2013/09/14 - 2013/09/15
8位(同エリア43件中)
ハンクさん
サンクトペテルブルク滞在中の週末、エストニアのタルトゥを訪れた。目的地はエストニアの2ヶ所目の世界遺産シュトルーヴェの旧観測所である。サンクトペテルブルクからはバスで約7時間、Lux ExpressとSimple Expressという2社の夜行便と昼行便が運行されている。前者の方がバスが少し豪華で内部も広いが、それでも片道25ユーロと安い。しかし夜行バスはリクライニングにも限度があり、少し前に痛めた腰には負担が大きい。やはり少々高くても列車の旅の方が楽ではある。
エストニアを訪れるのは、2007年の首都タリン訪問以来6年振り、まず驚かされたのはユーロが使われていることである。店員に「いつから導入されたのですか?」と聞くと、にっこり笑って「かなり前だ」という返事、ユーロはすでに定着しているようだ。調べてみると、2011年1月1日より導入されておりすでに3年目、バルト3国では最初であり、ラトヴィアは14年に、リトアニアは15年に導入予定だという。それにしてもロシアからフィンランドを訪れた時にも感じることであるが、人々がいつも笑顔で迎えてくれる。ロシアでは店員の笑顔にお目にかかることは珍しいが、この隣国では違う。英語も通じるし、ひとたびロシア国境を越えると「ヨーロッパ」にやってきたことを体感することができホッとさせられる。
タルトゥはタリンの南180kmにあり、南エストニアの中心都市である。首都タリンと同様ハンザ都市であり、ドイツ風の中世の街並みがソ連時代の体制により冷凍保存されたような町である。首都のタリンが政治・商業の中心であるのに対して、タルトゥにはエストニア最古のタルトゥ大学(1632年スウェーデン王グスタフ・アドルフによって設置)があり、エストニアの学問・文化の中心である。
町の歴史は古く、1030年にバルト地方へ進出したキエフ大公が軍事拠点を築いたことに始まる。その後の支配者はめまぐるしく変わり、13世紀にドイツ騎士団の支配下におかれ、その後ロシアがタルトゥを征服。1280年代には、ハンザ同盟に加盟、ドイツ人中心の都市となる。その後はポーランド・リトアニア共和国領となり、17世紀にはスウェーデン王国領になる。1700年には再びロシア帝国の統治下に入った。第1次世界大戦末期にエストニアは独立を宣言するが、まもなくドイツ軍に占領される。1920年一旦ソビエト連邦から独立するが、1939年の独ソ不可侵条約のあと再び占領される。そしてソ連崩壊後の1991年、ついにエストニアは独立を勝ち得る。
町の見所は中心部のラエコヤ広場と周辺のタルトゥ大学、聖ヨハネ教会など、そして500mほどの距離にあるトーメの丘にある大聖堂、天使の橋と悪魔の橋、そしてシュトルーヴェの旧観測所である。トーメの丘に登り、天使の橋の下をくぐって右手に大聖堂、左手の小道をしばらく行くと見える、何の変哲もない建物がユネスコ世界遺産に登録された旧観測所である。何の案内もなく非常に見つけにくく、建物の中に入れる訳でもない。予想はしていたが、何とも素っ気ない世界遺産だ。
シュトルーヴェの測地弧とは、ベラルーシ、エストニア、フィンランド、ラトヴィア、リトアニア、ノルウェー、モルドヴァ、ロシア、スウェーデン、ウクライナの10か国にまたがる、子午線の長さを測るために調査した地点である。現存するここタルトゥー旧観測所、フィンランドのアラトルニオ教会など34か所の観測点群が世界遺産に登録されている。ヴィルヘルム・シュトルーヴェ(1793〜1864年)はドイツ系ロシア人の天文学者、約40年の歳月をかけてこの10か国、2820kmにわたって265か所の観測点を設定、地球の形や大きさを調査した。この測地観測の手法により世界の本初子午線の制定などに貢献した。
市中心部の見所は一応見終えた後、市街地の南端にあるKGB博物館を訪れた。ソ連時代には「灰色の家」と呼ばれて恐れられた建物の地下にある監獄、拷問部屋、看守室などを博物館として公開したものである。中を歩くと突然銃声がしたり、扉が閉まる音がしたり、アウシュヴィッツを思い出すような恐怖の演出が効果を上げている。もちろんもう一度訪れようとは思わないが。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- グルメ
- 3.5
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円 - 3万円
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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Lux Expressバスが出発するバルチスキー駅の夜景
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早朝タルトゥのバスターミナルに到着した長距離バス、さらにラトヴィアの首都リーガまで走る
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トーメの丘にある天使の橋、川に架かる橋ではなく道を跨ぐ
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天使の橋から見下ろす、紅葉が始まっている
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ヴィルヘルム・シュトルーヴェ(1793〜1864年)の記念碑
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これが世界遺産のシュトルーヴェの旧観測所
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シュトルーヴェの旧観測所の近景、中には入れない
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悪魔の橋も川に架かる橋ではなく道を跨ぐ
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トーメの丘の大聖堂のファサード
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トーメの丘の大聖堂を横から見る
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トーメの丘の大聖堂の内部
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バスターミナルに近い市民の市場
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市民市場の内部
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タルトゥ美術館のファサード、地盤沈下のため傾いている
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タルトゥ美術館の周囲の建物 の多くも傾いている
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タルトゥ美術館に展示されたランの花
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タルトゥ美術館の展示
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ニンニクの飾り物、魔除けなのだろう
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ラエコヤ広場と市庁舎
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市庁舎とラエコヤ広場の賑わい
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イチオシ
タルトゥのラエコヤ広場のシンボル、キスの噴水
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タルトゥ大学のギリシャ風の建物
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タルトゥ大学のギリシャ風の建物のファサード
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聖ヨハネ教会を横から眺める
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聖ヨハネ教会のファサード
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聖ヨハネ教会の素焼きの塑像
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聖ヨハネ教会の内部
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聖ヨハネ教会の内部
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聖ヨハネ教会の向かいの家の雨樋は竜の形をしている
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クーニ通りの朝市の風景
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KGB博物館、ソ連時代には「灰色の家」と呼ばれて恐れられた建物
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地下の監獄の囚人用ベッド、アウシュヴィッツを思い出す
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監獄で銃を持つ看守
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虐待されて死亡した囚人の写真
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囚人を拷問にかける独房
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チンバロンに似た民族楽器を奏でる奏者
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エマユギ川と遊覧船乗り場のアトランティス
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国境のナルヴァ川を渡る橋のエストニア側のナルヴァ城
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国境のナルヴァ川のロシア側のイワンゴロド城
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サンクトペテルブルクのバルチスキー駅に帰着した長距離バス
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