2007/05/18 - 2007/05/18
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フーテンの若さんさん
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旅行者のバイブル的存在「深夜特急」。その本の最終巻ヨーロッパ・スペイン編で、沢木耕太郎は、多くのバル(BAR)に行ったという。そこで彼は、多くのバルを梯子して、地元のスペイン人と旅について話をしたり、時には奢ってもらって交流を深めていったとある。
さて、僕はその話のとおり、何度も数多くのバルに通ってみたが、奢りどころか、地元の人に声すら掛けられたことが一度もない。
僕が周っている町が観光地ばかりなのがよくないのか、それとも時代が変わったのか。
今泊まっているセビーリャのカテドラル周辺にも溢れんばかりのバルがあるのだけれども、どれも観光地化されてしまっており、期待どおりの交流などはかれそうにない。
そこで地元の人が好むという通りのバルまでわざわざ橋を超えてまでして、やってきたのだった。
しかし、この辺りも小洒落ていて、カップルが多く、とても一人でこっそり立ち寄れそうな店はない。どうしようかと悩んでいたところ、川沿いの小さなお店に一人の女性がおもむろに座っているではないか。
僕はその隣の席に座ってみた。僕も一人。向こうも一人。若い男と女。もしや、何かあるかもしれない。
彼女も旅行者で、スペインを一人で旅している。実はちょっと前に大きな失恋をした。それで思い切ってアンダルシアを選んだ。大地の風が心を癒してくれると思ったから。彼を忘れたい、でもやっぱりまだ忘れられない。そして偶然、隣に座った見知らぬエキゾチックな東洋ボーイ。彼とは似ても似つかない。でも黒い瞳は、腐ったオリーブの実のように魅力的なの。あぁ、ワタシってもう心変わりしているの。違う、この東洋ボーイの海苔みたいな髪型がワタシの心をソワソワさせるの。
・・・てな感じで、もしかして出会いがあるかもと思って、僕は隣でずっと待っていた。
僕の表情は、まるで週末に六本木のクラブを梯子している女子大生みたいな感じだった。もう、今日は親友のエリコと喧嘩しちゃってぇ。超むかついてるのぉ。だから、誰でもいいからぁ、誰か早く声掛けてくんないぃ。ちらっと目線でそう言ってみた。
でも、待っていてもちっーとも声は掛からなかった。彼女は意外と恥ずかしがり屋さんだ。ではこちらから声を掛けよう。何と声を掛ければ自然だろうか。「はい、セニョーリータ。僕は東洋ボーイだよ。」ではおかしいし、第一、僕はボーイではなくもう中年だ。だから東洋セニョールが適当だろう。しかし、これでは何だがプロ野球のチーム名みたいだ。東洋セニョールズ。選手は全員髭面で。ぷふふ。
なんて、一人でほくそ笑んでいたら、彼女の携帯電話が鳴り、そのまま何処かへいってしまった。単なる待ち合わせの時間つぶしだったのだ。
その後も誰も声を掛けてくれないので、妄想で時間を潰すことに、僕は没頭した。
あの向かいの席のカップル。やたらと歳が離れている。かなりの訳ありとみた。ははん、もともと不倫だったが略奪愛。それで奥さんとは離婚調停中。旦那は銀行勤めだな。あの身なりからして。どうやら、二人はその職場で出会ったのだろう。そして、上司と部下の関係なのに禁断の恋に落ちた。スペイン版アイルケ(愛の流刑地)。これから彼は彼女を殺してマヨルカ島へ行くのだ。彼はトヨエツに似てなくもない。スペインでのタイトルは「愛のポルケ」。ぐふ、ぐふふ。。。
と、また一人でほくそ笑む。
ちなみに店員以外に声を掛けられたことはまだ一度もない。
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昨夜、何とか探し当てた宿は、細い路地が並ぶサンタクルス街のなかにあった。
あれからグルグル歩き回り、数件の宿を尋ねるも満室と断られてしまっていた(それはどうやら本当のようだった)。しかし、一軒だけ「狭い部屋でよければ」といって泊めてくれる優しい宿が見つかったのだ。
しかし、その部屋は本当に狭かった。「5」と書いた部屋番号の鍵。ところが、実際にそんな部屋番号は存在しなかった。「PRAIVATO」と書かれたその部屋は、従業員がたまに寝泊りする特別な部屋らしく、2畳ほどの物置小屋のようだった。168センチの身長の低い僕でも足が出てしまう程の小さなベット。これで20ユーロは高いと思ったが、その夜はもう戦う気力がないので我慢したのだった。
翌朝、花粉症がやっとこさ治まりつつあったので、街中を散策してみることにした。そして、ちゃんとした宿を今日こそは見つけよう。
昨夜も感じたことだったが、ここはまるで迷路のような街だった。
この街を散策するにはまず詳細な地図を入手しなくては。そう思って僕は街中にあるはずのインフォメーションへ向かった。一応「地球の歩き方」にある大まかな地図は持っているのだが、もっと詳細が知りたい。できれば、オススメの宿も紹介してもらおう。僕はコンパスを持っているので、これで大きく迷うはずはないはずだ。地図とコンパスさえあれば何とかなる自信はある。
というのも、僕は高校時代、オリエンテーリング部に所属していたのだ。
そのことは誰にも話したことがない。とてもマイナーなスポーツで、話すことすら格好悪いと思っていたからだ(僕の高校は全員が何かの部に属さないといかなかった。僕は中学校のときに遭った交通事故で、体に自信がなく、やむなくその部に入ったのだった)。
ほとんどの人が知らないと思うが、オリエンテーリングはちゃんとした体育会系のスポーツで、山へ行って、地図をもらい、ポイントを通過して、タイムを競う個人競技だ。皆がイメージするお遊びのオリエンテーリングとは違い、本物はかなり体力の要る過酷なものだった。
僕も一応、部員だったので、大会には何度か参加した。
本当にそのスポーツをしたくて入部したかったわけではなかったので、ものすごく手を抜いて、いい加減な気持ちで大会に参加していた。誰かの後に着いていったり、途中で民家に立ち寄って、お茶をご馳走になったり、ゴールに先回りして時間つぶしをして、「途中で迷ってしまったので棄権します」と最後に現れたり。だから一度もちゃんと完走した記憶はないのであった。
そんな中途半端な経験のなか、唯一覚えたのが地図の見方だった。コンパスと方位磁針を使い、距離と掛かる時間を測る。時には、太陽の位置から方角を捉えたり、歩幅で距離を測ったり、そうした経験だけは旅においても非常に役立つものだった。
ところが、どうだろう。このサンタクルスの町の建物は、軒並み高くて、目印となる建物がまるで見えないではないか。路地が複雑すぎて、どちらの方向がすぐにわからなくなるし、太陽の位置や歩幅などまるで役に立ちやしない。
気が付くと炎天下の中、2時間近くも歩いていた。
詳細の地図をもらうためのインフォメーションに辿り着けず、まず断念。腹ごしらえに休憩しようと思い、「地球の歩き方」に書いてあるレストランもわからず、別のレストランで誤魔化す始末。ひとまず宿へ戻ろうと思ったけど、それすら辿り着けず、さらに30分以上歩く羽目に。
もちろん今泊まっている宿のチェックアウトの時間はとっくに過ぎている。仕方がない。今夜もあの宿のあの狭い部屋で我慢するしかない。
今日は疲れたので、もう休もうっと。そういえば、この街で僕は観光した記憶がない。グルグルと歩き回り、オリエンテーリング紛いのものを経験したという記憶しかないのだが。
やはりいい加減にした経験というものは、いい加減な能力しか残らないのだなぁ。
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