2006/09/29 - 2006/09/29
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フーテンの若さんさん
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またココアビーチに戻ってきた。フロリダの色んなビーチを訪れたが、小じんまりして観光地化されていないこの地が一番性に合う。
モーテル近くにビーチはあるのだが、確認したところ波がしょぼい。そこで、いい波を求めて南へポイントを探すことにした。ひとえにココアビートと言っても、数十kmもビーチが連なるので車で移動する。南下すること約15分。サーファーが集まるポイントがはたしてあった。問題の電子キーは車のガソリン口に隠すことにした。マイアミやニューヨークと違ってここは悪い人はいないはず。迷ったが、いい波に乗りたい気持ちが強いと行動も大胆になる。とりあえずボードを抱え、目の前の波に飛び乗った。
この日の波はセット肩以上。僕が以前入っていたポイントがしょぼかっただけで、やはりココアビーチの波はパワーがある。分厚くなかなか割れないが、日本にはない力強さを持っている。
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僕がサーフィンを始めたのは32歳の9月。つまり、ちょうど2年経った。何事も長続きしない僕がこれほど一所懸命に取り組むことは珍しい。正直、こんなにハマるとは思ってもみなかった。僕が感じるサーフィンの楽しさは、自然の波と真正面に向き合えることだ。
僕は過保護に育てられたせいか、世の中を少し甘くみていた。何をするにしても全力を出さず、手を抜いてしまう。受験、就職活動、会社に入ってからの仕事。ほんのちょっと口が達者なせいか、苦しくなったらうまくアラートを出して難を逃れていた。自分が力を出しきる前に、誰かが助けてくれる。親、友人、同僚、先輩、上司。社会ってちょろいじゃん。そんな甘さが、僕の中にいつの間にか存在するようになり、自分の力を出し切ろうと思うことすらしなくなった。無理しなくていいやん、しんどいだけやん。周りから見たら少し冷めて見えたのかもしれないが、気持ちの中でいつもリスクヘッジしていたように思う。
さて、サーフィンはどうだろう?高波が来て、波におぼれても誰も助けてくれない。波に乗るには自分の力を最大限出し切ってパドルしなければ置いていかれてしまう。波という自然と対峙したとき、僕が今まで助けてもらっていた甘えなどまったく通用しない。信じられるのは自分だけ。波を見極め、周りを見て、自力で移動し、乗りこなす。中途半端な気持ちでやれば、命取りになりかねない危険なスポーツ。波乗り中は自然と表情が真剣になる。同じ波は二度とこない。だからパドルするときは、全力で摑みに行く。大げさかもしれないが、その一瞬に全てを懸ける。波に乗れたときは、達成感で一頻り嬉しい。だが、乗れなかったときは自分の不甲斐なさを心底祟る。
波と対話すればするほど、自分がいかにちっぽけな存在かを心底思い知らされる。海の中には何も持ち込めない。肩書き、学歴、年齢、性別、人種、容姿。一枚の板と裸の自分があるだけで、目の前に来る波と真正面から向き合う。波と向き合うということは、実は自分自身との向き合いなのだ。それがわかってから、僕はサーフィンに一層ハマリだした。
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この日の僕は、まったく波に乗れなかった。波待ちしていたポイントが悪かったし、腕も疲れていた。分厚く割れない波に置いて行かれる。めちゃめちゃくやしいので、セットの波を逃す度に、海上で「チクショウーーー」と日本語で吼えていた。かといって、波は答えてくれるわけはない。僕のためにやさしい波は来ないし、手取り足取り教えてくれるわけでもない。だからこそ楽しいのだ、サーフィンは。波と対話をするということは飽きることがない。「明日は絶対乗ってやるからな!」夕焼けに染まる波に、自分に言い聞かせるように、大声で叫んでやった。
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