一時的に独立していたスルプスカ共和国-10億ディナール札にこめられた独立への思い

2003/12 - 2003/12

　世の中には国連が独立を認めていないまでも、独立を一方的に宣言している国も少なくない。北キプロスが世界的に知られているが、旧ソ連地域ではモルドバとウクライナ国境沿いに位置する沿ドニエストル共和国、カフカス地域のナゴルノ・カラバフ、アブハジア、南オセチアがその典型で、独自通貨を発行し、事実上国家として運営されているものもある。

　この他に独立を宣言したものの、最終的にこの独立を宗主国によりひねり潰された国もある。チェチェン共和国がその例であろう。こうした自称独立国は1995年までバルカン半島にも存在していた。クロアチアのセルビア人が多く居住する東西スラボニア、クライナ地方は｢クライナ・セルビア人共和国｣として首都はクニンに、ボスニア・ヘルツェゴビナのセルビア人地域は｢セルビア人共和国」として都をパレに置き独立を宣言し、独自紙幣も発行していた。またボスニア・ヘルツェゴヴィナのクロアチア人の多く居住するヘルツェゴヴィナ地方もフルヴァティ・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ共和国として独立をしていた時期もある。

　クライナ・セルビア人共和国はクロアチア軍により首都クニンが陥落して崩壊、そしてセルビア人共和国は95年ディトン和平合意でボスニア・ヘルツェゴヴィナの連邦を構成する一共和国として留まる事となった。現在セルビア人共和国は日本の外務省は旧ユーゴの中心共和国でもあるセルビア共和国と区別するため、現地呼称｢スルプスカ共和国｣をそのまま採用している。スルプスカ共和国は現在首都もパレから西部のバニャ・ルカに置かれ、通貨もボスニアの通貨を使用している。しかしボスニアへスルプスカ共和国から入国すると入国スタンプはスルプスカの公用文字でもあるキリル文字が先ずあしらわれ、その下にアルファベットで表記されている。

エリア その他の都市(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 鉄道 高速・路線バス 船 タクシー ヒッチハイク
• 航空会社: マレーシア航空

バスでスルプスカ共和国内を移動中、峠から村を撮影。写真では雪は見えませんが、ベオグラードから雪深い峠を越えた際、バスはスリップし、ガードレールに当たり、このまま突き破って落ちやしないかと、この時ばかりは死ぬかと思いました。

当時｢セルビア人共和国｣と呼ばれた国の発行した紙幣、10億ディナール札。首都はパレに置かれていましたが、紙幣は現在の都でもあるバニャ・ルカで発行されています。戦争で経済が疲弊しているため、ハイパーインフレを引き起こし、10億ディナールで100円強の価値しかなかったこともありました。