2009/05/01 - 2009/05/01
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BATT_MANさん
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2009年のゴールデンウィークにチェコ共和国の首都、プラハへ行ってきました。
中世の面影を色濃く残し、「百塔の街」と形容される一方で、近代建築に対しても寛容なこの街には特徴的な建築があります。
その中でも、建築様式としてのキュビズムは、チェコ独自のもので、他の国には存在しないと言われています。
20世紀の初頭、ピカソらにより提唱されたキュビズムは、絵画の世界で長く継承されて来た、「一点透視図法」を否定したものでした。旧チェコ・スロバキアにだけキュビズム建築が流行した背景には、様々な要因が有ると思われますが、旧体制への反発と民族意識の高まりが大きく関係しています。
歴史的背景はともかく、ここでしか見ることの出来ない独特の建築のいくつかを紹介します。
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- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行なし)
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ヴィシェフラドの三世帯住宅
設計:ヨゼフ・ホホル
竣工:1913年
結晶体のように分割された壁面や、幾何学模様の装飾が、初期キュビズム建築の特徴です。
キュビズム建築の代表的設計者の一人、ヨゼフ・ホホルが最初に手掛けた作品で、ヴルタヴァ川沿いのヴィシェフラド地区に建てられました。ヴィシェフラドは、プラハの中でも歴史ある街で、「プラハ発祥の地」と呼ばれています。ホホルはここに、既存の建築スタイルを打ち破る新たな挑戦を始めました。 -
ヴィシェフラドの三世帯住宅
一番北側に位置するこの棟は、現在オフィスとして利用されています。 -
ヴィシェフラドの三世帯住宅
中央の棟はキュビズム的要素が比較的抑えられており、道路に対してシンメトリーなデザインなので、見ていても強いインパクトは無く、むしろ安定感の有る落ち着いた建物です。
上部のレリーフは、リブシェ伝説という、プラハ起源の物語の一場面です。 -
ヴィシェフラドの三世帯住宅
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ヴィシェフラドの三世帯住宅
一番南の棟です。北棟と良く似たデザインですが、ディティールが異なります。
中央棟とこの南棟は住居として使用されているようです。 -
ヴィシェフラドの三世帯住宅
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ネクラノヴァ通りの集合住宅
設計:ヨゼフ・ホホル
竣工:1914年
このアパートメントは、2本の道路が垂直ではなく斜めに出会うT字路にあり、鋭角な角地に建てられています。その頂点を多角形の柱が貫いているため、よりシャープな印象を受けます。ヨゼフ・ホホルの最高傑作と言われています。 -
ネクラノヴァ通りの集合住宅
1階コーナー部分にはレストランが入っています。
多角形の庇や斜めに仕切られた窓枠など、すべてが「斜辺、斜面」の連続で構成されています。 -
ネクラノヴァ通りの集合住宅
この建物が接する道の1本は坂道になっており、1階部分の窓が傾斜に合わせて違うデザインになっています。 -
コヴァジョヴィッチ邸
設計:ヨゼフ・ホホル
竣工:1913年
上で紹介した三世帯住宅と同じ、ヴルタヴァ川沿いにあり、設計も同じくヨゼフ・ホホルによるものです。個人宅兼事務所として建てられました。
建物の外観は完全にシンメトリーですが、前庭は建物に対し少しずれたデザインになっています。 -
コヴァジョヴィッチ邸
敷地を取り囲む鉄柵もキュビズム様式です -
コヴァジョヴィッチ邸
こちらは上の建物の裏面で、キュビズムの特徴はこちら側の方がより顕著です。 -
コヴァジョヴィッチ邸
裏正面の玄関扉です。扉本体と窓枠のデザインが連続しているかのように感じますが、パターンは別物です。 -
詳細不明の建築
明らかにキュビズムの影響を受けていると思われますが、通りがかりに偶然発見した建物で、帰国後に調べても何も分かりませんでした。 -
詳細不明の建築
最上階部分の装飾。 -
教員組合住宅
設計:オタカル・ノヴォトニー
竣工:1921年
大きな規模の建築です。グレー、サンド、赤色と3色に塗り分けられたカラーリングが美しく、この建物をより立体的に見せています。
壁面をプリズム状にカットした初期(前期)キュビズム建築は、あえて大胆な配色は避け、太陽光により壁面に陰影を映し出す建築が多く、この建物のようにカラフルなものは珍しいと思います。 -
教員組合住宅
上階部分の庇のディティールがひときわ美しく、キュビズム建築の到達点の一つではないでしょうか(と勝手に思っています)。 -
教員組合住宅
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黒い聖母の家 (キュビズム博物館)
設計:ヨゼフ・ゴチャール
竣工:1912年
旧市街中心部にあり、キュビズム博物館が入っています。 -
黒い聖母の家 (キュビズム博物館)
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黒い聖母の家 (キュビズム博物館)
2階へ上がる階段。手すり部分の装飾が見どころです。 -
黒い聖母の家 (キュビズム博物館)
階段は変形螺旋状になっています。 -
グランド・カフェ・オリエント
黒い聖母の家の2階部分がカフェになっています。
このカフェは、オープンからわずか8年後の1920年に閉店してしまいました。その後第二次世界大戦とそれに続く共産主義時代の間、約80年の歳月を経て再オープンしました。
再オープンにあたっては、残されていた1912年当時の写真を参考に、当初の姿を細部まで忠実に再現したそうです。 -
グランド・カフェ・オリエント
窓際に掛けられたランプもデザインに手抜きはありません。 -
グランド・カフェ・オリエント
昼食とコーヒーを頂きました。観光客慣れしている店員さんは動きもキビキビしていて親切で、とても好印象でした。 -
チェコスロヴァキア・レジオン銀行
設計:ヨゼフ・ゴチャール
竣工:1923年
これはキュビズム様式ではなく、アール・デコ様式ではないか、との考え方もありますが、一般的には後期キュビズム建築を「ロンド・キュビズム」と呼んでいます。
明らかに第一次大戦前の「前期キュビズム」とは全く違う建築様式と言わざるを得ません。そもそも、「ロンド=円」と「キュビズム=立方体派」という言葉そのものが矛盾しています。 -
チェコスロヴァキア・レジオン銀行
第一次世界大戦の終結とチェコスロバキアの独立にあわせて、国内では民族意識の高まりがより一層活発化していきました。旧体制に反旗をひるがえすメッセージが込められた(前期)キュビズム様式は、より民族性を全面に押し出し、チェコの民族装飾に用いられていた円(ロンド)を取り入れた、新たな建築表現へと昇華しました。 -
チェコスロヴァキア・レジオン銀行
「これはキュビズムか?」という議論はともかく、内部も非常に美しい空間です。外観同様、内部も円形装飾と紅白(正確にはワインレッドとクリーム色)に彩られています。 -
チェコスロヴァキア・レジオン銀行
残念ながら撮影が許されたのはここまで。これより中は銀行ですので撮影出来ませんでした。上の写真に写っているおじさんに断られました。銀行なんだから当たり前ですけどね。 -
アドリア宮
設計:パヴェル・ヤナーク
竣工:1925年
「アドリア宮」という名前は愛称で、正式名称は「リウニオネ・アドリアティカ・ディ・シクルタ」という長い名前です。イタリアの保険会社のビルだそうで、宮殿ではありません。
こちらもレジオン銀行と並ぶ、ロンド・キュビズムの代表的作品です。 -
アドリア宮
赤と白のカラーリングは、チェコの民族カラーとして、特にロンド・キュビズム建築には頻繁に採用されています。先に紹介したレジオン銀行もそうです。 -
アドリア宮
1階メインロビーです。この空間に見られるディティールは「キュビズム」より、「アール・デコ」のスタイルだと感じます。天窓からの採光があり、明るいロビーです。 -
アドリア宮
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ユニクマノヴォ通りの街路灯
設計:エミル・クラリーチェク
竣工:不詳 -
ユニクマノヴォ通りの街路灯
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ユニクマノヴォ通りの街路灯
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詳細不明の建築
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詳細不明の建築
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ダンシング・ビル
設計:ウラジミール・ミルニッチ
フランク・ゲーリー
竣工:1996年
このビルの正式名称は「ナショナル・ネーデルランデン・ビル」と言います。
このビルとキュビズムに直接の関係はありません。なぜ、プラハのキュビズム建築を語るときに、しばしばこのビルが登場するのか私には分かりません。
と書きながら、私も「キュビズム探訪」と題した旅行記に掲載している訳ですが、、、。 -
ダンシング・ビル
私には、このビルがプラハという街の建築に対する寛容さを象徴しているように思えます。建築としてのキュビズムがここまで急速に発展し、また現在に至るまで大切に守られているのも、この街の寛容さがあってこそではないか、と。
建築様式としてのキュビズムは短命に終わりました。「複数の視点による対象の把握と画面上の再構成」と言うキュビズムの基本思想は、二次元的発想からこそ生まれ得るものであり、建築という3次元表現の中では結局のところ、「プリズム形状を多用した外壁の装飾」という域を出ませんでした。その後世界は、表現派へ、さらにドイツのバウハウスに代表される機能主義へと建築デザインを進化させていきます。チェコももちろん機能主義の道へ進んでいくのですが、その途中に「キュビズム」を経由したことが、他の国には無い大きな特徴となりました。
建築理論として世界に影響を与えることはありませんでしたが、家具や室内装飾の手法としては後世に大きな影響を与えています。何より、建築を通して、「独自性」「民族性」を表現しようとする試みとして、キュビズム建築は意義深いものであり、チェコ人の誇りであり続けています。
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