1997/10/11 - 1997/10/12
8位(同エリア17件中)
北風さん
1週間以上もアマゾン川を漂流して、やっとたどり着いたペルーのイキトス!
南米を左回りで南下する為には、ここからアンデス山脈を越えて首都リマを目指す必要があった。
・・・ところが、ここで、驚愕の事実を思い知らされる事になった!
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 船
PR
-
旅日記
『ペルー・アマゾンへ』
1997年10月11日
アマゾン川に日が昇る。
どうでもいいけど、この寒さはどういう事だ?
熱帯のイメージ一色のアマゾンで寒くて震えているなんて、俺はまだ夢を見ているんだろうか?
早朝4時、コロンビアを出航した高速ボートは、ペラペラのボディにものすごい馬力のエンジンを乗っけて突っ走った。
白く煙る朝もやの中を、船首を浮かせるほどに突っ走る姿は、どこかの国の密漁船と何ら変わりはしない。
ただ大きく異なる事は、このままこのとんでもない振動で船が分解すると、ピラニアに豪華な朝食をプレゼントする事だけだった。
ただでさえ寒いアマゾンの早朝なのに、その上、吹きっさらしの船上とくれば、体感温度はアラスカを思い出す程だ。
まさか、アマゾンで凍え死ぬ目に遭うなんて。
そろそろ寒さが睡魔を連れて来た頃、エンジンの音が停止した。
着岸するのか?
いや、着岸してくれ! -
命拾いしながら上陸した所は、川の真ん中に浮かんだ三角州みたいなとこだった。
皆、無言で川岸に建てられた掘っ立て小屋みたいなところへ入っていく。
どうやら、ここがペルーの入出国管理事務所らしい。
船長が叫ぶ。
「早くしろよ!ここからイキトすまでまだ8時間はあるんだから!」
・・アマゾンの神様は、試練を与えるのが好きらしい -
夕方4時、密漁船のごとき高速ボートはアマゾン川支流(と言っても、幅50mはあるが)の小さな港に船体を落ち着けた。
丸一日顔を突き合わせていた船長が、二カッと笑って「着いたぞ!」
と叫ぶ。
うれしい!素直にうれしい! -
夕焼けに赤く染まるアマゾン川沿いに、疲労でヘトヘトになった足取りで街へ急ぐ。
ここは、既にペルー!
つまり「追いはぎ」、「強盗」のメッカで有名な国だ。
とにかく、日が暮れる前にホテルを探さなければ! -
旅日記
『イキトス』
街の名は「イキトス」
どうやらペルー・アマゾンの要となる都市らしく、街角ではアーミールックの男達が列を成してブーツの音を響かせていた。
聞けば、ペルー空軍の基地まであるらしい。
(確かにちょっと目を離すと、すぐに隣国が攻めてくるこの無法地帯なら当然かもしれない)
しかし、軍隊が常駐しているせいか、街の治安は驚くほど良かった。
(街を歩く度に背中に視線が突き刺さるのは、泥棒に狙われているのではなく、よそ者の俺を泥棒と勘違いしているらしい)
そして、何より助かるのは「物価が安い!」
ブラジルでUS$15、コロンビアでUS$13もしたホテル代が、一気にUS$6ですむようになったのは非常に助かる。
公園ではペルー国旗の下で老人が日向ぼっこをしている。平和を絵に描いたような光景だ。
なんか過ごしやすくないか?この国は? -
街は意外と大きく賑わっていた。
特に街中を轟音を響かせながら走り回っている3輪タクシーの数は、アマゾン川のピラニア並みの多さだ。
交差点では、まるでスタートを待つF1みたいに、空ぶかしまでやっている。 -
この3輪タクシー、妙に記憶に引っかかる。
そう、確かタイではボッタクリタクシーとして有名な「トゥク、トゥク」そっくりだ。
驚くべき事にこの国じゃ、メーカー純製で売られているらしい。
HONDAもYAMAHAもあるぞ! -
道端で一心不乱に不気味な恐竜の卵の皮をむいていたお姉ちゃん。
これはフルーツなのだろうか?
「食べてみな!」と渡されたのはいいが、一口食べると非常にニガまずい!
「あそこなら、もっとあるよ!」と指差された道の反対側には、
・・市場があった。 -
一瞬、難民キャンプかと思うほどのテントの群れの下には、
一瞬、「世界のビックリ魚ショー」かと思うほどの魚類が並んでいた。
市場独特の喧騒と生臭い獣の匂いの中に横たわる、グロテスクなアマゾン川の住人達。
ナマズと鯉の合いの子らしき魚や、見るからに硬そうなウロコで武装している魚、一番奥のピラニアが一番まともそうに見える。 -
いやー、これは見ているだけで楽しい!
いや、見ているだけでいい。
こんなのどうやって食べるんだ? -
この、頭はワニ、身体はナマズの巨大生物は!
そう、確かアマゾン漂流中に船長が満面の笑みとともに料理していた奴だ!
何だろう?
この旧知の友に出会ったような感覚は?
多分これほど未知の生物が並んでいる中で、唯一胃袋が覚えている魚がこれだからだろうか? -
これは、・・
一言で言えば、干物売り場なのだろうか?
が、しかし、普通干物と言えば乾燥しきってミイラみたいになっているはずなのだが、テーブルにあるのは丸太ほどの太さに巻かれたボロキレらしき物。
おばちゃん曰く
「これは、パイチェの干物よ、ちょっと食べてみな!」
人から勧められると断れない性格上、この市場に来てから既に得体の知れない物がたくさん胃の中に納められているのだが、気がつくと噛んでいた。
これは・・
カワハギだ!
意外と美味い! -
が、しかし、「これも食べなよ!」とおばちゃんが勧めた先には・・
これは、昔、亀だったのだろうか? -
旅日記
『インカ・コーラ』
ペルーの「インカ・コーラ」
その名は遠くアフリカを旅行する旅人にも知れ渡っていた。
この国に来たら、一番最初に飲むジュースと決めていた飲み物が市場の片隅のテーブルに並んでいた。
インカ文明の中心地ペルーが自国生産しているコカ・コーラのバッタもんとだけ聞いていたのだが、この色は・・
イランで飲んだバッタもん「ザム・ザム・ピピ」でさえ、ちゃんとコーラの色をしいていたぞ。
飲んでみた。
これは・・・
メロン・ソーダに化学甘味料をしこたまぶちこんだものなのか?
ほんのり甘く、すかっと爽やかなコーラのイメージにどことなく似かよってはいるが、舌先の感じる危険な感覚は何だろう?
「インカ・コーラ」、これを飲み続けるとインカ帝国の様に亡びてゆく気がするには気のせいか? -
旅日記
『イキトスに道無し!』
まさに目からウロコが落ちる事実だった。
よく見ると、地図に浮かぶこの街から周囲へと延びる道路が一本も無い!
あるのはアマゾン川だけだった。
まがりなりにもペルーの一大都市として栄えているはずのこのイキトスが、実は陸の孤島だったとは!
脱出ルートの一つは船。
しかし、これは9日間以上のマンゴー貨物船の船旅らしい。しかも、到着先は泥棒がピラニアのごとく群がる港町。
俺は別にヒンズー教徒でもないし、苦行を重ねる為に旅行しているわけでもない。
ここまでたどり着くのに、既に、9日間ものミイラ化するほどの船旅を続けてきた。
つまり、残る手段は空しかなかった。
街中の旅行会社のドアを叩いて格安航空券を探す。
あまりにも「格安、格安!」と連呼する俺をもてあましたおばちゃんがくれたものは、一枚の地図だった。
そして現在、俺は「ペルー空軍事務局」なるビルの前に立っている。
どう見ても地図の×印はこのビルになっているのだが、こんな物騒な所に格安航空会社があるのだろうか?
玄関に仁王立ちしている兵隊と目が合うと、道を尋ねる前にいきなり職務質問を受けた。
(確かに軍事拠点のビルの前に、薄汚れた東洋人がうろちょろしていたらこんな結末になるのかもしれない)
しかも、インタビューよろしく突き出されたのは、マイクじゃなくマシンガン!
いかん、こいつが引金に指をかける前に事情を説明しなければ! -
10分後、俺は10畳ぐらいの薄暗い小部屋にいた。
マホガニーらしき立派な机、その向こうにふんぞり返るおっちゃんの制服には、勲章がジャラジャラと張りついている。
と、空軍司令官らしきその男が動いた。
机の上のライトを俺の顔に向ける。
まぶしい光に椅子から落ちそうになる俺の肩を、背後から屈強な兵隊が押えつけた。
・・こういうシーンは、「太陽に吼えろ」で昔よく観た気がする。
俺はもしかして尋問されているのか?
人生にはいろんな誤解と成り行きで様々な分岐点があるらしい。
ここは、俺が思うにその重大な分岐点じゃないだろうか?
ここでゲロしなきゃ、アマゾン川のピラニアに身を捧げる羽目になりそうな気がする。
が、しかし、何をゲロすりゃいいんだろう?
俺は格安で飛行機に乗りたいだけなのだが・・
どれほど時が経ったのか覚えていない。
気がついたら意気揚々と、街のタイプ屋に向かう俺がいた。
おぼろげな記憶には、俺が司令官に気に入られ、ペルー軍用機に乗せてもらえる事になった事実が残っている。
つまり、俺はペルー兵として、ただで軍用機でリマへ行けるらしい。
後は、街のタイプ屋で書類を揃えてもらうだけだった。
もし、神様がいるのなら、俺の人生は酒を飲み飲み、コメディ番組でも観ながら綴っているのではないだろうか? -
旅日記
『アンデスを越えて』
主翼の下では、既に熱帯アマゾンが途切れ、アンデス山脈の白い山肌がきらめいている。
旅行中息を呑む景色には数々出会ったが、熱帯の緑の海から寒帯の白い世界を同時に見た事など無かった。
美しい。
この美しさの中では、俺がペルー空軍機に乗れなかった事など小さな事にしか思えない。
そう、結果として、俺は現在「駄々っ子FAUCET」(まともに定刻通りに飛ばない)として悪名とどろくFAUCET航空の機内にいる。
US$70も出したという事は、ペルー軍用機には乗れなかったという事だ。
その理由は、
・・軍用機だから。
イキトスで軍用機に乗れる話がまとまった夜、ニュースでエクアドルとの紛争が始まったと流れた。
悪い予感は的中したらしく、忙しくなった空軍は1週間待っても何の連絡も取れない状況だった。
まぁ、お国の事情なら仕方ない。
何が起こるかわからないのが俺の旅だから。
アンデスの向こうに、一段と光り輝く水平線が見えてきた。
久々に観る太平洋だ!
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
北風さんの関連旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
17