2008/11/28 - 2008/11/30
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彷徨人MUさん
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1).プロローグ
人恋しい 日差し恋しや 冬の旅
ウイークデイの午後の上海便は、ゆったりと座ることが出来た。最近本屋で見つけた堀田善衛著『上海日記 滬上天下1945』(上海の略称は、「滬」)、この旅の間に読み上げようと、持参していた。1945年8月敗戦後、上海 にいた邦人が、敗戦国の民として、上海でどのような生活をしていたのか、とても興味があった。
2).蘇州へ
飛行機は、定刻に到着し、上海駅に向かい、動車組列車に乗り、約30分余で蘇州に到着した。蘇州駅では、北京・上海間の「新幹線」(京滬快速火車)と、上海・南京間の「高速鉄道」(滬寧際鉄路)の工事が、同時に始まっていた。
夕方のラッシュに入り、「観前街」は、相変わらず結構な人出である。商店街を通り抜け、路地に入ると、「評弾」(ピンタン)の引き語りが聞こえてきた。僕はいつの間にか、「評弾」の調子に合わせながら、ホテルへ向かっていた。
日本への留学経験のある友人が、ホテルへ迎えに来てくれ、家に案内された。テーブルには、お母さんの手料理の冷菜5品が並べられ、暖かい料理が出されると、勧め上手なお父さんが注いでくれる老酒を、まずは飲み干さねばならなかった。『面〇蟹』(注1)は、この時期、良く食べられる上海蟹の、家庭料理であった。
3). 「陽澄湖」へ
翌日、タクシーで、蘇州市の「工業園区」を通り、国道を走ること30分程で、「陽澄湖」湖畔に出た。上海蟹の養殖場や、レストランは「昆山」地区の「巴城鎮」に多く集まっており、そこから更に約17キロほど、湖岸沿いを走った。やがて、湖からは、少し離れているが、縦横に走る水路に沿って、舟形のレストランなどが建っていた。蟹の大きなモニュメントがある公園の前で、タクシーを降りた。「陽澄湖水上公園」沿いの「大禹路」のレストラン街に向かい、店内が賑やかな「品蟹楼」という名のレストランに入った。早速、燗をした老酒を注文したら、ヤカンに入れ、出てきた。その後、散々待たされた挙句、皿に載せれば出せる冷菜と、聊か手が掛かる温かい料理が、同時に出されてきた。
4).家庭料理を楽しむ
夕方、嘗て中国語を初めて教えてもらった顧さんの家を訪問した。入り口にはガードマンが警備しており、中に入る人をチェックしている。全部で5棟の建物があり、「小顧」邸は、A棟の一階にあった。床面積は146.44㎡、共有面積の持分が12㎡であり、間取りは、3LDKプラス、ユティリティ付きである。
湯気を立て 皿に雌雄の 蟹二杯
ダイニングの食卓に、冷菜が並べられるや、乾杯で食事が始まった。僕の好きな老酒「石庫門黒標」が準備されており、その心遣いが、嬉しかった。やがて、生きている時は長江の水の色の如く濁っているが、蒸されれば鮮やかな朱色に変わる大閘蟹(上海蟹)が、ボウルに山盛り載せられ、出されて来た。早速食べ始めるや、室内は次第に静かになって行った。雄と雌を各一杯づつ平らげたら、更に一杯勧められ、再び黙々と挑戦。テーブルは、蟹の甲羅や肢のガラが、次第に山盛になって行った。勧められ、雌の甲羅に、老酒を注いで貰い、ゆっくりと飲み干した。正に、至福の一時であった。
5).旅の終わりに
翌日上海に出て、「上海老飯店」で、この旅最後の中華料理の昼食を楽しんだ。昼間のお酒は酔い易く、聊かのご機嫌で、空港に向かい、夕方の便で、帰国した。今回の中国滞在時間は、僅か50時間余であった。(完)
(注1).一般には『面〇蟹』と言い、「塩醤蟹」(添付写真参照)
これは、上海蟹を背中から二つに切り、その切り口に小麦粉をたっぷり付けて、フライパンに油を引き、切り口の小麦粉が黄金色になるまで炒める。老酒、生姜、塩、醤油、それに砂糖少々を加えて、水を入れ15分ほど煮込む。残った小麦粉を水で溶き、それを加えて、更に煮込む。水気が少なくなり、蟹に小麦粉の膜が着き始めてきたら、刻みねぎを入れて出来上がりである。手などが汚れるし、蟹のエキスが滲みこんだ小麦粉を、蟹肉と一緒にずるずると啜りながら食べるのであるから、レストラン料理とはならず、親しいもの同士で食べる、楽しい家庭料理のようである。
* Coordinator: Gu Hong
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陽澄湖(巴城鎮)
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陽澄湖(巴城鎮) 。遠くに小島が見えるが、そこには建物が2棟あり、いずれも会員制の倶楽部の施設である。いかなる会員制かは分からないが、駐車場には高級車が並んでおり、窓から中をの覗いたら、賑やかな食事風景であった。
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陽澄湖(巴城鎮) 、湖岸の上海蟹の養殖場
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陽澄湖(巴城鎮) 、湖岸の上海蟹の養殖場
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陽澄湖に注ぐ水路に沿って建つ、一戸建ての高級住宅。それぞれの家には船着場が設置されている。昨今の不況の中では、売れ行きは、余りよくないのか、閉め切った家が多かった。
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水路沿いに建つ高級住宅。専用の船着場が見える。
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陽澄湖の注ぐ水路のある上海蟹の養殖場。小売をしてくれる。
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上海蟹の養殖場の生簀。
店主の話では、今年は、上海蟹一斤(500グラム)は、150元から160元、この店では大き目のもの2匹で140元にすると、言っていた。いろいろと聞き出したが、どうやらこのあたりの業者の申し合わせで、小売では、2匹で120元以下には出来ないようだ。
上海のレストランでは、2匹350グラム前後で、蒸しあがりで399元と言っていたので、高い店では、重さを考慮すれば、少なくとも、産地の5倍前後で蒸した蟹を売っているのだろう。 -
蟹の卸商屋さんが並ぶあたりを、水路に沿って歩いている時に声を掛けられ、生簀を見せてもらい、写真を取らせてもらった養殖場の経営者の王さん夫妻。
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生簀の中から、大きそうで、身のしっかり入った蟹を選んでくれた。当初買うつもりは無かったが、8杯買ってしまった。この生きた上海蟹を手土産に、夜、新築祝いの宴に出席した。
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巴城の「陽澄湖水上公園」の蟹の形をしたモニュメント
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昼食をとるために、湖畔から東に上る大禹路沿いのレストラン街に向かったが、そこには同じようなレストランが多く並んでいる。店の前に車が多く駐車しており、ガラス越しに見える店の中が賑やかそうな店を選び入った。『品蟹楼』という名のレストランである。個室に入り、まずは燗をした老酒を注文したら、ヤカンに入れて出してきた。
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込み合っているのか、料理はなかなか出てこない。老酒を飲みながら、待つこと30余分、やっと出てきたものは、突き出しの『炸旁皮魚』(干した小魚を焼いたもの、写真左手前)、『辣泡包菜』(キャベツの漬物、写真左奥)の出来合いのものと、『塩水河蝦』(塩茹でした河エビ、写真中央)、『清炒水芹』(水辺で取れる芹の炒め物、写真右手前)の、〆て4品が出てきた。
空腹の所為もあり、酒の肴としては、可もなく不可もないものであった。.. -
美味しいと言って、薦められた『昴刺魚豆腐湯』(陽澄湖で獲れる魚に、豆腐をいれたスープ)は、味の無いスープで、魚に豆腐を入れた白湯であった。クレームを言っても、返事は無く、泣き寝入りである。それ以外に、『蟹粉豆腐』は塩の塊が入っており、塩辛くて食べれなかった。このあたりの店では、極めてシンプルな値打ちの『蒸し蟹』以外は、田舎の賄いものと考え、注文すべきではない。
その日の夜の新築祝いで、「蒸し蟹」を充分用意しているので、お昼は「蒸し蟹」を食べないようにと、知人から強く言われていたので、この店では注文しなかったのだが・・・。 -
黄さん夫婦が購入した、蘇州市内のマンションの外観
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同マンションの外観
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北側正面から見た外観
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南側公園から見た外観
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娘さんの寝室。娘さんは今カナダで、大学院のドクターコースで、バイオの研究をしている。
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書斎
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主寝室
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キッチン
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メインダイニング
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リビング
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リビングからダイニングを見る
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リビングから見たベランダ。その先に、公園の木々が見える
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家庭料理
「塩醤蟹」、一般には「面〇蟹」と呼ばれている、上海蟹を使った家庭料理である。 -
家庭料理
ご主人と奥さんの二人で準備した11種類の「前菜」 -
家庭料理
まずは、鍋一杯蒸されて出された上海蟹の雄から。 -
家庭料理
朱色に蒸された雌の上海蟹 -
家庭料理
豚足のスープ -
「上海老飯店」での料理
冷菜の『水晶肴肉』(写真奥)と、『扁尖筍毛豆』(手前) -
「上海老飯店」での料理
『清炒河蝦』(剥き河蝦の炒め物)、最近は天然物が獲れにくくなり、この料理は98元と高い。タイ産の冷凍物であれば、40元以下で、食べることが出来る。味はほのかな塩味で、老酒に合う料理である。 -
「上海老飯店」での料理
『銀杏滑蟹○肉』、蟹の肢肉と銀杏、セロリー人参を炒めたもの。肢肉は上海蟹のものだと思ったのだが、海の蟹で、味もしっとり感も無いので、おそらく冷凍だと思う。88元と値段は高いが,あまり旨いものではない。 -
「上海老飯店」での料理
『蟹粉豆腐』、上海蟹の濃くのある蟹味噌と、あっさりした絹こし豆腐との炒め物。上海老飯店のこの料理はやはり旨い。値段も55元。 -
「上海老飯店」での料理
『松鼠桂魚』、少し小さめの桂魚を注文したが、やはり、この料理を食べないと、上海に来た感じがしない。値段は112元だった。いつも目の下の肉を食べるのが楽しみである。 -
「上海老飯店」での料理
『瑶柱松茸』、きぬがさだけと松茸を、干し貝柱で味付けたスープ。一人前40元。極めて上品な味である。
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