2007/08/19 - 2007/08/19
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フーテンの若さんさん
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奇跡的に雨が止んだ。
まるで今日のツアー決行を喜ばんばかりに、久々に登場したお日様が燦々と誇らしげに輝いているではないか。
「ゾウに乗ってサイを見る」。これがここチトワン国立公園に訪れる旅行者が参加する定番のツアーコースであるらしい。ダレきった引篭もり生活真っ只中の僕は、「今日も雨でいいんでない」と密かに中止を願っていたのだが、ここまで完璧に晴れちゃあショウガナイ。それに次はいつ晴れるかわからないし。とりあえずは天気同様、気持ちを新たにして、ツアーへ参加することに決めたのだった。
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ジャングルツアー自体は本格的で、適当にその辺をウロウロして終わりってな感じではなかった。
ゾウは緑が生い茂るジャングルのなか、道無き道を進んでいく。連日の大雨で道はぬかるみが激しく、さすがのゾウでも歩くのはかなりしんどいようだった。歩く毎にズシンと響き渡る振動は、台座の上にいる僕たちにもモロ直撃する。それは台座にしがみ付いていなければ、すぐに振り落とされてしまいそうな強い揺れであった。また、たっぷり水気を吸った木々は、僕たち搭乗者の体をびしょ濡れにさせるだけでなく、跳ね返って顔を攻撃する凶器にもなりかねない。目先の木々の動向にも常に注意が必要であった。
まさかこんなに本格的なツアーだとは思いもしなかった。今更ながら、参加したことを少し後悔する。こんなにしんどい思いをするなら帰ってホテルで寝てた方がよかった。ここ最近の怠惰な生活に慣れきっていた僕は、すっかり汗をかいて苦労することを忘れてしまっていたのだ。
さらには、先ほどまでの晴天が嘘のように突然、雲行きが怪しくなり、大雨が降り始めた。狭いゾウの上で傘をさすこともできず、ただ濡れるだけ。何の動物もまだ見れていないけど、僕はもう帰りたくなった。こんな苦労をする意味が果たしてあるのだろうか。 -
それでも奥地に入って数十分、ゾウ使いが「あそこにいる」とゆっくり指差した方を見ると、確かに小さなサイがいた。緑の影で全体はよく見えないが、間違いなくそれはサイであった。
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僕はサイを見れた感動よりも、安堵の気持ちの方が遥かに大きかった。一つはこれでもうホテルに戻れるということ、もう一つは、ゾウ使いがゾウの頭を殴るところを、これ以上見なくて済むという理由からだった。
時折、ゾウが言うことを聞かなくなると、ゾウ使いは持っている棍棒で容赦なくゾウの頭を殴るのであった。鉄杭みたいな先端が尖った凶器も持っていて、ソイツを頭に突き刺すこともあるのだ。ゾウは悲鳴をあげて抗議することもあるが、そうすると尚更痛めつけられる。それでゾウは仕方なしに渋々動き出す。ゾウもサイを見るために大変な目に遭っているのだ。
やっとホテルに戻ってきた頃には、僕はヘトヘトに疲れ切ってしまっていた。早く横になりたい。しかし、ツアーはこれだけでは終わらなかった。昼寝をしているところを起こされ、すぐに出かけるぞという。断ろうと話す暇もなく、階下に連れて行かれると今度は車に繋がれたウシが待っていた。これで村を周るのだという。 -
今度はゾウと違って、ウシだ。ジャングルではなく、村を周るのであるし楽だろう。導かれるまま、その牛車に結局は飛び乗ったのだった。
牛車の乗り心地も、思った以上に快適ではなかった。舗装されていない砂利道の振動は、お尻をモロに直撃した。それでも朝のゾウに比べたら全然マシ。あの窮屈で、地震のような立て揺れのことを思えば楽だ。村を周るコースは、ただメイン道路をぐるっと周るだけ。でもこれが意外と面白かった。
子供たちは「ナマステ〜」と手を振ってくれるし、若い兄ちゃんはすれ違いざまに日本語で声を掛けてくれたり。夕飯の支度で忙しい奥さんたちは笑顔を返してくれる。村には犬に猫に山羊、鶏、家鴨、牛たちもいる。古き良き日本の風景がここにはある。 -
ジャングルでサイを見るより、田舎でそこに暮らす人々を見ているほうが僕にとっては落ち着くし、面白みを感じた。何より懐かしさを覚え、彼らを見ているだけで癒されるのだ。一番愉快な動物はやはり人間なんだ。人種こそ違え、いろいろな共通点がある。だから人間だけは何処へ行っても見飽きないんだなあ。
一つだけ気になったことがある。サイを見るのにゾウを虐待し、ヒトを見るのにもわざわざウシを使う。国立公園とは希少な野生動物を保護するためのもの。保護対象以外の動物は家畜扱いなのは致し方ないとしても、明らかに過剰なサービスを提供するためにゾウもウシも扱き使われているのではなかろうかと思った。
そもそもサイたちは、人間が生態系を壊したために希少になってしまった訳で、国立公園や野生保護区内にしぶしぶ囲まれているのだ。そうなってしまったのは人間たちの責任。もしゾウが希少になって、サイが増えたらその立場は逆転する可能性だってある。いつも人間の都合だけで動物たちは左右される。ヒトはなんていい加減な動物なんだ。
ネパールの田舎の風景を懐かしむ気持ちと、サイやゾウを大切にしようと思う気持ちはどこか似ているものだと、このとき始めて気が付いた。失ってから失ったものを嘆いても既に遅いのだ。
サイを見て、ゾウを見て、ヒトを見て、自分を見て深く考えさせられる。このツアー、最初は渋々だったが、参加してよかったなと今は思う。
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