18きっぷ散歩'08夏（7）　キングオブ散歩道デビュー：相賀～尾鷲（馬越峠）

2008/08 - 2008/08

　松阪で朝寝坊した。特急での移動が前提なのか、鈍行の本数が少なく18きっぱー泣かせの紀勢本線にあって始発を逃す痛恨。それでも気を取り直して二番電車に乗り、今回の目的地へ。
　散歩の聖地・熊野古道は広範囲に亘る。電車＋徒歩だと行動範囲が限られるためさすがに色々調べて、今回はこの馬越峠だけを体験することにした。上着は、手持ちで最も優秀な速乾Tシャツ、下は撥水加工のジャージを履いて準備万端。

エリア 尾鷲(三重)

　抜けるような青空。
　ここまでずっと晴れてはいたが、どうもパッとしない空だった。これを待っていたのだ。

　下車したのは相賀駅。馬越峠の起点となる無人駅である。
　駅周辺をざっと見渡しても馬越峠への行き先表示が見当たらなかったので、たまたま近所の家を回っていたヤクルトおばさんに訊いてみる。親切に行き方を教えてくれたおばさんに「それ背負って歩くの？　気をつけて」と目を丸くされた。そんなに急斜面なのでせうか。
　しばらく歩くと酒屋があったので、脱水防止用にポカリの大きなペットボトルを購入。レジで「おっ、今から馬越でっか」と訊かれる。「ええ」と答えると「今日はえらいでー」と返される。そんなに急斜面なのでせうか。

　ヤクルトおばちゃんが言っていた橋に到着。

　早くも水浴びしたいほど暑い。でも今日の空の代償だと思えば我慢できる。

　そのまままっすぐ、と教えられていた通りに歩くと、こんな道に出る。「熊野古道」という言葉の響きと、車通りの多い国道とのイメージがどうしても重ならないので、これ道間違ってんじゃねえかとの疑念が自然と湧いてくる。この暑さだと、道を引き返す際のダメージも大きい。

　道の駅発見。少なくとも、道が正しいか正しくないかはここで判明するだろう。
　周辺地図を見て、このまままっすぐでOKであることを確認。おばちゃん疑ってすみません。
　ついでに、朝飯を抜いていたことを思い出し、名物めはり寿司も調達。寿司と名はつくが、実体は高菜で包まれた大きめのおにぎりで、見た目が野性的。中はぱらぱらしていてたいへん美味。今回の旅は道の駅と縁がある。

　しばらく進むといきなり看板。まさかこういう入り方とは。

　入口から少し歩いてすぐに近代文明の面影は消える。さすが世界遺産、手抜かりなし。

　道中には、進捗度の目安となるこのような標識が建てられている。しかし終わってみれば、これがどう考えても等間隔とは思えず、何の慰みにもならなかった。
　それよりここの斜面はキツい。早くも非散歩の様相を呈してきた。

　江戸時代の旅人と同じ道を歩いているのだなあ、などと感慨に耽る余裕はあと僅か。

　ちょうど登り行程の半分を過ぎたあたりにベンチがあったので休憩し、今登ってきた坂を撮ったもの。ヤな傾斜。

　で、頂上。
　途中がスコーンと抜けているのは、ベンチでカメラをリュックに仕舞ったからである。あんなもん持って登れるかっつーの。
　頂上は木が生い茂っていて、見渡す限りの絶景は拝めない。探せばあったのかもしれないが、ウロウロする元気もない。次の電車の時刻も気になる。

　下りの傾斜。
　登山は下りのほうがキツイと言われるが、本質的には比較の問題ではないと思う。上りはスタミナ、下りは筋力、と要求される能力が異なるのであり、スタミナのなさがメジャー級の自分にとっては下りの方が断然楽チンである。こんな傾斜も余裕。

　馬越峠の域内としてはほぼゴールとなる直前に、展望台への標識が見えたので寄り道。
　素晴らしい。
　頂上より素晴らしい。
　でも別に景色を求めて頂上を目指していたわけではないからいいんである。道そのものが目的だったんである。

　ゴール。
　赤いTシャツはすっかり臙脂色になっている。
　しかしここからが結構長かった。

　ここからしばらくは、別荘だろうか、シャレた住居群の間を行く。

　墓地を抜け、住宅街を抜ける。舗装された下り道は、傾斜がきついうえに長い。尾鷲スタートだとこの道を延々と登ることになるわけで、相賀スタートのほうが精神的には楽のような気がする。

　モクモク

　最後は商店街を縫っていく。思わずかき氷を購入、鼻の頭が痛くなる間もなく一気食い。

　尾鷲駅到着。
　トイレに駆け込んでシャツを着替え、洗面台で水に浸けて軽く濯いで絞る。シャツの重さ変わんねーじゃねーか。
　少し余裕を見て駅に到着したが電車が遅延。生涯初のナイス遅延。駅で心地よい風に吹かれながら30分ほど待つうちに汗が乾き、何とか車内カオスの発生源となる事態は回避した。