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【あっさり初仕事】<br />2008年9月15日から19日まで、中国本土(洛陽と上海)へのツアーへ行って来ました。ついに添乗医師としての初仕事です! 仕事として、海外旅行に行くのが私の長年の夢でしたが、あっさりと実現しました。ある高校時代の同級生からの紹介です。ほんの一ヶ月前に催された大分市での同窓会で、顔見知り程度の同級生にも宣伝を兼ねて名刺をどんどん配りました。名刺には、職業として海外旅行医師添乗サービスと書いています。それを見て、出発の2週間前になって、電話がありました。ある社長さんが、お得意様招待旅行に一緒に行ってくれる医者を探しているという由で、もちろんすぐに承諾しました。彼女は依頼主の社長さんと家族ぐるみの付き合いのようでした。後で、社長さんから聞くところによると、社長さんは自分の主治医に仕事を休んで一緒にツアーに行ってくれる様に以前に頼んだことがあるけれど、断わられたそうです。当然です。普通の医者にはそんなことはできません。私自身は、この日のために3年前から非常勤医師(フリーター医師とも呼ぶ)になり、長期の休みが取りやすい体制をずっと取っていたのです。ですから、急遽その間の仕事を全てどたキャンして、初ツアーの仕事を受けたのです。正直、「招待旅行」というのは自分の想定外でした。<br /><br />海外旅行は50回以上のベテランの私もお金をもらって海外に行くのは初めてです。お金をもらわなくても、無料で海外に行ったのも二度だけです。一度は、20年以上も前に高校留学のAFSのボランティアとして、シンガポールへタイ人と日本人の高校留学生の現地での飛行機の乗り換えの世話と、最終的に日本人と一緒に帰国した仕事でした。二度目はつい最近、メディカル・ツアーの視察のため、マレーシア観光局の招待でクアラルンプールへ行って来ました。<br /><br />その会社は大分では結構有名な中小企業でした。仕事上のお得意様に案内を出しているようでした。福岡市在住の私にとって、ちょうどいいことに福岡空港が起点のツアーでした。大手の旅行会社に委託しているので、私の分の手配も簡単でした。面白いことに、ホテルでは添乗員と同室でした。添乗員をやってもいいくらい旅行好きの私にとっては、むしろ歓迎でした。行き先は中国本土で、私にとっては初めてです。香港、澳門(マカオ)には行ったことがありますが、気楽に貧乏旅行ができる普通の国ではない中国本土にはあまり興味がありませんでした。しかも、中華料理はそれなりにはおいしいとは思いますが、シンガポールやマレーシアはもちろん、世界中のチャイナタウンで、ちょこちょこ食べているのであまり執着心はありませんでした。イタリア料理ほどの執着心はありません。でも、何となく初仕事は中国本土になるような予感がしていました。まさか当たるとは思いませんでしたが。<br /><br />【まずは洛陽へ】<br />福岡空港では、出発前に招待客同士と招待会社の社員の自己紹介があり、私は最後に同行する医者であると自己紹介しました。招待客には、中小企業の社長さんもだいぶいました。ですから、そんなに高齢者はいません。全部で30人程度です。今回は、行き先が中国なので前もって添乗員経由で、自己紹介と下痢の予防についてのパンフレットを全員に送っていました。福岡空港からは中国東方航空で上海浦東国際空港へたったの1時間半で着きました。頭ではわかっていたものの、羽田空港までの距離です。近いです。時差も1時間のみ。空港のレストランで最初の食事を取りましたが、せっかく医者の私が同行しているので、意図的に医学的な雑談をしました。下戸の私でも知ってる青島ビールで乾杯した昼食後、バスで国内線専用の上海虹橋空港へ移動し、今度は中国南方航空で鄭州へ。ところが、台風のせいか雨、風がひどく機内で延々と待たされました。予定より3時間ほど遅れてようやく鄭州空港へ着きましたが、それからバスで2時間かけてようやく洛陽のホテルへ着きました。現地のバスガイドはかなり日本語が上手なのですが、男の先生に日本語を習ったのか、「〜けれども、」という口癖が印象的でした。<br /><br />ホテルのレストランでは、早速のウェルカムパーティです。音楽演奏付きです。決められた席で隣の人の名前を読んでいたら知り合いの名前と一字違いで面白いなどとのんきに構えていたら、よく考えたら会社名の名字の社長さんでした。少し話しをしてから気づき、ちょっとあせりました。社長さんは一足先に現地に来ていたのでした。でも、なかなかユーモアもありそうで第一印象からいい感じでした。<br /><br />その後、二次会のカラオケの部屋に移動しましたが、若い中国人ホステスが何人もつくものの、彼女等は日本語もできないし、英語もできない。だから私は中国本土にあまり興味がなかったのです。片言の英語も通じない、稀な国です。携帯電話が鳴り、社長さんから「本部」に集合ということで別室に呼ばれ、日本語のできる中国人の女性社員2人と男性社員1人と社長さんとで楽しく会話しました。<br /><br />翌朝は、ホテルの目の前にある巨大な公園、牡丹公園を散策しました。この洛陽の町は牡丹で有名とガイドさんから聞いています。さすが中国です。朝から、太極拳をやっている人がたくさんいます。一部、バドミントンをしている人々もいます。後で、ガイドから社交ダンスを踊っている人々もいると聞き、翌朝確認すると確かにいました。仕事とはいえ、今回はツアーですので私の好きな気ままな時間はあまりありません。朝の散歩は貴重な時間です。少し歩き回ると普段だと気になる庶民的な食堂があります。いつものように物価チェックです。麺類が3〜5元(1元は約17円)で、隣のパン屋さんで一個2〜3元で菓子パンを売っています。安心しました。というのも、上海国際空港では、いくら空港とは言え、コーヒーが一杯40元と書いていてビックリしたからです。やはり、中国の物価はこんなもんでしょう。ついでに、紛らわしいのは中国語で「元」のことを Yuan と書くらしく、略して \、つまり日本の「円」と同じ略号なのです。何の略かわかりませんが RMB とも表記するようです。<br /><br />近くに洛陽牡丹女子医院と大きく書いたビルが見えます。病院だと思います。中国人に聞くと、必ずしも産婦人科だけではなく、患者が女性専門の病院のようです。バスで移動中に、整形外科、形成皮膚科と書いた女子医院もあり、何となく納得しました。ちなみに、男子医院という看板もあり、性病とも書いてあり、泌尿器科医の私には複雑な心境ですが、男性患者専用の病院もあるようです。<br /><br />【洛陽観光】<br />さすがにツアーですので、移動は全てバスで、しかも現地のガイド付きです。個人旅行の多い私にとっては新鮮です。大きなバス2台に分乗しているので、ゆったりしています。しかも、社長さんの配慮で乗る度に軟水のエビアンのミネラルウォーターのペットボトルが配られます。本当かどうか定かではありませんが、この国ではペットボトル入りの水等でも、注射器で生水を入れたりするので油断できないそうです。しかも社長さんは軟水と硬水の区別もよく知っていて、日本人には下痢しやすいカルシウムやマグネシウムの多い硬水は避けているのでした。ツアーというのは、私のように好きな所へ好きな時間に行けないのですが、決まった所に連れて行ってもらえて、食べるところも決まっているので、楽といえば楽です。でも、やはり団体行動なので私の感覚では無駄な時間も多いです。<br /><br />バスは山の麓へ向かい、いつのまにかテレビや映画でよく見るような少林寺拳法をやっている子供たちがたくさんいる学校を通過しました。おそろいの服(制服?)を着ています。いかにも中国の光景です。本来は空気も相当きれいなはずのこんな山の麓でも、残念ながらスモッグで視界はあまりよくありません。喉が痛くなるマカオほどひどくはありませんが。バスの中では、前日の中華料理がうなぎかへびかで盛り上がりました。日本人の我々がへびだろうと言っても、何故か中国人のガイドや中国人の会社の参加者はうなぎだと言い張るのです。まぁ、鳩だのカタツムリだのさすがに色々な食材が提供されました。中国では、鳩は食べ物らしく誰かが指摘していましたが、どこに行っても鳩が集まって来るのを見かけませんでした。恐るべし、中国!<br /><br />昼食は少林寺での精進料理でした。これは、日本の京都のような大豆等を上手に料理し、見た目も味も本物の肉や魚のような繊細な料理と違い、いかにも中国で imitation という言葉がぴったりのしろものです。しかも大しておいしくもない。その後、中国最初の仏教寺院とやらの白馬寺へ連れていかれました。日本の寺と大して変わりませんが、線香が値段に応じて馬鹿でかいのにはビックリしました。途中で一人が私の所へやって来て、頭痛がするというので準備してあった鎮痛剤を渡しました。<br /><br />夕食はすぐ目の前の牡丹城ホテルでの広東料理ですが、中国の交通事情で、歩くと危険ということでバスでの移動です。ホテルの横文字の名前が peony で、ここの名物の牡丹の英単語を何故かここ中国で学習しました。昨日と同じ音楽隊だけでなく、今晩は舞踊団も来ていました。いつの時代のか、中国にしてはへそ出しルックの舞踊もありました。まだ2日目ですが、脂っこい中華料理が続くので会社が準備した日本から持ってきたソーメンが食卓に出ました。大好評でした。下戸の私には関係ありませんが、社長さんの気遣いで日本からたくさんの焼酎や日本酒も持って来ていました。私は添乗員と同じ部屋ですが、彼は毎晩打ち合わせらしく遅くまで部屋に帰って来ないので、気にせず先に寝ていました。朝も早いし、やはり添乗員は大変なようです。私は添乗員ができるくらい旅行が好きで旅慣れていますが、実際に添乗員をするのはしんどそうです。<br /><br />3日目は午前中に三国志の関羽の首がある関林堂を訪れ、中国三大石窟の一つ、龍門石窟(世界遺産)を見学しました。一人、胃が痛いという人がいて、薬を渡しました。ところが、肝心の私自身の下腹がおかしいのです。痛みまではないですが、下腹がぢかぢかして明らかにおかしい。便も下痢まではいかないものの、軟便で少し近い。今回は、接待ツアーに同行しているので私としてはいつも以上に変なものは何も食べていないのに、軽い細菌性腸炎のようです。慌てて、患者(お客?)さん用に準備したビオフェルミンとパンラクミンの2種類の乳酸菌製剤を一日三回飲み始めました。おかげで何とか本格的な下痢は免れました。恐るべし、中国!<br /><br />今回のツアーは、社長さんらが下見までしているらしく、悪名高いトイレも全て水洗トイレでした。それでも、トイレットペーパーがないところや、昔懐かし仕切りのない立小便トイレもあり、水圧が低くて流れが悪いらしく、トイレットペーパーやティッシューはくず入れに捨てるようになっていたりしました。尿や便を拭いた紙を捨てるくず入れがあるのです。男女共同のトイレでは、血の付いたナプキンまでむき出しで捨てていました。さすが、中国人女性は上品です。紙を準備していなかった私は他人からティッシューをもらいトイレに駆け込みました。<br /><br />この日の昼食は洛陽料理ということでしたが、今一つでした。でも、今回も会社の準備したお茶漬けや、梅干が好評でした。梅干は味覚的に口がすっきりするし、下痢の予防にもなります。<br /><br />【大都会、上海へ】<br />来る時と違って、時間的にちょうどいいフライトがあるようで、洛陽市内の空港から直接、上海虹橋空港へ行きました。私は世界中の空港へ行きましたが、この洛陽空港は記録的に小さな空港で印象的でした。空港の駐車場があまりに小さく、一つのちょっとしたビルの規模です。フライトも一日に数便のようです。もちろん、目の前の飛行機までは地上を歩いて行きます。上海でのホテルは花園飯店ですが、英語名 Okura Garden Hotel でわかるように、日系のオークラホテルです。テレビではNHKの国際放送も見れます。ここでは、さすがにバスでなく歩いて近くの錦江飯店へ行き、夕食に上海料理を食べました。さすがに上海は都会で信号もあり、交通ルールが守られているようです。ここでも、二人の二胡奏者を呼んでいました。気のせいか、都会の上海のこのレストランが一番おいしく感じました。洛陽は田舎料理だからと言う人もいました。<br /><br />翌朝は、ゴルフ組と市内観光組に分かれました。私は、数が多い市内観光組に同行し、豫園、外灘(ワイタン)、そしてオープンしたばかりの百一階立ての森ビル、正式名は上海環球金融中心の展望台へ登りました。悪趣味なことに、展望台の一部は床がガラス張りで下が見えます。恐いです。ビルの形はまるで栓抜きのようで、あまり好きではありません。隣の昔からあるテレビ塔のほうが、途中が二ヶ所球状のタワーで絵になると思います。昼食は豫園の有名な小篭包の店、ディンタイフォンで食べましたが、私にはそんなにおいしいとは思えませんでした。バスの中で、降圧剤を内服中の人に頼まれ、血圧を測ると本人の自覚通り、93/55 とやや低めで下がり過ぎのようでした。すると、連鎖反応で計ってくれという人が現れます。一人は 154/90 と高血圧でした。もう一人は、114/54 と正常でした。<br /><br />一端、ホテルへ戻りゴルフ組みと合流して夕食の「さよならパーティ」へ四川料理を食べに行きました。最後の夕食ですが最高でした。元々、私は中華料理の中では辛い四川料理が一番好きです。ここの激辛の麻腐豆腐はシビレながらおいしかったです。この日は音楽演奏こそなかったものの、最後に道化師が現れ、覆面の表情の早変わりの芸を見せて楽しませてくれました。この日の招待客の挨拶で、こんなに楽しい旅行は初めてだと感謝していました。そして、ソーメンやお茶漬け、ペットボトルの手配、はたまたお医者さんまで同行するという社長さんの気配りに感激していました。<br /><br />その後、有名な上海の夜景を見にナイトクルーズへ昼間行った外灘の黄浦江(ファンプゥジャン)へ行きました。夜景でも、森ビルよりテレビ塔のほうが照明もきれいでした。酔った勢いであるお客さんから、先生はドクターでも薮医者じゃろうと言われました。別に気にはしませんが、さすがに自分で「空飛ぶ薮医者」と名乗るのもなぁ、などと考えていると、「空飛ぶ町医者」のほうが自分のイメージに近いかなと思えてきました。ツアーの短期間とはいえ、病気に限らず普段から接していて、いざとなったら診察する、そんなイメージです。<br /><br />その帰りバスに乗ろうとすると、気分の悪い人がいるということで、慌ててもう一台のバスへ行きました。顔色が悪いので急いで血圧を測ると正常でしたので、近くの席で様子を見ていました。幸い、バスがホテルに着く頃には気分も良くなり、顔色も良くなっていました。本人はたばこを吸いたいくらい元気になったと言うので、たばこは止めときなさいと言おうとしたら、すでに吸っています。不良患者です!でも、仕方がないので黙っていました。世の中、こんなもんです。<br /><br />翌朝は、バスで駅へ移動しリニアモーターカーに乗ると、10分もかからずに浦東空港へ着きました。本当は430kmくらいのスピードが出るらしいのですが、朝は何故か最高速度を300km程度に抑えているようです。こうして初めての医者としての添乗旅行の仕事は無事に終わりました。ほどよい患者が出て少しは役に立ったと思います。<br /><br />後日談ですが、今回は豪華ツアーに同行したので私自身常にご馳走を食べ、帰国すると5日間で3kgも体重が増加していました。いつもなら、それでも1〜2週間ですぐに元に戻るのですが、中華の油が強烈なのか中々元に戻らず、本格的に食事制限してようやく1ヵ月後に元に戻しました。やはり、中国は普通の国ではないようです。<br /><br /><br />私は本邦初の「海外旅行に添乗する専門医」で、<br />「空飛ぶドクター」(登録商標)と名乗っていま<br />す。私のサービスに興味のある人はウェブサイト<br />http://www.kanoya-travelmedica.com を参考し<br />て下さい。<br /><br /><br />(「機内にお医者さんはいませんか?」空飛ぶドクターの海外旅  行と健康管理、悠飛社、1,470円  好評発売中!)

中国(洛陽・上海)ツアーに医者として添乗

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2008/09/15 - 2008/09/19

7533位(同エリア11703件中)

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空飛ぶドクター

空飛ぶドクターさん

【あっさり初仕事】
2008年9月15日から19日まで、中国本土(洛陽と上海)へのツアーへ行って来ました。ついに添乗医師としての初仕事です! 仕事として、海外旅行に行くのが私の長年の夢でしたが、あっさりと実現しました。ある高校時代の同級生からの紹介です。ほんの一ヶ月前に催された大分市での同窓会で、顔見知り程度の同級生にも宣伝を兼ねて名刺をどんどん配りました。名刺には、職業として海外旅行医師添乗サービスと書いています。それを見て、出発の2週間前になって、電話がありました。ある社長さんが、お得意様招待旅行に一緒に行ってくれる医者を探しているという由で、もちろんすぐに承諾しました。彼女は依頼主の社長さんと家族ぐるみの付き合いのようでした。後で、社長さんから聞くところによると、社長さんは自分の主治医に仕事を休んで一緒にツアーに行ってくれる様に以前に頼んだことがあるけれど、断わられたそうです。当然です。普通の医者にはそんなことはできません。私自身は、この日のために3年前から非常勤医師(フリーター医師とも呼ぶ)になり、長期の休みが取りやすい体制をずっと取っていたのです。ですから、急遽その間の仕事を全てどたキャンして、初ツアーの仕事を受けたのです。正直、「招待旅行」というのは自分の想定外でした。

海外旅行は50回以上のベテランの私もお金をもらって海外に行くのは初めてです。お金をもらわなくても、無料で海外に行ったのも二度だけです。一度は、20年以上も前に高校留学のAFSのボランティアとして、シンガポールへタイ人と日本人の高校留学生の現地での飛行機の乗り換えの世話と、最終的に日本人と一緒に帰国した仕事でした。二度目はつい最近、メディカル・ツアーの視察のため、マレーシア観光局の招待でクアラルンプールへ行って来ました。

その会社は大分では結構有名な中小企業でした。仕事上のお得意様に案内を出しているようでした。福岡市在住の私にとって、ちょうどいいことに福岡空港が起点のツアーでした。大手の旅行会社に委託しているので、私の分の手配も簡単でした。面白いことに、ホテルでは添乗員と同室でした。添乗員をやってもいいくらい旅行好きの私にとっては、むしろ歓迎でした。行き先は中国本土で、私にとっては初めてです。香港、澳門(マカオ)には行ったことがありますが、気楽に貧乏旅行ができる普通の国ではない中国本土にはあまり興味がありませんでした。しかも、中華料理はそれなりにはおいしいとは思いますが、シンガポールやマレーシアはもちろん、世界中のチャイナタウンで、ちょこちょこ食べているのであまり執着心はありませんでした。イタリア料理ほどの執着心はありません。でも、何となく初仕事は中国本土になるような予感がしていました。まさか当たるとは思いませんでしたが。

【まずは洛陽へ】
福岡空港では、出発前に招待客同士と招待会社の社員の自己紹介があり、私は最後に同行する医者であると自己紹介しました。招待客には、中小企業の社長さんもだいぶいました。ですから、そんなに高齢者はいません。全部で30人程度です。今回は、行き先が中国なので前もって添乗員経由で、自己紹介と下痢の予防についてのパンフレットを全員に送っていました。福岡空港からは中国東方航空で上海浦東国際空港へたったの1時間半で着きました。頭ではわかっていたものの、羽田空港までの距離です。近いです。時差も1時間のみ。空港のレストランで最初の食事を取りましたが、せっかく医者の私が同行しているので、意図的に医学的な雑談をしました。下戸の私でも知ってる青島ビールで乾杯した昼食後、バスで国内線専用の上海虹橋空港へ移動し、今度は中国南方航空で鄭州へ。ところが、台風のせいか雨、風がひどく機内で延々と待たされました。予定より3時間ほど遅れてようやく鄭州空港へ着きましたが、それからバスで2時間かけてようやく洛陽のホテルへ着きました。現地のバスガイドはかなり日本語が上手なのですが、男の先生に日本語を習ったのか、「〜けれども、」という口癖が印象的でした。

ホテルのレストランでは、早速のウェルカムパーティです。音楽演奏付きです。決められた席で隣の人の名前を読んでいたら知り合いの名前と一字違いで面白いなどとのんきに構えていたら、よく考えたら会社名の名字の社長さんでした。少し話しをしてから気づき、ちょっとあせりました。社長さんは一足先に現地に来ていたのでした。でも、なかなかユーモアもありそうで第一印象からいい感じでした。

その後、二次会のカラオケの部屋に移動しましたが、若い中国人ホステスが何人もつくものの、彼女等は日本語もできないし、英語もできない。だから私は中国本土にあまり興味がなかったのです。片言の英語も通じない、稀な国です。携帯電話が鳴り、社長さんから「本部」に集合ということで別室に呼ばれ、日本語のできる中国人の女性社員2人と男性社員1人と社長さんとで楽しく会話しました。

翌朝は、ホテルの目の前にある巨大な公園、牡丹公園を散策しました。この洛陽の町は牡丹で有名とガイドさんから聞いています。さすが中国です。朝から、太極拳をやっている人がたくさんいます。一部、バドミントンをしている人々もいます。後で、ガイドから社交ダンスを踊っている人々もいると聞き、翌朝確認すると確かにいました。仕事とはいえ、今回はツアーですので私の好きな気ままな時間はあまりありません。朝の散歩は貴重な時間です。少し歩き回ると普段だと気になる庶民的な食堂があります。いつものように物価チェックです。麺類が3〜5元(1元は約17円)で、隣のパン屋さんで一個2〜3元で菓子パンを売っています。安心しました。というのも、上海国際空港では、いくら空港とは言え、コーヒーが一杯40元と書いていてビックリしたからです。やはり、中国の物価はこんなもんでしょう。ついでに、紛らわしいのは中国語で「元」のことを Yuan と書くらしく、略して \、つまり日本の「円」と同じ略号なのです。何の略かわかりませんが RMB とも表記するようです。

近くに洛陽牡丹女子医院と大きく書いたビルが見えます。病院だと思います。中国人に聞くと、必ずしも産婦人科だけではなく、患者が女性専門の病院のようです。バスで移動中に、整形外科、形成皮膚科と書いた女子医院もあり、何となく納得しました。ちなみに、男子医院という看板もあり、性病とも書いてあり、泌尿器科医の私には複雑な心境ですが、男性患者専用の病院もあるようです。

【洛陽観光】
さすがにツアーですので、移動は全てバスで、しかも現地のガイド付きです。個人旅行の多い私にとっては新鮮です。大きなバス2台に分乗しているので、ゆったりしています。しかも、社長さんの配慮で乗る度に軟水のエビアンのミネラルウォーターのペットボトルが配られます。本当かどうか定かではありませんが、この国ではペットボトル入りの水等でも、注射器で生水を入れたりするので油断できないそうです。しかも社長さんは軟水と硬水の区別もよく知っていて、日本人には下痢しやすいカルシウムやマグネシウムの多い硬水は避けているのでした。ツアーというのは、私のように好きな所へ好きな時間に行けないのですが、決まった所に連れて行ってもらえて、食べるところも決まっているので、楽といえば楽です。でも、やはり団体行動なので私の感覚では無駄な時間も多いです。

バスは山の麓へ向かい、いつのまにかテレビや映画でよく見るような少林寺拳法をやっている子供たちがたくさんいる学校を通過しました。おそろいの服(制服?)を着ています。いかにも中国の光景です。本来は空気も相当きれいなはずのこんな山の麓でも、残念ながらスモッグで視界はあまりよくありません。喉が痛くなるマカオほどひどくはありませんが。バスの中では、前日の中華料理がうなぎかへびかで盛り上がりました。日本人の我々がへびだろうと言っても、何故か中国人のガイドや中国人の会社の参加者はうなぎだと言い張るのです。まぁ、鳩だのカタツムリだのさすがに色々な食材が提供されました。中国では、鳩は食べ物らしく誰かが指摘していましたが、どこに行っても鳩が集まって来るのを見かけませんでした。恐るべし、中国!

昼食は少林寺での精進料理でした。これは、日本の京都のような大豆等を上手に料理し、見た目も味も本物の肉や魚のような繊細な料理と違い、いかにも中国で imitation という言葉がぴったりのしろものです。しかも大しておいしくもない。その後、中国最初の仏教寺院とやらの白馬寺へ連れていかれました。日本の寺と大して変わりませんが、線香が値段に応じて馬鹿でかいのにはビックリしました。途中で一人が私の所へやって来て、頭痛がするというので準備してあった鎮痛剤を渡しました。

夕食はすぐ目の前の牡丹城ホテルでの広東料理ですが、中国の交通事情で、歩くと危険ということでバスでの移動です。ホテルの横文字の名前が peony で、ここの名物の牡丹の英単語を何故かここ中国で学習しました。昨日と同じ音楽隊だけでなく、今晩は舞踊団も来ていました。いつの時代のか、中国にしてはへそ出しルックの舞踊もありました。まだ2日目ですが、脂っこい中華料理が続くので会社が準備した日本から持ってきたソーメンが食卓に出ました。大好評でした。下戸の私には関係ありませんが、社長さんの気遣いで日本からたくさんの焼酎や日本酒も持って来ていました。私は添乗員と同じ部屋ですが、彼は毎晩打ち合わせらしく遅くまで部屋に帰って来ないので、気にせず先に寝ていました。朝も早いし、やはり添乗員は大変なようです。私は添乗員ができるくらい旅行が好きで旅慣れていますが、実際に添乗員をするのはしんどそうです。

3日目は午前中に三国志の関羽の首がある関林堂を訪れ、中国三大石窟の一つ、龍門石窟(世界遺産)を見学しました。一人、胃が痛いという人がいて、薬を渡しました。ところが、肝心の私自身の下腹がおかしいのです。痛みまではないですが、下腹がぢかぢかして明らかにおかしい。便も下痢まではいかないものの、軟便で少し近い。今回は、接待ツアーに同行しているので私としてはいつも以上に変なものは何も食べていないのに、軽い細菌性腸炎のようです。慌てて、患者(お客?)さん用に準備したビオフェルミンとパンラクミンの2種類の乳酸菌製剤を一日三回飲み始めました。おかげで何とか本格的な下痢は免れました。恐るべし、中国!

今回のツアーは、社長さんらが下見までしているらしく、悪名高いトイレも全て水洗トイレでした。それでも、トイレットペーパーがないところや、昔懐かし仕切りのない立小便トイレもあり、水圧が低くて流れが悪いらしく、トイレットペーパーやティッシューはくず入れに捨てるようになっていたりしました。尿や便を拭いた紙を捨てるくず入れがあるのです。男女共同のトイレでは、血の付いたナプキンまでむき出しで捨てていました。さすが、中国人女性は上品です。紙を準備していなかった私は他人からティッシューをもらいトイレに駆け込みました。

この日の昼食は洛陽料理ということでしたが、今一つでした。でも、今回も会社の準備したお茶漬けや、梅干が好評でした。梅干は味覚的に口がすっきりするし、下痢の予防にもなります。

【大都会、上海へ】
来る時と違って、時間的にちょうどいいフライトがあるようで、洛陽市内の空港から直接、上海虹橋空港へ行きました。私は世界中の空港へ行きましたが、この洛陽空港は記録的に小さな空港で印象的でした。空港の駐車場があまりに小さく、一つのちょっとしたビルの規模です。フライトも一日に数便のようです。もちろん、目の前の飛行機までは地上を歩いて行きます。上海でのホテルは花園飯店ですが、英語名 Okura Garden Hotel でわかるように、日系のオークラホテルです。テレビではNHKの国際放送も見れます。ここでは、さすがにバスでなく歩いて近くの錦江飯店へ行き、夕食に上海料理を食べました。さすがに上海は都会で信号もあり、交通ルールが守られているようです。ここでも、二人の二胡奏者を呼んでいました。気のせいか、都会の上海のこのレストランが一番おいしく感じました。洛陽は田舎料理だからと言う人もいました。

翌朝は、ゴルフ組と市内観光組に分かれました。私は、数が多い市内観光組に同行し、豫園、外灘(ワイタン)、そしてオープンしたばかりの百一階立ての森ビル、正式名は上海環球金融中心の展望台へ登りました。悪趣味なことに、展望台の一部は床がガラス張りで下が見えます。恐いです。ビルの形はまるで栓抜きのようで、あまり好きではありません。隣の昔からあるテレビ塔のほうが、途中が二ヶ所球状のタワーで絵になると思います。昼食は豫園の有名な小篭包の店、ディンタイフォンで食べましたが、私にはそんなにおいしいとは思えませんでした。バスの中で、降圧剤を内服中の人に頼まれ、血圧を測ると本人の自覚通り、93/55 とやや低めで下がり過ぎのようでした。すると、連鎖反応で計ってくれという人が現れます。一人は 154/90 と高血圧でした。もう一人は、114/54 と正常でした。

一端、ホテルへ戻りゴルフ組みと合流して夕食の「さよならパーティ」へ四川料理を食べに行きました。最後の夕食ですが最高でした。元々、私は中華料理の中では辛い四川料理が一番好きです。ここの激辛の麻腐豆腐はシビレながらおいしかったです。この日は音楽演奏こそなかったものの、最後に道化師が現れ、覆面の表情の早変わりの芸を見せて楽しませてくれました。この日の招待客の挨拶で、こんなに楽しい旅行は初めてだと感謝していました。そして、ソーメンやお茶漬け、ペットボトルの手配、はたまたお医者さんまで同行するという社長さんの気配りに感激していました。

その後、有名な上海の夜景を見にナイトクルーズへ昼間行った外灘の黄浦江(ファンプゥジャン)へ行きました。夜景でも、森ビルよりテレビ塔のほうが照明もきれいでした。酔った勢いであるお客さんから、先生はドクターでも薮医者じゃろうと言われました。別に気にはしませんが、さすがに自分で「空飛ぶ薮医者」と名乗るのもなぁ、などと考えていると、「空飛ぶ町医者」のほうが自分のイメージに近いかなと思えてきました。ツアーの短期間とはいえ、病気に限らず普段から接していて、いざとなったら診察する、そんなイメージです。

その帰りバスに乗ろうとすると、気分の悪い人がいるということで、慌ててもう一台のバスへ行きました。顔色が悪いので急いで血圧を測ると正常でしたので、近くの席で様子を見ていました。幸い、バスがホテルに着く頃には気分も良くなり、顔色も良くなっていました。本人はたばこを吸いたいくらい元気になったと言うので、たばこは止めときなさいと言おうとしたら、すでに吸っています。不良患者です!でも、仕方がないので黙っていました。世の中、こんなもんです。

翌朝は、バスで駅へ移動しリニアモーターカーに乗ると、10分もかからずに浦東空港へ着きました。本当は430kmくらいのスピードが出るらしいのですが、朝は何故か最高速度を300km程度に抑えているようです。こうして初めての医者としての添乗旅行の仕事は無事に終わりました。ほどよい患者が出て少しは役に立ったと思います。

後日談ですが、今回は豪華ツアーに同行したので私自身常にご馳走を食べ、帰国すると5日間で3kgも体重が増加していました。いつもなら、それでも1〜2週間ですぐに元に戻るのですが、中華の油が強烈なのか中々元に戻らず、本格的に食事制限してようやく1ヵ月後に元に戻しました。やはり、中国は普通の国ではないようです。


私は本邦初の「海外旅行に添乗する専門医」で、
「空飛ぶドクター」(登録商標)と名乗っていま
す。私のサービスに興味のある人はウェブサイト
http://www.kanoya-travelmedica.com を参考し
て下さい。


(「機内にお医者さんはいませんか?」空飛ぶドクターの海外旅  行と健康管理、悠飛社、1,470円  好評発売中!)

同行者
その他
交通手段
観光バス
航空会社
中国東方航空
旅行の手配内容
ツアー(添乗員同行あり)

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  • 牡丹公園

    牡丹公園

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  • 世界遺産(龍門石窟)

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