2007/03/13 - 2007/03/13
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フーテンの若さんさん
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アルゼンチン有数のリゾート地「マル・デル・プラタ」に到着したのは正午を少し過ぎた辺りだった。ここにもサーフポイントがたくさんあるという噂を聞き、その目的のためだけにわざわざメンドーサからバスで20時間もかけ、立ち寄ってみたのだった。
アルゼンチンの高速道路は比較的整備されており、ペルーやボリビアのように悪路で苦しむことは一切なかった。長距離バスのサービスも申し分なく、快適なバスの旅を過ごすことができた。しかしさすがに20時間の乗車は長くて、ずっと同じ姿勢をとっていたせいか体の節々が軋むように痛かった。さらにショボイ車内食しか食べていなかったため、胃が張り付いているのが分かるくらいお腹が減っていた。何か栄養があるものをすぐに食べなくては。バス停近くの適当なところに宿をさっさと決め、荷物を置くなり日本人が経営するという日本食レストランへ向かうことにした。
外は雲ひとつない窮天の空。照りつける真昼の太陽はまるで僕に歩くのを止めさせようと強く訴えかけているようだった。目的地のレストランは地図に記載がなく、街からかなり外れている。暑さと長距離バスの疲れもあって、僕はすぐに歩くのが面倒になってしまった。しょうがない、ローカルバスに乗ろう。いつも初めての町でトライしてみるのだが意外とこれがうまくいく。適当に行きたい方向のバスに大通りからひょいと飛び乗ってみるのだ。路線地図も路線番号もわからない。ただ、南米の場合は町の中心が広場になっていて、そこから碁盤のように四方へ区画されているので、方向さえわかれば何とか目的地近くまで辿り着けることが多かった。
はじめてのアルゼンチンもこれで行けると思いきや、
「お金はいくらだい?」と運転手に聞くと、「ノー」という答え。
「なぜだよ?」「タルヘタが必要だ。」とだけ返す無愛想な運転手。
頑として受け付けなさそうなので諦めてバスを降りる。どうやらアルゼンチンのローカルバスは現金ではなく、テレホンカードサイズのプリペイトカードが必要らしい。
数軒のティエンダをまわってみるが、どこにもタルヘタは売っていなかった。皆、口を揃えてロトの店に行けという。ロトというのは宝くじ売り場で、緑の看板に鳩のマーク目印のお店だった。ここに辿り着く前に何度も店舗を見かけたのに、いざ探すとなるとさっぱり見つからない。
やっと小さな店舗を見つけるが、店には鍵がかかっており30分後に戻りますの紙切れが置いてあった。待ちきれず次を見つけると、売り切れで置いていないという。次の道行く人に聞いては、店を探し、タルヘタの在庫を確認する。
何だか僕はロールプレイングゲームをしている感覚に陥ってきた。隠された伝説のアイテム「タルヘタ」を探す主人公の僕。町人には言葉はほとんど通じない。持ち金のゴールドは少なく、武器は素手のみ。残りの体力もあとわずか。果たして僕は伝説の勇者ロト(のお店)から「タルヘタ」を無事に譲り受けることができるのだろうか。
なんてことを妄想していたら次の店であっさり見つかってしまった。
やっと手にとったそのカードはまさにゴールド色だった。ありがたや、ありがたや。かなりのレベルアップが期待できるに違いない。
こうして日本レストランへのバスには乗れた。寿司も食った(意外と高く予算オーバーだったけど)。お腹は満たされ、体力は回復。次はお目当てのサーフィンに向かおう。
ちなみにサーフィンの板はタブラという。僕はレンタルサーファーなので「タブラは借りれますか?」と海沿いのお店にいつも聞いてまわっている。次の物語は最強の武器「タブラ」と最高の「波」を探す旅だ。先ほど手に入れた黄金の「タルヘタ」のアイテムを使い、僕はバスという伝説の乗り物を乗りこなすことができるようになった。
はずだったが、海沿いのローカルバスではタルヘタは一切使えないという。
がくっ。この中途半端なゴールドカードめ!
ローカルバスで海沿いを走り、サーフィンができそうなポイントを探す。僕の場合は、単にポイントだけでなく、レンタルできそうなお店も一緒に探さなくてはならない。これはとても難しい。波はあっても人気がなくなると、レンタルタブラが借りられないからだ。
様々なビーチをまわり、やっとこさサーフィンできそうな波とタブラが借りれそうなサーフショップを見つけた。ビーチの名前は「プラヤ・グランデ」。波はセットで腰腹程度。オンショアの風で面が潰れてしまっているが、もはや細かいコンディションは問わないでおこう。
早速、サーフショップの兄ちゃんに尋ねると、スクール用の発砲スチロール製のタブラしか今は置いてないという。
がくっ。ドラクエでいえば武器は「こんぼう」並みの最低レベル。
仕方がない。勇者には時には(いつも?)妥協は必要なのだ。スクール用のタブラのなかでも一番短いサイズのものを借りていざ海へ。
意外と遊べる波だった。初めての大西洋の波は、パワーはそれほどなく、ビーチブレイクでやさしげだ。懐かしい湘南の波を思い起こさせる。波数も多いので練習にはもってこい。問題はこのスクール用のタブラ。大きな波でテイクオフしようとするとチュルと滑ってコケテしまう。本当はもうちょっとだけうまいんだけどな。
新しくローカルのサーファーが海に入ってきた。この男、クレスポとバティを足して2で割ったようなハンサムでとにかくカッコイイ。そしてめちゃくちゃサーフィンが上手。生きた伝説とは彼のようなことを指すのではなかろうか。ビーチの美女たちも彼に釘付けだ。
僕にもあれぐらいの武器「タブラ」があれば。。。モテモテなはず?
久しぶりのサーフィンで両腕が「いやんもうやめて」というぐらいまで頑張った。アルゼンチンでちょっとだけ経験値を積めたかな。
アイテム頼らずに、僕が伝説の勇者となれる日はまだまだ先の話だろう(というか成れるのか?)。
とりあえずレベルアップの音を自分で奏でておこう。
ググゥグググググゥウウーーーーーー。
あれれ、「ハラヘッタ」の呪文がお腹から聞こえてきたよ。まずは腹ごしらえが必要だ。
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