1997/08 - 1997/08
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莉緒さん
【子連れ初海外に挑戦】
独身時代から旅行好きだった私たち夫婦が初めて子連れ旅行に挑戦したのは、ひとり息子が生後4ヶ月の時だった。
目的地は、都心から新幹線で1時間ほどの、伊豆の温泉であった。
やっと首が座ったばかりの息子の、新幹線デビューである。
以来、我が家は年間5、6回くらいのペースで旅行に出かけてきた。
息子も親に似て外出好きで、乗り物に強い。
そして、息子のオムツが完全に取れた1997年夏、我が家はとうとう念願の子連れ海外旅行デビューを果たしたのである。
息子が2歳10ヶ月の時だった。
目的地は、迷わずグァムに決めた。
なにしろ近いし、治安もいい、衛生面も悪くない。
私が独身時代に行ったことがあるというのも決め手のひとつだった。
さて、行くと決まったらさっそく準備開始。
まずは息子のパスポートを取得しなければならない。
息子の手をひいてパスポートの受け取りに行き、ちょっと驚く。交通会館は、パスポートを受け取りにやってきた子どもたちでいっぱいで、まるで保育園のような賑やかさだった。
ベビーカーに乗った赤ちゃんもたくさんいた。
その光景を見て、私はにわかに自信がわいてきた。
海外旅行に行く子どもがこんなにいる!ウチだけじゃないんだから大丈夫・・・
やはり、初めての子連れ海外旅行は不安だったのである。
その日は妙に明るい気分で家路についたのをおぼえている。
【出発!】
コンチネンタル航空で、いよいよグァムに向けて出発。
フライト時間は約3時間である。
機内での息子は不思議なほどよく眠り、飽きてぐずるなどということは一度もなかった。
実に親孝行な息子である。
飛行機に乗ってから気づいたことがひとつ。
子どもたちがみんな、チャイルドミールなる子ども向け機内食を食べているのだ。
チャイルドミールなどというものがあることすら知らなかった私は、事前に予約しておかなかったことを後悔した。
旅行代理店はチャイルドミールの予約について教えてはくれないことが多い。
この旅行以来、飛行機を使う旅行の時はチャイルドミールの予約を忘れないよう心がけている。
グァムに到着したのは深夜だった。その夜は雨が降っていた。
ツアー会社のバスに乗っていろいろなホテルをぐるぐる回り、私たちの宿泊するホテルウェスティン・リゾート・グァムに着いた時は、お客は私たち一家だけになっていた。
そして、ようやくチェックイン。
機内で爆睡していた息子だけが妙に元気いっぱいだった。
【ウェスティン・リゾート・グァム】
初めての子連れ海外旅行。ホテル選びには慎重になった。
迷いに迷ったあげく決めたのは、ウェスティンリゾート・グアム。
タモン湾地区のホテルロード沿いに建つ、オン・ザ・ビーチのホテルである。
当時はまだオープンしたての、ピッカピカのホテルだった。
位置的にはリーフホテルとホテルオークラの間であり、DFSに歩いて行ける距離にあるというのも魅力だった。
しかし、ウェスティンを選んだ最大の理由は、そんなことではない。
ずいぶん前のことになるが、グァム旅行から帰った私の従姉妹の土産話の中に、こんなエピソードがあったのだ。
「・・・夕食を終えてホテルの部屋に戻るでしょ。それで部屋の電気をつけるとね、あちこちでガサガサッと音がするの。ヤモリが隠れる音ね」
ヤモリが部屋にいるのぉ?と、私が目を丸くして聞くと、彼女は笑いながら平然と言った。
「あら、南の島なんて、どんなホテルに泊まっても部屋にヤモリくらいいるわよ」
いないっ!断じて、いない!
私は心の中で力いっぱい否定した。
私も過去に何度かグァムやハワイを旅行しているが、ホテルの室内に爬虫類がいたことなど、一度もなかった。
従姉妹に、泊まったホテルの名前を恐る恐る聞くと、格安ツアーでよく使われているホテルの名前が返ってきた。
以来私は、南の島に行く時のホテル選びには、いっそう注意を払うようになったのである。
私は、ヤモリが嫌いなわけではない。ただ、添い寝したり同居したい相手ではない・・・と思うだけだ。
オープンしたてのウェスティンに白羽の矢が立ったのは、そのへんの事情からであった。とりあえず新しければ安心だろう、といったところだ。
出来たばかりのホテルは、さすがに何もかもが新しく、気持ちがいい。
部屋には、ジェットバス付きのバスタブの他に、シャワーブースがついている。
ベッドもゆったりサイズ。
部屋の広さも、まぁまぁといったところだ。
一応プライベートビーチもある。
ビーチは綺麗に清掃されており、グァム名物のナマコも殆ど目に付かなかった。
ひとつ、困ったことがあった。
息子のトイレである。
2歳10ヵ月の息子は当時オムツがとれたばかりで、頻繁にトイレに誘わなければならなかったのだが、いかんせん「届かない」のだ。
つまり、息子の腰の位置が便器より低いのである。
これでは、オシッコができない。
腰かけてしようか?と息子に聞いてみたが、
「クマさんがないからイヤ」と断固拒否されてしまった。
クマさんとは、自宅で愛用している乳児用の補助便座のことである。
子どもはお尻が小さいので、補助便座がないと便器の中にお尻が落ちてしまいそうで不安なのだろう。
私はため息とともに、来年の夏休みまでに息子の身長が便器に負けないほど大きくなりますように、と祈るばかりであった。
【スコール】
グァム旅行3日目。
その日は午前中いっぱいプールやビーチで泳ぎ、遊び疲れた私たちはランチのあと昼寝をした。
1時間ほど横になり、真っ先に目覚めた私は、ふと、ひとりで買い物に出かけたい衝動にかられた。
私たちの泊まっていたウェスティンリゾートからはDFSまで歩いて行くことができる。
DFSに行こう。
そう決めて、出かける仕度をしていると、息子も目を覚ました。置いていくわけにはいかないので息子も連れて行くことにし、爆睡している夫の耳元で、「二人で買い物に行くね」とだけ告げて部屋を出た。寝惚け眼の夫からは生返事が返ってきただけだった。
巨大なDFSでの時間は、あっという間に過ぎた。
息子の手を引きながらあっちこっちの売り場を見て歩き、そろそろ帰ろうかな、と思った時には2時間近く経過していたのではないだろうか。
出口に向かって歩き始めて私は、すぐに異常事態に気づく。
出口ドア付近が、大勢の客でごった返しているのだ。
何が起きたのだろう?
出口ドアに近づき、外の光景を見て息を飲んだ。
外は、もの凄いスコールなのだ。
まさに、暴風雨。
流れる雨で道路は川になり、波さえうっている。
風も強い。
雷鳴もすぐ近くに聞こえる。
とても歩いてホテルに帰れる状況ではない。
帰るどころか、この建物からたとえ一歩でも外へ出ることは不可能だ。
買い物客たちは一様に茫然としながら、外の光景を成す術なく眺めているだけだった。
すごい雨だねぇ・・・パパはもう起きたかな・・・きっと心配してるね、二人はどこに行ったんだろう、って・・・
2歳の息子に話しかけてみるが、息子はキョトンとした顔で外の景色を眺めているだけだ。
無理もない。
まだやっとオムツが取れたばかりのチビなのだ。
わかっていながら、相談相手のいない状況が情けなくてならなかった。
あの時の心細さは、何年も経った今でも忘れることができない。
むしろ私一人だったら、あんなに淋しくはなかったのかもしれないとも思う。
小さな息子と二人きりであったことが、かえって不安材料になってしまった。
待てど暮らせど、スコールはおさまる気配がない。
とにかく夫に連絡をしたい。
この時、携帯電話が使えない不便さをつくづく思い知った。
公衆電話もあるにはあったが、あいにくホテルの電話番号がわかるものを何一つ持っていなかった。
第一、公衆電話の使い方がよくわからない。
情けないことこの上ないではないか。
この旅行以降、我が家は海外旅行に行く時は必ず、海外用の携帯電話を一人一台レンタルして持って行くようにしている。
どこか座れる所はないだろうか。
子どもを連れて、店内に1ヶ所だけあった飲食店、プラネット・ハリウッドに行ってみた。
しかし、スコールの影響か、満席。
文字通り、行き場がない状況に陥ってしまった私たち母子は結局、売り場をあてもなくウロウロしながらスコールがおさまるのを待つことになってしまった。
ホテルに戻ることができたのは、それからしばらく経ってからだった。
ホテルの部屋に戻って、また驚いた。
バルコニーに置いてあるテーブルと椅子のセットが、それぞれガランガランにひっくり返って、バルコニーの端っこに押し寄せられているのだ。
スコールの風の強さがうかがわれ、改めて恐ろしくなった。
グァムのスコールの凄まじさをまざまざと見せつけられた一日であった。
- 同行者
- 乳幼児連れ家族旅行
- 一人あたり費用
- 10万円 - 15万円
- 航空会社
- 旅行の手配内容
- ツアー(添乗員同行なし)
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