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20時20分。出発時間を20分過ぎてもラ・パス行きのバスは発車しない。<br /><br /> 一人の西洋人女性がバス会社の社員とずっと言い合っていた。理由はよくわからないが、席のことで何か揉めているようだった。早く出発しないかなぁとぼんやり考えていると徐にその西洋人が僕の席のところに来て「ここは私の席」と突然言い出した。<br /><br /> はい?そんなことはない。僕の持っているチケットにはこの席の番号がちゃんと書いてある。慌てて抗議すると、遅れてバス会社の社員がやって来て「あなたはあっちの席へ移って」と奥の席を案内された。<br /><br /> 「おかしい、納得できない。何かあるぞ。」<br /><br /> しかし僕が移動しなければバスは何時までも発車しそうにない雰囲気。仕方なく諦めて奥の席へ移った。<br /><br /> 奥の席の隣はインディヘナの格好をした太ったお婆ちゃん。座ってすぐに理由がわかった。<br /><br /><br />と・に・か・く 臭いのだ。<br /><br /><br /> 懐かしい臭い。例えるならそう、JR天王寺駅と新今宮駅のホームを降り立つとプーンと漂うあの甘酸っぱくすぃーとした臭い。小学校の夏休み、炎天下の中でエロ本を探しに堤防へ行った帰りに興味本位で浮浪者のダンボールハウスを覗いたときのあの湿った臭い。<br /><br /> その数倍の強烈な悪臭を隣のお婆さんは無意識に放っているのだ。あの西洋人女性は耐え切れず席を替えるよう抗議をしていた。埒があかないとみるや、人の良さそうな日本人の僕をターゲットにして騙したに違いない。あー、まんまと嵌められた。<br /><br /> 僕は悪臭が漂うバスには慣れていたはずだった。グアテマラやメキシコではトイレが詰まって臭いが漏れてくるバスに数時間も乗っていたし、コスタリカでは隣の少年がゲロを僕のカバンに吐いたまま、満員で拭くことも出来ず乗っていたこともある。しかし、今回は過去の臭いの比ではない。最強・最凶・最暴・夜呂死苦クラスの悪臭!<br /><br /> もともとボリビアやペルーのインディヘナの習慣ではほとんどシャワーを浴びないらしい。ウユニという田舎町ではなおさらそうだろう。さらに最近ウユニの町中がずっと断水しているらしかった。このお婆ちゃん、臭いから判断すると1週間や1ヶ月風呂に入っていないレベルではない。おそらく3ヶ月以上は水に漬かってすらいないに違いない。<br /><br /><br />僕はこれから12時間もこのお婆ちゃんの隣で耐え切ることができるのだろうか。<br /><br /><br /> まず息ができない。鼻を閉じても臭って来る。例えるならそう、アンモニアとアルモニアとアルメニアを併合して、ホルマリンでケミストリした上にネスミスを足したような臭い。<br /><br /> しばらくするとお婆ちゃんはもぞもぞと足元を探すように動き始めた。「臭いが飛び散るので動かないで!」と僕は心のなかで叫ぶ。どうやら足元に荷物を落としてしまったらしい。バスの隙間は狭く、お婆ちゃんは太っているので手が届かない。やむなく僕に「取ってくれ」とお願いしてきた。<br /><br /> まるでヘドロで汚染された川のなかをダイブする気持ち。息を止めてお婆ちゃんの下半身の足元へ潜り込む。な、な、なんだぁ!この臭い!!恐怖の未体験ゾーン!!!例えるならそう、クサヤと腐った牛乳と納豆と塩辛とラッキョウと鮒味噌とドリアンとドリアン助川の腋臭をミキサーにかけたような臭い。<br /><br /> もし彦麻呂が強度の臭いフェチならば「あ〜ん、お鼻のなかが宝石箱や〜ん♪」と賛辞するだろう。しかし僕は臭いについては至ってノーマル。臭いで鼻がひん曲がるのだ。七曲署並みに。鈴鹿の高速シケイン並みに。<br /><br /> とてもじゃないが30分で我慢の限界に達した。もうダメだ、酸素が足りない。金魚すくいの金魚のようにパクパク酸欠状態。ダイバーのように酸素切れのサインを出してみるがバディは誰もいない。深海から海上を見上げるように天を仰ぐと、なんと天井に通気窓があるではないか!<br /><br /> すぐに立ち上がり、勢いよく通気窓を開ける。すると新鮮な空気が目に見えるように入ってきた。すーすー、はぁーはぁー、すーはぁーはぁー。由美かおる式呼吸法で何とか落ち着きを取り戻す。これで幾分かマシになった。神様ありがとう。<br /><br /> しかし、これからバスは舗装されていない悪路に突入した。<br /><br /> 震度4レベルの立て揺れが始まった。壊れてしまった鼻腔に三半規管もダメージ、ダメージ。ぽつ。何だか冷たいものが垂れてきた。天井の通気窓からの雨漏り?違う。お婆ちゃんの真上の棚からペットボトルの水がこぼれて来ているんだ!お婆ちゃん、ちゃんと蓋を絞めないとダメでしょう。しかもこれ、水じゃないやん。得体の知れないジュースやん!<br /><br /> 真っ暗闇で激しく揺れ動く車内のなか、今度は暴れるぺットボトルとの格闘が始まった。なかなかボトルが掴めない、蓋さえ見当たらない。結局、そのほとんどは飛び散って真下にいた僕とお婆ちゃんにかかってしまった。臭いわ、揺れるわ、濡れるわの三重苦の最悪のバス移動。<br /><br /> こんなお婆ちゃんをボリビアの首都ラ・パスに運んで大丈夫なのかしらん。もしかしてお婆ちゃんは軍が秘密裏に開発した臭いの最終兵器なのではなかろうか。(最終兵器彼女?)<br /><br />そんなしょーもないことを延々考えながら一睡もできず夜が明ける。<br /><br /> 次の日の8時30分。ラ・パスでのバスターミナルに到着した僕は憔悴しきっていた。お婆ちゃんは何事もなかったかのように重い身体を引きずって降りていく。お婆ちゃん、頼むから月に一度は水浴びしてください。あなたのお陰でどれだけ世界が迷惑しているか、そして一人の男の人生を流転させたのか、よーくわかって欲しい。そうお婆ちゃんの背中に語りかけた僕の足取りは限りなく重かった。<br /><br /><br /> そして何より僕自身もちょっと臭くなっていた。臭いが移ったのだろうか。例えるならそう・・・

最臭バス@ウユニ→ラ・パス

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2007/02/24 - 2007/02/24

570位(同エリア638件中)

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フーテンの若さん

フーテンの若さんさん

20時20分。出発時間を20分過ぎてもラ・パス行きのバスは発車しない。

 一人の西洋人女性がバス会社の社員とずっと言い合っていた。理由はよくわからないが、席のことで何か揉めているようだった。早く出発しないかなぁとぼんやり考えていると徐にその西洋人が僕の席のところに来て「ここは私の席」と突然言い出した。

 はい?そんなことはない。僕の持っているチケットにはこの席の番号がちゃんと書いてある。慌てて抗議すると、遅れてバス会社の社員がやって来て「あなたはあっちの席へ移って」と奥の席を案内された。

 「おかしい、納得できない。何かあるぞ。」

 しかし僕が移動しなければバスは何時までも発車しそうにない雰囲気。仕方なく諦めて奥の席へ移った。

 奥の席の隣はインディヘナの格好をした太ったお婆ちゃん。座ってすぐに理由がわかった。


と・に・か・く 臭いのだ。


 懐かしい臭い。例えるならそう、JR天王寺駅と新今宮駅のホームを降り立つとプーンと漂うあの甘酸っぱくすぃーとした臭い。小学校の夏休み、炎天下の中でエロ本を探しに堤防へ行った帰りに興味本位で浮浪者のダンボールハウスを覗いたときのあの湿った臭い。

 その数倍の強烈な悪臭を隣のお婆さんは無意識に放っているのだ。あの西洋人女性は耐え切れず席を替えるよう抗議をしていた。埒があかないとみるや、人の良さそうな日本人の僕をターゲットにして騙したに違いない。あー、まんまと嵌められた。

 僕は悪臭が漂うバスには慣れていたはずだった。グアテマラやメキシコではトイレが詰まって臭いが漏れてくるバスに数時間も乗っていたし、コスタリカでは隣の少年がゲロを僕のカバンに吐いたまま、満員で拭くことも出来ず乗っていたこともある。しかし、今回は過去の臭いの比ではない。最強・最凶・最暴・夜呂死苦クラスの悪臭!

 もともとボリビアやペルーのインディヘナの習慣ではほとんどシャワーを浴びないらしい。ウユニという田舎町ではなおさらそうだろう。さらに最近ウユニの町中がずっと断水しているらしかった。このお婆ちゃん、臭いから判断すると1週間や1ヶ月風呂に入っていないレベルではない。おそらく3ヶ月以上は水に漬かってすらいないに違いない。


僕はこれから12時間もこのお婆ちゃんの隣で耐え切ることができるのだろうか。


 まず息ができない。鼻を閉じても臭って来る。例えるならそう、アンモニアとアルモニアとアルメニアを併合して、ホルマリンでケミストリした上にネスミスを足したような臭い。

 しばらくするとお婆ちゃんはもぞもぞと足元を探すように動き始めた。「臭いが飛び散るので動かないで!」と僕は心のなかで叫ぶ。どうやら足元に荷物を落としてしまったらしい。バスの隙間は狭く、お婆ちゃんは太っているので手が届かない。やむなく僕に「取ってくれ」とお願いしてきた。

 まるでヘドロで汚染された川のなかをダイブする気持ち。息を止めてお婆ちゃんの下半身の足元へ潜り込む。な、な、なんだぁ!この臭い!!恐怖の未体験ゾーン!!!例えるならそう、クサヤと腐った牛乳と納豆と塩辛とラッキョウと鮒味噌とドリアンとドリアン助川の腋臭をミキサーにかけたような臭い。

 もし彦麻呂が強度の臭いフェチならば「あ〜ん、お鼻のなかが宝石箱や〜ん♪」と賛辞するだろう。しかし僕は臭いについては至ってノーマル。臭いで鼻がひん曲がるのだ。七曲署並みに。鈴鹿の高速シケイン並みに。

 とてもじゃないが30分で我慢の限界に達した。もうダメだ、酸素が足りない。金魚すくいの金魚のようにパクパク酸欠状態。ダイバーのように酸素切れのサインを出してみるがバディは誰もいない。深海から海上を見上げるように天を仰ぐと、なんと天井に通気窓があるではないか!

 すぐに立ち上がり、勢いよく通気窓を開ける。すると新鮮な空気が目に見えるように入ってきた。すーすー、はぁーはぁー、すーはぁーはぁー。由美かおる式呼吸法で何とか落ち着きを取り戻す。これで幾分かマシになった。神様ありがとう。

 しかし、これからバスは舗装されていない悪路に突入した。

 震度4レベルの立て揺れが始まった。壊れてしまった鼻腔に三半規管もダメージ、ダメージ。ぽつ。何だか冷たいものが垂れてきた。天井の通気窓からの雨漏り?違う。お婆ちゃんの真上の棚からペットボトルの水がこぼれて来ているんだ!お婆ちゃん、ちゃんと蓋を絞めないとダメでしょう。しかもこれ、水じゃないやん。得体の知れないジュースやん!

 真っ暗闇で激しく揺れ動く車内のなか、今度は暴れるぺットボトルとの格闘が始まった。なかなかボトルが掴めない、蓋さえ見当たらない。結局、そのほとんどは飛び散って真下にいた僕とお婆ちゃんにかかってしまった。臭いわ、揺れるわ、濡れるわの三重苦の最悪のバス移動。

 こんなお婆ちゃんをボリビアの首都ラ・パスに運んで大丈夫なのかしらん。もしかしてお婆ちゃんは軍が秘密裏に開発した臭いの最終兵器なのではなかろうか。(最終兵器彼女?)

そんなしょーもないことを延々考えながら一睡もできず夜が明ける。

 次の日の8時30分。ラ・パスでのバスターミナルに到着した僕は憔悴しきっていた。お婆ちゃんは何事もなかったかのように重い身体を引きずって降りていく。お婆ちゃん、頼むから月に一度は水浴びしてください。あなたのお陰でどれだけ世界が迷惑しているか、そして一人の男の人生を流転させたのか、よーくわかって欲しい。そうお婆ちゃんの背中に語りかけた僕の足取りは限りなく重かった。


 そして何より僕自身もちょっと臭くなっていた。臭いが移ったのだろうか。例えるならそう・・・

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この旅行記へのコメント (2)

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  • endさん 2007/03/29 18:25:40
    お疲れ様でした
    本当に辛かったのでしょうが、軽快な文章がそんなこと感じさせないのがすごい。とても楽しく読ませていただきました。
    私は匂いに弱い人間なので、実際にそんな場面に立ち会ったら……。
    想像しただけで気絶しそうです(笑)。

    フーテンの若さん

    フーテンの若さんさん からの返信 2007/03/31 03:06:35
    本当に臭かったんですよ!
    endさん

    書き込みありがとうございます!!未だに臭いを思い出すぐらい記憶に残る臭いでした。今となってもいい思い出ではありません。でも旅の記憶としてはよかったのかなと。

    endさんも臭い攻撃には気をつけてくださいね!!

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