2006/07/19 - 2006/07/19
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night-train298さん
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最初の村までは7kmあまり。
なかなかたどりつけない。
そろそろ7kmくらい歩いたはずなのに・・・・・・・・。
トンネルを抜けたところでひと休みをしていたら、四人組のベロニカとカルロス、そしてあのロベルトも並んできた。
もうすっかりロベルトも、彼らの仲間になったのか、一緒に歩いている。
おさらいしよう、四人組はマドリッドから来ている、ドリー、マティルダ、ベロニカ、そして男性一人がカルロス。
年の頃は50歳前後の熟女組。
いつもやさしくてエレガントなドリー、意地悪そうだけどおもしろいマティルダ、素朴で朴訥としたベロニカ、おとなしくて女性陣に押され気味のカルロス。
ロベルトは35歳で、この頃の彼の印象は、調子が良くて女性に対して社交上手。その優しすぎる言葉は信用できない「ヤサ男」。
この時点で、カルロスとベロニカは夫婦で、あとの二人はウィドウというのが私の想像するところだった。
これで三度目の出会いだったが、ドリーくらいしか話をしたことがなく、まだ馴染みがなかった。
この中で英語が少し話せるのがカルロス。
ベロニカは、英語を話しているらしかったが、スペイン語で話してもらった方がわかりやすいくらい、頭痛を引き起こす英語だった。ドリーもマティルダも、まるっきり英語はだめだった。
ロベルトは訛っているが、英語は堪能。
ベロニカとカルロスは、休憩している私を見て、そこにへたりこんだ。
夕べ、彼らも眠れなかったのだろう。
ロベルトのいつもの電話が始まった。彼の携帯電話は、いつも鳴りっぱなしなのである。
休憩時間にまとめて連絡をとっているようだった。
トンネルの中から、賑やかな声が聞こえてきた。
ドリーとマティルダだった。
二人は小鳥のようにいつもさえずりながら歩いている。おしゃべりが止まらないのである。
それに比べて、ベロニカとカルロスは、かなり無口な人たちだった。
ドリーとマティルダの二人は、もっと先で休みたいと言って、通り過ぎて行った。
それを機に、私たちも立ち上がり、歩き始めた。
どうやら集団で、迷子になったようだ。
いや、矢印通りに進んでいるので、間違っているわけではなかったが、地図にある村へは行かない別のコースに来てしまったのだった。
ドリーとマティルダが騒ぎ出した。
「カフェ・コン・レチェ(ミルク入りコーヒー)が飲みたいよぉ!」
朝、宿を出て、一番最初の村で、コーヒーを飲むのはみんなの楽しみである。
何度も歌う。
♪カフェ・コン・レチェが飲みたいよぉ♪
今朝はいくら歩いても、barどころか、村さえないのである。
山の中で、少し開けた場所に出た。
標識がある。次の村まで4.2km。
その村の名前を地図で探すと、見当をつけていたよりもずっと先の村まで来ており、最初に通るはずの村を一つ飛ばしている形となっていた。
その標識のそばに、一軒家をみつけた。
マティルダは、
「ねぇ、あの家に頼んで、コーヒーを出してもらいましょうよ。」
その家は、カフェでもbarでもない。
山の中の一軒家である。
マティルダは、ロベルトに命令を下している。
「あの家をノックして聞いてみてちょうだい!」
スペインでも、おばさんパワーはすごい。
素直にロベルトは家に向かった。
確かにロベルトを使うのはいい手だ。彼はおねだりするのが上手そうだし。
私たちも後からついていく。
そんなお願いをしちゃっていいのだろうか!?
確かにこの道沿いの住民には、親切な人たちがたくさんいるけど、こちらは6人の集団だし。
ロベルトが戻ってきた。
家人がコーヒーを作ってくれるという。
私たちはそれを聞いて、喜んで裏庭で靴を脱ぎ、くつろぎ始めた。
待つことは気にならなかったが、なかなかコーヒーが出来た様子がなかった。
そのあいだ、私は彼らの仲間として、徐々に組み込まれつつあった。
ベロニカに、カルロスと夫婦なのか聞くと、違うと言う。
三人の女性と大人しいカルロスは、変わった組み合わせだった。
住所の交換が始まった。
私は名刺代わりのステッカーを配る。
お互いに、最初は無関心だったのに、道を歩いていくと、だんだん仲良しになってくる。
そのうち、家の入り口から、三人の女性が出てきて、丸いテーブルが運ばれてきた!
そこには人数分のコーヒーと、ケーキやクッキーが並べられている。
みんなの顔がさらにほころぶ。
突然ドアをノックされて、6人分のコーヒーを乞われても、ごく普通に応えてくれる。
さらにたっぷりの氷を入れたピッチャーも出してくれた。
この後は、みんなで一緒に歩き出した。
一つの村を通ったのち、今日の目的地であるラサマに到着したのは午後三時。
まだアルベルゲが開いていない。
今日のアルベルゲは、どうみても変な建物だ。
建物というより、これってコンテナじゃない??
先に食事に行こうということになった。
おばさんパワーは世界的なもののようで、おまけにロベルトという交渉上手が加われば、向かうところ敵なしである。
何件かbarを回って比べている。
そこに今、食事を終えたマティウスが出てきた。
交渉の結果、barで今日できるものを作ってもらうことになった。
出てきたのは、トルティーヤ・デ・パタタ(定番のポテトオムレツ)、獅子唐のフライ、ミックスサラダ。
飲み物は葡萄のジュースと大量のビール。食後はコーヒー。どれもおいしい。おばさんパワー万歳である。
アルベルゲに戻ると、ボランティアの女性が来ていたので、受付がはじまった。
外から見ると小さなコンテナも、中に入れば、それでも10個以上のベッドがあった。
冷房も効いている。去年までは、冷房がなかったのだそうだ。さぞかし暑かっただろう。
奥には不思議なシャワーやトイレがあった。
こんな変なアルベルゲは初めてだ。
この狭いアルベルゲには、地元の人が入れ替わり立ち替わりやってくる。
様子を見にきているようで、明日歩く道のアドバイスもしてくれる。
ガイドブックの通り、きっちり歩くのが好きなマティウスは、明日はビルバオまでしか歩かないという。
ビルバオまで14.6km。私はもっと先に進みたい。
四人組たちも、先に行くようだった。
ボランティアの女性は、とてもフレンドリーで親切。ビルバオからポルトガレテまでの近道を教えてくれる。
なにしろ彼女はビルバオ出身のため、土地勘があるのだ。
別の男性は、ビルバオからポルトガレテまでは、退屈な歩きだから、地下鉄に乗るといいとアドバイスしている。
とんでもない。どんな道だろうと、歩きたいのに。
その男性は、ヘスースというアルベルゲの隣人だった。
隣人と言っても、コンテナに住んでいるわけではない。
大きな庭がある大邸宅に、一人で住んでいるのである。
いつのまにか、その大邸宅で、ダンス教室をすることになっていた。
私もマティウスも呼ばれた。ボランティアの女性まで連れ去られて、彼の家に全員が集められた。
まるで博物館のような邸宅である。
居間に通され、家具を移動する。
そこにダンスをするためのスペースを作るためだ。
私は何が始まるのか、よくわからないままそこにいた。
すると、ロベルトの指揮が始まった。
ロベルトは、プロのビオ・ダンサーなのであった。
ビオ(BIO)・ダンスというのは、初めて聞いた言葉だった。
ロベルトのこと、何にもしらなかったけど、ビオ・ダンサーだったんだ!
靴を脱いで、裸足になった。
丸く輪になって、それが大きくなったり小さくなったり。
体の自然な動きに合わせて左右に波のように輪が揺れる。
今度はペアーを組んで、ひとさし指同士を合わせ、だんだん指が動き、体も一緒に動いていく。
相手は次々と変わるが、みんな優しい幸せそうな顔をしている。
まじめなマティウスも、一生懸命に踊っている。
話をしたことがなかったマティルダが、10年来の親友のように、愛情で溢れたまなざしで見つめてくる。
いくつかの動きの後、また輪になって目を閉じて・・・・・・。
このダンスは、心と体を解き放って、意識を捨てて自然に身を任せ、心まで自由になるというダンスなのだそうだ。
大会では、日本人のダンサーに会ったことがあるという。
そして、この静かなダンスが終わったあと、私たちはすっかり家族のようになっていた。
ヘスースはおいしいワインをどんどん出してくれる。
そこにロベルトに電話があり、今から友達が来て、巡礼に合流するという。
やってきたのはスラリとした美人のルルデスだった。
ルルデスはとても感じの良い女性で、すぐにみんなの中に溶け込んだ。
体を動かして、お腹がすいたので、みんなで簡単なサラダを作った。
瓶詰めのひよこ豆を使い、タマネギと獅子唐と刻んで味付け。パンとワイン。
一つの皿に手を伸ばしてサラダをつまむ。
そして、夜も更けて、コンテナの宿に帰っていった。
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