2008/08/11 - 2008/08/16
39位(同エリア288件中)
きっちーさん
「今年の夏休みはサ、また南京へ行こうと思うんだよねー」
「また中国?何度も何度も・・・。どこがいいの?あんなところ」
「前回、南京へ行ったときは、かっつー(注:本多勝一)の『南京への道』テーマで、『侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館』見学をしたかったのに、かいそーちゅーで見れなかったんだもん。
もうリニューアルオープンしたらしいしサ。一緒に行かない?」
「南京への道?何だっけ??」
「ぬわにいぃぃ〜っ?!おかーさんの本棚にあった本じゃん!!」
「お母さん知らないわよ、そんな本」
「あったよ!かっつー(注:本多勝一)シリーズ、黒い文庫の古いやつ!自分の本じゃん」
「あったような、なかったような・・・」
「・・・・・・・・・・これだから、団塊の世代(最後の方)生まれは・・ハア〜・・。
読んでないんでしょ?
かっつけでみんなが持ってるからって、本棚に飾ってる資本論みたいなもんなんでしょ?『家事も仕事も子育ても共同で』なんて外に出て働いてるのに、帰ってくれば女性が家事をやるのが当たり前みたいな、家父長制を引きずってるでしょ?あらゆるジャンルの本も『積ん読』派・・のび太だ!のび太が見えるぞ!!」
「え〜?読んでる!読んでるよ、たぶん」
「・・・オトナってうそつき」
『楽しい夏休みの予定』から、とめどなく話がそれてしまいますが、なんとか行き先が決まり、いよいよ夏休みのお盆の週。
親子旅行へ出発です!
- 同行者
- 家族旅行
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 交通手段
- 鉄道 タクシー
- 航空会社
-
よく考えてみると、8/8から中国はオリンピック!
タイトルの「加油」も、「加油中国!」(がんばれ中国)からとったもの。
なのに、この場合は中国ガンバレではなく、暑さに負けるなきっちー家の意味ですけど。←あくまで自己チュー
ああ〜。
混んでいるのでは・・・。
なにもかも、値上がりしているのでは・・。
セキュリティーが厳しくて、移動が困難になるのでは・・。
なんでこんなときにオリンピックなんてやってるの・・。
まあ、北京行くのではナイからいっか・・・。
スポーツの祭典とはまったく縁の無い日常を生きる、ドキドキの出発です。 -
ノースウエスト直行便で、上海浦東国際空港着。
この、ノースウエストで帰国の際、散々な目に遭うことになるのですが、このときは知るよしもありません。
浦東国際空港は増築されたようで、到着口からすぐ建物を出たところにあったリムジンバス乗り場が、隣の建物の向こう側に移動しており、探すのにひと苦労。
ようやくみつけました!
ココ!
どの線も、20分おきに来るようですが、出ちゃったばかりで、なかなか来ず。
みんな、「まだかなー」って道路の先を見つめます。 -
けっきょく20分ほどで、バス到着。
上海火車站まで、18元は変更ナシ。
おもむろに走り出した車内のテレビに、アンディ・ラウのビデオクリップが流れます。
そのテーマが、なんとパラリンピック!
いやー、このひとホント生き方にそつの無い。
世の中オリンピックに浮かれてるときに、あえてこーゆーの持ってくるあたり、「やるなアンディー・・・」って感じです。 -
火車站で明日の南京行きのチケットを購入し、タクシーで今夜お泊りの『東亜飯店』へ。
せっかく夜遊び可能な繁華街のホテルにしたのに、母上すでにバテバテ。
「あんたの体力といっしょにしないで・・。お母さんはもう寝る!」
ヨロヨロと、エレベーターでお部屋直行です。
つまんないー。
夜景見に行こうよー。
上海タワーみたいー。 -
お部屋は、ご覧のとおりのエコノミールーム。
私にはいつものお部屋ですが、ヘンに贅沢に育っているシニア世代は大騒ぎです。
「なに、この古い部屋は!」
「バスタブが汚くてシャワーしか浴びられない!」
「水が臭い!水がっ」
「ベッドが堅すぎて眠れないッ」
もー、うるさいなー。
いいじゃん、一泊の宿なんだしさ。
たしかに、水は臭いが・・。
海の近くだからじゃない?
海近いと、水質悪そうじゃない?←てきとー -
宿に、ケチをつけまくる母をなだめつつ、先ほど購入したチケットを眺めます。
あっ。
硬座になってる。
軟座を頼んだのに。
そして、値上がりだー。
去年は軟座79元だったのに、硬座93元!
燃料の値上がりが、こっちでもスゴイんだなー。
「えっ!硬座なんて、お母さんイヤよ!」
ちくしょー。
クレーム禁止。 -
翌朝。
眠い目をこすりながら、上海火車站の待合室へ。
セキュリティーが厳重になっているかと思いきや、前回と同じく、かばんをX線に通しただけでお終いです。
ただし、男の人だけは警備員の人がランダムに金属探知機を当てていました。
まあこんだけ人数いると、こまかくやってたら終わんないかー。
あいかわらず、体育館のやうな待合室で列車待ち。
発車15分ほど前に改札がひらき、わらわらホームへ出ます。
硬座といっても新幹線のようなゆったりとした座席で、母からのクレームも無く、時間どおりに列車が走り出します。 -
2時間ほどで、南京駅着。
去年は、『中国語の先生のところでバイトしている女性が南京の金陵大学の出身者で、その人の同級生が南京で結婚していて、そのホテルマンの旦那さん』の孫月冬さんが、駅までむかえに来てメシ食わせてくれてホテル世話してくれてマイカーで観光案内してくれておやつを奢ってくれるという、ぶっちゃけ知らない人にありえないレベルでお世話になってしまったのですが、今回は自力で行きましょう。
改札を出ると、すぐ右手が南京地下鉄の連絡口です。 -
切符の自販機で、まずは切符!
南京の宿は決めていないのですが、地下鉄駅周辺で、夜も安心な繁華街付近に泊ろうという事で、中心部『新街口』までの切符を買うことに致します。 -
南京地下鉄きっぷの買い方!
?画面に出てくる、目的地(駅名)をタッチ
?必要枚数をタッチ
?金額が表示されるので、その金額を入れる
(南京火車站から新街口までは、片道2元)
?チップ型の切符が出てきます -
これが、南京地下鉄のきっぷ。
なんだかカシノのチップみたい・・。
柄が浮き彫りになっている面と、平らな面があります。
柄のあるほうを、改札の磁気読み取りに当てて、バーを押してホームへ。 -
南京地下鉄のホーム。
広くは無いけど、新しくて綺麗です。 -
新街口駅に到着。
南京の中心部は、巨大なビルが立ち並ぶ、見慣れた都市の風景です。
まずはホテルを決めて荷物を置こうと、地下鉄6番出口を出たすぐ横に『金陵飯店』の巨大なビルが、どーんっと建っています。 -
で、でかっ・・。
「地下鉄と直結して建っているホテルなんて・・。資本と政府が癒着している・・談合事件・・」
お母さんがつぶやきます。
そんなことより、もっと安いとこ行こうヨ。
高そうだしさー。
「お母さんココがいい」
「えっ」
「ここに決めた」
「ええ〜っ。癒着は?談合はー??」
ずんずん行ってしまう母を追って、ホテルのフロントへ。
ひゃ〜、まばゆいな。
気後れしちゃうよ。
「今日、泊れるかきいて」
「えっ!私がきくの?!」
「あんた中国語習っているんでしょう」
「いや・・それは・・。お母さんこそ、英語できんでしょ!えーご!活かしてよ」
「できないよー!」
醜いつばぜり合いをしながら、レセプションへ。
母との戦いに敗れ、しぶしぶカウンターの前へ出ます。
「えーと、エクスキューズミー。キャナアイステイ、ワンナイト。ツィンルーム、プリーズ」
きっちりスーツを着込んだフロントの男性が、ベラベラっと英語でかえしてきます。
「あー・・。ノット、リザベーションなんですけどぉ・・」
「not reservation?」
「イエス、アイムノット、リザベーション」
「少々お待ちください」と、フロントマンさんがパソコンのキーを操ります。
「お部屋はご用意できます。948元のお部屋と1240元のお部屋がございますが、どちらになさいますか?」
948元・・。
『歩き方』の記載より、少し安くなっているようです。
でも、東亜飯店に3泊できちゃうお値段だー。
「どうちがうのですか?」
「高い方のお部屋は、テーブルがふたつになります」
テーブルがふたつ・・必要ないし。いらないし。
「948元の方で!」
「では、パスポートをお願いします」
母がカードで支払ったため、保証金は必要なし。
じゃあ、さっそくお部屋へ! -
おお〜っ。
-
すご〜いっ!
薄型テレビだよ!
薄型テレビ!! -
トイレもゴージャスだあ〜。
「あんた、お母さん連れてきてくれるなら、こういう所にしなきゃ。今度はこういう所を予約してね」
そんな予算はございません(きっぱり)。 -
超高層リッチくさいホテルのレストランでご昼食。
お母さんは、ずっと飲みたがっていた、龍井茶を注文しています。
しかも『特級龍井茶』を。
龍井茶は、中国のポピュラーな緑茶です。
上海から南京へ行く途中にある近場の杭州が、龍井茶の産地。
龍井茶は畑や生産時期によって、茶葉がランク分けされ、西湖周辺の茶畑で採れたものが、良い物だと聞いています。
しかーし!
龍井茶は、日本の緑茶より味がうすくて、飲んだあとほのかに口に甘味が残るという、デリケートなお茶!
上海ような、においの強い水だと、いくら特級でもちょっと難しいのでは?と思ったのですが、すっごい美味しい!
全然イケる!
ひと口飲ませてもらいましたが、南京の水はお茶の香りや味を壊すような所がありません。
「ひょっとして、ミネラルウォーター使ってる?」
「でも、スープも臭ってないし・・。ダシ取りからミネラルウォーターは使わないでしょ。こっちは水が違うんじゃない?」
まあ、美味しければ何でもいいや。
お腹もふくれたところで、さっそく南京博物院へタクシーで向かいます。 -
南京博物院につくと、相変わらず駐車場はガラガラ。
ひと気がありません。
なんでこんなに、マイナーなんでしょうか?
いい博物館なのに・・。
入場料が高いから?イヤ20元だったら、そんなでもないよなー。
チケットボックスで「リャンジャン、ピャオ!」というと、お姉さんが何か言います。
「え?エクスキューズミィ〜?」
大部分聞き取れませんでしたが、「今日は無料日、フリーデーです」とおっしゃっておられます!
えーっ!なんでなんで?
「終戦記念日じゃない?」
「今日は、8月12日なんですけど・・しあさってでしょ」
「オリンピックだから?」
「上海や香港ならともかく、南京ぜんぜん関係ないじゃん」(上海や香港では、競技の一部を開催するときいています)
謎多きフリーデーですが、ちょっと得した気分。
入りましょ、入りましょ。
南京博物院は、地上1階と地下1階のフロアに、ジャンル別に展示室が作られています。
そしてっ。
コレ、コレ、コレ! -
絶対、お母さんにも観てもらいたかった、全身玉の鎧。
全部、玉なんだよ。
ほらっ、スゴイでしょ!
「へえ〜」
へえーってそれだけー?
もそっと、感動してよー。
日本で展示したら、人垣できっと観れないよ。
「そうねー」
なんか感動がうすいなあ。 -
この説明文をみると、玉衣自体は南京出土ではないようです。
でも、コレ目玉だよナ。 -
大好きなので、また懲りずに何枚も撮影。
-
足の裏(笑)。←そんなに好きか
-
好き。
-
お母さんほったらかしで、ストーカーばりで玉衣撮影会に満足し、さらに南京博物院をまわります。
入場者もほとんどなく、写真も撮れて、静かでゼータクな時間を過ごせるこの博物館は、ひょっとしてマイ・ベストかも。 -
へんな俑もあるし。
-
名前も見たまんまですね。
カエルだ。 -
山羊?
-
チベット関係っぽい展示室へ。
中央アジアって未経験なので、いつか行ってみたい場所です。 -
そして、展示室の中央には、アルカイク・スマイル (archaic smile) をうかべた美しい菩薩像。
-
書いている途中で、
「ハッ。でも、仏像の見分け方なんてよく知らないし。
『菩薩像は釈迦の出家前の姿。冠など装飾品をつけたスタイルであらわされる』っていうのを日曜美術館かなんかで聞いてたから、『菩薩』って書いちゃったけど、ひょっとして如来かもしれない?」
と、自信がなくなり、ネット検索してみました。
すると、こんなマニアックな疑問でも、解説ページがあります!
すごーい。
仏像は、おおまかに如来・菩薩・明王・天部・その他の5種類分けられるそうです。
如来像・・・悟りを開いた釈迦の姿が基本。出家した人の姿で表現される。
衣服は全身を覆う一枚の布で、装身具は一切身につけていません。
髪の毛は,螺髪(らほつ)と呼ばれるブツブツで表現されるそう。
特徴的なのは、ほとんどの如来が印を結んでいること。
(薬師如来だけは例外で、人々の病気を治すため左手に薬の入った壷を持つ)
菩薩像・・・出家をする前のインドの貴族(王族)の姿。
たくさんの装飾品をつけている。←あってた、あってた
上半身はほとんど裸。
左肩から右側の腰にかけて、薄い帯状の布が掛けられ、両肩から天衣が垂らされている。
下半身にはロングスカートのような裳をつける。
イヤリング・ネックレス・上腕の腕輪・ブレスレットなど豪華な装飾品を身につけている。
明王像は仏教の敵に立ち向かうために、牙をむき怒った姿で表現されるそうなので、これは違うでしょう。
-
天部は、寿命のある天界の住人で、男性形・女性形(天女)・動物の顔など、種類はさまざま。
男性形ならば甲冑(鎧)をつけていたり、中国風の衣装を着ていることが多い。
仏像には女性像がないので、女性形の像は天部の仏像。動物の顔をした像も、天部以外にはない・・・なので、やはりコレは、菩薩で良いみたいです。
雰囲気が韓国の国立博物館にある半跏思惟像みたいで、すっごい惹きつけられる仏像です。
一生懸命撮ろうとしたんですが、これは特別らしく、近寄れないようにガラスケースでかこまれ、正面にはご覧のようなキラキラした簾が掛かっていました。
誰の作品なんだろう?
詳しく知りたいなー。 -
解説かもしれないと、撮ってきましたが、全部英語・・。
読めないじゃん。
ひたすらまわっているウチに、閉館時間が近づきます。
お母さん、巻きで巻きで。
「4:30でクローズしちゃうよ。あと20分!」
「お母さん、カタログ欲しいんだけど」
「じゃあ、15分で残りみて、5分でお土産屋さんを・・」
あわててすべてを観ようと歩を速め、タカタカとガラスケースを覗きこんでいきます。
ふと周囲を見ると、同じようにあせったようすで、展示品のまわりを猛ダッシュしている中国人一家も!
加油!見学者ズ!! -
見るもの多すぎで、2時間半あっても丁寧にみてるとなかなか終わらず。
それでも、あんまし興味のない書や水墨画のコーナーは、かっ飛ばしていったんですけど。
おそるべし、南京博物院・・!
ようようすべての部屋をまわりきり、お母さんはカタログを求めてミュージアムショップへ。
「なかった・・」
お母さんがガックリと、お店から出てきます。
中国語版も?
「なかった・・」
兵馬俑とか三星堆でも、中・英・日本語バージョンのミュージアム・ガイドブックがあったのにね。
上海博物館にも、日本語パンフがあったし・・。
へええ〜売ってないんだー。
「なかったーっ」
まっ、オイラはマイ☆おみやを購入したから、良いのだ。
↑
ヒトゴト
閉館時間になり、おもてへ出ますが、やはりひと気が・・・。
すいてるんだから文句はありませんが、やっぱもったいないし。
まだ、よゆーで明るいし、中華門でも行ってみますか! -
タクシーに乗り込み、中華門へ。
ここは有料。
うん〜?
なんで、あそこはタダだったんだ? -
ディスイズ、ザ・中華門!
デカイっしょ。
「・・皇軍による南京占領後の3月、門外には大量の死体が放置されており、東方向へ続く帚掃巷の街路には路面が見えないほど遺体で埋めつくされていた・・という・・かっつーの本にでてくる中華門です・・」
「コワイ話はいいから、行ってみよ」
・・そーですか。
あ、お母さんその階段じゃなくて、ヨコのスローブがめずらしいだーよー。 -
この門は要塞になっていて、いまは失われていますが、うえに建物が建っていて、ほかにも兵士が常駐できる部屋がいくつかあります。
補給物資をうえまで運んだりできるよう、『馬道』、つまり軍馬や荷馬車があがれるように、階段の脇がスローブになっているのです。
門に、馬専用の道があるなんて、めずらしいでしょ?
登ってみて。
「母親に、馬の道を行けと・・」
イヤ・・あれ・・?
そーいう意味では、ないでございマス。 -
建物は喪失してしまっていますが、兵士がつめていた穴蔵のような部分は残っており、いまは展示室になっています。
-
去年きた時は、パネル展示だけだったんですけど、なんと無料映写室が出来てました!!
なんだ。
どうしたんだ、これは!
おもわず腰を据えて、お母さんとミニシアター鑑賞。
内容は、5〜10分ほどの『中華門の歴史と構造』みたいな感じで、CGでこの門を使ってどのように外敵の侵入を防いだかを知ることが出来ます。
音声はぜんぶ中国語なんですけど、まあ映像なんで観やすいです。
しばらくみていましたが、同じ中身を何度も流しているようなので、ひとまわりした所で席を立ちます。 -
パネルチェック。
西安の城壁もそうでしたが、明の時代っていうのは強固な建築が多いんでしょうか。
南京城の門の解説。
『明代13座城門』とあります。
あ、最後の方『・・市道路発展的矛盾』って書いてある。
・・・じゃまなの??門。 -
中山門は、日本軍によって破壊された箇所を、キレイに修復していたコトが、のちにわかりますが、このときは、
「えー、せっかく残ってんだから、大事にすれば観光資源!入場料でガッポガッポ・・」
などど、よけいなことを考えておりました。 -
今回も駆け足になってしまいましたが、時間が取れたらいろいろな門を見て歩くのも楽しいかも。
-
現在では、ほとんど埋め立てられていますが、むかし南京城の周りはぐるっと堀もあったようです。
-
攻められないような仕掛けですが、火事の時なんか水がすぐ確保できる方が助かるよなー。
ただ、南京城はやったら広いし、中心部なんかはちと無理か・・。
最近は、防災の特集番組を見る機会も多いので、旅先でも「なにかあったときに、避難場所とか水がある場所は・・」なんて、ヘンな所をチェックしてしまいます。
下水のマンホールの上に仮設トイレをつくる!
建物の一部分をシェルター化する!
といった、低コストのアイディアも自治体がその気になればできるだろうし、こーゆう観光施設もいざとなったら人も住んでないし避難場所に使えそうです。
そいえば中国って、ちっちゃい公園、見ないよな。
避難場所はやはり学校とかになるのかな? -
中華門から見える南京城内は、はるか先までビルが立ち並ぶ、現代的な風景。
-
ホントは、中華門付近の壊されずに残っている、こーゆー貴重な下町を歩いてみたいんですけど、ひとりじゃともかく、お母さんいるしな・・。
ここらあたりは、日本軍のレイプや放火事件が頻繁に報告されていた場所だけに、日本語ベラベラやりながら歩くのがどうしても憚られます。
ひとりだったら、きっと行っちゃうけど。 -
中華門を見学したあと、以前、孫さんに教えてもらった南京観光のセオリーどおり、夫子廟をぶらぶらしてホテルへ戻ります。
おやつだおやつ!
南京のケーキのお味は・・・んっまい!!
いや、金陵飯店のパティシエが腕が良いのかも知れませんが。
うまかったす、ハイ。 -
喫茶店からレストランへ。
ごはんだごはん!
えっ?
おやつ即ごはん?
いいんです。
きっちー家は、おやつが前菜。←ウソです
デザート別ね。←ホントです
あ、すいません。ココナッツ・ミルクください。
・・飲物まで甘党か。
ちなみに、金陵飯店のレストランには、日本語の通じる女性がいるので、下手に英語や中国語使わなくてもだいじょうぶでした。
使うと、むしろ恥かしい・・。←きちんと言えてれば問題ないけど、言えてないので
突き出しはお昼とおんなしピーナッツでしたが。
なに食っても頼んでも、んまいっ。
さっすが、一流ホテル。
親連れの贅沢を、堪能しとかねば! -
ジャーン!
明けて翌日!
今日はいよいよ、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館、略して南京大虐殺記念館へ行く日です!!
はあ〜。
一生に一回は行っとかなきゃ、の場所にいよいよ行くんだなあと思うと、胃がキリキリします。
ぶっちゃけ重慶同様、高層ビルが立ち並び、きれいなお姉さんや、少し暑そうに背広を脱いだサラリーマンなど、忙しくも楽しそうに人が行き来する現在の南京では、私の頭をぐるぐるする、おっかない世界は欠片も感じません。
とりあえず、戻ったらすぐチェックアウトできるように、荷物をまとめておき、お母さんとホテルの玄関へ。
ホテルの入口には、お約束のドアマンさんがいるのですが、見ているとたいていのお客さんが、彼が開けてくれるドアじゃなくて、回転ドアの方へいってしまいます。
すっと出られる「ドアマンさんドア」より、ゆっくり半周して出る回転ドアの方が、よほど時間が掛かるのですが・・。
ふふっ。
やはり、ドア開けるくらい自分でやるべきだし、人にやってもらうのに気が引けちゃうあたり、庶民よね。みんな。
仲間仲間。
一流ホテルのお客さんたちに、すこし親近感を感じた所で、タクシーだ。
金陵飯店正面玄関の端に、『お客様専用タクシーコーナー』みたいなスペースがあり、きりっとしたホテルマンさんが待機しています。
『我想去、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館』
メモ帳を見せると、
「すこし待っててね」
と、トランシーバーをひねり、素早くタクシーを呼んでくれます。
待たずに、ホテルの駐車場へタクシーが滑り込み、
「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館だからね!」
ホテルマンさんが、タクシーの運転席に声をかけてくれます。
あ、助かるな。いちおうメモ帳あるけど。
「これをどうぞ」
と、素早くタクシーのドアを開けてくれたボーイさんが、お母さんに名刺サイズの紙片を差し出します。
覗き込むと、乗り込んだタクシーのナンバーが控えられており、
『お乗りになられたタクシーで、トラブルや不快なことがございましたら、当ホテルにお申し出ください。責任を持って対処いたします』
ってなことが書いてあります。
なんだこりゃー!
すっげーぞ、一流ホテル!!
いや、ひとり旅しているとまさかのタクシートラブルを心配して、「なにかあったら」と名刺くれたホテルの人はいたけど、それはあくまで個人的なつながりや親切であって、すべてのお客さんにしてたわけではなかったし・・。
ふだん泊り慣れてないところへ泊ると、いろいろカルチャーショックだわ。
お母さんは普通にしていますが、私はあっけにとられたまま、タクシーが走り出します。 -
タクシーは朝の混雑した市内道路を抜け、郊外へむけてひた走ります。
南京大虐殺記念館の建つ、「水西門」という場所は、かっつーの『南京への道』で紹介されている、”死体橋”のあった「水西門の西郊外、江東村(江東門)」として、記述されている地区と同一なのか、ずっと気になっているんですが。
地名が同じなだけで、広い範囲なのかな?
近くなら、現地へ行ってみたかった。
ともあれ、「まだかまだか・・」と思っているウチに、ふいに車が止まります。
「つきましたよ」
え?え?
え――――っ!?
以前、来た時とぜんぜん違います!
お母さんは、「あら、ついたのね。車降りると暑い、日に焼けそう」みたいなことをのんびり話していますが・・。
すごい・・。
本当にリニューアルしたんだ・・。 -
金陵飯店からタクシーで25元。
侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館の前です。
以前おとずれた改修工事中の記念館は、なかにはもちろん入れませんでしたが、入口からして小学校の校門のようなちゃっちーコンクリートの壁と柵の入口で、そこはかとなく古めかしい印象でした。
と・こ・ろ・が!
あの素朴な壁は消え、悠々としたエントランスが、凝ったコンセプトの美術館のようにひろがっています。
違いすぎるぞ!
しかもコレ、まだ入口でもないし。 -
向かって左手奥の入口まで、シックな色合いの壁が続き、壁面に寄り添うように母子像や、事件の被害者達をモチーフにしたアート作品が続いています。
・・なんかお洒落で、イメージが違うな。
長野の無言館もそうだったけど、最近はこーいうのが流行りなのかな。
そういえば、見渡したところ駐車場のようなスペースはわかりませんでしたが、団体客と思われる見学者が次々にゲートへつめ掛けています。
「南京博物院より、人気じゃない・・?」 -
さっそく、行列について並ぶと、簡単なセキュリティーチェックだけで、敷地内へ。
リニューアルしても、入場無料のままのようです。
む。
なかも広い。
玉砂利が敷き詰められた、空間にオブジェとも建物ともつかない黒い建物が四方に建っています。
ありゃ、どっから行けばよいのじゃ。
まあ、なんとなく大きそうな右手の建物に入ると、ここでもセキュリティーチェック。
といっても、やはり大げさなものではなくて、ウェストポーチくらいの小さな手荷物なら機械に通さなくても、オーケー。
人間だけセキュリティーゲートをくぐります。
目の前には、上へと続く無機質な階段がのびています。
ここだ。
ここが、本館。 -
内部撮影禁止、ということで残念ながら写真は×ですので、ちょっと長くなりますが、文章でお送りしまーす。
階段をあがり、皇軍占領時の焼け野原になった南京市街地のパノラマを横切ると、不意になにも無い真っ暗な部屋に立たされます。
何も無い・・・と思ったのは一瞬で、入り口からまっすぐ正面に、名前の書き込まれたポートレートが静かに浮かびあがってきます。
祭壇・・?
それが、死んでいった人たちの写真だと理解すると、ふいに空気が重くなった気がします。
人々の顔が浮かんでは消える、スクリーンの周辺にほのかにまたたく光。
踏んで歩こうとする子どもを、警備員さんがするどく制止します。
やはり、追悼施設なんだ。
周囲をぐるりと囲む真っ黒な壁は、目を凝らすと、ものすごい数の人の名前がモザイクのように羅列されています。
壁自体が、巨大なひとつの名前のようで、心臓がドキドキしてきます。
順路を行く中国の人たちが、まるで誰かを探すように、ひとりひとり名前のデコボコを指でなぞるのをみながら、思います。
「やばい・・日本語しゃべれない・・」 -
追悼のホールをぬけると、南京空爆や戦時下の被災状況、南京市民の被害証言など、パネルや生活関連の展示が続いています。
すごい盛況。
南京博物院と比べ物になりません。
よく「中国愛国教育の場として・・」として、紹介されることが多い侵華日軍南京大屠殺遇難同胞記念館ですが、来ているのは社会科見学の学生さんではなく、40代〜50代の家族連れ。
家族が一緒に、ガラスケースの中を熱心に覗き込んでいます。
「広島・長崎へ行ったら、やはり原爆資料館は見ていかないと」みたいな感覚に近いのかも。
足が不自由なお婆さんを支えて、見学している若い女性なんかもいて、
「あー。ひょっとして、あのおばーちゃん体験者の人かも知んないなァ・・」
と、またドキドキしてきます。
戦意高揚の文句が書き込まれた血まみれの日の丸や、軍票、日本刀など、日本軍の残していったものも展示されています。
こういうのみると、自分はやっぱ、日本の国旗は日の丸じゃない方がいいよなーと感じてしまいます。
南京大虐殺記念館に紹介されている、人々の過酷な体験に目を通すにつれ、日の丸に象徴される恐怖は、生命や人の尊厳への暴力へ直結していて、とてもじゃないけど、おめでたい席に掲げたい気持ちにはなれません。
こんな侵略戦争と関わる、うしろ暗いデザインよか、一般公募でゆるキャラとか、あらゆる方面で配慮されたデザインであっていいんじゃないか?
点字だっていいし。デコボコしたデザインなんて、見たこと無いから個性的だし。
まあ、『日本が誇る』アニメやマンガを国旗に!とか言ったら、引きつった顔したお偉いさんに即却下されそうですが。
だからって、なにも日の丸に固執する必要は感じられない。
むしろそれが象徴する恐怖や地域の被害者感情を考えたら、わたし的には無理かも。
そんなことを、お母さんとも言い合いながらまわりたいのですが、ちょっと怖くてできない・・。
しゃべった途端に、「なんじゃー!お前ら日本人かーッ」って怒鳴られそうで・・。
今まで中国でそんな目にあったこと無いし、そんなことは無いとは思うんだけど、あったら立ち直れなくなりそう。
びくびくしながらも、一緒になってガラスケースを覗くと、記念館の解説はきちんと日本語訳もつけられています。
いつものように、「えーと、えーっと??」と、漢字と英語っぽい文法を中途半端に読解していくのじゃないので、助かります。 -
空爆、虐殺、放火、レイプなど、被害者の写真と証言が、淡々と続きやりきれない気持ちになります。
どんなカッコつけた戦争の正当化も、この現実を突きつけられたら、砂の城のように空虚に感じます。
中国のあちこちにつくられた「慰安所」を再現した一室に立つと、こんな所に入れられたらどんな絶望的な気持ちになるのか、想像しただけで頭が震えます。
死んでいった女性もいるし、助かったあとも重い障害をかかえて生きている女性もいます。
自分には重すぎて、せっかく来たのに、無意識に足が速まってしまいます。
ふり返ると、お母さんは博物院同様、後方で丁寧にひとつひとつガラスケースを覗いています。
や・・やるな、マミー。
よくそんなしげしげと・・。
なんか、いろいろキツくて、頭がんがんしてきたのに。
あらかさまに日本を糾弾するような展示は、ひとつもありません。
ただ、戦争時に起きた出来事を、被害者、加害者、ともに証言した人の名前、もしくは顔写真入りで、掲示してあるだけ。
けれど、そこで語られているのは、口先だけの謝罪では関係修復できないような、極限の体験です。
加害国の人間と、被害国の人間が、こうして事件の起こった地域で同じ施設をまわって、被害体験を知ることができているのは、終戦後、ひと世代くらいの長い時間の経過といろんな人の努力があった故、なのかも知れません。
それでも、「もう謝罪しなくていい、謝罪はすんでいる」とは思えないし、謝罪すればいいとも思えません。
謝って終わり、じゃなく、民間被害の補償をしたり、もっと先を見つめて二度と繰り返さないための具体的な実践が必要だと、感じます。
戦争へ続くあらゆる可能性を、みきわめ、批判していく姿勢を忘れないようにしたいと思いました。 -
南京の人たちや、日本軍兵士の証言を展示した部屋を抜けると、なんと「ラーベの日記(『南京の真実』)」のコーナーが!
人に勧められて読んだ本でしたが、ものすごい臨場感のある本で、占領前夜から、南京城占領後の殺戮、ラーベが南京を去るまでの、南京のようすが克明に記されていて、すごいんです。
ラーベは、ただ中国の人たちに同情を寄せていただけじゃなくて、市民を巻き込もうとする中国軍部のやり方に対して、ものすごいシニカルでキツイことを書いているのですが、日記の最後の最後のトコで、南京を離れるさい、占領下、命がけで匿っていた中国軍の将校を伴なっての脱出だったことを明かします。
軍人とわかっていて助けたのは、一人だけだったようですが、それでも助けを求めてくる人々が殺されないために、あきらめず粘り強く交渉をくり返すラーベのやり方に、感動しました。
そんな、ラーベの日記にでてくる登場人物たちが、その後の半生も含めて展示されているのです。
「あ!あ!このひと、日記に出てきた人だ!!」
声は出せないのですが(笑)、心のなかで大騒ぎしてしまいます。
「マギーのフィルム」で有名なマギーが使っていたカメラをご家族が寄贈しており、歴史を映した貴重な物が敬意を持って展示されています。
そのなかに!
なんと、かっつー(注:本多勝一)の取材スクラップブックが!!
ええ〜っ!すごいじゃん!
中国での取材と、ベトナム戦場下での取材は、かっつーの2大おお仕事だと思ってますが、それが同じスクラップブックを使っていたようで、一冊で二度美味しい・・イヤ、きっと個人的にも大切なものを・・。
かっつーの他にも、日本軍兵士から当時の状況を聞き取りして歩いた中国の女性記者や、虐殺事件の掘り起こしに力を注いだ日本の平和団体の取り組みなど、それぞれの立場で南京大虐殺に取り組んだ成果が紹介されていて、参考になりました。
この記念館でも、最後はやはり、「中国国民も日本国民も共に、日本帝国主義による侵略戦争に苦しんだ。この悲惨な経験を忘れず、平和にむけて中日友好関係を築いていこう」と締めくくられていて、頭がさがります。
「日本国民」と「軍部」を分けて、「日本国民」を「同じ被害者」として免罪することについては、軍民一体となって総力戦としておこなわれた経緯を考えると、個人的にはそこを許しちゃうのは、ちょーっと違うと思いますが、あえて線を引くことで乗り越えようとしているのかな、とも思えます。
なんにせよ、貴重な機会です。
売店で、中国側の資料買わなきゃ! -
記念館の売店では、菓子類と数冊の本が並んでいます。
パラパラとめくっていると、売店のおねーさんが明らかに口上らしき事を話しかけてきます。
む、やばい。
じもちーのふりしてたのに・・。
喋ってしまえば、日本人てバレる。
仕方なく、ひらきなおって「不明白、対不起〜」と言って、なおも本をあさっていると、別の小姐が「こっちのなら、日本語訳がついてますよ」と、いろいろ教えてくれます。
最初に声をかけてくれた小姐は、勧めたい本があるようで「こっちの方が詳しいですよー」とおっしゃっておられますが・・・すまん。やはり訳付きの方が、読みやすいヨ。
てなわけで、お得なVCD付きの小冊子と2冊を購入。
訳付きの方は、図鑑サイズで重ッ!
小姐たちが、破れないように二重でビニール袋へ入れてくれます。
「謝謝、你」
と、お礼を言っていると、いつの間にかあたりに人垣が出来ています。
あ、すっげバレてる・・。
しかし、罵声を浴びることも無く、それどころか「姐さん、なに買ったの?本?あ、俺も買おうかな」と家族連れの中国の人たちが、そのまま売店の本を手に取りはじめます。
やはり、こういうところへ来ている人たちは、ピースフルなのかしら??
重いビニールをぶらさげて、お次は敷地内の別棟。
万人坑へ。
おっと、その前にトイレ、トイレ。
すること済ませて、洗面所で手を洗おうとしますが、図鑑サイズが入ったビニールが重くて、片手ずつ濡らします。
くそ・・。
おみやはやはり最後に買うべき・・。
「お母さんと交代で入って、持ってて貰えばよかったー」と、そそくさ洗っていると、隣に立っていたちいさな女の子が何か話しかけてきます。
「え?なあに〜?」
まあ、中国語なのでちゃんと言われてもわかんないんすけど(笑)。
彼女は腕に吊り下げたビニールを指さして、また何か言っています。
「持ってくれるの?重いよ?」
冗談半分に手渡すと、彼女は大人でもクソ重い本の入ったビニールを両手で持って、じっと横で待っていてくれます。
この子、本気だよっ。
あわてて手を洗い終え、
「対不起!謝謝、你〜」
彼女は「不客気・・」と照れくさそうに笑って、母親のもとへ駆けていきます。
やっべ!かわいいよ!
子ども苦手なのに〜。
ほんと、ピースフルだなあー。 -
さて、いよいよ「万人坑」です。
「万人坑」とは、虐殺された人々の死骸を、大量に埋葬した場所のこと。
ここではその万人坑から発掘された遺骸の一部を、遺骨陳列室にして展示しています。
もちろん、カメラ禁止なので、建物だけ。
見学されたい方は、南京まで行っちゃってください。
中に入ると、体育館のように広いスペースの真ん中が土が剥き出しになっており、その周りを背の低いガラスが囲っています。
のぞきこむと、巨大な化石のようにつらなり、番号をふられた人骨が、白っぽい土くれに累々と折り重なって、乾いた骨肌を部分的に露出しています。
ちいさなプレートが、日本語訳も付いて人骨の状態を解説しています。
総じて、『自然死ではなく人為的に殺害されていること』をかなり文字数をさいて説明していて、
「そーいう嫌がらせがあんのかな〜」
と、とても情けない気持ちになりましたが、上野正彦さんの『死体は語る』じゃないですけど、骨の外傷から死の直前の状況がわかってくると、いかに当時の状況が悲惨だったかが察っせられて、さきほど展示されていた生存者の証言と共に、胸に迫ります。
親子が固く抱きあっている骨なんかあって、つらいなーと思いました。
ホント、子どもの骨って、ちっちゃいんですよ。
きっと親は守りたかったんだろうな、とため息がでました。
そろそろチェックアウトの時間なので、お母さんと重い足を引きずって、館内をあとにすることにします。 -
出口付近はまだ改装途中らしく、ビニールシートに囲まれたモニュメントが、ひょっこり頭を覗かせています。
入口と出口が一緒ではないので、位置関係がわからず。
目についた大通りまで出てタクシーをとめ、ホテルまでいってもらいます。
もどる道すがら、お母さんがポツンと、つぶやきます。
「あんだけの事しちゃったら、『悪い』って認められないわね」
「え?」
どういう意味?
やられた方にしたら、たまんないよ。
「・・・うーん。そうじゃなくて・・。
沖縄で少女レイプ事件とかあるじゃない。
私たちの感覚からすると『絶対、許せない』って思うけど、こういう事をやってしまった人たちは、『ああ、軍隊ではよくある事だよ』となってしまって、反対運動を醒めた目で見たりするだろうなって、思ったの」
ふーん、そうかなあ。
でも、そんな状況下をくぐった人でも、あとから「戦時下であったとはいえ、自分のしたことは間違っていた」って証言する人もいるわけだし。
どれくらい、相手の痛みを自身に引きつけて考えられるかっていう、個人差なんだと思うけどなー。
なんとなく、目にしたものの衝撃から立ち直れないまま、中心部の渋滞に漂うタクシーに沈みながら、やがてホテル正面の駐車場へ滑り込みます。 -
あまりのゴージャスさに、未練タラタラでうしろ髪を引かれつつ、金陵飯店をチェック・アウトします。
いいホテルは、離れるのが惜しい〜。
ホテルの目の前の地下鉄で南京站へ行き、上海行きの列車の切符を購入。
母上が乗りたがっていた軟座です。
座席は・・・あまり硬座と変わりません。
どちらも、新幹線みたいな座席。
時間がきて、定刻通りに列車が動きだすと、あとは心地よい揺れを感じながら、時折り叩きつける雨を見ながら車窓の旅。
平坦な農村を眺めながら、
「こんな見晴らしがいいんじゃ、襲われたら逃げようがないね」
お母さんが窓の外へ顔をむけたまま小声で言います。
お母さんは農家の出身だし、農村の被害は心に響いたのかもしれません。
非常に重苦しい展示であった事には違いありませんが、来れて良かったなーと感じます。
実際にその地を訪れて歩くと、そこの風土や住んでいる人たちのせめぎあいから、本で得た知識よりさらに複雑な見方をあたえてくれます。
ルワンダ、アウシュヴィッツ、パレスチナ、イラク、アフガニスタン、南京、広島、長崎、沖縄・・。
現在も殺戮とぶつかる地もあれば、血で濯がれたような時間を経験した地もあります。
南京へ。
一生に一度は行っておきたいと思っていた、場所のひとつです。
長崎は修学旅行で行ったけど。広島とか沖縄とか、ナイもんなー。
『中国の3大かまど』の涼しげな雨に見送られながら、列車は上海へとひた走ります。
中篇へ続く
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この旅行記へのコメント (14)
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- okuyanさん 2008/09/11 11:09:22
- 度胸試しにいいかもねぇ・・・(^^:
- “やばい、日本語しゃべれない・・・”
いや、まったく・・・。
韓国の西大門刑務所を訪れたときに私めも同じ気分を味わいました。
ちょっと疲れてベンチで缶ジュースを飲んでる時もなんだか背中のほうがむずがゆくて、正直ビクビクしちゃいました。
私め、自他共に認める小心者でございますが、あの空気の中で大声で日本語をがなりながら、ゲタゲタ笑いながら見学できる日本人がいたら大した度胸だと思いますよ。
でも、度胸は認めても“ひと”として認められませんが・・・ね。
先日、ネット配信で『es』(だったと思う)という映画を観たんです。
ある心理学者の実験で公募された一般市民が刑務所の看守役と受刑者役に振り分けられて擬似体験するという筋書きでしたが、フツーの善良な小市民が看守役になって権力を与えられると次第に暴力的になっていく姿に「もし私めが看守役になったら・・・」と自分の姿を投影して考えてたら凄く怖かったです。
権力が暴走するとロクなことがありませんね。
私め、看板立てて置かないとヤヴァイな・・・「エサ与えるべからず」ならぬ「権力与えるべからず」って。(爆)
それじゃまたねっ!(^▽^)/
- きっちーさん からの返信 2008/09/12 11:35:03
- RE: 度胸がつきました(笑)。
- 居心地の悪さは、日本国籍をもっている以上しょうがないにしても、ヒロシマ・ナガサキの平和記念館を訪れるアメリカの人も、きっとおんなじ気持ちかなーと思いました。
そう考えると、逆に南京大虐殺記念館で中国の人たちが、ふつーに接してくれたのもなんとなく理解できました。
行なわれた非道にたいしては怒りを感じますが、平和記念館でガイジンさんが熱心に展示を見ててくれたら、「きっとこの人も同じように、ひどいって感じてくれてんのなー」と思うし、そういう人につっかかったりはしないかなーと。
そういう意味では、南京大虐殺記念館が日本語訳つけて、日本語を解する人たちにも共通の想いを持って欲しいっていうのは、とてもオープンなやり方だな、と感じました。
『es』観た事あります。
主人公がじつは、潜入してた記者かなんかでしたよね?
倫理に反する実験に携わる人たちを、被験者になってわざと挑発することで、いかにおっかない実験かが浮き彫りになってくる、こまかいトコは忘れちゃいましたが、下手なホラー映画よかコワイ映画でした。ストーリー的には先が読めなくて、面白かったですけど。
コワイのは、好きなのでお勧めのがあったら、今度教えてください。
そんでは!
-
- okuyanさん 2008/09/06 00:59:38
- たしかに恥ずかしい・・・(#ーωー#)
- きっちーしゃおじぇ、にぃはお〜♪
はおじぅぶじぇんら〜!
というわけで、にぃはおま?(^▽^)
“下手に英語や中国語使わなくてもだいじょうぶでした。
使うと、むしろ恥かしい・・”
いやいや、おっしゃる通りでございますなぁ。
私め、先日も次の台湾旅行のためにホテルへ予約電話をしたんですよ。
やっぱり発音がどこか違うんですねぇ。
一言私めが「ニーハオ」って言ったらとたんに日本語で応対されました。
まぁ、楽ちんだからホッとしたんだけど、3年以上勉強してきてちょっと自信がついてきてただけに、心の中で「ねぇ、私めの中国語ってそんなにダメダメっすか?台湾で使わないほうがいいっすか?(ΠдΠ;」
って、ちょっとガックリ来ましたよ。
うう・・・。でも、『気は心』と言いますし、ヘタはヘタなりにボディーランゲージを駆使してコミュニケーションしてゆきたいと思います。
「加油!私め!、加油!きっちー!気合だ!気合だ!気合だぁ〜っ!」
それでは、ざいじぇんにぃ〜♪(^^)v
- きっちーさん からの返信 2008/09/07 18:57:54
- RE: たしかに恥ずかしい・・・(#ーωー#)
最近身体容易疲労(笑)。
「恥ずかしがっていてはいけません。だめもとで話してみましょう!!」
なーんていわれても、いざその場に立つと、ダメダメですね〜。
筆談で逃げたり、英単語を(英文ではない・・しくしく)ならべたてて乗り切ろうとする悪い癖が・・。
台湾も、もともと先住民の人がいたところですから、おなじ中国語といってもどことなく発音が口にこもらない、南方系っぽくきこえます。
以前、中国語でお世話になった先生は台湾出身で、少年時代にあの蒋介石の演説を生で(!)聴いたことがあるそうです。
蒋介石は、そのとき北京語で演説したそうですが、発音がおかしくて「なに言ってるのかわかりませんでした」とのこと。
「浙江省の出身者だから、普通語とピンインが違うんですよね」だそうです。
四声っていうのは、ネイティブでも難しいんだなーと、自分を肯定した瞬間でした。ホラ、ガイジンだしー。←ソレをしてるから前に進めず
たしかに、日本の26倍でしたっけ?
ひとつの省で、じゅうぶん小さい国といえますもんね。
ああ、語学はチカラだと思うけど、身につけるのはハードル高すぎです。
わたしもokuyanさんみたいに、3年はがんばんないとダメっすね。
-
- nao0880さん 2008/08/28 12:45:37
- 金陵飯店
- こんにちは。
金陵飯店でしたね。南京のは中国でもトップクラスのホテルだそうです。
飛び込みで948元なら、安いかもしれませんね。
私の宿泊した金陵(丹陽)飯店は、ランクが違います。
その代わり値段も違いますが。(現地の会社手配で300元程度)
私の出張中のホテルは三ツ星程度がほとんどです。
ホテルに帰るのが一般に遅い時刻ですので、あまり高級なホテルはもったいないです。治安だけは注意しますが。
北京でいつも泊まっていた、100?で2LDK、350元のホテルが今年の春になくなってしまい、困っているところです。
ではまた。
- きっちーさん からの返信 2008/09/02 12:45:56
- RE: 金陵飯店
- やはり、お仕事されている方は、穴場にくわしいっ!
お返事が遅れて申し訳ありませんでした。
めずらしく仕事に精を出したら(笑)、あっという間に9月に・・。
こうして、楽しい時間に浸る余裕もなく過ぎちゃいますね。ヤダヤダ。
また、冬にむけて練っていこうかなーと思っていますので、そのときには貴重な是非アドバイスをお願いしやす!
-
- nao0880さん 2008/08/27 12:45:51
- 金陵酒店
- きっちーさん、こんにちは。
金陵酒店、どこかで聞いた名前だと記憶をたどると、私も宿泊していました。
南京の隣の丹陽に出張、丹陽金陵酒店に泊まりました。
南京が5つ星、丹陽は4つ星でした。
現地の会社の手配でしたが、高級ホテルの雰囲気でした。
南京は夜に数十分滞在したのみ、上海−南京をバス、南京−丹陽をタクシー移動のみでした。
きっちーさんの旅行記で楽しませていただきます。
ではまた。
- きっちーさん からの返信 2008/08/28 07:55:55
- RE: 金陵酒店
- nao0880さん、どうもです。
同じ宿でしたかー!
偶然ですね。
やっぱ、5つ星か。
すごかったですもん。
薄型テレビとかあるし、映りもよくて、チャンネル数おおくて、どうしようかと思いましたよ(笑)。←テレビ大好き
今回は、母と一緒だったので、こんなありえないホテルの敷居をまたぎましたが、もう無いな・・。確信。
遊びや観光だったら安宿でじゅうぶんですけど、お仕事で一日中移動〜移動だったら、寝るときくらいはこういうリッチ・ホテルで、のんびりしたいな、と書き込みを読ませていただいて思いました。
お仕事ご苦労様です!
-
- nekojarashiさん 2008/08/26 18:35:39
- 待ってましたw
- 重慶旅行ではお世話になりました。
南京から無事に帰って来られたようで何よりです。
実は明後日から、会社の研修旅行で南京に行ってまいります。
もちろん、旅行の幹事は僕です。会社の人たちは、南京=『大虐殺があった所でしょー。危ないんじゃないのー。なんだか気が進まないなー』的な反応だったのですが、だからこそ行かなきゃ!と、押し切りました。
そうそう、きっちーさん。中国のホテルは、ネットで予約するとだいたい半額になりますよ。五つ星でも300〜400元で泊まれます。次回来られるときは、ネット予約をお勧めします。
それでは続きを楽しみにしています。
- きっちーさん からの返信 2008/08/26 19:12:07
- RE: 待ってましたw
- nekojyarashiさん、こんばんは。
コメントをありがとうございます!
あまりお役には立てておりませんが(汗)、楽しい旅行であったら私も嬉しいです。
南京は2度目ですがぜんぜん怖い所ではなくて、「南京大虐殺について知りたくて来ました」と話すと、地元の人が「えー!そうなんだ。こういうこともあったんだよ」と、むしろ好意的に受け入れてくれるので、なんだかイメージがイイ意味で違いました。
さすがに、虐殺記念館では日本語を話すことが怖くて、無言でまわってしまいましたが、売店で関連資料を買うとき、うまく言えなくて思い切り日本語になってしまったのですが、売店の人もまわりの人も日本人であっても「こっちもいいよ」とか親切にしてくれて、なんだか恐縮してしまいました。
結局、国籍や立場が違っても、「繰り返してはいけない」共通の想いっていうのがあれば、被害者の関係者であれば「日本人?きらいだよ」っていう人もいて当たり前だと思いますが、受けとめてくれる人だっているんだなあ、と感じ、最初こわかったけど、行ってよかったです。
ホテルの件は、ウチの母がきいたら文句言いそうだから、私の胸に閉まっておきます(笑)。
ありがとうございます。
研修幹事、頑張ってください。
段取るのって手間ですけど、うまくいくと良いですね!
そんでは!
-
- 城壁フェチさん 2008/08/20 22:59:53
- 勉強になります!
- やってくれますね!またまた親子旅!!
こういう地下鉄ガイド役に立ちそう!(行けば!だけど)
そして団塊世代は豪華好き!は違います!城壁フェチは若かりし頃、ユースホステルや民宿ばかり利用してたので、安宿大好き(我が家は娘が派手好き(涙))でも豪華ホテルも嫌いじゃないけど。
今年は息子の結婚(姉は・・><)姑の葬儀と冠婚葬祭出揃い、大陸に飛べないのが一番悲しいです。早く私も中国の空気を吸いたいな!
- きっちーさん からの返信 2008/08/21 10:15:03
- 失礼しやしたーっ!
- 団塊世代は豪華好き!
スミマセン、訂正します。
→ウチの母は、ホテルフェチ。
息子さん、ご結婚おめでとうございます!
いーなー。
どこかに、かっこよくて(限定)プロポーズしてくれる(限定)人はいないかな〜。
文字通り冠婚葬祭とお忙しいようですが、まだまだ暑い日が続いてますし、お体に気をつけて下さいね。
生涯系イベントって、意外と体力使いますもんね。
旅行から帰ってきて、いまだスイッチが切り替わらず、「仕事だるー」って感じですが、今月は出費がかさんだので頑張らなければ。
また、ブログにお邪魔します。
ではでは。
-
- 権天使さん 2008/08/17 16:46:23
- またまたっ!
- いつの間に?(笑)
コメント待ってま〜す。
あ、そうそう、私も南京町に行ってきたのですよ。
1泊2日で。(爆)
時間があったら覗きにきてね。
まだ出来上がってないけれど。
- きっちーさん からの返信 2008/08/17 18:31:17
- えへへ。
- いや、オリンピックで航空券値上がりしそうだから、4ヶ月前から段取ってはいたのですが。なはは。
そのあと、サーチャージが値上がって、びびりました。
すっごい、価格で。
あれやられたら、今年の夏はおとなしくデスノート一挙放送!を観て終わっていたやうな(笑)。
デスノートって名前だけは知ってたけど、観るのは初めてで。
夏休み(学生サンの)の始まりと、同時にアニメを観始めたら止まらなくなって、旅行中も気になってて、帰ってからパソコンで録っといたのを、ずう〜っと口あけて観てました!←ばか
録れてなかった回を今日ツタヤで借りてきてしまうくらい、いまさらハマってます。←ヲタクの血がっ
旅行記、みにいきますね!
権さまは確実に書き上げていて頭が下がります・・。
なんか、ひとつずつ仕上げずに平行してやってると、わかんなくなりそうで(笑)。かといって、終わりまで待ってると、忘れそう。トリ頭だから。
美文と速筆をみならって、がんばりやす!
旅行は楽しかったですが、中国では本当にテロのニュースが流れてなくて、そーとー不安でした。
近くでなんかあっても、ニュースに出なかったりしたら、危ないから近づかないようにって、できないじゃないですかー。
報道規制って、そういう危険もあるからよくないなーって改めて思いました。
おたがい、旅行先でのトラブルは気をつけましょう。
そいでは、さっそくあとでお邪魔しやす!
きっちー
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