2007/08/23 - 2007/08/26
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フーテンの若さんさん
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ブータンという国をご存知あろうか?
北は中国、南はインドという大国に挟まれた場所に位置し、四方はヒマラヤ山脈に囲まれている。国土面積は九州と同じくらいだが、人口はわずか60万人しかいない小国だ。
観光客の入国を受け入れることなく、長らく鎖国状態であった。門戸が開かれたのは、今から約30年前のこと。それまで一般人は入国することができなかったため、「最後の秘境」とか「桃源郷」と呼ばれて、旅行者憧れの国であった。現在は、1日200ドルという国が定めた公定料金を払い、公認ガイドに付き添ってもらって旅をすることができるようになった。
チベット仏教を正統に受け継いだ仏教国であるこの国が近年、大きな脚光を浴びている。それは、GNH(グロス・ナショナル・ハピネス=国民総幸福)を軸としたユニークな国づくりを宣言しているからだ。
国の豊かさを知るための経済指標としてGNP(国民総生産)やGDP(国内総生産)がよく使われている。その基準からすれば、近代化が始まったばかりのブータンは最貧国の一つにすぎないだろう。しかし、それは西欧主導型の進歩のモデルではあって、仏教国ブータンでは、まったく異なる進歩のモデルが相応しいのではないか。そう考えた前国王が今から30年近くも前にGNHを提唱したのが始まりだという。今では国を挙げてこの研究に励んでいる。
GNHは目に見えない国民の幸福というものを重視する。物質的な満足だけでなく、精神的な満足との両立こそが幸福をもたらすのではないか。それがGNHの概念である。先進諸国が環境問題や格差問題、諸外国との対立問題で頭を抱える中、GNH国家を目指すブータンの試みは世界中から注目を集めることなった。
他にもブータンのユニークさをしるすのに面白いデータがある。
◎国王新政。2008年に憲法発布。議会制に移行予定。
◎国民1人当たり年間所得760ドル(日本の50分の1)。
◎血族の濃淡に拘らない大家族制。
◎教育費や医療費は無料。
◎自殺者は年で2、3人(日本は3万人/年)。
◎一昨年の国勢調査で「あなたは幸せか」の問いに97%がはいと答えた。
景色が美しい観光地はいくらでも世界にある。ブータンが誇るのは観光客に安らぎを与える国民の生き方なのではなかろうか。そんなブータンという国を覗いてみたくて、次の目的地としてここを選んだ(何せケチな僕が、大金となるブータンの旅料金を払ったのだ!)。
「人の幸福とはなにか?」そして、
「僕にとっての幸せとは詰まるところ何なのだろう?」
心の幸せを重視する国ブータンでその答えは見つかるのだろうか。
期待と不安を胸に、カトマンズからパロ行きの飛行機に飛び乗ったのであった。
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今回のブータン旅行は、ネパールからツアーを申し込んだ。
正規でブータンに入国するにはツアー申し込みが前提となる(インドからの密入国など裏技はいろいろとあるらしいが)。ツアーの中には宿泊ホテル、ドライバー、ガイド、寺院などの入場料、食事代など全てが含まれている。これまで僕は、ずっと一人で自由旅を続けていたので、パックツアーを体験するのは始めてのこと。しかも、一人での参加だ。
特に大事なのは、四六時中共にするガイドではなかろうか。ガイドとの相性が良いか悪いかで、この旅の成果が決まるといっても過言ではない。そう思って苦手な英語ではなく、日本語ガイドをお願いすることにした。
ガイドの名前はテンジン。
ティンプー生まれの30歳男性。愛知県豊川市で5年間働いていた経験があるという。ところが、それは9年も前の話なので、日本語を結構忘れてしまっているらしかった。
例えば、国立博物館でのこと。古代の遺跡石を指して「これは何?」と聞くと、「これは・・・石ですね」とそのままの答えが返ってきた。
「これは何の意味があってのマントラなの?」「これは・・・ここに英語で書いてあるとおりですね」。「これは何の神様?」「これは・・・うーん、ちょっとわからないですね」。「この流れている音楽の楽器は何?」「まるでワタシ聞いたことないですね。たぶん本に書いてあると思いますね」と、ガイドとしての意味をなさない対応なのであった。
チベット仏教や輪廻転生といった深いテーマについて聞きたかった僕は、正直がっくりだった。これじゃ理解できない英語でのやり取りとほとんど変わらないやん。
そんなテンジンとのコミュニケーションは、最初イライラさせらることが多かったが、質問方針を変えることで楽しめるようになった。 -
まず、難しいことは聞かないようにした。それは手持ちのガイドブックで何とかなるものだ。それよりも真面目な性格の彼に対して、おっちょくるような質問をすることに変えたのだ。
「奥さんの写真見せて〜」「何処で知りあったん?」「浮気とかするん?」「カワイイってブータンでは何ていうの」「ブータンでのプロポーズの方法は?」
テンジンは照れながらも、ちゃんと答えてくれる。彼とは歳も近いからこういう話のほうが合ったし、歴史やら難しい話より、こっちの方がブータン人の普段のノリがわかって面白かった。
夕食を終えると、テンジンから「相談があるから、ちょっとテラスまで来て欲しい」という。いままで以上に真面目な顔をしている。なにやら深刻そうだ。
話の内容は単純だった。マツタケを日本で売りたい友人がいるから、日本でのエージェントを紹介してくれないかというものだ。彼も仲介者になって間に入ることで、マージンを手に入れたいらしい。テンジンは、今のガイドの給料だけでは生活が苦しく、早くもう一つ安定したビジネスを始めたいのだと嘆くように呟いた。
ガイドの仕事は、テンポラリーで毎日仕事が入るわけではない。しかも、彼は正規ガイドの資格を持っている訳ではないので日給はかなり安いようだった(日給1000Nu未満=2800円ぐらい。彼の日本語レベルに問題があるのは、これで納得できた)。 -
「ガイドだけじゃ食べていけないです!」とテンジンは一段と強い口調になって言う。
4歳と11ヶ月の子供を抱えている。だからもっと働きたい。でも仕事がない。先日、ネパールで会った旅行者会社のリラさんと同じだ。子供の先行きを考え、もっと収入を上げたい親の気持ち。とにかくその熱意だけは、僕のハートにビンビン伝わった。
しかし、現在、無職の身である僕に何が協力できるというのだろう。マツタケ業者の知り合いなんて日本にいるはずないし。いっそ自分が日本でネット通販を立ち上げて、直接売ろうかとも思ったが、知識もないマツタケが商材となるとリスクが高いなあ。うーん。
マツタケもいいけど、クワガタなんてどう?
熱くなっているテンジンにちょっと変化球で返してみた。5年前にブータンの空港で100匹近いクワガタを密輸しようとした日本人女性が捕まったらしい。クワガタのほうが手っ取り早いし、お金になる。もちろん、そんな違法行為を僕がやるわけないが、彼がどういう反応をするかちょっと試してみたかったのだ。
「それはダメです。悪いことすると、業(カルマ)も下がります。それはやっぱりいけません」
期待通り、やっぱり彼はブータン人だった。悪事には手を染めない根っからの仏教徒。でも、お金を欲する気持ちは万国共通だということがわかった。GNH(国民総幸福)を掲げるブータンとはいえ、やはり個人的な経済問題は切っても切り離せないものなのか?いや、子供にいい生活をさせたい親の気持ちは何処でも同じなだけなのか?
テンジンを見て、個人の幸せとは何かをもう一度考えさせられた。
その答えはこれからこのツアーで彼と共に見つけていきたいと思う。
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