奥秩父の山々を訪ねて

2005/10/23 - 2005/10/23

朝7時に家を出る。目的地は塩山の先。今年は紅葉が遅れているらしいが、近場で綺麗な紅葉を見ようというつもりで家を出る。ここ数日は急に冷え込んではきたが、夏物と冬物を入れ替えたのも10月になってからなので、こういう年は赤く色付くのも遅いようだ。
日曜日なので道路は結構混んでいる。東富士有料道路も遅い車がいたが、谷村のＰＡについたのはいつもより10分くらい遅いだけで済んだ。中央高速本線も渋滞するほどの混雑ではなく笹子トンネルを抜け勝沼で降りる。ここから林道の入り口まではカーナビが頼り。一応インターネットで行く先の案内は手に入れてきたが、細かい道は現地でないと分からない。昔来たことのある恵林寺までは順調。その先からクリスタルラインへ入るのだがその道が分からない。途中、道端にリンゴを売っている無人の売店があったので買う。しばらく行くと結構広い舗装された道に出る。まさかこれが林道？と思うがカーナビは間違いなくその道を示している。途中の集落を抜けるとようやく道幅は狭くなるが舗装は続いている。この道は信州信濃川上に出る道だ。昔、緑色のサニーに乗っていた頃、この道を抜けて廻り目平でキャンプしたことがある。あの時は河原なみの悪路で、よくサニーのお腹をぶつけずに通ったものだと思う。そこへ行くと今日は、この年になってようやく買えたランドクルーザーに乗ってきたというのに悪路はなくなってしまっている。それどころか、僕の前を走っている車はスポーツカーだ。なんだかガッカリしてしまう。
焼山峠を左に入っていくのがクリスタラインだ。だいたいクリスタルラインなんて名前も後から付けたもので、昔は林道金山線とか林道焼山線とか言っていた林道を繋げたものだ。でも、ここを左に入って行く車は少ない。ここからは1車線の道。やがて草原のような開けたところに出ると乙女高原で、ここにはヒュッテも建っている。夏だけの営業らしく閉まってはいたが、トイレは使えてバイオトイレだった。目的としていた紅葉もここまで来ると赤も黄色もあるので、ここに車を停めて歩き出す。道路を挟んでヒュッテの向かい側が草原になっているので、そこを歩く。その草原の中に柵が張られ、それ以外のところが荒らされないようにしている。でも、その柵の通路は１筋ではなく、いくつかの通路がある。通路の脇には薄紫の花が咲いている。通路は頂上の方に伸びていて、頂上付近の方が白樺があって綺麗だ。今日は幸い天気が良いので青空に白樺の白さが映える。文子を何枚か写真に撮ったりしながら頂上に行くと、白樺林の向こう側が開けていて、そこから富士山が見える。ススキと富士山の構図だった。写真を撮っているうちに下からおじさんが一人で登ってきて、ここがスキー場だったことなどを話してくれる。
リフトもなく、下の集落から板を抱えて40分掛けて登ったそうだ。今でも11月にこの草原の草刈りをやっているそうで、全国から200人くらいが集まるそうだ。そうしているから、この草原の景色が保たれているのだそうだ。この開けたところのちょっと上に三角点がある、というので行ってみる。その先にブナの大木もある、と言っていたが、三角点から先は大きく下っているし僕たちはハイキングの格好もしていないので、そこから先へ行くのは止めた。
車に戻ってその先を目指す。この乙女高原だって、僕が林道を走るのに夢中だった30年も昔からその名前はあった。でも車が乗用車では入れないような悪路だったので来れなかったのに、今は山のことも林道走行のことも知らない人が平気で入ってきている。30年間も憧れていてやっと来ることができた僕などには、何かプレミアムを付けて貰いたいくらいだ。この乙女高原を抜ける道を荒川林道というが、それを進むと昇仙峡から登ってくる野猿谷林道とぶつかる。そこを右手に入っていくと池の平林道と言い、木賊峠を越える。これを「トクサ峠」と読める人は何人くらいいるだろうか。この木賊峠の辺りからは向い側の山の紅葉が良く見えたが、山の向きが変わったことで風も強くなり上着を着ないと寒いくらいだった。この道を更に下ると、その先で増富鉱泉へ行く道とぶつかる。ここにちょっとした広場がありクリスタルラインの説明が書かれている。左手の道を行けば増富だが右手に行けば瑞牆山へ通じる本谷釜瀬林道になる。
この道は博も三恵子も小さかった頃、緑色のサニーにテントを積んで間違いなく走っている。あの頃は舗装もなく、土の路面と石ころが交互にあり、周りは見渡す限りの森林でどこでテントを張っても誰からも何の文句も出なかったし、だいたい、オートキャンプなんてやる人もいなかった。昭和56年頃の話だから、僕は間違いなくオートキャンプを早期からやっていた一人だと思う。ここへ来た時はもう晩秋で、夏用テントとシュラフだけでは寒くてたまらず、とうとう車の中に避難して暖房を炊いていたことを覚えている。
その時以来、久しぶりにこの林道を通ってみれば昔のそんな面影はどこにもない。瑞牆山荘の周辺は大きく開けて金峰山と瑞牆山が良く見える。さらにその先へ行くとキャンプ場がある。このキャンプ場に車を乗り入れると誰もいないキャンプ場なのに紅葉が勿体無いくらい綺麗だった。林道は気が付かないうちに頂上を越え、道が下りになると天使園がある。天使園は、さっきの30年前のことよりももっと古く、高校時代に久保田と二人で瑞牆山へ登った時にテクテクと歩いて通った時からある孤児院だ。今は名前こそ天使園として残っているが孤児はいないようだった。その先へ行くと黒森というところで、ここもテクテクと歩くしかなかった部落だ。今はここには蕎麦屋などができている。ここを右折すると信州峠を越えて信濃川上へ行く県道になってしまう。どこかでお昼を食べたいので、少し引き返す。天使園まで戻る途中に左手へ工事中のため通行止めという標識の出ている道がある。お昼はバーベキューにするので火が焚ける場所ならどこでも良い、と思って行ってみると小さな流れの脇に広場があって道路からも近い。そこでお昼にすることにして道具を出す。テーブル2脚と小さなコンロ。それに着火剤と炭があればすぐ焼ける。
クーラーに入れて持ってきたのはサザエとホタテとカニ、タコ。それにシシャモの干物と定番の肉。文子が頼んでおいた通販の海産物が届いたので持ってきたのだ。サザエを焼いている間にカニとタコとホタテを刺身で食べる。ビールも缶ビールを飲みきれないほど持ってきた。ホタテは焼いた方が甘みがあった。カニも焼いた方が身が取り易い。サザエは焼けると良い匂いがする。サザエのフタを外して丸かじり。これだけ食べれば千葉で食べた浜焼きよりも豪華だ。でも、こういう中で食べると食欲も増す。最後はやっぱり肉を焼いて食べる。付け合せは玉ねぎ、ピーマン、おくら。肉は直ぐに焼けてサザエとは違った美味しさがある。
食事をしたこの場所は川に近い広場だが、周りに椎の木が沢山ある。食べている途中でもドングリが上から落ちてきた。椎の木は黄色く染まる。赤い色は漆やナナカマドだが、この辺にはそう多くない。それでも落ち葉に埋もれる地面は秋をいっぱい感じさせた。
食事を終わってみれば、もう3時。火の始末をして車を出す。信州峠まで行ってみる。いくらも走らないうちに峠の頂上を越えるが、昔あった「信州峠」という看板もなくなってしまったし情緒が失われてしまった。信州峠を越えると長野県信濃川上村で高原野菜畑が広がる。ここの風景だけは昔と変わっていなかった。この道を更に進むと野辺山から清里へ出るが混んでると思われたので、来た道を引き返す。黒森から天使園の方に曲がらなければ韮崎の方に下ることができる。ビールを飲んだせいもあり、韮崎へ下る途中で眠くなる。ちょうどダムがあってガラ空きの駐車場があったので、そこで少し寝る。いつものとおり車を止めたら直ぐに眠っていた。文子はダム湖や展示館なんかを見に行ったらしい。目を覚まして周りをちょっと見ると綺麗な花が咲いている。これを写真に撮って出発。ここから韮崎インターまではいくらもなかったが、国道141号に出たところは渋滞していた。韮崎インターから中央高速に乗ると小仏トンネルから渋滞19?と出ている。このあたりは混んではいるが渋滞はしていない。途中の一宮御坂インターで降りる。文子が前から行きたがっているほったらかし温泉へ立ち寄ろうと言うのだ。カーナビはフルーツ公園への道を示している。秋の夕陽は沈むのが釣瓶落とし。インターを降りた時には温泉から沈む夕陽が見れるかと思っていたが、フルーツ公園に到着する前に陽が沈んでしまった。温泉へは公園の中の道を行く。公園を抜けるとホテルがあり、ここも車が一杯だった。その先にぽんぽこの湯があり、ほったらかし温泉は山の一番頂上だ。駐車場は車で一杯。日曜のこの時間では仕方ないか。温泉はあっちの湯とこっちの湯に別れていて、それぞれ別料金。見晴らしの良さそうなあっちの湯に入る。中も目一杯混んでいて芋洗い状態。脱衣所はロッカーが有料だったがお金がなかったので、無用心だが無料のカゴを探す。外の景色は下界が一望の下で確かに綺麗だが、入場制限をしたいくらいの混雑では温泉という感じがしない。お湯もぬるい湯なので一旦入った人が皆長湯をしているから余計混むのだ。お湯に浸かって下界の夜景を楽しんだら直ぐに上がる。下界に戻って夕食を探す。フルーツ公園を降りてインターに向かう途中にスカイラークがあったのでそこにする。文子はキノコのハンバーク。僕はハンバークと海老フライのセットだった。ここを出たのはもう7時。再び中央高速に乗ると、渋滞が伸びている。今度は小仏トンネルから32?になっている。もしかしたら大月の分岐まで繋がっているかもしれない、と思いながら笹子トンネルを越えたが幸いに河口湖方面には順調に流れていた。

帰りの車の中で文子が言っていたけど、日帰りだったのに何だかとっても充実した１日だった。瑞牆山や金峰山は昔のイメージと違ってしまったが、車で行けるのは便利でもある。でも上高地も立山も、この頃は乗鞍岳もマイカー侵入禁止になった。このあたりの山々も自然保護の方が優先されるのも近いことだろう。

エリア 山梨

• 同行者: カップル・夫婦
• 交通手段: 自家用車

乙女高原からロッジを見下ろす

乙女高原から見る富士山

乙女高原の白樺林と青空

青空に映える紅葉

瑞牆山遠望