「あいのり」と「ＡＶ女優」＠ウユニ

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テレビ番組「あいのり」で一躍有名になったボリビア一の観光名所ウユニ塩湖。

　僕はその塩湖の真ん中にある、塩でできたホテル「プラヤ・ブランカ」に一人泊まっている。

　ホテルへは塩湖を四里駆動で突っ切って行かなければならないので、自力では不可能。なのでウユニの町から一泊ツアーで申し込んだ。

　ホテルに着いてからは何もすることがないと聞いていたので、一冊の本を持ち込んだ（ホテルには電気も水もシャワーもない）。

　その文庫本のタイトルはズバリ「ＡＶ女優」。ＡＶ女優の生い立ち、ビデオに出るまでの成り立ちをインタビュー形式でまとめたドキュメンタリー本だ。

　ラ・パスの日本人宿の本棚でたまたま見つけたので借りてきた。この本をボリビアまで持ち込んだ人もすごいが、ウユニまで持ち込んだ僕もどうかと思う（他にろくな本が置いてなかった。それと昔、お世話になったＡＶ女優の名前があったものでつい・・・）。

　ホテルに着いて、しばらく塩湖に沈む夕日鑑賞を楽しんだ後、やはり他にやることはない。本日の宿泊者は日本人カップル、韓国人カップル、そしてアルゼンチン人カップル、と僕の７名。独り者は僕だけだった。

　話し相手もいないので、部屋で持ち込んだ「ＡＶ女優」を開いてみる。

　「A子ちゃんは、小さい頃、親の虐待を受け、学校でもいじめられ、誰にも認められていないと思ってた。そこで街でAVのスカウトに会う。そこで初めて自分が世間に認められると思ったから、ＡＶ女優になる決意をした」と。

　外からは夕日を写真におさめようとイチャつくカップルの声が聞こえてきた。対照的にベットで孤独に「ＡＶ女優」を読んでいる僕。　

　・・・って、こんなロマンチックな場所で一人読めるか！ぼけぇ〜こんな本！！隣のベットに本を投げ捨て、ベットの上で暴れてみる。

　ボリビア国境で知り合い、電撃的に恋に落ちたはずの韓国人シンネちゃんとはウユニの町で別れてしまった。僕は１泊で戻るツアーに申し込み、彼女はチリへ抜ける３泊ツアーに行ってしまった。

　今、思えばどうしてあのとき「一緒に『あいのり』しようよ！僕もチリに行くよ」と言えなかったのか。少し後悔、いや今になって大きく後悔。またしても自分の我がままを通して失敗してしまった。

　夕食で日本人カップルと話をする。彼らはペルーのクスコで知り合って意気投合して一緒にチリまで「あいのり」して行くことになったという。それを聞いてさらに後悔。輝くばかりの白の世界の感動を一人ではなく、シンネちゃんと共有してみたかった。

　夕食を終え、外に出てみる。三日月の明かりが反射してぼんやり輝く湖面、こぼれ落ちんばかりの星空と一際目立つオリオン座。シンネちゃんも違う場所で同じ光景を見ているのだろうか。また何処かで会えますように。ゆっくりと沈み行く月に祈ってみる。

　部屋に戻って床につく。しばらくすると、隣から韓国人カップルのイチャイチャ声が聞こえてきた（壁も塩で出来てているため薄く、丸聞こえなのだ）。

　眠れない、かといって「ＡＶ女優」の続きを読む気にもなれない。無理に寝ようとすると、昔見たアダルトビデオが瞑んだ目に浮かんできた。

　塩のホテルでのロマンティックな一夜はこうして更けていく。

　あーあぁ、できれば「ＡＶ女優」と一緒に「あいのり」旅したいなぁ（混在してまた間違った方向にいっている？そういえば「あいのり」に出演して「ＡＶ女優」に転進した女性いましたよね？）。この悶悶とした気持ちはどこにぶつければよいのだろう。