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〜0016のつづき〜<br /><br />■ごちそう<br /><br /> ハリファックスの友人には何から何までお世話になってしまった。シャワーを借り、バスタオルを借り、自転車を借り、パソコンを借り、ベッドで寝、朝ごはんを毎日食べさせてもらう。何より安宿やドミトリーなどと違い、絶対的な安心感の中で眠ることができる。財布も放置していていいのだ、ビニール袋に入れて共同シャワーのフックに引っ掛けておくのではなくて。

重慶 午後6時13分 0017

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2006/10 - 2006/10

44位(同エリア44件中)

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kanai jic tokyo

kanai jic tokyoさん

〜0016のつづき〜

■ごちそう

 ハリファックスの友人には何から何までお世話になってしまった。シャワーを借り、バスタオルを借り、自転車を借り、パソコンを借り、ベッドで寝、朝ごはんを毎日食べさせてもらう。何より安宿やドミトリーなどと違い、絶対的な安心感の中で眠ることができる。財布も放置していていいのだ、ビニール袋に入れて共同シャワーのフックに引っ掛けておくのではなくて。

  •  毎朝見ているテレビ、ローカルなカナダお天気チャンネルだろうか。コード進行D-G-Bm-AのインストBGMが耳にこびりつきつつ、友人と市場へ向かう。ガレットとカフェオレを買い食いし、そのまま自転車を運んでフェリーに乗り込む。対岸のダートマウスまでちょびっとクルーズ。甲板でハリファックス湾の風を受ける。<br /><br /> 列車やバスに乗って窓ガラス越しに景色を見ている時が(夜、真っ暗で景色が見えず、窓ガラスに映っている自分を見ているとしても)、最も旅をしている瞬間だと思うが、フェリーで風を感じている時もまた同じだ。<br /><br /> 対岸の市場を見てから海沿いを自転車で走る。途中に「世界の壁」みたいなメモリアルポイントがあり、ベルリンの壁の破片を見ることができた。帰りはマクドナルド橋という橋を、フェリーで渡ってきた分だけ自転車でこいで戻る。ちょっとキツイ。

     毎朝見ているテレビ、ローカルなカナダお天気チャンネルだろうか。コード進行D-G-Bm-AのインストBGMが耳にこびりつきつつ、友人と市場へ向かう。ガレットとカフェオレを買い食いし、そのまま自転車を運んでフェリーに乗り込む。対岸のダートマウスまでちょびっとクルーズ。甲板でハリファックス湾の風を受ける。

     列車やバスに乗って窓ガラス越しに景色を見ている時が(夜、真っ暗で景色が見えず、窓ガラスに映っている自分を見ているとしても)、最も旅をしている瞬間だと思うが、フェリーで風を感じている時もまた同じだ。

     対岸の市場を見てから海沿いを自転車で走る。途中に「世界の壁」みたいなメモリアルポイントがあり、ベルリンの壁の破片を見ることができた。帰りはマクドナルド橋という橋を、フェリーで渡ってきた分だけ自転車でこいで戻る。ちょっとキツイ。

  •  ハリファックスのごちそうはロブスターだ。レストランで食べるのではなくて、友を訪ねる旅ならではのディナー。スーパーマーケットで生のロブスターを丸ごと買い、お家でゆでて、お酒を少し飲みながら食べる。贅沢。

     ハリファックスのごちそうはロブスターだ。レストランで食べるのではなくて、友を訪ねる旅ならではのディナー。スーパーマーケットで生のロブスターを丸ごと買い、お家でゆでて、お酒を少し飲みながら食べる。贅沢。

  • ■「先生」という存在<br /><br /> この旅の途中、学生時代にお世話になった先生と会った。友人の勤務先であるダルハウジー大学でその先生がセミナーをやっていた。僕は今、サイエンティストでなく旅行人だ。日中はそのセミナーには行かず、サイクリングで過ごす事を選んだ。<br /><br /> 夜、その先生と、友人と、友人の職場のボス、の4人でちょっとしたレストランに行った。ムール貝やアンコウなどのシーフードを食べながら彼らサイエンティスト3人は仕事の話をする。僕は、おいしい料理とワインとその会話を聞いているだけで楽しい時間を過ごせていたのだが、ボスや先生が気を利かせて会話に混ぜてくれる。<br /><br /> 話の流れで「自分がなぜサイエンスを辞めたか。二度と戻ることはないのはなぜか」ということを話し始めた。先生は話を聞いてくれ、かつ理由について質問をしてきた。日本語でもうまく話せない、あるいは、答えも理由も自分でさえはっきりわかっていないような内容、「生き方」について英語で話すなど僕には難しすぎた。懸命に色々な表現で自分の考えを説明しようとしながら。

    ■「先生」という存在

     この旅の途中、学生時代にお世話になった先生と会った。友人の勤務先であるダルハウジー大学でその先生がセミナーをやっていた。僕は今、サイエンティストでなく旅行人だ。日中はそのセミナーには行かず、サイクリングで過ごす事を選んだ。

     夜、その先生と、友人と、友人の職場のボス、の4人でちょっとしたレストランに行った。ムール貝やアンコウなどのシーフードを食べながら彼らサイエンティスト3人は仕事の話をする。僕は、おいしい料理とワインとその会話を聞いているだけで楽しい時間を過ごせていたのだが、ボスや先生が気を利かせて会話に混ぜてくれる。

     話の流れで「自分がなぜサイエンスを辞めたか。二度と戻ることはないのはなぜか」ということを話し始めた。先生は話を聞いてくれ、かつ理由について質問をしてきた。日本語でもうまく話せない、あるいは、答えも理由も自分でさえはっきりわかっていないような内容、「生き方」について英語で話すなど僕には難しすぎた。懸命に色々な表現で自分の考えを説明しようとしながら。

  •  後日、日本に帰ってから先生にメールをし、<br /><br />「自分の考えがうまく話せず残念でした。しかし結局、突き詰めていくと自分でも理由がわかってない気がします」<br /><br />という旨を伝えた。配属研究室も違い、講義を受けていた一学生にしか過ぎなかった僕のメールに先生なりの考えでメール返信がきた。学生を卒業し、「先生」と呼ぶ人が身近に居なくなってから何年も経った。そのメールを読んだ時に、「先生」という存在の素晴らしさを実感した。仕事場で「先輩」は居るとしても「先生」は居ないのだ。<br /><br /> レストランでボスにたくさんごちそうになった後、先生をホテルまで見送った。<br /><br />「いいところだなあ、しばらくこういう町でのんびりしたいよ」<br /><br />先生は言い、僕と友人と並んでハリファックスの夜の海を遠くに見た。<br /><br />「じゃあ、この辺で少しふらふらしてから帰るから」<br /><br />お酒を飲み足りなかったというよりも、「先生」でない時間にひとりで飲みたいのだろう。学生時代に見たものとは別のかっこよさを後ろ姿に残して、先生はゆるやかな坂を歩いていった。<br /><br />http://www.geocities.jp/kanaibon/

     後日、日本に帰ってから先生にメールをし、

    「自分の考えがうまく話せず残念でした。しかし結局、突き詰めていくと自分でも理由がわかってない気がします」

    という旨を伝えた。配属研究室も違い、講義を受けていた一学生にしか過ぎなかった僕のメールに先生なりの考えでメール返信がきた。学生を卒業し、「先生」と呼ぶ人が身近に居なくなってから何年も経った。そのメールを読んだ時に、「先生」という存在の素晴らしさを実感した。仕事場で「先輩」は居るとしても「先生」は居ないのだ。

     レストランでボスにたくさんごちそうになった後、先生をホテルまで見送った。

    「いいところだなあ、しばらくこういう町でのんびりしたいよ」

    先生は言い、僕と友人と並んでハリファックスの夜の海を遠くに見た。

    「じゃあ、この辺で少しふらふらしてから帰るから」

    お酒を飲み足りなかったというよりも、「先生」でない時間にひとりで飲みたいのだろう。学生時代に見たものとは別のかっこよさを後ろ姿に残して、先生はゆるやかな坂を歩いていった。

    http://www.geocities.jp/kanaibon/

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