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この日曜日はサーンチーに引き続き、ビームベートカーをフライトの都合で8時間で見て回った忙しい1日であった。出発の前日にMPツーリズムという会社に電話でタクシーを予約した。ボーパール空港に早朝6:55到着で、16:05に出発するため、約8時間でサーンチーとビームベートカーを見ることができるよう手配を頼んだ。先方は8時間では難しいと難色を示したが、私のリスクで強行することにした。実際にはほぼ予定通り15:00に空港に帰着することができた。<br /><br />実はボーパールは1984年に発生した世界最悪のユニオンカーバイド社化学工場事故によって世界に名を知られることになった町であり、記憶に残っている方もいるかもしれない。12月2日の深夜、殺虫剤の主成分イソシアン酸メチルの入ったタンクの中に水が流入し、発熱反応のため圧力が上昇、約40tの有毒ガスが工場周辺の町に流れ出した。工場の近隣市街がスラムで人口密集地域であったため、夜明けまでに2000人以上が死亡、15万人以上が被害を受け、最終的には1万5000人以上が死亡した。現在も工場から漏れ出した化学物質による周辺住民への健康被害が続いているという。タクシードライバーに、もし時間的な余裕があればこの工場に立ち寄ることができないか聞いてみた。しかしこの地域は厳重に立入り禁止となっているそうで、彼の兄弟の家族も亡くなるなど被害の深刻さを実感させられた。<br /><br />さて本題に入ろう。サーンチーから約2時間、途中悪路が続き、大型ダンプと際どくすれ違いを繰り返し、ひやひやしながらやっとの思いで到着、250ルピーの入場券を購入して入場した。丘の上に10m以上はある奇岩が森の中にいくつも立ち並んでいる。奇岩の下腹部が洞窟やシェルターのようになっており、約1万年前の石器時代に人が住んでいたようだ。もともとこの辺りは海底にあり、地殻変動によって隆起、侵食を受けて独特の地形を呈するようになった。アメリカのアーチーズ国立公園ほどの規模ではないが、水流によって岩が削られた痕跡を見ることができる。<br /><br />最初の壁画を見て100ルピーほど払ってガイドをつけることにした。ガイドに聞かないと貴重な壁画(落書きの類も含めて)を全て見ることはできないだろう。岩絵の主題は狩りの描写が圧倒的に多い。象、鹿、孔雀、牛、虎、ライオン、馬、ブタなどなど、多くの動物が描かれており、それと同時に狩りをする人間が動物の間を動き回っていたりする。その他、踊りを踊っている絵や、花の絵、戦争の絵などもある。全て岩壁を削ったか、自然から取った絵の具で描かれている。壁画の隅にはそれぞれ管理用の番号がペンキで記されているのだが、ペンキの塗料はすぐに剥がれ落ちてしまうそうだ。それに対しこの壁画は1万年の風雨に耐えて現存しているのだ。<br /><br />ガイドの話によると、これらの壁画が描かれたのは1〜2万年ほど前のものだという。フランスのラスコーの絵が約1万6千年前のものとされており、同じくスペインのアルタミラ洞窟の壁画も同時期であり、ここビームベートカーも世界最古の壁画の一つであるそうだ。ガイドブックによれば、ラスコーやアルタミラなど石器時代の岩絵に共通する夥しい牛の群れや、トラやバッファロー、マンモスと思われる象や、狩りの様子などが躍動的に描かれている。<br /><br />ガイドと一緒に約1時間ほどかけて場内を1周、ボーパールへの帰途についた。化学工場に出かけることは断念したが、ボーパールの市街地を若干撮影して空港に向かった。これでインドにある28ヶ所のユネスコ世界遺産のうち16ヶ所に訪れたことになる。

インドの世界遺産No.16:ラスコー、アルタミラと並ぶビームベートカーの石器時代の壁画(改訂版)

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2011/12/10 - 2011/12/11

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ハンク

ハンクさん

この日曜日はサーンチーに引き続き、ビームベートカーをフライトの都合で8時間で見て回った忙しい1日であった。出発の前日にMPツーリズムという会社に電話でタクシーを予約した。ボーパール空港に早朝6:55到着で、16:05に出発するため、約8時間でサーンチーとビームベートカーを見ることができるよう手配を頼んだ。先方は8時間では難しいと難色を示したが、私のリスクで強行することにした。実際にはほぼ予定通り15:00に空港に帰着することができた。

実はボーパールは1984年に発生した世界最悪のユニオンカーバイド社化学工場事故によって世界に名を知られることになった町であり、記憶に残っている方もいるかもしれない。12月2日の深夜、殺虫剤の主成分イソシアン酸メチルの入ったタンクの中に水が流入し、発熱反応のため圧力が上昇、約40tの有毒ガスが工場周辺の町に流れ出した。工場の近隣市街がスラムで人口密集地域であったため、夜明けまでに2000人以上が死亡、15万人以上が被害を受け、最終的には1万5000人以上が死亡した。現在も工場から漏れ出した化学物質による周辺住民への健康被害が続いているという。タクシードライバーに、もし時間的な余裕があればこの工場に立ち寄ることができないか聞いてみた。しかしこの地域は厳重に立入り禁止となっているそうで、彼の兄弟の家族も亡くなるなど被害の深刻さを実感させられた。

さて本題に入ろう。サーンチーから約2時間、途中悪路が続き、大型ダンプと際どくすれ違いを繰り返し、ひやひやしながらやっとの思いで到着、250ルピーの入場券を購入して入場した。丘の上に10m以上はある奇岩が森の中にいくつも立ち並んでいる。奇岩の下腹部が洞窟やシェルターのようになっており、約1万年前の石器時代に人が住んでいたようだ。もともとこの辺りは海底にあり、地殻変動によって隆起、侵食を受けて独特の地形を呈するようになった。アメリカのアーチーズ国立公園ほどの規模ではないが、水流によって岩が削られた痕跡を見ることができる。

最初の壁画を見て100ルピーほど払ってガイドをつけることにした。ガイドに聞かないと貴重な壁画(落書きの類も含めて)を全て見ることはできないだろう。岩絵の主題は狩りの描写が圧倒的に多い。象、鹿、孔雀、牛、虎、ライオン、馬、ブタなどなど、多くの動物が描かれており、それと同時に狩りをする人間が動物の間を動き回っていたりする。その他、踊りを踊っている絵や、花の絵、戦争の絵などもある。全て岩壁を削ったか、自然から取った絵の具で描かれている。壁画の隅にはそれぞれ管理用の番号がペンキで記されているのだが、ペンキの塗料はすぐに剥がれ落ちてしまうそうだ。それに対しこの壁画は1万年の風雨に耐えて現存しているのだ。

ガイドの話によると、これらの壁画が描かれたのは1〜2万年ほど前のものだという。フランスのラスコーの絵が約1万6千年前のものとされており、同じくスペインのアルタミラ洞窟の壁画も同時期であり、ここビームベートカーも世界最古の壁画の一つであるそうだ。ガイドブックによれば、ラスコーやアルタミラなど石器時代の岩絵に共通する夥しい牛の群れや、トラやバッファロー、マンモスと思われる象や、狩りの様子などが躍動的に描かれている。

ガイドと一緒に約1時間ほどかけて場内を1周、ボーパールへの帰途についた。化学工場に出かけることは断念したが、ボーパールの市街地を若干撮影して空港に向かった。これでインドにある28ヶ所のユネスコ世界遺産のうち16ヶ所に訪れたことになる。

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
ホテル
3.5
グルメ
3.5
ショッピング
3.5
交通
3.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
タクシー 徒歩 飛行機
航空会社
ジェットエアウェイズ (運航停止)
旅行の手配内容
個別手配

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  • ビームベートカーに向かう悪路、トラックとのすれ違いはひやひやだ

    ビームベートカーに向かう悪路、トラックとのすれ違いはひやひやだ

  • 世界遺産ビームベートカーへの入り口

    世界遺産ビームベートカーへの入り口

  • ビームベートカーの奇岩、この壁面に岩絵が描かれた

    ビームベートカーの奇岩、この壁面に岩絵が描かれた

  • 石器時代の原始人が生活する様子

    石器時代の原始人が生活する様子

  • 象に乗り武器を持つ人の姿か?

    象に乗り武器を持つ人の姿か?

  • 水流が刻んだ岩穴の内部

    水流が刻んだ岩穴の内部

  • 馬、鹿、バッファローだろうか?

    馬、鹿、バッファローだろうか?

  • 狩りをする人々か?

    狩りをする人々か?

  • 石器時代の原始人が絵を描く姿

    石器時代の原始人が絵を描く姿

  • ビームベートカーで発見された埋葬された人骨と石器

    ビームベートカーで発見された埋葬された人骨と石器

  • 原始人の進化する状況の説明

    原始人の進化する状況の説明

  • マンモスの姿か?

    マンモスの姿か?

  • 夥しい牛の群れか?

    夥しい牛の群れか?

  • 夥しい牛の群れか?

    夥しい牛の群れか?

  • 白い絵の上に赤い絵が重ねられている

    白い絵の上に赤い絵が重ねられている

  • 夥しい牛の群れか?

    夥しい牛の群れか?

  • 亀の姿をした「亀石」

    亀の姿をした「亀石」

  • 亀石と周辺の風景

    亀石と周辺の風景

  • 馬に乗った人の狩りの風景か?

    馬に乗った人の狩りの風景か?

  • マンモスの姿か?

    マンモスの姿か?

  • マンモスと馬

    マンモスと馬

  • 馬の姿

    馬の姿

  • 狩りをする人々

    狩りをする人々

  • コブラが鎌首をもたげるような姿の奇岩、ここにも岩絵がある

    コブラが鎌首をもたげるような姿の奇岩、ここにも岩絵がある

  • 馬に乗り狩りをする人々

    馬に乗り狩りをする人々

  • フォークダンスをする人々か?

    フォークダンスをする人々か?

  • ボーパール市街地のネルー像

    ボーパール市街地のネルー像

  • ボーパール湖を背景にマハラジャの像が立つ

    ボーパール湖を背景にマハラジャの像が立つ

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