1997/05/18 - 1997/05/20
7位(同エリア12件中)
北風さん
「ロスモチス〜チワワを結ぶチワワ太平洋鉄道は、グランドキャニオンの4倍の規模を誇る峡谷を観光できる」
と、手元のガイドブックには書かれていた。
しかも途中下車すれば、メキシコで2番目に大きい先住民族タラウマラ人の村もあるらしい。
このバハ・カリフォルニア半島の先端からの移動手段は、ロスモチスへ向かうフェリーしか選択肢がない現在、チワワ鉄道の旅は非常に魅力的なオプション設定だった。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 船
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旅日記
『ロス・モチスに着いたが・・・』
見知らぬ街に夜到着する事ほど不安な事はない。
そう、ちょうどイランの時がそうだった。
夜中の12時過ぎに砂漠のど真ん中で降ろされ、右も左も英語も通じない状況下で、マシンガンを手にした兵隊に囲まれた。
あの時は、軍事国家で夜中に徘徊する不審者として職務質問を受けるはめになった。
現在9時30分、バハ・カリフォルニアのラパスを朝11時に出発したフェリーを、トポロパという舌を噛みそうな港の灯りが迎えている。
さぁ、どうする?
果たして夜10時に24km北にある、ロス・モチスまでのバスがあるのだろうか?
スペイン語は「オラ」と「タコス」しか知らない俺の語学力では周りに人間に問いかける事もできない。
フェリーの扉が開いた。
ドカドカと大勢の人々が溢れかえるが、そこはメキシカン、我先にと詰め掛ける人間はいない。
中国人に見せてあげたい光景だ。
とりあえず人の流れに身を任せて「ドナドナ」を口ずさんでいると、人の流れの先にバスがいた!
素直に嬉しい!
こんな時間でもバスは待っていてくれた。
知らない人について行く事は、大人になったらそれ程悪い事でもないのかもしれない。
さぁ、とりあえず、バスに乗り込んだ。
だが、ふと気がつく。
「このバスは、一体何処に行くんだろう?」
ドライバーに尋ねようと腰を浮かした途端、窓も外の景色が動き出した。
再び、「ドナドナ」を歌う俺がいた。
しかし、これだけ大勢の人間が向かう先は、たいがい市街地だろう。
そう願う!
ここまで来たら、終始一貫、他力本願で行くしかない。
何ら人事は尽くしていないが天命を待つ事にした。
やたらたくさん人が降りる所で降りてみた。
ビンゴ!
街の中心地だった!
メキシコの神様も捨てたもんじゃない。 -
さて、ホテルを探さねば!
さっきから腹がグルグルいっているのは腹が減っているのか?
それとも調子が悪いのか?
ホットドッグの屋台の前から足が動かないのは、やはり腹が減っているからだろう。
地図を片手に道端でホットドッグをほおばっている俺に、一人の少年がベラベラと話しかけてきた。
聞き取れたスペイン語は「ホテル」の一言。
経験上、この少年はホテルの客引きに違いなかった。
いや、そうあって欲しい!
とりあえず、ついていく事にした。
今夜、知らない人間について行くのは何度目だろう?
ちょっと胡散臭いが親切そうな親父が、みすぼらしいチェックイン・カウンターに座っていた。
「Cino o Japones ?(中国人か、日本人か?)」と聞かれる。
日本人だと答えると「ちょっと待て」とジェスチャーが返ってきた。
何事かといぶかる俺の前に、親父が古ぼけたカセット・テープを差し出す。
なんと、夜の11時にフルボリュームで流れるその曲は、まぎれもなく、さだまさしの「案山子」だった。
ここは日本から、何1000キロ彼方の地だろう?
まさかここで、俺がガキの頃聞いた「案山子」を聞く事になろうとは!
さだが俺の疲れ果てた身体に染みてくる。
「元気でいるか〜」 (くたくたで今にも倒れそうだ)
「お金はあるか〜」 (金があったらこんな安宿に来はしない)
「今度いつ帰る〜」 (南極に行ってから)
と、しみじみ聞いていると、不覚にも涙がこぼれそうになった。
ふと見ると親父は泣いている!
・・・この親父、何者?
さだもすごいが、わけもわからん日本語の歌で泣いている親父はもっとすごい。
5月15日、午前0時、度重なる神のご加護と、さだまさしファンのメキシカンに迎えられメキシコ本土上陸!
明日は12時間の列車の旅が待っている。 -
旅日記
『チワワ鉄道に乗る日』
朝6時、目覚ましが鳴る。
当然のごとく無意識にベルを止めていた。
(俺にとって、目覚ましを持ち歩く事がどれほど意味
ある事なのかこの頃よく考える)
朝6時半、宿の親父がドアを叩いていた。
ボロ雑巾のような身体をベッドから引き剥がしてドアを開けた。
「7時の列車に乗らないのか?」と、朝の挨拶にしては聞きずてならない台詞が飛び込んできた。
どういう事だろう?
列車は8時発のはずだが?
どうやら列車の時刻表が最近変わったらしく、俺の持ち時間が残り30分もない事がわかった。
カール・ルイス顔負けのダッシュで通りに出てバスを止めた。
その後、考える。
「このバスは何処行きなんだろう?」
昨日覚えた、goにあたる単語と目的地を組み合わせて「イール・チワワ(チワワ行き)?」と言ってみた。
「Si」との答えが返ってくる。
今日も神様は俺を見放さなかったらしい。
10分後、ドライバーの指差す彼方にチワワ太平洋鉄道駅が朝もやの中に浮かび上がってきた。
急いで駅に駆け込む。
あまりにあわてていたので、チケット・カウンターで英語を話している俺がいた。
しかし、スペイン語の辞書を開く前に、OK」との言葉が飛んできた。
なんと、このカウンターのお姉ちゃんは英語を解すらしい。
俺はメキシコの神様に愛されているのかもしれない。 -
チケットを握り締めてゲートを潜り抜けた俺の前に、「強盗が出る」「遅い」「汚い」と悪評だらけの2等車両がうずくまっていた。
-
これはもしかして、木造車両ではないだろうか?
車輪以外に鉄らしき部分が見えないのだが・・
ふと、スリランカの列車を思い出した。
あの時、足を踏み込んだ2等車両は、ロープで手首をつながれた囚人で満杯だった。
あの国以外に一般車両を囚人護送に使う所はないかもしれないが、まぁ、動けばいい。
あの時だって、10分後には犯罪者達と肩を組んで、ビートルズを熱唱していた俺なのだから・・ -
列車は信じられない様な軌道で登って行く。
俺はヘアピンカーブのある路線など未だかって見た事がなかった。
険しい山道をなでるような速度で、えっさかほいさか登っていくこの路線が、メキシコ観光の一大イベントとなっているわけがよくわかる。
この鉄道の旅、おもろい! -
険しい山道を貫くS字や、渦巻状の軌道。
いきなり現れる掘っ建て小屋の様な小さな駅。
100年前の西部劇でしかお目にかかれない様なカウボーイ・スタイルの地元のおっちゃん達が、静かに煙草をふかしていた。 -
焼け果てた家以外、村らしき所は見当たらない。
カウボーイ達は山程の荷物を担ぎ上げて遠くの山々の方へ去っていく。
何処へ行くんだろう?
道を示す物は1本の赤茶けたレールしかない。 -
旅日記
『2等車両』
バスとは比べ物にならないほどのでかいシート。
一等車両は3倍の料金分だけエアコンなる文明の利器が付いているそうだが、長袖Tシャツを着込まなければならないこの季節、そんなものは必要なかった。
エアコンがないから窓が開く2等車両は、立ち寄る駅ごとに行われる駅弁売りと乗客とのデス・マッチを一番身近で観戦できる特等席だ。
「泥棒が出る」やら「汚い」やら悪評ばかりのこの2等車両。
俺には快適そのものだった。
2等車両は家族連れが多かった。
メキシコじゃ、オカマしかやらない長髪、真っ黒に日焼けした東洋人顔、山から出てきたばかりのインディアンみたいな俺は子供達の興味の的らしい。
恐れていたインタビュー・ラッシュは、少女が好気心
に負けて話しかけてきた時が始まりだった。
何処の国でも子供は、言葉が通じない外国人にも容赦は
しない。
辞書と首っ引きの時間が流れていく。 -
いつしか隣にちょび髭セニョールが座っていた。
このセニョールがまた親切!
中国風に煙草を勧めると、ジュースは奢ってくれるし、観光名所まで教えてくれる。
全く、メキシカンは親切だ。
このセニョール、チワワの山間に住んでいる農民らしく、今朝ロス・モチスの市場での買出しの帰りとの事。
昼食時、セニョールが荷物棚からゴソゴソとダンボール箱を持ち出してきた。
この箱、中から何やら音がしている。
セニョールがバゴッと箱を開けた。
箱の中には、羽毛も生えていないひよこがぎっしり!
セニョールは、ギャーギャーさえづるひよこをつまみあげると、水で溶かしたえさをスプーンで飲ましている。
なんとものどかな光景だ。
そう言えば、インドの列車でも、コブラ使いが夏バテでぐったりした相棒のコブラの世話をしていた。
何処の世界でも、生活に直接結びつく家畜の世話は大変らしい。 -
列車がやけに見晴らしのいい駅に着いた。
白人ツーリストや子供たちが一斉に下車し出す。
顔見知りになったおじちゃんが腕時計を指差して、何やらジェスチャーを・・・
どうもここで列車が15分ほど停車するらしい。 -
子供たちの後を追ってホームに降り立つと、地元のおばちゃんたちが土産物?らしき品物を広げていた。
もしかして、ここは・・・ -
<ディビサデロにて>
グランドキャニオンの4倍の規模を持つと言われる、峡谷が眼下に広がる。
あまりのスケールの大きさに現実感を失っていると、どこからともなくコンドルらしきばかでかい鳥が! -
夕方5時半、列車はクリールという山間の村に到着した。
情報によると、この村は観光客に人気があると言う。
途中下車した俺の周りに何人もの客引きが群がるところを見ると確かにそうみたいだ。 -
村には小学校もあった。
中には金髪の子もいる。
血が混ざっているなぁ。 -
意外と整った村の中で一番の安宿「マルガリータ」は、普通の外観とは裏腹に、中は山小屋状態だった。
しかも、既に30カ国以上は巡っている旅の猛者がぎっしり!
その夜の話題は、インドのチャパティとメキシコのトルティージャの違いについて激論が交わされる事となった。
久々に英語を話している。
うーん、言葉が通じるって大事だなぁ。 -
中国系イギリス人リーと。
-
この村の住民はタラウマラ族と呼ばれる部族らしい。
面影は沖縄辺りの漁師の方々そっくりなのだが、こちらは山の民との事。 -
安宿に泊まっていたツーリスト達と、峡谷へのツアーに参加する事になった。
-
今までに死ぬほどツアーなるものに参加していたのだが、このツアーは峡谷にある温泉につかるらしい。
日本人としては、行かねばならないだろう。 -
が、しかし、現地についてから温泉が谷底にあると言う事を知った。
なんと、この急な斜面を降りていくらしい。
まぁ、汚れても温泉につかれば何てことないが。
・・・ちょっと待て、帰りはここを登るのか? -
1時間後、やっと温泉らしきものが見えてきた。
-
温泉と言うと疲労回復に効果があると言われるが、これじゃ、温泉に行く為に疲労している気がする。
それにしても、野郎ばかりで露天風呂もなんだかなぁ?
ゲイの社交パーティーと勘違いされてもおかしくない光景だ。 -
翌朝、クリールを出発した列車は「チワワ」に滑り込んだ。
メキシコ最初の大都市だ。
もしかして、あの猫に食べられそうな犬も、ここが生まれ故郷なのだろうか?
街並みはノスタルジックなロスアンジェルスみたいだが・・・ -
町の中心部には立派な教会が建っていた。
メキシコ以南、ほとんどの国がスペインの植民地となっていた。
つまり歴史上、この国もヨーロッパと同じく教会を町の中心に据えて造られたらしい。 -
つまり旅人としては、これから南では何処の街でも道に迷えば教会を探せばいいという事だ。
観光客としては、これからずっと似たような街が続くと言う事かもしれないが・・・ -
チワワ州では牧畜業が非常に盛んらしい。
街を行き交う人々も、ウエスタンブーツにカウボーイ・ハットのファッションに身を包んでいる。
西部劇のロケ・セットに迷い込んだ様な・・・ -
ピカピカに磨き上げられたリノリウムのフロア、こぎれいなアルミサッシのドア、確かに1997年を思い出すモダンな造りだった。
しかし、何故、靴屋に「ナイキ」はおろか、スポーツシューズも見当たらないのだろう?
街の靴屋に並んでいるのは、色とりどりのカウボーイ・ブーツだけだった。 -
全部同じ形に見えるのだが・・・
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