1999/01 - 1999/01
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buchijoyceさん
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雨が降っている。エジプトへ来てはじめての雨だ。
7時半過ぎには駅に着き、チケット買い、列車が入ってくるのを待っている。運賃は一人一等30ポンド。公共料金は実に安い。生活も二重価格(生活必需品は安く、それ以外のものは高い)になっているのに違いない。いつもは安いホテルに泊まるので、店先でいろんなものを買い込むので、値段がわかるのだが、一流ホテルだとなんでもあるので、そういう意味では疎くなる。
列車は新しくきれい。テーブルも座席についている。時間通り、いや、8時1分前に出発した。私の時計が一分狂っているのだろうか。
雨に打たれてデルタの緑は生き生きしている。そう言えば、ギリシャに行ったとき、雨期は1月だと言っていたのを思い出す。ここは地中海性気候なのだろう。車窓からあちこちに円錐形の鳩小屋が見える。ここでは鳩は食材である。
ビニール栽培も見える。何を栽培しているのだろう。メロンか、イチゴか。それにしてはここが原産のモロヘイヤにはお目にかからなかった。近所でも作っているから、どんなものかは知ってはいるが。野菜も国境がなくなり、原産地を知ってびっくりするようなことがずいぶんある。ゴマもベニバナも、中国だと思っていたら原産はここアフリカ。トマト、ジャガイモは原産はアンデス。イタリア料理にトマトなしなんて想像も出来ない。
マルチン・ルターがジャガイモを食べたことがないと知って、どんなに驚いたことか。キムチには欠かせない唐辛子、あれを朝鮮に持ち込んだのは、侵略で悪名高い秀吉なのだ。結局人間は自分たちの知恵と努力で改良を重ね、自分たちのものにしてきたのだなぁ。
煙突が見える。空き地に立ったその煙突の下は煉瓦造りの焼却炉だ。煙突の数も半端じゃない。数えただけでもゆうに30は越える。何を燃やすのだろう。夫はゴミの焼却炉という。可能性はある。しかし、ゴミの焼却だとしたら、デルタ地帯で焼却することは問題だ。カイロ周辺の湿地帯にゴミや産廃が捨てられていた。どこも同じでプラスチックがかなり多かった。あんな炉でゴミ燃やしたら、ダイオキシンは必ず発生する。
アレキサンドリアはアレキサンダー大王によってつくられた、エジプト第二の都市。ここのタクシーは黄色と黒に塗られている。「どこに泊まろうか」「ルネッサンスに当たってみよう」タクシーに乗り「ホテル ルネッサンス」と言うと、メルキュールへ連れていった。メルキュールでも良いけど、この時期ビジネスホテルは混んでる。やっぱりルネッサンスにしようと、行って貰う。案の定空いている。
窓の外はすぐ地中海のエメラルドグリーンの海が、白いさざ波を連れて幾重にも押し寄せている。荷物を置いて、地図を開くが市街地までは距離がありそうだ。フロントに行くとホテル専属の車を呼んでくれた。4時間、100ポンド。「彼は英語が良くできないけれど」とフロントが心配そう。「私たちの英語も大したことがないからいいよ」と行って出たが、なるほど運転手のオマールさんの英語はすごい。
海岸通はリヴィエラのように高層建築の壁。しかし、どこもからっぽ。こわれているものもある。「アレキサンドリヤ サマール(夏)メニーピープル、メニーカー」
なるほど、今は冬だから空きやなんだ。そういえば、ホテルと書いてある入り口も閉まっているところが多い。
「ここはダウンタウン」でも、店は閉まっているし、人は殆ど出ていない。「そうか、今日はホリデイだ」と言うと、オマールさんが相づちを打つ。
町中、響き渡るようにスピーカーからお祈りが流されている。その口調はまるでアジ演説のようだ。毎週これを繰り返されていたら、体に染みついてしまうのだろう。政治と宗教が一体であることは一歩間違うと恐いことになる。
先ずはこじんまりした円形劇場跡。一度こういう円形劇場でギリシャ悲劇を見てみたいと思っているがまだ実現していない。学生の頃ギリシャ悲劇はずいぶん読んだ。そのころ、東大のギリシャ悲劇研究会が、芸大の学生と連携して、日比谷の野外劇場でギリシャ悲劇を上演していた。上手くはなかったが、コロスの役割などが分かって楽しかった。そんなこともあって鈴木忠志率いる「スコット」は大のお気に入りだった。
カイト ベイ要塞。日が差し始め、海の色がきれいだ。日本人の団体がやって来た。要塞の上でツアコンさんが説明している。たぶん、1996年11月クレオパトラの居城が海底で見つかったという説明なのだろう。そのうち発掘も行われるだろうね、と話している。クレオパトラが死んでプトレマイオス朝は終わり、ローマ支配に入るのだが、ギリシャもローマも多神教だったから、古代エジプトの神々は生きていたのだろう。
要塞のすぐ横は魚市場。「ちょっと止めて」と車から下り、魚をのぞいている。ソールがある。あとは小魚ばっかり。この時期あんまり漁はよくないのか量も少ない。
メインのグレコ・ローマン博物館に行く。ホリデイは1時半からの開館。「おっ、シーザーだ」と夫。「このシーザー、神経質そうな顔してるね。あっちのあれ、ソクラテスじゃない」と私。「ソクラテス、そうだよ。よくわかったね」「ブスだからね。でも、どうしてここにソクラテスがいるんだろう」「アレキサンドリアには世界初めても図書館があったのだから、当時のギリシャの哲学者達の書物は当然あった筈。すれば、ここにソクラテスがいても不思議じゃないよ」じゃぁ、どっかにプラトンやアリストテレスがいてもよさそうだ、と探したが見つからなかった。彫像は破損が激しく、まともなものは数少ない。良い物は列強が持っていってしまったのかなぁ。もっとも、私の独断と偏見で言えば、ローマの建築や土木技術は評価するが、芸術はあんまり評価しない。そういう意味では全然おもしろくない。プトレマイオス時代のガラスや陶器が残っているがこれらの状態は良い。クレオパトラはこういうものを使っていたんだ。
「ポンペイの柱」に行くとき、マーケットの傍を通る。「マーケット?」と訊くと「ウーマン マーケット。ウーマン、ウーマン、ウーマン、オール ウーマン」と言われてみると、なるほど客はみんな女性ばかり。これはめずらしい。「ポンペイの柱」に着いたが「ここはいいからウーマン マーケットに戻って」と車を返す。
立ち並ぶ店の売り手は男性だが買い手はすべて女性。女性の生活用品ならなんでも揃いそうだ。真っ黒なチャドリを着たかなりボリュームのある女性達が品物を選んでいる。目についたのが下着。キャミソル、ブルーマーがつるさがっている。オレンジ、赤、グリーン、紫、なんと色鮮やかな。おもわずニヤリとしてしまう。生地やさんの壁にかけられた布のデザインはすこぶる斬新。ふーん、真っ黒なチャドリの下はこんな色鮮やかな世界だったのだ。
片倉もとこの著書によると、イスラムの女性はこのチャドリで体を覆い、顔を隠すことによって、開放感を覚えるのだそうだ。西欧にいると、男からあからさまに顔や体を眺められ不快な思いをするが、これを被ると立場は逆になり、男をじろじろと眺めることが出来るというのだ。分かるような気がする。この場所が一番気に入った。
ホテルへの帰り道、宝石博物館に寄るか?というので、宝石には全く興味がないが、覗いていくことにする。なるほど、すごい、すごい。ダイヤ、エメラルド、ルビー、サファイアなどの数もびっくりするが、デザインも良い。トプカピ宮殿の宝石類にもびっくりしたがここもかなりのもの。「エジプトも金持ちじゃない?」と、オマールさんをからかう。「明日はどうするか」と言うので「決めていない。スエズ運河を見に行くとどのくらい時間がかかる?」と訊くと「片道3時間半」、往復7時間はちょっときついな。
明日までに考えるよ、と言うと、明日出かけるならホテルにいるから声をかけてくれと名刺を出し、マスターだけでなくマダムにも寄こした。
このホテルもいくつかのレストランが入っている。殆どが7時からだが、イタリアンは早くからやっている。先ずはワイン。ミネストローネ。メインは海に来たのだから魚介類を食べよう。夫は大好物のソール。私はイカのリングあげ。パスタはパス。私はポッシェトにいつも醤油、辛子がしのばせてある。肉、魚、特に魚を食べるときはいつも醤油を欲しがるので、どこに行くときも入れてある。なんとやさしい奥さんだろう。
となりで食事をしていた親子連れが食事を終えると、側に来て「私は何々と申します。日本へ3週間研修に行きました」と日本語で話しかけた。「とてもきれいな日本語ですね」と夫が答えている。「では失礼します。エジプトの旅をお楽しみ下さい」「ありがとう。みなさんもお元気で」それにしてもお見事、こんな精神、日本人にあるかな。
10時過ぎ、下に飲み物を買いにいった夫が、「結婚式が終わって新郎新婦がお茶を飲んでいたよ。下は客でいっぱいい。だからルームサービスしてくれるって」「そうか。ホリデイだものね。1月は結婚シーズンなのかな」「でもね、真っ赤になった人はいないよ。アルコールは出ないみたいだね」
このホテルにも日本人団体客は多い。ホテル内の店には「日本語出来ます」など日本語の商品紹介がべたべた貼られている。なるほど日本人は良い客なんだな。
日課の洗濯と葉書を書いていたが、車の騒音は夜中まで続いていた。
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