グルジア軍用道路周辺旅行記(ブログ) 一覧に戻る
グルジア軍用道路とは、トビリシから大カフカス山脈を北上する道路である。物騒な名前だが、帝政ロシアの頃、コーカサスを支配するためにつくられた道路とのことである。<br />トビリシを北上すると、ほどなく山がちな地形になってくる。そんなところにあるのがアナヌリ要塞である。7〜8世紀にできたという要塞と修道院がある。歩いてみたが、どこまでが修道院でどこからが要塞なのだかよく分からない。とりあえず防備は厳重である。民族の交差点ともいうべきコーカサスではやむを得ないのだろう。<br />グダウリという、オーストリア資本が多く入っている高原リゾートから30分ほど上ったところに、円形の構築物があった。アーチ型の列柱が円形になっていて、屋根はない。この異形の構築物に向かう。<br />近付いてみると、それは展望台だった。内側の壁には絵が描かれている。10人くらいのツアーの一行が先客だった。絵はロシアとグルジアの友好関係を示しているらしい。<br />たしかに展望台からの眺めは素晴らしかった。頂上にところどころ雪を残す四角錐形の頂上から、はるか下(谷底から300メートルあるという)の小川がふもとを流れるところまで一望にできる。あまりにスケールが大きくて、どのくらいの高低差なのか実感がわかない。<br />さらに上っていくと、不意に道は平らになった。どうやら峠の頂上に達したようである。十字架峠、標高2,395mとのことである。尾根の鞍部のようなところであるが、高原のように広々としている。道路からやや下がったところにはちょろちょろとした流れがあるが、すでに流れの方向は北側である。分水嶺を実感する。道路から少し上がったところに、ドイツ軍捕虜の墓地がある。少し高いところに十字架が見える。あちらが旧道とのことで、もっともこれだけ開けた峠で何ゆえ旧道がわざわざ高いところを通ったのかは理解に苦しむ。<br />ここからは下りである。なぜか峠から先は道が悪い。あちこちで舗装がひび割れている。峠から北側の道路管理者は財政力が弱いのだろうか。氷河が削ったような雄大な半円形の谷間を道は下っていく。ここまでのように崖にへばりつくような道ではないぶんだけ、開けている印象がある。左には川がちょろちょろと源流部の流れを見せ、両側の斜面からはいくつもの流れが合流している。その多くは緑の斜面に石を露出させた流れの痕跡を穿っているだけで、水の流れは見えない。ところどころ、斜面をくぐるスノーシェルターがあるが、いずれも廃道のようになっていて、入り口に牛の群れが座り込んでいる。もっとも、雪のシーズンには本領を発揮するとのことである。<br />車が止まる。なにごと? と訊くと、ソイウォーターだという。は? <br />まあ降りろ、ということで、ガイドのあとを追って道路際の谷川に向かって降りていく。と、そこには道路の下をトンネル状に抜けてきた流れがあって、周辺が茶褐色に染まっている。見上げると、道路の向こう側の斜面も茶褐色の岩が露出している。飲んでみると、確かに苦い。酸っぱい感じもやや混じる。いずれにしてもこんな山道でやっとありつける水がこれでは、旅人もさぞ難儀なことだっただろう。ここの水は地中のミネラル分が濃いのだという。手ですくってみると透明に見えるのだが。日本でもこういう感じの温泉を見たことがある。<br />さらに下っていくにつれ、勾配は緩やかになり、沿道に村も現れる。オセチア人の村というコビー村が峠を越えてから初めての集落だったと思う。このあたりより西側には南オセチア共和国なるオセチア人が主張するグルジア国内の半独立地域があるそうで、いくつもの民族が入り乱れて居住している様子が想像できる。<br />やがてカズベギの街に到着。ここはアレキザンダー・カズベギなる著名な作家の出身地として有名とのことだが、残念ながら私は知らない。<br />そこそこ大きい街らしく、道路の幅も広く、並木道となっていていかにもメインストリートといったところだが、舗装は街の外よりむしろ悪いほどで、あちこちで大回りをしなければならない。むしろ、そのために道幅を広く取っているのではないかと邪推するほどである。歩道に面して壁が続いているが、ところどころ凹状に切り欠いてあって、そこにちょっとした物売りのカウンターがある。<br />さて、街の中心らしい広場に着く。小さいながらもホテルがあり、さらに北上する道にはウラジカフカスとある。ここはロシア国境までわずか15キロの場所であり、ウラジカフカスはロシア側の街、北オセチア共和国の首府である。<br />それにしてもウラジカフカスとは直裁かつ物騒な名前である。ウラジとは「領有せよ」との意味があり、日本海に面したウラジオストクはつまり「ヴォストーク(=東方)を征服せよ」との意味で、その意を汲んでか「鎮東府」と訳されたこともある。ウラジカフカスはつまり「カフカスを征服せよ」との意味で、ロシアのかなーり強い意志を感じる名前である。<br /><br />

グルジア軍用道路の旅(1)

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2006/08 - 2006/08

105位(同エリア108件中)

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jsbach

jsbachさん

グルジア軍用道路とは、トビリシから大カフカス山脈を北上する道路である。物騒な名前だが、帝政ロシアの頃、コーカサスを支配するためにつくられた道路とのことである。
トビリシを北上すると、ほどなく山がちな地形になってくる。そんなところにあるのがアナヌリ要塞である。7〜8世紀にできたという要塞と修道院がある。歩いてみたが、どこまでが修道院でどこからが要塞なのだかよく分からない。とりあえず防備は厳重である。民族の交差点ともいうべきコーカサスではやむを得ないのだろう。
グダウリという、オーストリア資本が多く入っている高原リゾートから30分ほど上ったところに、円形の構築物があった。アーチ型の列柱が円形になっていて、屋根はない。この異形の構築物に向かう。
近付いてみると、それは展望台だった。内側の壁には絵が描かれている。10人くらいのツアーの一行が先客だった。絵はロシアとグルジアの友好関係を示しているらしい。
たしかに展望台からの眺めは素晴らしかった。頂上にところどころ雪を残す四角錐形の頂上から、はるか下(谷底から300メートルあるという)の小川がふもとを流れるところまで一望にできる。あまりにスケールが大きくて、どのくらいの高低差なのか実感がわかない。
さらに上っていくと、不意に道は平らになった。どうやら峠の頂上に達したようである。十字架峠、標高2,395mとのことである。尾根の鞍部のようなところであるが、高原のように広々としている。道路からやや下がったところにはちょろちょろとした流れがあるが、すでに流れの方向は北側である。分水嶺を実感する。道路から少し上がったところに、ドイツ軍捕虜の墓地がある。少し高いところに十字架が見える。あちらが旧道とのことで、もっともこれだけ開けた峠で何ゆえ旧道がわざわざ高いところを通ったのかは理解に苦しむ。
ここからは下りである。なぜか峠から先は道が悪い。あちこちで舗装がひび割れている。峠から北側の道路管理者は財政力が弱いのだろうか。氷河が削ったような雄大な半円形の谷間を道は下っていく。ここまでのように崖にへばりつくような道ではないぶんだけ、開けている印象がある。左には川がちょろちょろと源流部の流れを見せ、両側の斜面からはいくつもの流れが合流している。その多くは緑の斜面に石を露出させた流れの痕跡を穿っているだけで、水の流れは見えない。ところどころ、斜面をくぐるスノーシェルターがあるが、いずれも廃道のようになっていて、入り口に牛の群れが座り込んでいる。もっとも、雪のシーズンには本領を発揮するとのことである。
車が止まる。なにごと? と訊くと、ソイウォーターだという。は? 
まあ降りろ、ということで、ガイドのあとを追って道路際の谷川に向かって降りていく。と、そこには道路の下をトンネル状に抜けてきた流れがあって、周辺が茶褐色に染まっている。見上げると、道路の向こう側の斜面も茶褐色の岩が露出している。飲んでみると、確かに苦い。酸っぱい感じもやや混じる。いずれにしてもこんな山道でやっとありつける水がこれでは、旅人もさぞ難儀なことだっただろう。ここの水は地中のミネラル分が濃いのだという。手ですくってみると透明に見えるのだが。日本でもこういう感じの温泉を見たことがある。
さらに下っていくにつれ、勾配は緩やかになり、沿道に村も現れる。オセチア人の村というコビー村が峠を越えてから初めての集落だったと思う。このあたりより西側には南オセチア共和国なるオセチア人が主張するグルジア国内の半独立地域があるそうで、いくつもの民族が入り乱れて居住している様子が想像できる。
やがてカズベギの街に到着。ここはアレキザンダー・カズベギなる著名な作家の出身地として有名とのことだが、残念ながら私は知らない。
そこそこ大きい街らしく、道路の幅も広く、並木道となっていていかにもメインストリートといったところだが、舗装は街の外よりむしろ悪いほどで、あちこちで大回りをしなければならない。むしろ、そのために道幅を広く取っているのではないかと邪推するほどである。歩道に面して壁が続いているが、ところどころ凹状に切り欠いてあって、そこにちょっとした物売りのカウンターがある。
さて、街の中心らしい広場に着く。小さいながらもホテルがあり、さらに北上する道にはウラジカフカスとある。ここはロシア国境までわずか15キロの場所であり、ウラジカフカスはロシア側の街、北オセチア共和国の首府である。
それにしてもウラジカフカスとは直裁かつ物騒な名前である。ウラジとは「領有せよ」との意味があり、日本海に面したウラジオストクはつまり「ヴォストーク(=東方)を征服せよ」との意味で、その意を汲んでか「鎮東府」と訳されたこともある。ウラジカフカスはつまり「カフカスを征服せよ」との意味で、ロシアのかなーり強い意志を感じる名前である。

  • アナヌリ修道院の内部です。

    アナヌリ修道院の内部です。

  • アナヌリの要塞です。分厚い石壁が、この地で信仰を守ることの厳しさを物語っているようでした。

    アナヌリの要塞です。分厚い石壁が、この地で信仰を守ることの厳しさを物語っているようでした。

  • グダウリはアルプスを思わせる高原リゾートの村です。ふもとからバスがやってきました。

    グダウリはアルプスを思わせる高原リゾートの村です。ふもとからバスがやってきました。

  • 展望台の壁画です。ロシアとグルジアの友好をイメージした絵とのことでしたが、この旅の直後からロシアとグルジアの対立は先鋭化し、ついに戦闘状態になってしまいました。

    展望台の壁画です。ロシアとグルジアの友好をイメージした絵とのことでしたが、この旅の直後からロシアとグルジアの対立は先鋭化し、ついに戦闘状態になってしまいました。

  • 展望台から望む大カフカス山脈の眺めです。レールモントフが絶賛した景色もこういったところなのかもしれませんが、それを写真に収められたかはかなり自信がありません。

    展望台から望む大カフカス山脈の眺めです。レールモントフが絶賛した景色もこういったところなのかもしれませんが、それを写真に収められたかはかなり自信がありません。

  • 十字架峠にあるドイツ軍兵士の墓です。第一次大戦後、捕虜となったドイツ兵がこの峠を越えるときに、多くの犠牲者を出したのだそうです。

    十字架峠にあるドイツ軍兵士の墓です。第一次大戦後、捕虜となったドイツ兵がこの峠を越えるときに、多くの犠牲者を出したのだそうです。

  • ソイウォーターです。日本の温泉でもこういう味の温泉があるなという感じの味です。率直に言って、おいしくはありません。

    ソイウォーターです。日本の温泉でもこういう味の温泉があるなという感じの味です。率直に言って、おいしくはありません。

  • ツミンダ・サメバへの道を克服した車です。

    ツミンダ・サメバへの道を克服した車です。

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