2012/09/08 - 2012/09/08
33位(同エリア90件中)
ブンさん
北ドイツを紫色のハイデ(エリカ)がおおう夏の終わり、アンネ・フランクがその短い命を終えたベルゲン・ベルゼン強制収容所跡へ行ってきました。この強制収容所跡はツェレから北へ 25km 離れた森のなかにあり、ふだんは交通の便が大変悪いところですが、南ハイデ自然公園(Naturpark Sudheide)にほど近いため、夏の間だけはハイデ観光バスを利用して訪れることができます。わたしが利用したのもこのバスでした。
http://bergen-belsen.stiftung-ng.de/en/visitor-information.html
出発点はハンブルク。
ツェレまでは電車、ツェレから現地までハイデ観光バスに乗ります。
【電車】
DB (Deutsche Bahn) のサイトでツェレまでの乗車券を予約し、プリントアウトして持参しました。数日前までに予約すると割引があったように記憶しています。決済に使ったクレジットカードが本人確認になります。帰りも同じプリントアウトを見せました。
参考までに、わたしが乗った電車のスケジュールは……
◯行き
ハンブルク中央駅 Hamburg Hbf 09:53 (ICE 787) --- ウエルツェン Uelzen 10:42
ウェルツェン 11:09 (ME 82827) --- ツェレ Celle 11:46
◯帰り
ツェレ 17:18 (IC 2082) --- ハンブルク中央駅 18:29
【バス】
CeBus Entdeckerbus
夏(6月半ばから10月半ばの)のみの運行、ツェレのバスターミナルから出る循環バス。1日3本です。
参考までにわたしがのったバス時刻は……
◯行き
ツェレ駅バスターミナルA Bahnhof/ZOB(A) 12:15 --- ベルゲン・ベルゼン強制収容所跡 Belsen Gedenkstatte 13:12
◯帰り
ベルゲン・ベルゼン 15:50 --- ツェレ駅バスターミナルA 16:44
シーズンになると強制収容所ウェブサイトにリンクが貼られると思います。わたしもそれを利用して時刻表などダウンロードしました。
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.5
- 交通
- 3.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 観光バス
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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まずはツェレへ向かいます。バスのパンフレットに載っていた地図より。
今回はハンブルク(上部)から右まわりにリューネブルクを通り、ウェルツェンで乗り換えてツェレ(黄色のエリア)へ行きました。 -
Uelzen駅でメトロノーム(ME)という在来線に乗り換えます。なかなか綺麗な黄色と青の二階建て。鈍行なので大変遅いですが、そこはがまんがまん。
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ツェレ駅で電車を降りたはいいが、乗り場がわからない……。駅前には複数のバス停があったのです。
そこで、インターネットから印刷した時刻表を見せながら、駅員さんにハイデ観光用バス「Entdeckerbus」の乗り場を聞きました。
バス時刻表に書かれた乗り場 "ZOB (A)" は「バスターミナルA」という意味。その「A」がどこにあるか分からなかったのですが、鉄道駅から道をはさんだ立体駐車場の1階にひっそりありました。ドキドキしながら待っていると、いかにも観光用というふぜいの花模様のバスがやってきました。
チケットはバス運転手から直接購入します。1日券3ユーロ。この便で本当にあっているか不安だったので、近くのおばさまに地図をみせながら「ここへ行きたいんですけど」と英語で聞いたら、大丈夫という仕草をしてくれました。ようやく安心して窓の外を眺めます。
※英語もドイツ語も「ここ」は「ヒア」というので、どこへ行くにも地図を出して「ヒア!ヒア!」というとだいたい通じます。 -
これが Entdeckerbus です。エリカの薄紫色がわかるでしょうか。そして、後ろに自転車を載せられるデッキがついています。さすがサイクリング好きの国ドイツ。
この荷台、なかなか可愛いのですが、小回りが利かないせいでスピードがかなり遅い。しかもこのバスは道中の小さな町にいちいち全部停まっていくので、乗っているだけでも少し骨が折れます。チケットが安いせいか、観光客だけでなく近所のおばさんたちもどんどん乗ってきて、「あらー、◯◯さん、どこまで?」みたいな会話をしています。先ほどわたしが話しかけた英語の通じていないおばさんもそういう方のようでした。 -
バスを降りると小さなサインがありました。あたりは鬱蒼たる森。ドイツの強制収容所跡はどこも人里離れた「だだっぴろい土地」に作られています。
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ベルゲン・ベルゼン強制収容所入り口。この広場はアンネ・フランク広場という名前で、写真左手にかんたんな宿泊施設があります。ツーリングやドライブにも良さそうな土地で、大型バイクのライダーたちや若者グループが次々訪れていました。
入場無料。 -
入口。
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薄暗い森の小径を抜けると、だだっ広い収容所エリアがあらわれます。そして、ここも薄紫のハイデで覆われていました。
ハイデはそもそも荒れ果てた土地、つまり、ほかの植物が生育できないところに根を張って育つ草花です。これだけのハイデが咲き乱れているということは、ここが不毛の地だということ。なんだか胸がつまります。 -
記念碑。
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イギリス軍がこの強制収容所を解放したとき、所内にはおびただしい死体と瀕死の人びとが溢れかえっていたとのこと。
これは身元確認もできないまま埋葬された人びとの墓。ここだけで2500人が埋められているそうです。墓の上にハイデが咲き乱れています。 -
さて。
お目当てのアンネ・フランクの墓が見つかりません。ウェブサイトにも載っていなかったし、パンフレットにも載っていません。 -
あてもなく歩きます。すると
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お墓がいくつも見えてきました。雲行きがちょっと心配です。
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ありました。アンネと姉マルゴットのお墓です。
アンネは1944年8月に隠れ家でつかまり、母や姉とともにアウシュビッツへ送られました。しかし、ドイツ軍の前線後退にともなって、同年10月末、姉とともに後方のベルゲン・ベルゼンへ送り戻されました。男性専用キャンプだったベルゲン・ベルゼンには女性用施設がなく、女たちはベッドもないテント小屋で地面に直接寝ることを強いられたそうです。北ドイツの寒さを知るわたしとしては、聞いただけで骨の芯からガクガク震えが来そうなエピソードです。マルゴットとアンネがチフスにかかってこの世を去ったのは1945年2月〜3月。お墓はありますが、もちろん、遺体は見つかっていません。 -
背中側からみた、マルゴットとアンネのお墓。
ここから見えるのは、同じように命を失った人たちの墓です。もちろんお墓の下に本人が眠っているわけではありません。ここで亡くなった方たちは基本的にどこで息絶えたのかはっきりとはわからないうえ、遺体も見つかっていない方ばかりです。つまり、おびただしい人びとが匿名のまま亡くなっているということ。アンネたちもきっとそうだったでしょう。
彼女たちの墓が地図に記されるわけでもなく、ひっそりと佇んでいるのには、わけがあったのだ、と感じました。 -
敷地のはしの方は森になっています。森のなかに祈りのための施設がありました。
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瞑想のための施設。
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記念碑。
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ヘブライ語の記念碑。
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遺体焼却炉があった付近には、またしても集合墓地がありました。ただし、ここに埋まっている人数は「計測不能」と書いてあります。
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ここにはとりわけ見事にハイデが生い茂っていました。
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敷地内を30分くらいかけてぐるりと散歩しました。こちらは大通りだったエリア。
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敷地の見学を終えて、入り口付近の記念館へ戻りました。巨大な壁がそびえたつ、圧迫感のある作りです。
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記念館の内部。
展示は綺麗で詳しく、この収容所跡が人気スポットであることをうかがわせます。正直にいうと有名なダッハウ(ミュンヘン近郊)よりも設備が整っていました。見ごたえがあります。 -
暗い暗い記念館から外の緑が見えます。
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アンネのパネルはこれだけでした。アンネを商売にしない、という気概を感じます。
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少し天候が良くなってきたので、バスの時間まで歩くことにします。
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この場所に置かれた墓はただのシンボルにすぎない、という説明書き。
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木陰にもお墓がありました。遺族がこの場所を選んだのでしょう。
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ふたたびマルゴットとアンネのお墓。
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いろいろなお供え物が置いてあります。
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この集団のツアーガイドは英語で話していました。外国人も多いのでしょう。
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ハイデ。
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ハイデ。エリカ街道には綺麗なだけではない、いたましい歴史があるんですね。
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帰りのバスを待ちます。行きと同じハイデ模様のバスに、先ほどもらったチケットを見せて乗り込みます。
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今回は木組み家屋で有名なツェレを観光することはできませんでした。でも、のろのろバスのおかげで、古い家をたくさん見ることができました。
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帰りの電車は近郊快速ICです。ハンブルクまで1本。
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自分用おみやげ。
真ん中のアンネ・フランク絵葉書は、記念館に置いてあったもの。とはいえ、記念館とは関係なく、遺族団体が寄付集めのために置いたもののようでした。
アンネを特別扱いせず、ほかのすべての犠牲者と同じように扱おうという方針のおかげで、被害の大きさについて、わたしもいろいろ考えさせられました。交通の便はよくありませんでしたが、行ってよかったと感じています。
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