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アラル海の悲劇<br /><br />かつてアラル海南岸の町、ムイナックに住んでいたという、ご年配の方のお話です。<br />1961年冬、漁師たちは、岸から遠く離れた深いところに、船を泊めていました。<br />アラル海の氷が解けたら、船の下は水の引いた湖底だったのです。<br /><br />朝、人々は港の桟橋の方に走って行ったら、水がなかったのです。一晩でアラル海の岸は、何十メートルも離れてしまったのです。<br /><br />アラル海の不幸は、1950年代にソ連政府が、中央アジアの地域を、「偉大なる綿ロード」でいこうとしたことに、始まります。<br />アラル海に注いでいた、アムダリア川やシルダリア川から、灌漑用水路をひき、綿花栽培に給水していたのです。<br />人工的に造られた運河や貯水池は、かなりの粗造りで、底は水を完全には止められませんでした。<br />こうして水は砂漠の中に、消えていきました。<br /><br />またシルダリア川の上流国であるキルギスでは、夏の綿花栽培に沢山の水を必要とする時期ではなく、発電するために冬にダム湖の水を抜いていました。春の雪解けやダムの放水により、カザフのチャルダラダムで支えられなくなると、ウズベクのアルナサイ低地に放水していました。1969年には、強い降水のため、チャルダラダムから大量の水が、アルナサイ低地に流れ、アイダルクル湖という巨大な湖が、出来上がりました。<br />アラル海は小さくなる一方で、アイダルクル湖は、少しずつ大きくなっていきました<br /><br />かつてアラル海は、世界第四位の面積でした。琵琶湖の100倍ほどだったのです。それがどんどん干上がり、北の小アラル海と南の大アラル海に二分された形になったのです。<br />そしてシルダリア川が流入している小アラルのみを救うことに決めました。<br />こうして、カザフスタン政府は、2005年に小アラルと大アラルの間に、コカラル・ダムを作り、小アラルの水位を上げ、大アラルを切り捨てることにしたのです。<br />小アラルの面積は最大時の70パーセントまで回復して、漁獲高も向上したようです。<br /><br />一方、切り捨てられた大アラルの方は、大半がウズベキスタンに属しています。この大アラルの湖底だったところから、国に富をもたらす、石油が産出されるようになりました。こうしたこともあって、ウズベキスタンでは、アラル海は枯れるにまかせてあります。<br />大アラルの方では、漁が出来なくなり、打ち捨てられた村が、散在しています。<br />古儀式派のキリスト信者は、この地に沢山流されて来て、アラル海で漁をして生計をたてていましたが、人々は去り十字架のみが、残った廃村もあるようです。<br /><br />大アラルは、あと十年で枯れるとも言われています。<br />ムイナックの人々は「タシュケント政府は、アラル海の水も我々も要らないんだ」と感じているようです。<br />

アラル海紀行 小アラルの再生を担う、コカラル・ダムを訪ねて

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2011/08/15 - 2011/08/15

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哈桑湖

哈桑湖さん

アラル海の悲劇

かつてアラル海南岸の町、ムイナックに住んでいたという、ご年配の方のお話です。
1961年冬、漁師たちは、岸から遠く離れた深いところに、船を泊めていました。
アラル海の氷が解けたら、船の下は水の引いた湖底だったのです。

朝、人々は港の桟橋の方に走って行ったら、水がなかったのです。一晩でアラル海の岸は、何十メートルも離れてしまったのです。

アラル海の不幸は、1950年代にソ連政府が、中央アジアの地域を、「偉大なる綿ロード」でいこうとしたことに、始まります。
アラル海に注いでいた、アムダリア川やシルダリア川から、灌漑用水路をひき、綿花栽培に給水していたのです。
人工的に造られた運河や貯水池は、かなりの粗造りで、底は水を完全には止められませんでした。
こうして水は砂漠の中に、消えていきました。

またシルダリア川の上流国であるキルギスでは、夏の綿花栽培に沢山の水を必要とする時期ではなく、発電するために冬にダム湖の水を抜いていました。春の雪解けやダムの放水により、カザフのチャルダラダムで支えられなくなると、ウズベクのアルナサイ低地に放水していました。1969年には、強い降水のため、チャルダラダムから大量の水が、アルナサイ低地に流れ、アイダルクル湖という巨大な湖が、出来上がりました。
アラル海は小さくなる一方で、アイダルクル湖は、少しずつ大きくなっていきました

かつてアラル海は、世界第四位の面積でした。琵琶湖の100倍ほどだったのです。それがどんどん干上がり、北の小アラル海と南の大アラル海に二分された形になったのです。
そしてシルダリア川が流入している小アラルのみを救うことに決めました。
こうして、カザフスタン政府は、2005年に小アラルと大アラルの間に、コカラル・ダムを作り、小アラルの水位を上げ、大アラルを切り捨てることにしたのです。
小アラルの面積は最大時の70パーセントまで回復して、漁獲高も向上したようです。

一方、切り捨てられた大アラルの方は、大半がウズベキスタンに属しています。この大アラルの湖底だったところから、国に富をもたらす、石油が産出されるようになりました。こうしたこともあって、ウズベキスタンでは、アラル海は枯れるにまかせてあります。
大アラルの方では、漁が出来なくなり、打ち捨てられた村が、散在しています。
古儀式派のキリスト信者は、この地に沢山流されて来て、アラル海で漁をして生計をたてていましたが、人々は去り十字架のみが、残った廃村もあるようです。

大アラルは、あと十年で枯れるとも言われています。
ムイナックの人々は「タシュケント政府は、アラル海の水も我々も要らないんだ」と感じているようです。

旅行の満足度
5.0
観光
5.0
ホテル
5.0
グルメ
5.0
交通
5.0
同行者
一人旅
交通手段
レンタカー
旅行の手配内容
個別手配
  • アラリスクから車で2時間のところにある、カムバシ湖という美しい湖です。<br />ここは淡水です。<br />私はこの湖を「クズィルオルダの真珠」と名づけさせていただきます。

    アラリスクから車で2時間のところにある、カムバシ湖という美しい湖です。
    ここは淡水です。
    私はこの湖を「クズィルオルダの真珠」と名づけさせていただきます。

  • 美しいタマリスクの花。<br />アラル海の湖底だったところに、咲いています。<br />耐塩性の植物です。<br /><br />こんな荒地に力強く咲いています。<br /><br />私もかつては、踏まれても、蹴られても、ただじっと耐えてきました。<br />ここを抜け出せば、何とかなると。<br />いつも希望を捨てずにいました。<br />そして、何とかなってきたのです。<br />やはり、あれは若さですね。<br />若さは特権ですよ。<br /><br />今は生きることが、面倒になってきました。<br />歳をとったんだ。<br /><br />タマリスクよ タマリスクよ<br />赤い美しいタマリスクよ<br />お前のその生命力を、この私に与えておくれ。

    美しいタマリスクの花。
    アラル海の湖底だったところに、咲いています。
    耐塩性の植物です。

    こんな荒地に力強く咲いています。

    私もかつては、踏まれても、蹴られても、ただじっと耐えてきました。
    ここを抜け出せば、何とかなると。
    いつも希望を捨てずにいました。
    そして、何とかなってきたのです。
    やはり、あれは若さですね。
    若さは特権ですよ。

    今は生きることが、面倒になってきました。
    歳をとったんだ。

    タマリスクよ タマリスクよ
    赤い美しいタマリスクよ
    お前のその生命力を、この私に与えておくれ。

  • シルダリア川にかかるアグラク・ダムです。<br />写真は、ダムの川上からです。<br /><br />大河のはずのシルダリア川は、もうここでは、隅田川程度の水量です。<br />江戸川よりは、少ないです。

    シルダリア川にかかるアグラク・ダムです。
    写真は、ダムの川上からです。

    大河のはずのシルダリア川は、もうここでは、隅田川程度の水量です。
    江戸川よりは、少ないです。

  • ダムから見た、川下側です。<br /><br />ここは写真撮影禁止です。<br />怒られながら無理やり撮影です。<br /><br /><br />

    ダムから見た、川下側です。

    ここは写真撮影禁止です。
    怒られながら無理やり撮影です。


  • アグラク・ダム真下の道路です。

    アグラク・ダム真下の道路です。

  • シルダリア川です。<br />水は綺麗じゃないです。<br /><br />ここからデルタ地帯で綺麗になってから、アラル海に入ります。<br /><br />本来、川は葦の湿原で綺麗になってから、海に入るんです。<br />大阪市の大正区も昔は、葦原だったように。<br />今は住宅地です。<br />先進国も今まで、地球に優しくなかったです。

    シルダリア川です。
    水は綺麗じゃないです。

    ここからデルタ地帯で綺麗になってから、アラル海に入ります。

    本来、川は葦の湿原で綺麗になってから、海に入るんです。
    大阪市の大正区も昔は、葦原だったように。
    今は住宅地です。
    先進国も今まで、地球に優しくなかったです。

  • コカラル・ダムです。<br />ダムの長さは、13キロにもおよび、砂で造られています。<br />ダムの上部は9メートルで、道路となっています。<br />総工費は2400万ドルです。<br />

    コカラル・ダムです。
    ダムの長さは、13キロにもおよび、砂で造られています。
    ダムの上部は9メートルで、道路となっています。
    総工費は2400万ドルです。

  • コカラル・ダムの水位調節用の水門で、小アラル側から撮影です。<br />この水門により、アラル海の水面が、海抜42メートルになるように、調節されています。<br />そして余分な水が大アラルに流出されます。

    コカラル・ダムの水位調節用の水門で、小アラル側から撮影です。
    この水門により、アラル海の水面が、海抜42メートルになるように、調節されています。
    そして余分な水が大アラルに流出されます。

  • コカラル・ダムの水門の上部は、道路です。<br />ここには監視人はいません。<br />

    コカラル・ダムの水門の上部は、道路です。
    ここには監視人はいません。

  • 海抜42メートルを超えた水は、大アラルに流出させます。

    海抜42メートルを超えた水は、大アラルに流出させます。

  • 魚も小アラルから落ちてきます。

    魚も小アラルから落ちてきます。

  • 小アラルから落ちてくる魚を、鳥たちが待ち構えています。

    小アラルから落ちてくる魚を、鳥たちが待ち構えています。

  • 待ち構えている鳥たち

    待ち構えている鳥たち

  • 大アラルです。

    大アラルです。

  • 大アラルです

    大アラルです

  • 大アラルです。<br />なお大アラルには、今は干上がって半島になったというОстров Возрождения(ヴァズラヂェーニヤ島 Возрождениеは復活という意味)があります。<br />ここでソ連政府は、生物化学兵器の開発をしていました。<br />現在は、この島は上陸禁止のようです。

    大アラルです。
    なお大アラルには、今は干上がって半島になったというОстров Возрождения(ヴァズラヂェーニヤ島 Возрождениеは復活という意味)があります。
    ここでソ連政府は、生物化学兵器の開発をしていました。
    現在は、この島は上陸禁止のようです。

  • 大アラルです

    大アラルです

  • コカラル・ダムの堤防です

    コカラル・ダムの堤防です

  • 大アラルです

    大アラルです

  • 以下の写真は、全て小アラルです。

    以下の写真は、全て小アラルです。

  • 私の乗ったウアズです。<br />

    私の乗ったウアズです。

  • 水は澄んでいます。

    水は澄んでいます。

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