2007/07/20 - 2007/07/20
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フーテンの若さんさん
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エジプトを訪れる旅行者はカイロからルクソール、さらに南下してアスワン、アズ・シンベル宮殿を目指していくのが通常のルートだと聞く。しかし、歴史や博物館系にあまり興味のない僕は、ギザのピラミッドとルクソールの神殿を見学しただけで既に満腹感を感じていた。何より7月のエジプトは暑いのだ。灼熱の太陽の下、あくせく遺跡を周ってみたところで、これ以上大した感動は期待できそうもない。もう遺跡観光はこれで充分だろう。
そう考え、「これからはビール片手に欧米美女でも見ながら、ゆっくりビーチで寝そべろう」という壮大で怠惰な計画を、同行している大学時代の旧友T君に話してみた。彼も毎日の遺跡巡りに飽き飽きしていたらしく、「・・・うーん、そうやな」とほぼ即答で期待通りの返事を返してきた。ようし、これで僕らの路線は決まった。30も半ばになると、やはり「遺跡」よりも「リゾート」という言葉に魅力を感じるのは一緒のようだ。こうしてルクソールから北上して戻ること約6時間、蒸し風呂のようなバスの中でダウンしそうになりながらも、紅海屈指のリゾート地と言われるハルカダへ辿りついたのだった。
世界で一番美しいといわれる紅海のリゾート地とあって、高級感溢れるすんばらしいビーチ群を勝手に想像していたのだが、実際のハルカダはちょっと違っていた。ホテルやレストランがポツンとポツンと離れたところにあり、造りかけのまま工事が中断されている不気味なホテルが所々にあったりして、少々寂れかかった熱海の歓楽街をイメージさせるショボそうな街であった。
「まあ、焦らず焦らず。まだ到着したばかり。ビーチを見てからこの街を判断しようや」。二人とも自分たちの選択が間違っていないことを信じ、近くのパブリック・ビーチへ足を早めた。確かに水は透き通るように綺麗だ。しかし、100m以上も膝下サイズしかない遠浅の海で、下は砂浜ではなくゴツゴツ石が混じっている。これではゆっくり水に漬かることも、魚を探すことも出来やしない。期待に胸膨らませた欧米美女なんてビーチには一人もいなくて、地元の家族連れが水と戯れるように遊んでいる姿のみが映っていた。さらに、この家族的なビーチには、ビールなどアルコール類は一切置いてはいないようだった。
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おかしい。これが紅海なの?リゾートは何処??僕たちは幻を見ているのだろうか。
ビーチで禅問答すること30分。そうだ、ホテルに島を巡るスノーケリングツアーがあった。おそらくハルカダではなく、ハルカダ近郊の島々にすんばらしいビーチがあるに違いない!30も半ばになると、自分たちの意見が間違っていたことを簡単には認めることはできないのだ。僕らはその足で早速ツアーを申し込み、明日のツアーに全てを掛けたのだった。 -
翌朝、申し込んだダイブショップからピックアップのバスに乗って港へ向かう。港で30人もの欧米人観光客が一同に集まって、あまり真新しそうにないフェリーがギシギシ音をたてながら、ゆっくりと出航していった。1時間ほどしたところでフェリーは停泊し、最初のスノーケリングをすることになる。
ザブンッ。勢いよく目の前の海に飛び込んだ。あれ、数年ぶりのスノーケリングで勘が掴めず、うまく浮き続けることができない。すぐにフェリーに戻り、ライフジャケットを借りることにした。気を取り直して、グラス越しに海を眺めてみる。確かに素晴らしい透明度!昨日行ったパブリック・ビーチの海とは比較にならないほど綺麗だ。ところが、スノーケルしている口から大量の海水が流れ込んできた。スノーケリングとはこんなに息が苦しいものだっけ。あまりに多くの海水を飲み込み、咳が止まらないので、またフェリーに戻ることに。どうやら僕のスノーケルには穴が開いていた模様。取り替えてもらい、再チャレンジを試みる。
紅海の魚はカラフルな熱帯魚系が多い。魚はいることはいるのだが、思った以上に数は多くなかった。珊瑚の色は薄く、Tは「沖縄の海の方がよかったなあ」などと言う。これはマズイ。僕らの意見を否定することは、即ち自分たちの敗北を意味するのだ。「これから向かう島のビーチには恐ろしいほどの美女軍団が待ち受けているに違いないよ」僕はスノーケリングもほどほどに、期待値を上げるトークを横にいるT君に一所懸命繰り広げていた。 -
島は欧米人観光客たちで一杯だった。大して広くもない砂浜のビーチに、ギュウギュウ詰めになって横たわる姿は南米で見たトドの大群を思わせる。まるで須磨のピチピチビーチか、湘南由比ガ浜ビーチのような混雑振り。確かに綺麗なお姉ちゃんもいることはいるのだが、それほど数が多くなく、露出度もかんなり控えめだった。島には灼熱の太陽を遮るものは一切なく、すぐに喉はカラカラになった。しかし、ここでもビールは置いてないようだ。仕方なく、熱くなったペットボトルの水をひたすら呑んで、我慢することに徹していた。
「確かにビーチは綺麗やけど、総合的な満足度はどうやろか?」。港へ戻るフェリーの最中、さすがの僕も否定的な疑問が思わず口から漏れてしまう。おっとこれはいかん。「今日の夕食は、美味しいシーフードでも食べに行こうや」と話をすぐに摩り替えた。
スノーケリングツアーを終えて、街中のレストランでシーフードを食べた。なんと外税でTAXが12%も掛かり、エジプトに来て一番高い食事となった(一人45ポンド=950円ぐらい。エジプトの安い物価では高級の部類だろう。ハルカダのレストランは何処も物価が高かった)。せいぜい高くて一人25ポンドの予算と思っていたので、予期せぬ大きな出費だった。「味はまあまあだったよね」と値段のことは口にせず、ホテルに戻る巡回バスを探す。しかし、夜のバスは満席でどれも空きが見つからず、ビュンビュン素通りしていく。仕方なく流しの車を見つけ、二人で10ポンドで行って貰うことでドライバーと成立。それなのに乗ってから「やっぱり一人10ポンド払え」と言い出し、車内で散々揉めることになった。結局10ポンド札を握らせ、逃げるように車から降りる。
気を取り直し、ホテル近くのバーでビールを飲もうということになった。そもそも「ビール片手に欧米美女でも見ながら、ゆっくりビーチで寝そべろう」という計画のはず。ほとんど夢は叶わなかったが、最後ぐらいは上手いビールで〆たいのだ。
ウエイターにビールの値段を確認すると6ポンドだという。ではビールをくれと注文すると、持ってきたメニューは倍額表示になっていた。「アンタおかしいじゃないか」と交渉するもウエイターは英語がわからないというトボケタ素振り。もうこれ以上今日は揉め事をしたくないので「んじゃ、それで」と諦めビールを注文した。頼んだビールをチビチビ飲んでいると、さっきのウエイターが「出掛けるけど5分で戻ってくるから、絶対に席を離れないでね」と話してきた。「なんだよ、英語話せるやん。食い逃げなんかするかよ。でも待てよ、何だか怪しいぞ。」そう思い、彼が不在の間に別のウエイターにチェックを頼むと、最初に言った安い金額で会計ができた。
「ハルカダって何だか疲れるよな。思った以上に何もないし。むしろ良いところだとさっぱり思えんわ」
今日ずっと抑えていたマイナス発言がついに出てしまった。しかも、ハルカダの100%全否定発言。「そういえばホテルのトイレも超汚かった」、「ハルカダの街の人にいい奴はいないよ」など堰を切ったように否定発言が次から次へと飛び出していく。恐れていたように最後はT君と愚痴の言い合いとなってしまった。 -
「もうハルカダは充分。明日移動しようか」
これまたT君と意見が一致し、明日の朝にフェリーで別のリゾート地ダハブへ向かうことにした。30も半ばになると、小さな嫌なことでも積もり積もって、我慢ができなくなってしまうのだ。
こうして30半ばのオヤジ二人組は熱海に似たハルカダをとっとと後にすることにした。ダハブでは果たして「ビール片手に欧米美女でも見ながら、ゆっくりビーチで寝そべろう」という壮大で怠惰な計画を実行することはできるのだろうか。
ちなみに30も半ばになると、あまり大きな夢を持たなくなる。在り得ない高い期待はしないでおこうと、自然と現実を直視する癖ができてしまうのだ。
「ダハブもハルカダと一緒だったりして」なんてT君へ期待値を下げる発言をぽろりとしておいた。彼も口には出さないがそう思っているのだろう。30も半ばになると、皆そういうものなのだ。
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