1995/12/23 - 1995/12/23
19位(同エリア29件中)
北風さん
ケニヤでライオンの食事を観た後は、タンザニアで陸ガメに乗る予定だった。
タンザニアは何と、社会主義国家でメインの宗教はイスラム教。
(ケニヤの裏の支配者がインド人なら、この国の影の支配者は華僑との噂が・・)
つまり、共産ブラック・モスリム!(なかなか珍しい)
しかも、隣国ケニヤに比べると治安はいいし人は親切!
なにより、日本の経済援助により美味い米が腹一杯食える!
アフリカの天国はキリマンジャロの麓に広がっているのかもしれない。
さぁ、南へ旅立とう!
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- 高速・路線バス
-
旅日記
『ナイロビ・バスターミナルにて』
12月23日、ナイロビのバス停は、相変わらずの胡散臭さと人ごみで混沌としていた。
俺は、タンザニア行きの国際バス「アルーシャ・エクスプレス」を探している。
怒鳴り散らす様に客引きをしているおじちゃんが指差す方向には、「神を信じます」と書かれたステッカーがフロントガラスにへばりついた廃車があった。 -
・・・まさか、あれなのか?
あのバスの横に山積みされた荷物は、積み込まれるはずのものなのか?
呆然と立ち尽くす俺の背中を、客引きのおじちゃんが急かすようにバスの中に押し込んだ。
・・・嘘だろ?
既に小錦サイズのおばちゃんが隙間なく詰め込まれているじゃないか! -
振り返ってバスのドライバーを探す俺の目に、フロントガラスに開いた無数の穴が飛び込んできた。
・・・あれは、銃弾の跡じゃないだろうか?
どうやら、このバスに乗るには、本当に神を信じなきゃいけない気がする。 -
旅日記
『タンザニアへ』
炎天下のサバンナにバスの錆付いたブレーキ音が鳴り響く。
まさか360度地平線が広がるこの場所にバス停があるはずもない。
つまり、また強制的に降ろされる事を意味しているのだろう。
今日は、12月23日。
俺はケニヤのナイロビ発、タンザニアのアルーシャ行きのバスの中にいた。
バスの名前は、「アルーシャ・エクスプレス」。
しかし、どこにもエクスプレス(急行)なる名前の由来は見当たらない。
バスの中は、クリスマスの里帰りするタンザニアの人々で120%満員状態だった。
このままギネスに乗せられるぐらい人が詰まっている。
ムッとする熱気と、ウッとくる黒人特有のワキガの匂いが充満する車内で、俺は既に5時間立ちっぱなしだ。
「お前らイスラム教徒だろう!何でクリスマスに休暇をとるんだ?」と、何度怒鳴り散らしたくなっただろう?
これは、金を取って乗せるバスじゃない。
遠い昔の奴隷輸送車の体験を味わえるツアーなのか?
しかも、このバスはボロかった。
いや、ボロいと言う言葉では言い表せないほどの状態だ。
どう見ても、銃弾の跡としか見えない穴で飾られるフロントウィンドウ、丸坊主のタイヤ、絶えずきしんでいるフレーム、この状態で、信じられないような大きさの小麦の袋と、クリスマスのお土産と、小錦顔負けの黒人おばさんを満載すれば、結果は見えていた。
バスは面白いぐらいにエンストする。
1時間おきぐらいに俺達乗客は降ろされる。
坂道になる度に乗客が降りなければならないバスがどこにあるんだ?
アフリカ名物、「ポレポレ(ゆっくり、ゆっくり)」。
炎天下のサバンナで、バスの後を歩きながら、俺はこの意味の奥深さを考えている。
遠くで吼えているのは、ライオンだろうか? -
旅日記
『サバンナの乗客』
「キキキーッ」とひときわ甲高いブレーキ音が、またもやサバンナに鳴り響いた。
窓の外は、もうもうと舞い上がる土煙で何も見えやしない。
窓の中は、うんざりした乗客のため息ばかりで希望も見えやしない。
ガバッと、ドアが開けられる。
またエンストで降りなきゃならないのか?
今年中に目的地にたどり着く事ができるのだろうか?
と、一人の男が乗り込んできた。
こんなサバンナのど真ん中で、一体どこから現れたのだろう?
フロントガラスから差し込む強力な日差しの中、男の全身が浮き上がった。
スキンヘッドからのぞいている耳たぶには、直径4cm程の穴が開いて、なんと、その耳たぶを、耳の周りに巻いていた。
・・ただ者じゃなかった!
ファッション・センスも並ではない。
カラフルなビーズを施した首飾りの下には、赤い布が一枚、バスタオルのように巻かれている。
しかも、彼は片手に槍と盾を持っていた。
・・これは、マサイ族のお方ではないだろうか?
全身から攻撃本能がにじみ出てきそうなこのお方は、これでバスに乗るつもりなのか?
ドライバーが、男に話しかけた。
なにやら槍を指差している。
やはり、バスに乗るのに槍はまずいだろう。
ドライバーに止められるのも無理はない。
まわりの親父に彼は降ろされるのかと聞いてみた。
親父は怪訝な表情で俺を見ながらつぶやいた。
「何故だ?あれほど見事な槍を持っているという事は、立派な戦士だぞ。運転手だって、槍を褒めているじゃないか」
・・つまりドライバーは、乗車拒否をしているわけではなく、槍をほめていたわけか・・・ -
旅日記
『タンザニア国境とマサイ族』
ボロボロになりながらケニヤータンザニア国境にたどり着いた時は、俺の顔色もストレスで現地人色になっていた。
ふらつく足元の下で赤茶けた砂塵が舞っている。
サバンナを渡る熱風に顔を背けると、その視線の先に3人ほど変わったファッションの方々が立っていた。
まぁ、こんな疲労困憊した時でなくとも、会いたい人種ではないと思う。
おばちゃん達が叫ぶ、「I am MASAI!」
つまり、マサイ族のおばちゃんらしい。
しかも、差し出す手に握り締められているのは木彫りの人形だ。
ここから導き出される結論は、マサイ族のみやげ物売りの方々という事か?
あの戦う部族として名をはせた有名な部族も時代の流れには逆らえないらしい。
しかし、さすが成人式にはライオンと戦わねばならない部族らしく、そのセールスはかなり攻撃的なものだった。
気がつくと3人に周りを囲まれ逃げ道を失った俺がいる。
おばちゃん達が口ぐちに唾を飛ばしながら、セールストークを始める中、俺の身体は3方からがっしり掴まれていた。
・・・逃げられない。
成人式に立ち会ったライオンも、こういう心境なのだろうか?
とにかく、スワヒリ語の知識はゼロに等しい俺には、この方々とのコミニュケーションをとる方法がみつからない。
とりあえず、英語で「みやげ物は俺には必要ない。俺は入国管理事務所に行かねばならないんだ」と叫んでみた。
おばちゃん達が一斉に、人だかりのしている建物を指差した。
・・・おばちゃん、英語わかるじゃないか!
と、いう事は、俺を同族と思っていたのか? -
旅日記
『タンザニアに入国する裏の手』
屋外の焼けるような陽射しとは正反対に、入国管理事務所は薄暗く狭苦しい建物だった。
俺がいる部屋には、日本の小学校にあるような年代ものの古ぼけた木の机と椅子、そしてサファリ色の軍服に身を包んだアフロのおっちゃんがいる。
俺はタンザニアのVISAを持っていなかった。
別段、入手するのを忘れていたわけではない。
(タンザニアのVISAは、普通に取るとUS$30する)
アフロは、「日本人がタンザニア入国する時は、VISAがいるんだ!」と、こわもてで怒鳴り散らしている。
俺はさりげなくパスポートを机に置いた。
パスポートの中ほどには、緑色の紙の端がのぞいている。
アフロの手がゆっくりとパスポートを取り上げた。
興味深げにページをめくるその視線を俺の視線は追っている。
奴の視線がはさみこんだ10ドル紙幣で止まった時、もっさりした口ひげが動き出した。
「誰がこんな事を教えた?」とつぶやく。
「ケニヤのタンザニア大使館の女性だ」と、俺。
「どんな名前だ?」と、奴。
「いちいち名前なんか聞かない」と、俺。
10分後、俺は建物を後にした。
もちろん、タンザニアの入国スタンプを押されたパスポートを持って。
日本を出て既に3年以上、人に裏表があるように、国家にも本音と建前がある事を俺は学んでいた。 -
<ARUSHA(アルーシャ)>
タンザニア入国後、我らがアルーシャ・エクスプレスは、限りなく平地に近い坂道で再度エンストを起こした。
もはや怒る気力もない。
一足早いサンタの贈り物は、俺たちがわずか3時間遅れでアルーシャにたどり着いた奇跡だった。
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