2009/07/26 - 2009/07/26
85位(同エリア396件中)
ころっつさん
備中国の拠点であった鎌倉時代からの城下町・高梁の郊外には、銅山と硫酸鉄を原料にした「ベンガラ」の産地として栄華を誇った吹屋のまちがあります。
中国山地の谷間に広がる吹屋は、かつての栄華が忘れられたような静寂なまちで、石州瓦や赤銅色の外壁で統一された江戸時代からの美しい家々が並んでいます。
梅雨の合間に晴れた蒸し暑い7月の上旬、新見市のカルスト台地の自然造形・羅生門とともに訪ねてみました。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 自家用車
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自宅から中国道を北房ICまで走り、そこから一般道へ。吹屋に訪ねる途中に草間台と呼ばれる岡山県中西部に広がるカルスト台地の自然地形・羅生門を訪ねました。
「羅生門」は新見市東部の山間にある石灰岩の巨大アーチ。芥川龍之介の名作と同じ名前を持つこの場所がどんなところなのか興味があったので、このたび訪ねてみました。 -
晴れた土曜日の昼間にも関わらず誰もいない景勝地。まさに小説同様、鬼気迫る?薄暗い山道を歩いて行きます。駐車場から300mほど歩くと直進の舗装道ではなく、写真右のけもの道を降りて行きます。
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雑草が生い茂る山道をしばらく歩いて行くと羅生門の第一門に到達。そこを望める展望台に行きましたが、背丈の高い草に覆われてそこに行くまでに一苦労。
羅生門は国の天然記念物にも指定されている自然造形物で、もともと地下にあった鍾乳洞が崩壊し、その一部が天然橋として残った奇観なのです。 -
第一門の下まで歩いて行きました。ここまで来ると冷気が下の方から立ち込め、洞門の天井からたくさんの水滴が落ちてきます。この日は見ませんでしたが、蛇が大変好みそうな環境ですので注意が必要!です。
この先にも3つの洞門があるようですが、道を阻むように草が生い茂っていますので、この先は断念して来た道を戻ります。 -
続いて吹屋を訪ねました。
吹屋は中国山地の山間にある銅山とベンガラの産地として栄えたまち。街道沿いには財宝を成した豪商の家などが立ち並ぶ圧巻の景観で、白川郷などに続き、2回目の選定年次となる1976年に、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている由緒あるまちなみです。 -
まちなみ北側にある観光駐車場に車を置き、歩いて角を曲がると…大袈裟ではなくタイムスリップしたかのような景観がいきなり広がります。ベンガラ色とも呼ばれる赤銅色に統一された外観が吹屋のまちなみの特徴です。
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ベンガラで財を成した豪商・旧片山家の土蔵です。
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ベンガラ豪商「胡屋」の屋号で知られた旧片山家住宅は内部が公開されています。赤銅色の石州瓦に出格子、そして特徴的な模様の壁が目を引きます。
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旧・片山家住宅の道向かいには、かつてベンガラ工場の支配人が住んでいた屋敷が残っており、現在は「吹屋ふるさと村郷土館」として有料で公開されています。
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街道をさらに下って行くと、まちなみの中に18世紀に建てられたなまこ壁が特徴の本長尾家住宅があります。
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格子戸に掛かる吹屋の醤油の徳利。ここは醤油が有名なのかと思えば…。
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この店は昔ながらの製法を今に伝え、手作りをしているという長尾醤油酒店。玄関前には醤油樽を活かした販売商品の紹介がされています。
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さらに下って行くと、緩やかにカーブした街道に沿って古い民家が立ち並んでいます。郵便局もまちまみに溶け込んだ景観になっています。
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ベンガラを溶かし込んだ外壁と意匠を凝らしたなまこ壁が特徴の民家。
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吹屋のまちなみを少し外れたところある高梁市立吹屋小学校。明治後期に完成した木造校舎で岡山県内で最も古い小学校の校舎だそうですが、現役で活躍しています。
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100年前に建てられた木造2階建ての校舎は、当時としては相当近代的で技巧をこらした建物だったようです。ここの瓦もこのまちのメインカラーであるベンガラ色です。
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2階の窓の外にはチャイムで鳴らすのでしょうか、鐘が取り付けてあります。これも現役なのかな?
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小学校からまちなみに戻る途中、高台を通る道からは街道に沿って立ち並んだ家が見渡せます。
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土曜日ということもあり観光客がいるものの、そんなに多くはいません。まちなみの素晴らしさからいえば、もっと多くの観光客が来てもいいような所なのですが、宣伝が上手くないためのか、道路事情等があまりよくないためなのか、団体客がほとんど来ないのがここの魅力です。
ただし、現在アクセス道路の整備が進んでいるようで、近いうちにバスに乗った観光客が大挙して来るようになるかもしれません。 -
民家の軒先で無人販売をしていた地元の野菜。100円均一で、隅にある集金箱にお金を入れて好きな野菜を持って帰るという信頼関係の上に成り立った販売方式です。
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吹屋公民館の建物です。そもそもベンガラとは何かということですが、硫酸鉄を原料にした赤色顔料のことで、陶磁器や建造物などで赤色を醸し出すために使われていたものです。近くにある銅山から採鉱された鉱石を利用して、ここ吹屋では昭和40年代まで製造されていたそうです。
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かつては多くの人が往来し、この街道がにぎわっていたことでしょう。まちなみにはそうした昔日の繁栄の面影を随所に残しています。
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ベンガラ色の出格子が並ぶ民家。
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暖簾が掛かる吹屋公民館の中から。公民館には吹屋の歴史のほか、映画やテレビ番組の撮影時の写真などが展示してあります。
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表通りには電柱も建っていないので、より一層美しいまちなみ景観が演出されています。いくつかの古い民家が観光客相手に土産物屋や喫茶店としても営業していますが、客引きとかもなく、とても静かな雰囲気です。
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まちなみを南側の駐車場があるところまで歩き、同じ道を折り返します。距離にして街道沿いのまちなみは片道500mくらいでしょうか。
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車に乗り、まちなみを通り抜け約5分程下っていくと、吹屋の集落とは少し離れた下谷集落に到着します。ここも伝建地区になっていますが、駐車場もないので観光客はほとんど来ません。
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下谷には家は数件しかありませんが、吹屋集落には見られないベンガラ塀の建物も見られます。ここはもともとベンガラ商人の屋敷だったとのことです。
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人がいる気配がない初夏の昼下がり。ベンガラ壁の土蔵もある誰もいないまちなみをひとりで歩きます。
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ベンガラ民家の脇にはきれいな花が植えてある鉢が置いてあります。
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下谷集落にある小さな門と塀が建つ石垣。お寺かなんかの跡でしょうか? かつて多くの人でにぎわったであろう鉱山町の面影を色濃く伝えてくれます。
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次に銅を採掘していた当時の様子を紹介している「笹畝坑道」の前を通りました。ここは吹屋繁栄の源となった鉱山で、大正時代まで採掘されていました。内部は蝋人形などで採掘の模様が再現されています。
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吹屋集落をあとに、南へ車で10分程走ると、山の斜面にベンガラ豪商の要塞のような大屋敷「広兼邸」が建っています。
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広兼邸は下から見上げると城のような石垣を構え、そびえ立つ大富豪の屋敷で、内部が公開されています。
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この屋敷は江戸時代に銅山経営とベンガラ原料の製造で巨万の富を得た庄屋の広兼氏が、江戸時代の文化年代に建築したものです。
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門番部屋も備わっている楼門を入ると母屋が現れます。ここはその荘厳な雰囲気から映画「八つ墓村」のロケ地となったことでも知られています。
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邸宅の庭園は母屋と離れの間にあり、こじんまりとしていますが、京都の寺院などでもおなじみの水琴窟も配してあります。
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広兼邸から眺めた下界の様子。まさにここはお城のよう。豪商の財力が偲ばれます。
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入場料300円を支払い邸宅内部を見学します。ここは大正時代に増築された茶室もある離れ座敷で、当主の結婚式で一度使用しただけで以後は使用されていないそうです。もったいない…。
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屋敷の中にはここで使う水を確保するため、山から湧き出る清水を溜めておく水槽が残っています。
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下から眺めた時に見える長屋は厩や使用人の部屋となっています。下女って…あらためて思えば、結構ひどい言葉ですね。
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母屋の裏には大きな土蔵と味噌蔵があります。
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母屋の内部です。囲炉裏のある居間、そしてその奥には主人の居室があります。
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同じく母屋の内部を撮りました。控えの間から玄関そして客間を見渡します。この屋敷の雰囲気にぴったりな日本昔ばなしで知られる滝田栄さんのサインが控えの間の上に掲げてありました。
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この旅行記へのコメント (14)
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- さみーさん 2009/08/28 18:53:08
- はじめまして
- ころっつさんへ
はじめまして、投票いただきありがとうございました。
週末を利用して韓国に行こうかと昨日扶余の旅行記を見せてもらいました。
(実現しそうにないのですが)
今日他の旅行記も見せてもらったのですが、
勝手な推測ですが、ころっつさんは私と同じ兵庫県にお住まいですか?旅先がよく似ているのでなんとなく思いました。47都道府県で水戸だけ行ってないとのこと、偶然なのか私もまだ茨城県だけ行ったことがないのですよ(^^)。
広兼邸は映画八ッ墓村(渥美清が金田一の役)の雰囲気のそのままのところですよね。私のお気に入りの行先の一つです。
また旅行記参考にさせてください。よろしくお願いします。
さみー
- ころっつさん からの返信 2009/08/29 09:25:56
- RE: はじめまして
- さみーさん、はじめまして。
ご訪問&書き込みありがとうございました!
さみーさんは私の行ったことのない、行きたいけれどなかなか行けない海外の場所を行かれているようで、ミャンダレーパレスっていう赤い建物の写真に惹かれて旅記拝見しました。
さみーさんも韓国にはツーリング(すごい〜!)行かれているようですね。私は4回目の韓国となるので、未踏の中西部をまわってみたいなと思い、今回扶余に行ってみました。ただ1日で公州と扶余をまわってKTXがあるとはいえ、ソウルに戻るにはちょっと厳しい日程でした…。機会があれば行かれてください、そして川を下る船にはぜひ乗ってくださいね。
それからご推測どおり、私は兵庫県の中央部に住んでいます。偶然ですね〜、茨城県は関西人からすれば、なかなか行きにくい場所ですが、なんとか水戸を近いうちに制覇して、胸のつっかえを取りたいと思っています。
今後ともよろしくお願いします。
それでは。
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- 吉備津彦さん 2009/08/26 07:06:36
- ここまで来たら
- 奥の展望台まで直ぐなんですが・・・
詳細はトラックバックしますからそちらをご覧ください。
- ころっつさん からの返信 2009/08/27 07:33:58
- RE: ここまで来たら
- 吉備津彦さん、おはようございます。
吉備津彦さんの羅生門の旅行記を拝見しました。
たしかに奥の展望台までは直ぐですね…。私は周遊路もわからないほどのうっそうとした草の多さに不安になり、一人ということもあり引いてしまいました。もう少し草がなくて、周遊する道がはっきりしていればいいのですが…。
アーチの上には行けないようですが、次回はぜひ奥の石門まで行ってみます。
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- 吉備津彦さん 2009/08/13 14:16:14
- 羅生門は私のお気に入りの場所です。
- アーチの上を散歩出来るそうなので是非挑戦したいと思っています。
- ころっつさん からの返信 2009/08/15 17:17:39
- RE: 羅生門は私のお気に入りの場所です。
- 吉備津彦さん、こんにちは。
そうなんですか。羅生門はその名前にひかれて立ち寄りましたが、途中から草がかなり生い茂っており、1人だったこともあり、奥まで行くのは断念しました…。
アーチの上、散歩できるんですね。散策道が途中から分かれているんですかね。私も次は上から眺めてみたいと思います。
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- はなかみno王子さん 2009/08/02 08:28:21
- 弁柄
- ころっつさま
ベンガラはオランダ語だったんですね。
ベンガラ色の街、街全体のカラーリングがとても素敵です。
気に入りました。
落ち着いた雰囲気もGOOD!
備中高梁、いいところ教えていただきました。
一度行ってみます。
この民家のデザインですが、最初エアコンの室外機
がたくさん並んでるように見えました。。。
失礼!!
はなかみno王子
- ころっつさん からの返信 2009/08/03 00:33:34
- RE: 弁柄
- はなかみno王子さま、こんばんは。ご訪問ありがとうございます!
道東に行っていらしたのですね、涼しくてうらやましい〜限りです。
しかもツウの間で評価の高い、三香温泉で宿泊とは…おっと、また別途メッセージ送らせていただきます。
ベンガラがどこかの外来語だとは思っていましたが、オランダ語だったんですね。教えていただきありがとうございます!
ぜひ備中高梁・吹屋に行ってきてください。本当にいい雰囲気を醸し出しているまちですよ〜。
民家のデザイン、旧片山家だと思いますが、そう言われれば、なるほど確かにエアコンの室外機のようにも見えますね。もう少しうまく伝わるように撮れればよかったんですがね…。
それでは、またお邪魔します。
ころっつ
- はなかみno王子さん からの返信 2009/08/04 22:47:51
- RE: RE: 弁柄
- ころっつさま
ころっつさまのプロフに
「北海道に1人旅に行き、そこから旅の魅力にとりつかれ・・」と
ありましたね。失礼しました。
ころっつさまに比べると王子は北海道、まだまだ修行が足りないかも
しれません。
三香温泉ですが、残念ながら「売り」に出されてました。
売れたら辞めるとも・・
だだっ広い露天風呂がなつかしいですね。
ベンガラは今年中に行こうと思います。そういえば、最近自宅から
西の方角に旅した覚えがないので、またいいところ教えてください。
よろしく。
はなかみno王子
- ころっつさん からの返信 2009/08/04 23:46:29
- RE: RE: RE: 弁柄
- はなかみno王子さま、こんばんは。
北海道に行き、旅の魅力にはまり、新婚旅行にも海外に行きたがる妻を説得し、北海道10日間まわったのですが、残念ながらここ3年ほどご無沙汰です。
三香温泉が売りに出されているとは本当に残念です。
跡を継いでくれる方が現れるのを心から願うばかりです。
ベンガラ、ぜひ行ってください!旅行記を楽しみにしています。
王子さまもまたいいところがあればぜひ教えてくださいね!
それではまた訪問します。
- はなかみno王子さん からの返信 2009/10/04 15:41:16
- RE: 弁柄
- ころっつさま
吹屋へ10/3(土)日帰りで行ってきました。
想像以上の山里で、ミステリアスというかタイムスリップ
というか異次元というか体験してきました。
ベンガラという染料が、このなんでもない山里を変えてしまった
不思議な260年間の物語ですね。
旅行記アップしてますので一度ご覧
いただければと思います。
はなかかみno王子
- ころっつさん からの返信 2009/10/04 17:46:54
- RE: RE: 弁柄
- はなかかみno王子さま。
御無沙汰しています。どうもここ1週間ほど体調が悪く、旅行記の更新もままならない状態です。
吹屋行かれたとのことですので、早速旅行記を拝見させていただきます!
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- 熊野古道さん 2009/07/30 12:34:49
- 銅山とベンガラの町
- ころっつさん、おはようございます。
吹屋のベンガラの町並みいいところですね。
白壁の町並みは全国的に何箇所かありますが、赤銅色を基調とした町並みはここだけなのではないでしょうか?
かつて銅山で栄えた町が、今ではその面影も無くひっそりとしたような感がなんともいえません。
豪商屋敷は白壁となまこ意匠施して、ベンガラの町並みの中にひときわ目立ちます。きっと豪商達が意識的にそうしたのでしょうね。
熊野古道
- ころっつさん からの返信 2009/07/31 12:33:31
- RE: 銅山とベンガラの町
- 熊野古道さん、こんにちは。
たびたびの訪問&メッセージありがとうございます!
高梁の旅行記で、予告していた吹屋の旅行記お読みいただき、ありがとうございます。
熊野古道さんが、おっしゃるとおり、白壁のまちなみは全国各地になりますが、赤壁と赤瓦のまちなみは、なかなか無いと思います。中国地方にはベンガラの家やまちなみが、ちらほら見られるようですが、ここまで大規模に残っている場所は無いと思いますよ。
私、実はこのまちの雰囲気がすごく好きなので、これまで5回ほど訪問しています。一番最初に訪れた時に、車を置き、角を曲がると突然現れた人が誰もいなかった古いまちなみ…その印象が忘れられません。
機会があれば、ぜひ一度行ってみてください。まだそれほど観光地化されていないところもお勧めのポイントです。
それでは、また。
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