2007/08/20 - 2007/08/20
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フーテンの若さんさん
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「何だったら会ってみるかい?彼女は国際結婚をしたがっているんだ」
ホテルでオーナーと話をしていると、突然こんな話が飛び出した。
僕がまだ独身で彼女が欲しいんだよと話したら、「知り合いのネパール人女性がチトワン近郊の村に住んでいて、早く結婚したがっているから紹介するよ」というのだ。だから一度会ってみてはどうかと。オーナーの話では、彼女は23歳でスラッとした美人顔。おまけにナイスボディの持ち主だというではないか。
ネパール人は彫りの深い美人顔が多い。インド人よりも知的な感じで、性格も優しそうな感じを受ける。知的な美人というのは僕のばっちり好み。しかも若い。これは悪い話ではない。オーナーは今にも電話を掛けようとしていて、「すぐにここへ呼ぶぜ」と大いに乗り気になっている。
これは事実上、お見合いといっていいだろう。
僕が彼女を気に入って彼女が僕を気に入れば、めでたく婚姻成立。国際結婚して、奥さんをそのまま日本へ連れて帰るのだ。なるほど、僕はこのためにネパールに呼ばれたのかもしれない。
実は、僕は過去にお見合いを一度だけしたことがある。そう、あれは今から6年前の話。場所は日本ではなく、ベトナムのホアヒンという町でのことだった。
*
ホアヒンの川沿いをブラブラ散歩していると、知的そうなお姉さんに声を掛けられた(この時から僕は知的に弱かった)。彼女は流暢な英語で話す。「家まで遊びに来ないか」という誘いであった。暇だった僕はすぐにそのまま着いていったのだが、彼女は家はそこからかなり遠く、そして貧民街が立ち並ぶバラック小屋の一つであった。
屋根はボロボロで、壁のあちこちに穴が開きまくり、部屋は生ゴミのような臭いがたちこめる。その家に家族7人で暮らしているのだという。彼女の父親はフランス人なのだが、、一度も会ったことがないらしい。ベトナムでは決して珍しくない状況だ。それでも、この家から察するに、かなり下層階級であることには間違いないだろう。
ここで彼女からお願いがあると言われた。それは「妹に会って欲しい」というものであった。何でも妹は25歳にもなるが、まだ婿の貰い手が見つからないので、姉である私が相手を探しているのだという(彼女は既婚者であった)。
「妹は内向的でほとんど誰とも口を聞かないのだが、あなたなら合うと思って」
ほんまかいな。あなたとさっき出会ったばかりじゃない。それで僕の何がわかるというの。単に金を持っている日本人と国際結婚して、家族丸ごと貧乏脱出しようと考えているんじゃないの?と思ったが、姉のススメのまま、とにかくその妹に会ってみることにした。
奥の部屋に連れて行かれると、寝そべった妹が待っていた。ドキッ!予想に反して、その妹は飛びっきりの美人であった。
同じハーフでも姉はベトナム人の血が濃いようだが、妹のほうはフランスの血が優っている。鼻がすらっと高く、目はぱっちり、肌は色白のいわゆる美人顔。
姉は「後は若い二人で」と言わんばかりに、そそくさと外に出てしまった。さて何を話そうか。まずは自己紹介をカタコトの英語でするが、リアクションがない。彼女はほとんど英語が喋れないようだった。おまけに声が小さくて何を言っているのかも聞き取れない。ものの10分で会話はなくなり、沈黙が続いた。姉さん、早く帰ってきてよ(えなりかずき風)。居たたまれなくなって僕は席を立ち、姉を探しに行った。
外でタバコを吸っていた姉を捕まえると、「どうだった?いい子でしょ」と質問された。まあ、確かに悪い子ではなさそうだ。「とっても大人しくて、いい子だと思う」と返事をすると、姉はものすごく喜んでいた。
せっかくなんでお茶でもと姉に誘われるまま、また部屋に戻ってくつろいでしまった。その流れで夕食までご馳走になってしまう。今度は妹だけではない。お母さんにお兄ちゃん、お爺さんやら叔父さんまで一緒になって夕食を共にしたのだった。お母さんたちはものすごく喜んでいるように見えた。日本人がそんなに珍しいのかな。この時は理由がわからず、不思議に思ったものだ。妹だけはこのときも無口なままであった。
姉が帰り道の途中まで送ってくれ、僕にこう言った。「もし、あなたが本当に気に入ったなら明日もう一度来て欲しい。明日は親戚ももっと呼んで、ちゃんと盛大にやるから」
僕はまた明日も持て成してくれるのだと思い、「本当に?ぜひじゃお願いします」と言ってしまった。
一人になってよくよく考えると、これは結婚OKの前祝ではないかと思い始めた。今日のお姉さんのあの喜びよう、それにお母さんたちが作ってくれた手料理は、あの家からは想像も出来ないほど豪華なものであった。そして明日はもっと本格的にやるみたいなことを言っていた・・・。これは間違いない!」
今日の軽い出会いは、彼らにとってのお見合いだったのだ。
さすがに親戚まで呼ぶとなったら、もう後に引けない。僕はすぐに断りをいれようと彼女の家に戻ろうとした。ところが、あのバラック小屋は何処も似たような作りで、どれが彼女の家かわからない。道は入り組んでいるため、散々迷ってしまい、僕は辿りつく事ができなくなってしまった。今頃、あの家族は喜んでいるに違いない。「妹の結婚相手が決まったぞ。日本人だし、これで一家も安泰だぞ」なんて。
次の日も彼女の家を見つけることはできなかった。一番最初にお姉さんに会った場所へ行けば会えるかもと思ったが、そこでも会うことはなかった。その次の日は、僕は別の町ハノイに向かわなければならない。結局、再会は果たせず、後ろ髪をひかれる思いで、ホアヒンの町を後にしたのだった。
彼女たちをぬか喜びさせてしまった後味の悪さは、今もなお苦い思い出として残っている。特に妹さんは僕のことをどう思っていたのだろうか。「婚約直前に逃げた、最低の日本人ね」と思ったのか、「コミュニケーション取れない相手と結婚させられなくてよかった」なのか。今更、確かめる術はもうないのだけど。
*
今回のネパールでも、真っ先に僕はこのベトナムでのお見合いのことを思い出した。
もし、ここで紹介してもらった彼女と会おうとも、僕は明朝のバスでポカラへ向かう予定なのだ。つまり、彼女と話せる時間は丸一日しかない。これではさすが愛を育む時間がない。もう二度と中途半端なことをしてはいけない。そう思い僕は、泣く泣くこの折角のお見合い話を断ることにしたのであった。
しかし、僕の悔しい気持ちがオーナーに伝わったのか、彼は、僕が次来るときまで、その子に待っておくようにと伝えておくという。さらには彼女のメールの連絡先まで教えてもらった。これで日本から遠距離で愛を育めとまでいう。
ネパールの彼女とはお見合いどころか、まだ会ったこともない。まだ見ぬネパールの彼女とネット恋愛で愛を育んでみますか!
はて、本当に彼女と結ばれるのかどうか?これからは未来の話。なので後ご期待てな感じです。
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