アメリカは何と言っても航空機と車の国、鉄道の旅は、日本やヨーロッパとはかなり異なる。アメリカ全土は、アムトラックという鉄道がカヴァーしているが、東海岸のボストン～ワシントンのメトロライナーを除けば、主要幹線はシカゴを起点にして南、西、東へ日に1便、または週に3便の長距離列車が2～3日かけてゆったりと走る、時間に余裕がある人の乗り物だ。座席は航空機のファーストクラス並みの広さと、かなり傾けることができるリクライニングシートで、贅沢を言わなければ眠ることはできる。アムトラックとは、アメリカで1971年に発足した、全米をネットワークする鉄道旅客輸送を運営する公共企業体。正式名称は「全米鉄道旅客公社」で、連邦政府出資の株式会社である。<br /><br />小生はシンシナティに滞在していた時の週末、「カーディナル号」という名の列車で何回かシカゴを往復した。もちろんシカゴ交響楽団を聴くのが主目的である。残念ながらデジタル写真は1枚も残っていないので、ここではご紹介できない。その後、余りにも時間がかかるのと、週3便という制約から車で5時間走るようになった。それでも、列車の旅には捨てがたい哀愁漂う魅力がある。<br /><br />ここでは「テキサス・イーグル号」という、サンアントニオからオースティン、ダラス、セントルイスを経て、シカゴに走るアムトラックをご紹介する。サンアントニオ発が7時、途中サンマルコスに停車し、オースティンには9時31分に到着する。その後ダラス、セントルイスを経由してシカゴには約32時間後の翌々日の1時52分に到着する。この列車はシカゴ・サンアントニオ間は毎日運行で、サンアントニオで週3便運航のロサンジェルス行きの「サンセットリミテッド号」と接続する。<br /><br />テキサス独立の象徴、「アラモの砦（とりで）」で知られるサンアントニオは、家族と共に赴任した第2の故郷だ。この街は別の旅行記で紹介しているので、ここではテキサス州の州都オースティンと、ケネディ大統領が暗殺されたことで知られるダラスについてご紹介する。<br /><br />オースティンは人口約85万人、州内ではヒューストン、ダラス、サンアントニオに次ぎ、位置的にはこのテキサス3大都市の三角形のほぼ真ん中にある。テキサス州会議事堂はワシントンD.C.のアメリカ合衆国議会議事堂にこそ及ばないものの、全米50州の州会議事堂の中では最大の建物であり、ブッシュ大統領親子の本拠地であった。また、全米有数の規模のテキサス大学本部があり、広々とした構内は日本の大学と趣を異にする。<br /><br />ダラスは人口約120万人で、州内ではヒューストンに次ぐ。しかしフォートワースやアーリントンなどを含めた大都市圏の人口は約550万人で全米5位となる。石油化学、航空産業などの工業の中心都市である。何と言っても、ダラスで遊説中のケネディ大統領が暗殺され世界中に知られるようになった。事件発生後は産業まで衰退しかけたが、1970年台に国際的な原油価格の高騰の恩恵を受け、経済は再び活況を取り戻した。<br /><br />1963年11月22日金曜日、現地時間12:30にダラスで第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが市内をパレード中に銃撃され死亡した。犯人とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドが2日後に警察署管内でジャック・ルビーに撃たれて殺され、暗殺の動機も背後関係も分からず多くの謎を残したまま捜査が終了し、陰謀説も多い事件として半世紀が過ぎた現在でも論議を呼んでいる。<br /><br />首謀者と言われる人物は、テキサス州を縄張りとするマフィアのカルロス・マルセロ、ケネディの急進的なベトナム戦争撤退の方針と対立していた産軍複合体、またソ連のニキータ・フルシチョフ、キューバのフィデル・カストロ、更には解任されたことを根に持った元 CIA 長官アレン・ダレス、FBI 長官ジョン・エドガー・フーヴァー、果ては大統領の座を狙った副大統領ジョンソン、大統領選挙で敗れたニクソンまで挙げられているというから驚きだ。これはケヴィン・コスナーの娯楽映画「JFK」の世界である。<br /><br />オズワルドはエルム通りに面するテキサス教科書倉庫 6 階から狙撃したと言われる。現在は、６階博物館という名の博物館になっており、事件のあった当日の様相を撮影フィルム、写真、目撃者の証言などを展示する。いまだ論争の絶えないウォーレン委員会結論や事件が後世に与えた影響についても展示している。また、暗殺犯オズワルドが狙撃したと言われる場所に立つこともできる。なお、場内の写真撮影は不可。<br />（開館：感謝祭 (11 月の第 4 木曜日) とクリスマス (12 月 25 日) 以外は年中無休）<br />

アメリカ大陸鉄道の旅 : アムトラックで行くテキサス州都オースティン～「JFK」暗殺の舞台ダラス

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2005/04/03 - 2005/04/05

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アメリカは何と言っても航空機と車の国、鉄道の旅は、日本やヨーロッパとはかなり異なる。アメリカ全土は、アムトラックという鉄道がカヴァーしているが、東海岸のボストン～ワシントンのメトロライナーを除けば、主要幹線はシカゴを起点にして南、西、東へ日に1便、または週に3便の長距離列車が2～3日かけてゆったりと走る、時間に余裕がある人の乗り物だ。座席は航空機のファーストクラス並みの広さと、かなり傾けることができるリクライニングシートで、贅沢を言わなければ眠ることはできる。アムトラックとは、アメリカで1971年に発足した、全米をネットワークする鉄道旅客輸送を運営する公共企業体。正式名称は「全米鉄道旅客公社」で、連邦政府出資の株式会社である。

小生はシンシナティに滞在していた時の週末、「カーディナル号」という名の列車で何回かシカゴを往復した。もちろんシカゴ交響楽団を聴くのが主目的である。残念ながらデジタル写真は1枚も残っていないので、ここではご紹介できない。その後、余りにも時間がかかるのと、週3便という制約から車で5時間走るようになった。それでも、列車の旅には捨てがたい哀愁漂う魅力がある。

ここでは「テキサス・イーグル号」という、サンアントニオからオースティン、ダラス、セントルイスを経て、シカゴに走るアムトラックをご紹介する。サンアントニオ発が7時、途中サンマルコスに停車し、オースティンには9時31分に到着する。その後ダラス、セントルイスを経由してシカゴには約32時間後の翌々日の1時52分に到着する。この列車はシカゴ・サンアントニオ間は毎日運行で、サンアントニオで週3便運航のロサンジェルス行きの「サンセットリミテッド号」と接続する。

テキサス独立の象徴、「アラモの砦（とりで）」で知られるサンアントニオは、家族と共に赴任した第2の故郷だ。この街は別の旅行記で紹介しているので、ここではテキサス州の州都オースティンと、ケネディ大統領が暗殺されたことで知られるダラスについてご紹介する。

オースティンは人口約85万人、州内ではヒューストン、ダラス、サンアントニオに次ぎ、位置的にはこのテキサス3大都市の三角形のほぼ真ん中にある。テキサス州会議事堂はワシントンD.C.のアメリカ合衆国議会議事堂にこそ及ばないものの、全米50州の州会議事堂の中では最大の建物であり、ブッシュ大統領親子の本拠地であった。また、全米有数の規模のテキサス大学本部があり、広々とした構内は日本の大学と趣を異にする。

ダラスは人口約120万人で、州内ではヒューストンに次ぐ。しかしフォートワースやアーリントンなどを含めた大都市圏の人口は約550万人で全米5位となる。石油化学、航空産業などの工業の中心都市である。何と言っても、ダラスで遊説中のケネディ大統領が暗殺され世界中に知られるようになった。事件発生後は産業まで衰退しかけたが、1970年台に国際的な原油価格の高騰の恩恵を受け、経済は再び活況を取り戻した。

1963年11月22日金曜日、現地時間12:30にダラスで第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディが市内をパレード中に銃撃され死亡した。犯人とされたリー・ハーヴェイ・オズワルドが2日後に警察署管内でジャック・ルビーに撃たれて殺され、暗殺の動機も背後関係も分からず多くの謎を残したまま捜査が終了し、陰謀説も多い事件として半世紀が過ぎた現在でも論議を呼んでいる。

首謀者と言われる人物は、テキサス州を縄張りとするマフィアのカルロス・マルセロ、ケネディの急進的なベトナム戦争撤退の方針と対立していた産軍複合体、またソ連のニキータ・フルシチョフ、キューバのフィデル・カストロ、更には解任されたことを根に持った元 CIA 長官アレン・ダレス、FBI 長官ジョン・エドガー・フーヴァー、果ては大統領の座を狙った副大統領ジョンソン、大統領選挙で敗れたニクソンまで挙げられているというから驚きだ。これはケヴィン・コスナーの娯楽映画「JFK」の世界である。

オズワルドはエルム通りに面するテキサス教科書倉庫 6 階から狙撃したと言われる。現在は、６階博物館という名の博物館になっており、事件のあった当日の様相を撮影フィルム、写真、目撃者の証言などを展示する。いまだ論争の絶えないウォーレン委員会結論や事件が後世に与えた影響についても展示している。また、暗殺犯オズワルドが狙撃したと言われる場所に立つこともできる。なお、場内の写真撮影は不可。
（開館：感謝祭 (11 月の第 4 木曜日) とクリスマス (12 月 25 日) 以外は年中無休）