、「大阪・中崎町 青空書房 来年3月閉店」と報道されます。
ところが、12月に入ると店横のドアに新たに紙が貼り出されます。
「戦後六十七年 そのほとんどをこの店で 古本屋させて戴きました ひとえに本を愛し青空を愛して下さった お客様のお陰 心から 厚く厚く御礼申上げます 平成二十五年歳末閉店の止むなきに至りました 晩年味わふ挫折と徒労感 正に痛恨の極みです」
それは、来年3月末閉店の予定を繰り上げ、年末に閉店するやむなきに至ったことを告げるものでした。
「店におったら生き生きする。 休日になったら廃人ですわ。」と言ってはばからない坂本さんの胸中を察すると、さぞ無念だろうなと思うとともに、坂本さんの言葉に共感し、感動し、励まされた者の一人として、「長い間お疲れさまでした。」と長年の労をねぎらう気持ちがわき上がって来ます。
そんな中、『「ほんじつ休ませて戴きます」ポスター展 〜大阪古書店主のメッセージ〜』と題する坂本さんのポスター展が、12月20日と21日の二日間、大阪古書会館6Fで開催されたので見に行ってきました。
展示会の会場へ向かう前に中崎通商店街のお店を訪ね、いつものようにお元気な坂本さんの姿を見つけると、しみじみ寂しさがこみ上げてきます。
やもたてもたまらず、「いつまで営業されるんですか?」とお伺いすると、「師走まで」との返事。
「師走まで」・・・。
まさかと思いながら「12月31日までですか?」と聞きなおすと、「そうです」と満面の笑みを浮かべた顔でうなづきます。
事ここに及んでも、商人としてのけじめを貫こうとする坂本さんの姿がそこにありました。
閉店されたら、まずゆっくりして下さい。
そして、体に気をつけて、いつまでもお元気で。
坂本さんの言葉を人生の糧にして、これからも生きて行きます。
ほんとうにありがとうございました。
- 同行者
- 一人旅
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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展示会の会場へ向かう前に「青空書房」を訪れると・・・
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人なつこい坂本さんの笑顔がありました。
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おそらく閉店を知って訪れたのであろうお客さんが、最近刊行された『「ほんじつ休ませて戴きます」 人生最晩年、あふれ出た愛の言葉集』を買い求め、さっと手を差し出すと・・・
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感謝の気持ちを込めて手を握り返します。
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この店に座り続けて67年。
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坂本さんのことだから、「ここまで頑張って来れたのもお客さんのおかげです。」って、きっと言うんでしょうね・・・。
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店横のドアに貼られた閉店の告知文に書かれた、「正に痛恨の極みです」は本心以外の何ものでもないだろうと思います。
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『「ほんじつ休ませて戴きます」ポスター展 〜大阪古書店主のメッセージ〜』が開催されている・・・
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大阪市中央区にある「大阪古書会館」です。
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このビルの6階が会場になっています。
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エレベーターを降りて、一歩会場に足を踏み入れると・・・
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壁一面に「ほんじつ休ませて戴きます」のポスターが貼られています。
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いいえ、壁だけではありません。
所狭しと、柱にまで貼られています。 -
今年5月に「京橋画廊」で行われた展示会でも、最も感動したのがこのポスターです。
※『2013 「ほんじつ休ませて戴きます」 青空書房 ポスター展』と題した旅行記にこの時の模様を書いています。
お亡くなりになって3年になる奥さんのことを、いまだに思っておられる坂本さんの温かい気持ちを察すると、ただただ感動以外の何物でもありません。 -
奥さんがお亡くなりになられた直後に貼り出されたと思われるポスターです。
「かなしくて あたたかい妻でした」のくだりを読んで、今こうして旅行記を書いている私の目に涙が滲んでいます。 -
戦友を亡くすのはつらいことです。
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夕焼けに、命の終わりを重ね合わせて泪されているんですね。
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亡くなった奥さんを偲ぶと、今でも泪があふれるんですね。
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お地蔵さん好きだった坂本さんは、若い頃、奥さんに店を任せきりにしてお地蔵さん行脚していた時期があったそうです。
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坂本さん目には、満点の星空の中でも奥さんの星が一番輝いて見えるんでしょうね。
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坂本さんの座右の銘ともいうべき、本との巡り合いに感謝を込めた言葉。
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夏の風物詩、七夕を題材にしたポスター。
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大阪の夏を彩る、天神祭を題材にしたポスター。
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秋田の竿灯まつりを題材にしたポスター。
「美女とよい本しか来ない」のは、坂本さんが居るからですよ。 -
これは、天神祭のギャル神輿かな・・・。
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「どうせ 威張ったって 行くとこ同じなんやから」、そんなに肩肘張らんでも、そこの偉い人・・・。
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含蓄のある言葉です。
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坂本さん、奥さんが居ないと思って・・・。
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「武」より「文」ですか。
でも、啄木が聞いたら、「その言葉、そのまんま返すは!」って言われまっせ、坂本さん。 -
他人の痛みを知るべしですか・・・。
こちらは褒めてもらえそうですね。 -
これぞ大阪人の本質を的確にとらえた言葉です。
大阪人は、いいこと悪いこと全てを、笑いに包んで生きているんです。 -
商人の町大阪の風物詩、戎さんを題材にしたポスター。
若い人に向けた言葉が綴られています。 -
コツコツと、地道に努力することが大事なんですよね。
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これは通天閣でしょうか・・・。
人間、死ぬまで勉強です。 -
三好達治の「雪」を題材にしたポスター。
ご自分のお店を、じっと春が来るのを待っている豪雪地帯に例えているんでしょうか・・・。 -
坂本さん流、美人の根源ですかね。
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「遊びせんとや 生れけん」とは、現代語に直せば「人間は遊ぶために生まれてきた」となるんですが、解釈のしようによっては、「まず遊びがあり、その結果、文化が生まれた」であるとか、「文化の原点は遊びにあり」といった深い意味があるようです。
遊びも無駄にはならないんですね。 -
本は人生の道しるべとも言いますよね。
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これもある意味で大阪人の本質を示した言葉です。
気概を持って生きています。 -
「虎は一日にして千里を走る」と言われ、行動力のある者を例える言葉として用いられています。
もう少しです、がんばってください。 -
これは坂本さんにしか語れない言葉だと思います。
重い、ずしっと重い言葉です。 -
「ほんまに おおきに ありがとう」。
ええ大阪弁です。 -
本を読まない人は、人生の半分を損しているようです。
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なんと軽妙洒脱な絵なんでしょうか。
徳利をかたわらに、烏鷺の戦いを楽しんでいます。 -
この言葉には、通天閣も唸っています。
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大阪の秋の風物詩、御堂筋のイチョウの黄葉。
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坂本さんが言う「やさしさ」とは、「ちやほやする」ってことじゃないからね。
念のため・・・。 -
狭心症で入院されていた時の、病室からのスケッチでしょうか。
心臓の近くに風船を入れたんですね。 -
これも商人の町大阪の風物詩、戎さんを題材にしたポスター。
商売人の端くれにも置けないような商売しかできない自分を称えています。
面白くない本は有っても売らない。 -
坂本さんも鬼の撹乱しましたか・・・。
えっ、「鬼の撹乱やない、仏の撹乱や」ですって・・・。 -
東日本大震災の惨状を憂いながらも、来るべき春が来ることを教えています。
体験に裏打ちされた、説得力のある言葉です。 -
これも東日本大震災の被害者にエールを送る言葉です。
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坂本さんの生きてきた軌跡のような言葉です。
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坂本さんの読書感の一つです。
「読まずに死ねるか」という本に巡り合えた幸せ。 -
なんとも色っぽい絵です。
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ひょっとして、尖閣諸島のいざこざを題材にしたんでしょうか・・・。
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青春まっただ中の坂本さんです。
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その通り。
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わざわざ熊本から「くまモン」が応援に来たようです。
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たしかに、TVの中の通行人は演技しているだけなので、自我はありません。
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「見上げてごらん夜の星を」。
この曲はしんみりとした良い曲です。 -
男はこうでなくっちゃね。
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さしずめ、「あんこが詰まっているのは鯛焼き」ですかね・・・。
SLが今にも動きだしそうです。 -
若者よ、逆境に負けるな!
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最近の世相を見事に言い表しています。
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本に綴られた言葉の泉は永遠に尽きることはありません。
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人の人生は、短いようで永いものなんです。
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人間、「黙して語らず」、「能ある鷹は爪隠す」を旨とすべしですか。
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とにかく、本を読みましょう。
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本も人生も、脇目もふらずに歩いて来られたんですね。
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臨時休業のポスター。
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坂本さんは夢のある絵を描く人ですね。
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日本各地にはいろんな人形があるんですね。
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大阪の夏を彩る、天神祭を題材にしたポスター。
この言葉に思い当たる人が一人だけ居るには居るんですが・・・。 -
坂本さんは、精一杯生きてきた見本のような人です。
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ちょっと深刻で、弱気になっている坂本さんの気持ちが表れています。
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どうもこの辺りで閉店を決意されたようです。
閉店されたら、まずゆっくりして下さい。
そして、体に気をつけて、いつまでもお元気で。
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この旅行記へのコメント (2)
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- koumeさん 2013/12/24 06:05:36
- 青空書房さんでしたか。
- naoさん おはようございます。
何度かTVで拝見しお店やご主人のことは知っていたのですが、お店の名前は失念しておりました。
お店の名前といい、手作りのお知らせといい、本に親しみ言葉を愛する本屋さんの生き様を見せていただいた気分です。
とても感動いたしました。
Koume
- naoさん からの返信 2013/12/25 18:59:13
- さみしいです。
- Koumeさん、はじめまして。
いつも、私の拙い旅行記にご投票いただきありがとうございます。
お店や坂本さんのことはすでに皆さんよくご存じなので、「私ごときが」とはばかられたんですが、坂本さんの言葉に共感し、感動し、励まされた者の一人として、永く記憶にとどめて置かなければ、との思いから書かせていただきました。
来年から、あのポスターが見られなくなるのかと思うと、寂しい気持ちでいっぱいになっています。
nao
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